羊だけど臭くない!国内シェア1%の希少な国産羊肉をジンギスカンで食べられる「羊SUNRISE」【麻布十番】

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いきなりですが皆さん、羊のお肉は好きですか?

「独特の匂いがちょっと苦手……」という方も多いと思いますが、そんな方にこそオススメの羊肉の専門店が、東京都港区の麻布十番にあるんです。

 

羊のおいしさを広め、羊肉の時代に夜明けを!”という思いを込めて付けられたお店の名前はズバリ「羊SUNRISE」。羊への愛があふれるオーナー、関澤さんが2016年にオープンしたお店で、国産の新鮮なラム、ホゲット、マトンをジンギスカンでいただけるという情報を聞きつけ、さっそく行ってきました。

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麻布十番商店街にあるビルの3階でエレベーターを降りると、いきなり羊がお出迎え。隠れ家的なビストロは入り口が分かりにくいお店もありますが、これなら一目瞭然で「ココだ!」と分かるので安心。いやーありがたい!

 

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ドアを開けて中に入ると、高級鉄板焼き店のようなカウンター席のほか、グループ客用に6名様のテーブル席も用意されています。聞くと、接待の席にもよく使われるのだそう。

 

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▲6人席は店内に1カ所。ご利用を希望の際は予約を!

 

気になるメニューを開くと、国産羊肉、フランス産マトン、オーストラリア産ラムなどいくつかの種類がありました。羊肉初心者のわたくし、まずはオーナーの関澤さんにお話をうかがってみることに。

 

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▲オーナーの関澤波留人さんはオーストラリアラムのPR大使「ラムバサダー」も務める羊のスペシャリスト

 

「おいしい国産の羊肉を食べて欲しい! これがうちの一番のコンセプトです。2005年に羊肉ブームが起こったんですが、急激に上昇した国内の羊需要を満たすために、安い海外産の冷凍肉が大量に出回ってしまったんです。日本人はそれまで羊を食べ慣れていなかった。つまり、羊本来の味を知らなかったんです。そこに安いお肉が広まってしまったせいで、“羊=硬くて臭い”というイメージが定着してしまったんですね。うちは海外産も含め冷凍ではなくチルド(冷蔵)のお肉を提供しています。羊本来の味を食べていただいて、このイメージを払拭していただきたいんです」(関澤さん)

 

お肉からあふれ出る肉汁のように、羊への愛が止まらない関澤さん。彼が羊肉に出合ったのは20代前半。地元茨城のジンギスカン店で食べた羊肉に衝撃を受け、それからというもの夢中で全国100店舗を食べ歩いたのだとか。そして、札幌に本店があるジンギスカン店で修行を積むと同時に羊のことを猛勉強し、2016年に念願のお店をオープンさせました。

 

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「世界最古の家畜と言われる羊は品種改良も盛んで、現在、全世界に3000種もの品種が存在するんです。うちでは国産、仏、豪州産を中心にそれぞれの月齢のお肉を提供しています。ラム肉はあっさりしている一方、マトンには羊肉らしいコクがある。羊の月齢によって変わっていく味の違いや、牧場、品種ごとの味の違いを楽しんでいただき、お好みの産地、品種を見つけていただければと思います」(関澤さん)

 

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▲チルド状態で届く新鮮なお肉を毎日スタッフさんが切り分ける

 

羊に対する情熱が半端ではない関澤さん。さらにこう続けます。

 

「いま日本で流通している羊肉の99%は輸入肉なんです。国産の羊肉はごくごくわずかで、行政による補償や援助もないため自給率はなかなか上がらないのが現状です。でもその代わり、ほかの家畜と違って行政による指導もないので飼育方法の自由度が高く、牧場ごとにお肉の味わいが違うんです。まずは食べてみてください」

 

ということで、まずはお店自慢の国産のお肉をいただくことに。

この日のお肉は福島県鮫川産のラム肉。脂分の多いロースと、さっぱりした味わいのモモ肉を関澤さんに焼いていただきました。

 

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▲こちらが「本日の国産羊肉」。福島県鮫川産ラム サフォーク種 8カ月齢 雄 2,600円

 

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▲火を入れるほど硬くなりクセが出てしまう羊肉。「羊SUNRISE」では、最高の焼き加減で食べられるよう、スタッフが目の前で一枚一枚焼いてくれます。とても新鮮なので、レアがオススメなのだとか

 

国内の羊牧場は、おもに高級フレンチなどのレストランにお肉を卸しており、 “羊=硬くて臭い”というイメージを作った張本人であるジンギスカン店に肉を卸すのを敬遠するのだそう。しかし関澤さんは3000kmもの距離を車で走りながら一軒一軒牧場を訪問し、羊に対する情熱と夢を熱く語りながら交渉を続け、いくつもの牧場と契約を結んでいきました。今回いただく福島のお肉もそのひとつだそう。

 

福島はもともと北海道に次ぐ羊の産地だったんですが、3.11の原発事故後は自由に放牧ができなくなり、東京電力が餌代を補償して屋内で飼育しているというのが現状です。“羊で復興を”と頑張っている方も多く、微力ですが応援できればと思い、仕入れています。もちろん味も良いですしね」(関澤さん)

 

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それぞれの牧場に定期的に通っている関澤さんならではのこんなエピソードを聞いているうちにお肉が焼き上がり、いざ実食!

