1日7時間、3年間作り続けた! 異色のミニチュアフード作家は、バナナの腐る過程をアクセサリーにする

ミニチュアフードを、アクセサリーに加工・販売する作家kerosakaさん。 インドカレー&ナンのイヤリングや、バナナが腐る過程を表現した3連ブローチなど変わり種アクセサリーもたくさん作っている作家さんだ。 今回は、kerosakaさんにミニチュアフードを作る際の葛藤や難しいポイントなどを伺った。

 

樹脂粘土で制作したミニチュアフードを、アクセサリーに加工して販売する作家kerosakaさん。

 

リンゴやぶどうなどの可愛いアクセサリーもあれば、インドカレー&ナンのイヤリングや、バナナが腐る過程を表現した3連ブローチ、静岡おでん3連ブローチ、串カツイヤリングなど変わり種も目白押し!

小さいながら、どれも本物と見紛うようなリアルさで、思わずお腹が空いてくる。

 

kerosakaさんにミニチュアフードを作る際の葛藤や難しいポイントなどを伺った。

 

 

タコ、イカの吸盤を貼りつけるのが大変すぎる

 

▲ざる蕎麦3連ブローチ

 

▲インドカレーピアス

 

── kerosakaさんのミニチュアフード、小さいのにすごい再現度ですよね!

 

作り始めた頃はひどい出来栄えでしたけど、14年やり続けてるので細部が進化しましたね。

色の着け方とか細工とか、昔できなかった表現ができるようになりました。

 

 

▲みかん3連ブローチ

 

──細部というとどの部分でしょうか? 小さすぎて、素人目にはすべてが細部に感じます。

 

例えば、みかんの皮のブツブツです。

待ち針でツンツンして、ブツブツを作るんですけど、あれ、根気の作業でして。始めたての頃は粗かったですね。隙間が多かった。

今は隙間をなくして、全部ブツブツで埋めたい。だから、ひたすらツンツンしてます。

 

──待ち針でブツブツを表現してたんですね……! 大変だ。

 

 

 

 

一番手間がかかるのは、吸盤がある生き物ですね。タコとかイカとか。

タコ焼きと食材のタコを組み合わせたブローチを作ったんですけど。

吸盤のサイズは均一じゃなくて、足の先っぽに行くほど小さくなるので、まず、いろんなサイズの吸盤を作るのが大変。

で、それを足に貼り付けるんです。タコなら8本、イカなら10本。大変すぎて精神が崩壊しかけました……!

 

──うわ~、手先が不器用な私には、一生終えることが出来ない作業だ……。

 

他のミニチュア作家さんがすごい方々ばかりなので。

手を抜いたらすぐバレるので、細部にこだわってます。

 

──完成までにどれぐらい時間かかるんですか?

 

作るモチーフによって、ぜんぜん違うんですがみかんのピアスなら2時間ぐらい。手数の多いお料理系は2~3日かかるものもありますよ。

 

 

 

ミニチュアフードを1日7時間、3年間作り続けた

 

──そもそも何がきっかけで、ミニチュアフードを作り始めたんでしょうか

 

もともと食べ物系のカプセルトイや食玩が好きで集めてて。

2007年頃、バイト先の先輩に「好きそうな場所あるよ!」と合羽橋道具街の食品サンプル屋さんに誘ってもらったんです。

リアルさとシズル感、技術力が素晴らしすぎて「自分でも作りたい!」って衝動が湧きました。

 

──食品サンプルがきっかけ!


はい! 食品サンプル職人になろうと思ったけど、求人が出てなくて。
求人出るまで待ってられないので、作り方調べて我流で始めました。

 

──どうやって作り方を調べたんでしょう

 

ネット検索や本ですね。

当時、あまりミニチュアフードの本がなくて。なんとか見つけた本も解説が雑でよく分からなくて、結局、試行錯誤しながら自分でやり方を見つけていきました

 

 

 

最初に作ったのはイチゴ大福です。

今見ると、酷い出来栄えでしたね。写真も酷いし、恥ずかしい……。

 

──1日何時間ぐらい作ってるんですか?

