全てが「手作り」のすごいカフェ
「手作りcafe」と聞くと、どんなイメージを持ちますか? 美味しいケーキなどを、手作りの食器で出してくれる。そんなお店を想像するのではないでしょうか。
今回ご紹介する「手作りcafe Suiba(スイバ)」も、食器はもちろん、調味料なんかも手作り。
ただ、普通とちょっと違うのは、建物の基礎から始まり、床に壁、水まわりの工事だって自分でDIYしているということ。さらには、家具にストーブまでもが手作りです。
なぜありとあらゆるものをDIYしてしまったのか。その謎に迫りたいと思います。
世界遺産・知床の近くにある小さなマチ
北海道の「楽しい」を求めて食べ歩き。すごい店があるという情報があればどこへでも!
メシ通レポーターの裸電球です。
わかりやすく駅を撮ってみましたけど、今回お邪魔するお店は、私の住んでいる札幌から350キロ。車移動が便利な場所にあるため、家から運転して行ってきました。
その時間なんと5時間ですよ!
片道350キロですから、距離的には東京から仙台くらいですか?
北海道ってほんと広いんです……。
そんな大変な思いをしてでも、絶対ご紹介したいお店なんですよ。
今回お邪魔したのは、人口が5,000人ほどの小清水町。のどかな田園風景のなか、いきなり登場するがこの外観。
ジブリ映画に出てくるような佇まい。ただならぬオーラを放っています。
こちらが「手作りcafe Suiba(スイバ)」さんです。
壁からしてすごいんですけど! 木肌が顔を出していたり、金属が埋まっていたりとワクワクします! 外観から見所満載ですね。
わんちゃんと犬小屋です。あの~、楽しくてなかなか店内へ行けません。もう、目に映るものすべてに触れたくなってしまいます。
「心を鬼にして店内へ」。そんな言葉がぴったりです。このあとも驚きの連続なので、お庭の写真はこのへんで。
こちらが手作りcafe スイバさん。
ドア一枚を見ても、手作り感がすごいです。
中はどんな感じなんでしょう。
あの、大きな声出していいですか?
すごすぎるんですけど!
めちゃくちゃお洒落な店内です。
お店は2階もあり、隠れ家的な空間が広がっています。まるで物語の世界に迷い込んだような感覚。早速、お店のご主人、高橋さんに色々伺ってみましょう。
全部作っちゃうスイバの高橋さん
スイバ店主の高橋 祐耶さんです。こんな素敵なお店を作られた高橋さんですが、以前はなんと英語教師を目指していたそう。
そしてワーキングホリデーとして渡ったオーストラリアで運命が変わります。現地のアジア料理店で働いたことで料理に興味を持ちはじめ、そこから「自分の店を持ちたい」という新しい夢が膨らんでいきました。
帰国後もアジア料理店で働き、現地の「ホンモノ」の味を学ぶため、バックひとつ背負って、世界各国を巡ったのです。
2004年から2年半かけて、中国からインドネシア、フィリピン、インド、パキスタンと、その数15カ国以上!
料理を作っている様子を見せてもらったり、運が良いときにはお店を手伝わせてもらったりしながら、本場の味を徹底的に吸収していきました。
▲シーフード トムヤム・ヌードル(生春巻き付き) 1,200円
この日の週替りメニューはトムヤムヌードル。一口すすれば、バランスの良い辛さと酸味が広がる自慢の一品。
レモングラスやバイマックルなど、トムヤムスープに欠かせない材料はタイから取り寄せるこだわり。市販の調味料は使わず、料理も「手作り」を追及しています。
▲油淋鶏~とり唐揚げの葱醤油がけ~1,200円
選べるランチ、もう一品は中国の油淋鶏でした。この他にも、ベトナムのフォーや、インドネシアのナシゴレンなど、あらゆるアジア料理が楽しめるとあり、地元の方から愛されています。
陶器も地元の窯を借りて手作りしています。店内のランプなども手作り。ここまでやるお店って、ホントないですよね。
旅の途中に描いた「夢」のスケッチ
アジア各国を巡る旅の途中に、高橋さんは自分の店の構想を練り続けました。店内の一角に貼ってあるこちらが、イメージを描いたスケッチです。
アジアの飲食店は、経済的な理由も含めて、自分で内外装を作っている場合が多かったそう。それを自分の店のイメージに置き換え、限られた予算の中で何ができるかを考えていきました。
しかし、夢が膨らむほどに、この構想を大工さんに伝えても実現はできないだろう、そもそもいくらかかるのか……と感じたそうです。
その結果、高橋さん、仲間と一緒に自分で作っちゃいました。
DIYに関して知識が無かった高橋さんは、旅先で知り合った方から、沖縄でカフェや宿泊施設を自分たちで作っている団体「ビーチロックビレッジ」を紹介されました。
高橋さんは、そこに建築のボランティアとして参加。出会った仲間たちと奥様で、「スイバ」を作ることとなったのです。
2009年から、力を合わせて急ピッチな制作を敢行。1年半をかけて、手作りcafeスイバと、その横に現在の宿泊施設「ディダハウス」を作り上げたのです。
集まった仲間の中には「本職が大工」という人がいなかったため、苦労も多かったそう。夜な夜な意見を交わしながら、時に朝方まで作業をしたそうです。アイデアが浮かぶたびに、ネットや書籍で調べて、実践していったんですって!
