都内屈指のカレー激戦区である東京・下北沢で、毎年10月に10日間開催されている「下北沢カレーフェスティバル」をご存じでしょうか?
「下北沢をカレーの聖地にする」を合い言葉に、カレー専門店のみならず、居酒屋さんやバー、さらにはスイーツショップからマッサージ店まで、シモキタのお店・約130店舗が参加する1年に一度のカレーのお祭りです。
そして、このカレーフェスティバルで伝説となった男がいます。2013年に最も多くのお店(38店舗)を制覇して「初代カレー王」となり、2014年に69店舗、2015年にも70店舗以上と年々記録を伸ばし続け、ついに「初代永世下北沢カレー王」の称号までも手に入れた坂ノ上九郎氏。
彼は、下北沢で最もカレーに詳しい人といっても過言ではありません。
今回はそんな噂のカレー王が自信を持ってオススメするカレー店にナビゲートしていただこうと思います!
「初代永世下北沢カレー王」、見参!
まずは下北沢駅前にて「カレー王」こと坂ノ上九郎氏と待ち合わせ。本日は、あまた存在する下北沢のカレー店の中から挙げてもらった「絶対に食べておくべき名店・ベスト3」をハシゴします。
道すがら、カレー王に素朴な疑問をぶつけてみました。
──:なぜ「カレー王」になろうと思ったのですか?
なろうと思ったというか……初年度は、どこまでいけるのか試しにやってみたら38店舗回れちゃった感じですね。実は2013年以降の『カレー王』の座は別の人に譲っているのですが、実際の数は私の方が上回ってしまっていたので『初代永世下北沢カレー王』と名乗らせてもらって、毎年次の『カレー王』の選出を行う権利を得ているんです
──:10日で70店舗まわるってことは、1日に7食はカレーを食べるわけですよね? 常識を超えた数字のような……。
日によっては1日に10食ということもありますよ。最近はフェスティバル用にミニサイズのカレーを出すお店も増えましたが、私の中では通常サイズのものを食べるという自分ルールを設けています。意外といけるものですよ。それに、この10日間はカレーに専念するためお酒を飲まないので、普段の生活よりもむしろ身体は健康的な期間になっていると思います
そんなわけないだろうと心の中でツッコミを入れつつも(笑)、取材班は一軒目のお店に到着、さっそくカレー王オススメの逸品をいただくことに。
下北沢の老舗カレー店「茄子おやじ」
カレー王1軒目のチョイスは、下北沢で20年以上愛され続けている老舗のカレー食堂「茄子おやじ」。下北沢在住の作家やタレントなど、カレー好きな有名人のファンが多いことでも知られています。
下北沢のスタンダードと言えばここかな、と思いまして
「下北沢で初めてカレーを食べるという人にも、ここでならまず間違いない! 」と絶対の太鼓判を押せる名店とのこと。
基本のメニューは4種類。定番のちきん、びーふ、やさい、きのこがありますが……。
どれも捨てがたい美味しさなので迷いますが、そういう時は一番人気で“全部乗せ”感があるスペシャルを選ぶのが正解!
スペシャルは、玉子をはじめいろんな具材がミックスされているカレーだそうです。
おや? 目を離した隙に、いつの間にかビールを注文していた「カレー王」。
このドイツビールが、『茄子おやじ』のカレーには合うんですよ
そうは言いつつも、カレーが来る前にビールをほとんど飲み干してしまっていた「カレー王」ですが、まあ、いいでしょう。そうこうしているうちに、お待ちかねのカレーがやって来ました。
これが、「カレー王」が選んだ「茄子おやじ」の「スペシャル(1,200円)」です! 見るからによく煮込まれた、こってり濃厚なカレールー。そして、たっぷりの野菜にきのこ、さらにどどーんとビーフが鎮座。真ん中に添えられたまるまる一個のゆで玉子もポイントが高いです。
ここのカレーの良さは、何といっても日本の米にマッチした手作り感のある味。しっかりと下味がついて煮込まれた、とても深い味わいのルーカレーです。後々になってピリッとくるスパイシーさも見逃せないところです。大きめに切られた野菜は、まさに店長の“おやじさん”らしさというか。男性的なカレーといった感じが好きですね
こちらは、スペシャルと同率の評判を誇る「ちきん(940円)」。
ホロホロに煮込まれた鶏肉は、頬張った途端、溶けるように崩れていきました。極上の柔らかさが非常に印象的なカレーです。
『茄子おやじ』のカレーは、ほっこり優しい味わいの反面、スパイスのパンチが効いているので飽きがきません。このカレー激戦区・下北沢で老舗と名乗れるのは、それだけの実力があるということです
これから何十年後もシモキタで愛され続けるカレー屋であって欲しいですね!