 

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塩とタレがあり、自家製ラー油やにんにくなども用意されているのですが、まずはシンプルにお塩でいただくことに。

 

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「うっめ〜〜〜」。まず口を出たのはこの言葉でした。こんなにおいしい羊肉は、正直言って初体験でした。羊肉独特の臭みはまったくなく、かむごとに羊ならではのうま味と脂がジュワーと広がっていき、ほどよい塩味がさらにその味を引き立てます。

 

そんな私の表情を見る関澤さんは「どうですか? これが国産のラム肉の本来の味なんです」とニヤリ。

「海外産はまた一味違うので、ぜひ食べ比べてみてください」と言われ次に注文したのは、オーストラリア産のラムとフランス産のマトン。食べ比べを楽しむため、こちらもまずは塩でいただきます。

 

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▲仏産マトン 1,800円(右)と豪州産ラム 1,080円(左)。フランス羊は狂牛病が流行した16年前から輸入禁止になっていましたが、2017年の5月に解禁。このマトンは南仏のオキシタニーという地域産の羊で、東京で食べられるのはここだけ

 

オーストラリ産のラムは国産に比べると羊らしい味わいが強く、フランス産のマトンは力強いコクを存分に楽しむことでできます。ですが、どちらも羊臭いということはまったくなく、まるでワインのテイスティングのように産地や月齢の違いを楽しむことができます。それぞれに良さがありどれが一番おいしいかは、なかなか甲乙はつけ難い……。

 

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▲個人的には塩が好みなのですが、タレはタレで塩とは一味違う羊とのマリアージュが楽しめます

 

「どれもおいしいです」と伝えると、関澤さんは羊に関する情報を次々に教えてくれました。その内容は、まとめると以下の通り。

 

  • 羊肉を禁じている宗教はないため、羊は全世界の人が食べられるお肉
  • 日本には約1万7000頭の羊がいて、これはオーストラリアの羊飼い1人が飼う数。もっともっと国内の生産量を増やしていけば、おいしい羊肉を安く食べられるようになる。
  • マトンには脂肪燃焼効果が期待できるL-カルニチンが豊富に含まれている。
  • 関澤さんは1年間、毎日羊肉食生活を続けて12kg痩せた
  • 鮮度の「鮮」という漢字は、新鮮でないとおいしくない「魚」と「羊」から成り立っている。

 

いかがですか。関澤オーナーの羊への愛がビシバシ伝わってきますよね。

 

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茨城土浦産レンコン 700円

 

「ぜひこれも食べてみてください」と出していただいたのは、関澤さんの地元茨城県の特産で、知り合いの農家さんから仕入れているというレンコン。輪切りにするのが一般的なレンコンですが、写真のように縦に切るのは農家さん直伝の食べ方で、この方がレンコンの甘みとシャキシャキ感を味わえるのだとか。

 

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▲ひつじのカレー 700円

 

最後に、〆のメニューとしてマトンカレーをいただきました。「しょせん、ジンギスカン店のカレーだろ」と高をくくっていたのですが、これがまおいしい! 上等な羊肉を使っているからおいしいのは当たり前といえば当たり前なのですが、スパイスにもこだわって作られていてとても本格的な味。お腹はそこそこ膨れているはずなのにペロリと完食してしまいました。

 

「羊SUNRISE」はこのほかのサイドメニューやワインなどお酒のラインアップも豊富。ジンギスカンの概念を変えてくれるので、気になる方はぜひ足を運んでみてください!

 

お店情報

羊SUNRISE

住所:東京都港区麻布十番2丁目19-10PIA麻布十番Ⅱ3F
電話番号:03-6809-3953
営業時間:月曜日・火曜日・水曜日18:00~24:00(LO 23:30)
     木曜日・金曜日18:00~翌3:00(LO 翌2:30)
             土曜日・日曜日・祝日17:00~22:00(LO 21:30)
定休日:年末年始、GW、お盆
ウェブサイト:http://sheepsunrise.jp/

 

書いた人:加茂光

加茂光

1986 年東京生まれ。編集プロダクション勤務を経てフリーライターに。嫌いな食べ物は、気合が入っていないもの。座右の銘は、「ルール破ってもマナーは守るぜ」

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