ケチャップ=トマトの概念をうち破る?「バナナケチャップ」を自作してみたら、謎の甘ウマ調味料が誕生した

日本ではマイナーな調味料「バナナケチャップ」。イメージ通りの“黄色いケチャップ”を目指し自作にチャレンジした結果……予想外の調味料が!?

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「ケチャップ」と聞いて、どんなイメージが浮かびますか? わたしは「トマトをベースにした、洋食や中華には欠かせない調味料」だと思っていました。

 

しかし、実はケチャップの主役=トマトではありません。この世界には、バナナをベースにした「バナナケチャップ」があるのをご存知でしょうか。

 

バナナケチャップってどんなもの?

フルーツをベースに作られる「フルーツケチャップ」の一種である、このバナナケチャップ。日本での知名度はかなり低いですが、フィリピンでは一般的な調味料なんです。

というのも、第二次世界大戦中のフィリピンではトマトケチャップ不足が起きたため、トマトに代わって比較的生産量の多いバナナを使ったケチャップが誕生したのだとか。

 

気になるその見た目は……

 

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▲購入したバナナケチャップをオムレツにかけたところ

 

ふつうに赤い

わたしが以前通販で購入したバナナケチャップは、一般的なトマトケチャップよりも水分が少なく、ぷるぷるしたジュレのような食感。そして、スパイスの香りが特徴的です。

口にするとほのかな甘味が、後味には適度な酸味があり、言われなければバナナがベースとは気付かないんじゃないか? なんて思いました。

 

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▲ビンを逆さまにしても、このとおりの粘度

 

バナナなのにどうして赤いんだろう……? と調べてみたのですが、トマトケチャップに近づけるために、赤く着色されていることが多いようです。やはり、「ケチャップ=赤」という見た目は世界共通の認識なのかもしれません。

と、いうことは……? もしかして自分で作れば黄色いケチャップができあがるんじゃないか? なんて思ったわけです。

 

ということで、Web上でバナナケチャップのレシピを探したのですが、そもそもスーパーにも置いていない調味料。日本語で書かれた正確なレシピはありません。インターネットの力を駆使して、海外からそれらしきレシピを引っ張ってきました。

 

バナナケチャップを自作してみよう

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▲材料はこちら

 

日本では手に入らなさそうなものは除いて、すこしアレンジをしていますが、材料は以下の通り。

 

【バナナケチャップ 】(できあがり約120g)

  • バナナ 4本
  • レーズン 70g
  • 玉ねぎ(みじん切り) 40g
  • にんにく(チューブ) 大さじ1
  • 白ワインビネガー 300ml
  • 水 720ml
  • 黒砂糖 90g
  • 塩 小さじ1と1/2
  • オールスパイス 小さじ2
  • シナモン 小さじ1
  • ナツメグ 小さじ1/2
  • クローブ 小さじ1/4

 

レシピにあったトマトやチリペッパーは省き、極力赤色がつく要素を排除したレシピにしてみました。はたしてうまくいくのでしょうか……?

 

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まずはバナナ4本を薄い輪切りにします。バナナは大きくて、シュガースポット(黒い斑点)が出ているまで熟したものがいいようです。

 

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バナナ、レーズン、玉ねぎ、にんにく、白ワインビネガー(半分量の150ml)をミキサーにかけます。

 

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▲茶色い……

 

……この時点で、早くも「黄色いケチャップ」は不可能だと悟りました。そういえばバナナジュースって、きれいな黄色にはなりませんよね。

あまり美しい色ではありませんが、仕方がありません。

 

ほんとに大丈夫!? お鍋のなかは不安だらけ

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ミキサーの中身を鍋に移しました。にんにくと酢のにおいがきつく、刺激臭がします。市販のバナナケチャップとは似ても似つかない不快感のある匂いと、食欲をそそられない色……不安を抱えながら、作業を継続します。

 

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参考にしたレシピ通り、黒砂糖と塩、水(720ml)、残りの白ワインビネガー(150cml)を投入します。ビネガーを2回に分ける理由は何なんだろう……。

 

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見た感じ、かなりやばそうなものになりました。かき混ぜながら、まずは強火で沸騰させます。

 

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傍から見たら、「鍋でカフェラテ作ってんのか」って感じの見た目になりました。

 

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……が、沸騰した瞬間、一気にとんでもない量のアクが! すぐに火を弱めたことが幸いし、吹きこぼれはしませんでしたが、これにはびっくりしました。鍋は大きめのものを使ったほうがよさそうです。

沸騰したら、中弱火にします。

 

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▲鍋のなかに生まれた地獄

 

近くにいると玉ねぎを切っているときのように、自然と涙があふれてきます。さらに、大量の酢が入っているせいで、湯気を吸い込むとムセてしまいます。アクの量も相まって、地獄の釜を作ってしまったのか……? という気分に。

 

ひと舐めしてみましたが、味はまとまりがなく、その上強烈な酸味が襲ってきて、味覚的にも地獄でした。ほんとうに大丈夫なの……?

 

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▲失敗したら編集部になんて言い訳をしよう……つい、そんな弱気な思いが頭をよぎります

 

あまりにも見た目がよろしくないので、アクを取ってみました。

焦げないように定期的に鍋をかき混ぜながら、中弱火のまま75分火にかけます。どうかおいしくなってくれ……祈りにも似たような気持ちで煮続けます。

 

すると、45分を超えたあたりから、鍋の様子が変わってきました。まだ酢の匂いは強いものの、むせかえるほどではなくなっています。希望が見えてきた……!?