下北沢スープカリー四天王の一角を担う「ポニピリカ」
「カレー王」の2軒目チョイスは、2014年にオープンしたスープカレー店「ポニピリカ」。ビルの側面にデカデカと描かれた看板が目を引きます。
この変わった店名はアイヌ語「ポニ」(若い枝、骨、小柴の生える)と「ピリカ」(可愛い、美しい、いい)を足した造語だそうです。オーナーが北海道出身なんだとか。
化学調味料を一切使っていないお店で、北海道らしい素材の味を楽しめるお店です
こちらは、オーダーシートでの注文になります。「カレー王」のオーダーは「北海道十勝産ベーコンと木の子のカレー(仲良し焼きチーズ木の子)(1,200円)」。さらにトッピングに、北海道名物のザンギと豆、さらに山椒みそを加えています。
こちらのお店の特長は、スープを3種類からチョイスできること。爽やかな酸味のあるトマトや、エスニック感が強い和風も美味しいのですが、イチオシはエビ。トマト・和風スープよりプラス100円という価格にも関わらず、夜には売り切れていることが多いほどの人気です
ここでもビールを注文する「カレー王」。
素材の味をいかしたお店、ということでビールもオーガニックにしてみました
確かに、お店のカレーに合ったビールを選んでいるようですが、3軒もはしごするのによく飲めるなぁ、この人……。
そしてほどなく、カレーが運ばれてきました! 「カレー王」チョイスの「北海道十勝産ベーコンと木の子のカレー」は海老スープをセレクトして+100円、追加トッピングがザンギ+170円、豆+80円、山椒みそ+80円。計1,630円です。ライスは北海道産きらら397と雑穀のブレンドで、こちらは大盛りサイズ。てっぺんの半熟卵は無料です。
野菜は素揚げされていて、サクッとした軽やかな食感。追加トッピングの豆もたっぷり入っています。この具の多さがスープカレーの醍醐味ですよね。
他店のスープカレーと圧倒的に違うのは、ルー自体の味の濃さですね。この海老スープは、何度口に運んでも食べ終わるまで毎回濃厚な海老の風味が襲ってきます。そこに、素材の味がぞんぶんにいかされた野菜やお肉を絡めていただく。もちろん、具材もスープに負けないワイルドな味を持っているので、全体的にガツンとした印象のカレーになるんです。山椒みそは、そこにさらに味を深めるアクセントですね
ちなみに追加でトッピングしたザンギも評判の高い一品。「東京のザンギは認めない」と豪語する北海道出身者も「これぞザンギ!」と認める、本物のザンギだそうです。カリッカリの衣とジューシーな鶏肉のコントラストがたまりません。
下北沢は実はスープカレー密集地帯でもあるんです。『ポニピリカ』はその中にあって“スープカレー四天王”の一店に名前を挙げられるくらい注目されています。スープカレーはさっぱりした味が多いのですが、ここの濃厚さはちょっと他では味わえない。はっきり言って、食べたことのないスープカレーだと思います
開店して2年足らずの新規店にもかかわらず、早くも頭角を表している模様。これからも期待してます!