 

始めたばかりの頃はハマってたんで、休日は1日6~7時間やってました。

仕事がある日は、帰宅して2~3時間ぐらいですね。3年間ぐらいはそんな感じです。

最近は資料写真見るだけで、これ作るにはあの作業やらなきゃいけないなってかかる時間や難易度が分かっちゃうので、憂鬱になってくるんですけど(笑)。

始めたばかりの頃は、何も分かんないから何作ってても楽しかったです。

 

──長い時間のめりこんだから、ここまでのクオリティになったんですね…!

 

今は週3でバイトやりつつ、バイトない日に5時間ぐらい作ってます。
収入は、バイトとミニチュアフードの販売で半々ぐらいですね。

 

──作り始めの頃は、ミニチュアフードからの収入はないんですか?

 

始めて1年ぐらいはないです。販売しないで、友だちにあげてました。

ちょっとずつ技術が上がって、1年経った頃にミニチュア専門の展示イベントに出ました。
今から思えば下手くそなのに図々しいぐらいですけど、まあまあ売れました。そこで調子にのったというか、もっと、どっぷりハマった感じです。

 

 

腐ったバナナは売れない、いちじくは売れる

 

──いまやミニチュアフード作りが本職ですね。仕事になって、何か変わりましたか?


最初は自分の作りたいモチーフばかりを作ってたんですけど、最近はご要望にあわせて作ることもあります。

笑えるもの、ウケを狙った物を作りたいんですけど、それだけじゃなくて市場の反応を気にするようになりました。

 

 

▲バナナ腐れ過程ブローチ


バナナが腐っていく過程を並べてブローチにしてます。ウケるんですけどあんまり売れません。

面白いけど、かわいくはない。やっぱりかわいいのが好きな方が多いので。

 

──私は好きですけど! まあ、腐ってるバナナ、かわいくはないか……。

 

あと、インパクト強すぎるのもあんまり売れません。気持ち悪いやつ、グロテスクなやつとか。

身がついてる牡蠣はグロいのでウケるんですけど、常連のお客様以外の反応が鈍くて、思ったほどは売れませんでした

 

 

 

──逆に売れるのはどんなモチ―フですか?

 

スーパーで陳列されてるようなものですね。ミカン、リンゴ、アボカドとか。あとはおにぎり、焼き鮭。

最近だと、いちじくがすごい売れます。

いちじくってメジャーだと思ってなかったけど評判が良くて、出すとすぐ売れます。

紫でパッとした色じゃなくて地味なのに。意外と需要がありました。

 

 

次の課題は、器

 

──素人目には技術すごすぎて完成形に見えるんですが、もっとここを改善したいみたいなポイントはあるんですか?

 

一番の課題は、ミニチュアフードの器部分ですね。

器をもっとキレイに作りたい。器がキレイじゃないと、そこにのせた料理も美味しそうに見えないので。

 

 

 

──器ですか! 器のクオリティにこだわり出したら、陶芸家とかの領域ですよね。

 

本当は、本物の土で器作りたいって思ってるんですが、そこまでやってるとさすがに時間が足りないので諦めてます……。

盛り付けも気を使ってて、資料写真をいっぱい見て、なるべく美味しく見えるように考えてます。

 

──もう、普通に料理と同じ気配りですね。実際の料理もお得意なんですか?

 

料理は人並です。

でも、ミニチュア作るより全然楽ですよ!

包丁も大きくてキレイに切れるし、なにより作ったもの食べられますから!

 

──確かに食べられるのは、いいことですね(笑)。

 

課題って面でいえば、あとはモチベーションですね。作り続けるモチベーションをどう保つか。

コロナ禍入って出展イベント途切れて、一回モチベーションの糸が切れちゃった感じです。こないだ台湾行って「台湾料理のミニチュアフード作りたい!」って気持ちが湧いてるので、そこを大切にしていきたいですね。

 

 

 

──モチベーション、やり続けるには大切なポイントですよね。今後の展望はありますか?


台湾とかアジア圏でも販売を広げていきたいです。

来年は台湾のイベントにも出展したいですね。独学で中国語勉強してて、いつかは台湾に語学留学に行きたいです。

近々だと11月11日にデザインフェスタ出るので、この記事お読みになった方、ぜひお越しください!

 

■作家kerosakaさんのXアカウント

https://twitter.com/kekerorosaka

 

書いた人:松澤茂信

松澤茂信

珍スポットマニア。日本全国1,000ヵ所以上のちょっと変わった観光地や飲食店を巡り歩いています。

 

 

トップに戻る