壁などに使用する材料も手作り。粘土に藁を入れて、ひたすら踏むんだとか。
振り返るとこの作業が一番つらかったそうです。長靴だと泥に取られてしまうので、裸足で踏むのですが、小石で足を切って血を流しながらの作業だったといいます。
秘密の場所「スイバ」を作る
スイバの名前の由来は小学校で習った国語の教科書。
物語の中で、カブトムシなどが集まる秘密の場所を「スイバ」と呼んでいました。
この物語を読んだ後は、友達とクワガタがたくさんいる木を見つけては「放課後、スイバ行こうぜ」と日常的に使っていたんですって。
そして、自分のお店を作る際に思い出したのがこの言葉だったそう。自分たちしか知らない秘密の場所を本気で作った結果が今なのです。
その熱意は凄まじく、このようにトイレだったり……。
味のある椅子にも現れています。
さらに「このストーブも拾ってきた鉄を自分で溶接して作ったんです」と教えてくれる高橋さん。もう、すごすぎて頭がついていかなくなるレベルです。
完璧に見える店内ですけど、失敗ってないんですか?
この写真の一番奥に本格的なピザ釜を作ったそうなんですが、それがオープン直後に焼け落ちたとのこと。
「あのときの絶望感ときたら」と当時を振り返る高橋さん。
失敗談も含め、なんだかモノづくりの話を聞いていたら、僕もDIY始めてみたくなりました! 初心者でも作れそうなものってないんですか?
最初に作ったDIYはどれですか? という質問に「家の基礎」という答えが……。
私の絶望の顔を察し、高橋さんは店内をあれこれ見渡して、初心者でもいけそうなものを探してくれました。
そんな中教えてもらったのが、こちらのドリームキャッチャー。
拾ってきた小枝で輪を作り、好みの毛糸を網の目に張るだけ。これは簡単です……!
部屋に飾れば良い雰囲気になりますよね。木の実や鳥の羽、ドライフラワーをつけるのもオススメだそうです。
自分でまずは作ってみて、楽しさを知ってから、このお店にお邪魔するのも楽しいと思います。
カフェの横は宿泊施設の「ティダハウス」
こちらが基礎からDIYしたという、ストローベイルハウスです。
壁に開けられた小窓から、内部の藁が見えます。1日1組のリッチなお宿です。なんて落ち着く空間でしょう。泊まりたい~!
さて、ご紹介したスイバですが、夜は同じ建物を間借りする形で、他の経営者が「トゥンバ」という飲食店を展開しています。全国的にもまだ珍しい営業形態ですよね。
トゥンバもアジアンなフードを中心に、様々なお酒も楽しめるお店です。
実は高橋さん、世界遺産・知床のエリアに新たな宿を建設中とのこと。2019年6月~12月はスイバをお休みして、DIYに専念されるそうです。その間は「トゥンバ」が日中も営業するので、お店の雰囲気、お料理が楽しめますのでご安心を!
ということで、手作りにこだわった、想像の上をいくカフェをご紹介しました。ちょっと違った切り口で北海道を堪能してみませんか? 夢のような時間が過ごせますよ!
お店情報
手作りcafe suiba
住所:北海道斜里郡小清水町字旭340
電話番号:0152-62-2072
営業時間:11:00~15:00(Lo.14:00)
定休日:日曜・月曜
HP:http://nepamaru.blog109.fc2.com/
夜は同じ建物を間借りして「トゥンバ」になります。
営業時間:18:00〜22:00
※2019年6月~12月はスイバを休業、この間はお昼もトゥンバが営業
書いた人:裸電球
北海道を拠点に食べ歩き。CATVでグルメ番組のレポーターを担当したことをきっかけに、ハシゴ酒が趣味となる。入りづらいお店に突撃するのが大好き。現在はフリーで、映像制作とライターの仕事をしている。
- ブログ:「裸電球ぶら下げて」