 

これはバナナケチャップなのか? 新たな調味料、爆誕

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▲煮詰まった!

 

火にかけてから75分……

煮詰まったことで色が変化。水分も蒸発し、ややとろみのあるチョコレート色のソースができました

舐めてみると、まだまだ後味に酢の刺激があるものの、甘味がでてきました。これは、もしかするといけるかも……!?

 

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▲スパイス(オールスパイス・シナモン・ナツメグ・クローブ)を投入

 

ここにスパイス各種と水50ml(分量外)を追加。ちなみに、オールスパイスはシナモン・ナツメグ・クローブの香りを併せ持ったスパイスです(これ、いる……?)。焦げないようにひたすらかき混ぜながら、さらに弱火で15分煮ます。

 ※ここでの水は、あと50~100mlくらい追加してもよかったかもしれません。詳しくは後述します。

 

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スパイスを入れたことで香りにも変化が。かぎ慣れない香りではありますが、少なくとも先ほどまでのような「不快な匂い」ではなくなってきました。

 

ただ、この状態は水分も少ないため、常にかき混ぜていないとすぐに焦げてしまいます。ひとときも鍋から目が離せません。

 

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▲これは……チョコクリーム……?

 

15分後、生成されたものはチョコクリームのようなもの。正直、イメージしていたものとはだいぶ違いますが、とにかく自家製バナナケチャップができました。

 

ていねいに裏ごしして、煮沸消毒したビンに入れてしばらく放置。粗熱が取れたら、冷蔵庫で冷やします。

 

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完成したものがこちら。

完成当初はクリーム状でしたが、冷やすとさらに固まるため、取り出したときにはペースト状になっていました。スパイスと一緒に、もう少し水を入れておけばよかった……というのが反省点です。100〜150mlが適量でしたね。

 

すこし舐めてみると、購入したバナナケチャップよりもバナナとレーズンの自然な甘味が強く感じられ、あの強烈な酸味はほとんどありません。後味に少しスパイスの風味も残って、これはこれでおいしい!

 

色といい、固さといい、味といい、以前購入したバナナケチャップとは別物なので、はたしてこれを「自家製バナナケチャップ」と言っていいのか若干の疑問は残りますが、とにかくおいしい調味料が完成しました!

 

料理との相性は? 実際に食べてみた

さて、でき上がった自家製バナナケチャップ(と、強い気持ちで言い切る)ですが、調味料である以上、重視されるのはそれ単体の味ではありません

トマトケチャップと比べて、自家製バナナケチャップの料理との相性はどうなのでしょうか。

 

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まず真っ先に思いついたのはフライドポテト

トマトケチャップを「これでもか!」とつけて食べるのが好きなんです。さっそく食べ比べてみましょう。

 

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▲「ケチャップ」というより、味噌って感じの見た目ですが……

 

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思い切ってつけてみると、あ、イケるわコレ。ポテトの塩味が甘さで中和されていい感じです。考えてみれば、甘味の強いバーベキューソースをポテトにつけてもおいしいですもんね。

これはなかなかのヒット!

 

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続いてはハンバーグ

デミグラスソースのようですが、れっきとしたケチャップです。

肉料理と相性のいいスパイスが入っているため、これは当たりでは……? と予想していましたが、思いのほか甘味が目立ちます。決してまずくはないし、むしろアリだと思うのですが、個人的には肉の重たさを酸味でさっぱり中和してくれるトマトケチャップの方が好みでした。

 

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続いてはフランクフルト

これは正直失敗でした。ソーセージに甘味がぜんぜん合わない。「肉そのもの」にはトマトケチャップのほうが相性がいいかもしれません。

 

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逆に、最もおいしかったのはアメリカンドッグ

スパイスの効いた、深みのあるバナナケチャップの甘さがさらに味を引き立てます。これに関しては、トマトケチャップよりもはるかにうまい! とわたしは断言できます。

 

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不器用なデコレーションチョコみたいな見た目になりましたが、甘辛く味付けたひき肉たっぷりのオムレツにかけてもおいしかったです。

 

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最後は、バナナケチャップを使ったチキンライスを作ってみました。

黒酢チャーハンのような見た目になりましたが、こちらもおいしい! ふわっとスパイスの香りが漂い、ほんのりした甘さがご飯と鶏肉にベストマッチ。お箸が止まりません!

 

いろんな食べ物にかけてみた結果、甘味のある自家製バナナケチャップは、じゃがいもや卵、小麦粉といった食材との相性が抜群です!

まとめ

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本来想定していた意図とはだいぶ違ったところに着地しましたが、こうして新たな(?)調味料が誕生しました。

 

ちなみに余ったケチャップは、煮沸消毒したビンに入れて冷蔵庫で保存し、なるべく早め(3日程度)に使い切るようにしてくださいね。消費期限はかなりみじかく感じますが、トマトケチャップの1.5~2倍くらいの分量で使うのがおいしいので、意外とあっという間になくなっちゃいますよ。

 

おなじみのトマトケチャップや、より強いスパイスの風味と青さの残る酸味が楽しめる、市販のバナナケチャップもおいしいですが、たまには気分を変えて、自家製バナナケチャップを作ってみてはいかがでしょうか。

見た目はあまりよくありませんがコレ、意外とおいしい調味料ですよ! ぜひお試しあれ!

 

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