カレー王認定ランキング第1位に輝いた、名店「犬拳堂」
さて、3軒目は、2016年1月に移転しリニューアルオープンしたばかりのアジアンカリーBAR「犬拳堂」。下北沢カレー王座決定戦2015では「下北沢らしいカレー部門・第1位」を獲得した下北沢きっての名店です。
実は私が『初代カレー王』に就任した際に行った、カレー王認定ランキングの第1位に選んだのがこの店なんです
「カレー王」が第1位と認めた店……!
果たしてどのようなカレーが出てくるのでしょうか。
“唯一無比のアジアンカリー”と称したカレーは、基本は野菜・チキン・エビの3種類ですが、チーズを乗せて焼いた焼きチーズカリーにしたり、ライスの代わりに豆腐を使ったカリー豆腐があったりとアレンジが豊富です。
10倍~100倍まで辛さを選べる、都内で一番辛いかも!? 「極辛カリー」も有名なのですが……。ここは敢えてスタンダードなエビカリーにしたいと思います
そして案の定、ビールを頼む「カレー王」。
何しろアジアンカリーですからね。シンハーでいただくのが筋でしょう
もうここまで来たら、止める必要はないと思います。
やって来ました「エビカリー」(1,050円)。大きなエビがごろんごろん。蓮根やタケノコなどの歯ごたえある根菜に、ヘルシーなキノコがたっぷり入っています。ルーはサラサラでスープカレーのような見た目。しかし、色味が普通のカレーと明らかに違っていて、オレンジに近いような印象です。
アジアンカリーの名の通り、とてもエキゾチックな味わいのカレーです。酸味の強さやココナッツの風味はタイカレーに近いのですが、それともまた違う……とにかくオリジナリティに溢れた味ですね。食べてみてもらわないとイメージしづらいです。ただ一つ言えるのは、間違いなく美味しいと言うことです!
サラッとしたスープ状のルーなので固めのライスがベストマッチなのですが、こちらの「カリー豆腐」(1,050円)も隅に置けない商品。
このお店はバーなので、居酒屋をはしごして来るようなお客さんも多い。そういう人にはガッツリ食べるライスより豆腐の方が食べやすいみたいです。お腹がいっぱいでも、スープ感覚でペロッといけちゃいますね
「特製グリルチキン犬拳堂風ガイヤーン」(800円)も絶品。アジアンカリーに一晩中漬けこむため、予約しないと食べられないメニューです。鶏肉が柔らかく味も染み染み! アジアンカリーの美味しさが凝縮されていました。
カレーだけでなく、一品料理も手が込んでいて店長のこだわりが非常にうかがえるお店です。『極辛カリー』のお陰で辛いモノ好きの方々の間で話題になっていますが、このお店の凄いところはどんな辛さにしても美味さが必ず残っているところ。結局、ベースとなるアジアンカリーの完成度が高すぎるんですよ! 美味しすぎるんです!
これからも、どこにも似ていないオリジナルのカレーを追求し続けて欲しいですね。
さてさて、いかがでしたか?
「カレー王」には、ぜひ今後も下北沢のカレーの伝道師として、さまざまな名店へと導いていただきたいものです。最後に、カレー王から読者の方にメッセージをどうぞ!
下北沢には、まだまだ知られざる名店が多数ございます。ぜひ一度足を運んでいただき、この街がカレー激戦区である所以をその舌でご確認くださいませ!
お店情報
茄子おやじ
住所:東京都世田谷区代沢5-36-8 アルファビル1F
電話:03-3411-7035
営業時間:12:00~22:00(LO 21:30)
定休日:不定休
スープカレー ポニピリカ
住所:東京都世田谷区北沢2-8-8 2F
電話:03-6804-8802
営業時間:月曜日~木曜日・日曜日11:30~22:00(LO 21:30) 金曜日・土曜日11:30~23:00(LO 22:30)
定休日:不定休
ウェブサイト:http://ponipirica.in/
犬拳堂
住所:東京都世田谷区北沢2-38-10 北沢ビル2F
電話:03-3485-8698
営業時間:ランチタイム12:00~15:30 ディナー&BARタイム18:00~0:00
定休日:不定休
※本記事は2016年4月の情報です。
※金額はすべて消費税込です。