丸山ゴンザレスさんの少年時代と「おふくろの思い出の味」【おかんメシ】

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丸山ゴンザレスさんの「食の思い出」

『クレイジージャーニー』(TBSテレビ)での衝撃的な海外レポートが、放送されるごとに話題沸騰となる、犯罪ジャーナリスト・丸山ゴンザレスさん。

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  • 作者: 丸山ゴンザレス,渡辺大樹
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎コミックス
  • 発売日: 2018/01/24
  • メディア: コミック

最近ではスラム系グルメ漫画『鳥居准教授の空腹 ~世界のスラムにうまいものあり~』(バーズコミックス・刊)の原作を担当するなど、食についても造詣が深い氏に、小さい頃の食事のこと、そしてご両親との思い出について尋ねてみました。

 

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── そもそも丸山さんってどんな少年時代でしたか?

 

f:id:Meshi2_IB:20180402013802p:plain丸山:いたって普通の少年だったとは思うんですけど、父親はJR職員で、母親は服の問屋さんみたいなところでパートをしていて、両親が共働きだったんです。母方のおばあちゃんと同居していたんですけど、おばあちゃんだからオヤツ的な感覚がなくて、わりといつもお腹が減っていました。

 

── それだけお体が大きいと、いくら食べても満腹にならなさそうですよね。

 

f:id:Meshi2_IB:20180402013802p:plain丸山:ただ、母親が共働きコンプレックスからか、お小遣いをわりとくれたんですよ。で、おばあちゃんもお小遣いをくれたもので、お小遣いがダブルインカムだった。なので、片方からもらったお金で『週刊少年ジャンプ』や『コロコロコミック』を買い、もう片方からもらった分で食い歩くっていう生活をしてました。

 

── それはずいぶんと恵まれてますね。

 

f:id:Meshi2_IB:20180402013802p:plain丸山:そうですね。小学校4年生で引っ越しをするんですけど、生まれ育ったのは仙台のちょっと外れたところの刑務所のある街で。宮城刑務所のすぐ近くに住んでた。で、刑務所を探検しようとしたりとか。

 

── 小学校低学年から刑務所探検! ……って刑務所って近づけるものなんですか?

 

f:id:Meshi2_IB:20180402013802p:plain丸山:刑務所は、もともと城跡に建てられていたんで。刑務所の敷地を囲むようにお堀があって、そこに降りたりよじ登って入ろうとしたりしたから、問題になって(笑)。そういうところに行くのが好きで、お弁当代わりにお菓子を買っていくっていうのがパターンでしたね。お菓子っていっても、僕はお腹が膨れるのがよかったんで、ベビースター的なのとか。あと、何10円とかで買える小さいカップラーメンみたいなのとか。

 

── 「ブタメン」ですかね。

 

f:id:Meshi2_IB:20180402013802p:plain丸山:それかな。あれをよく買ってましたね。それに、おばあちゃんに作ってもらったおにぎりをおやつにしてました。

 

── 小学生ならではの炭水化物オンリーのジャンクな組み合わせですね。

 

f:id:Meshi2_IB:20180402013802p:plain丸山:そんな感じのものを子どもの頃から食べていましたが、健康そのものでした。あとは、友達と昆虫採集したり、探検ごっこしたり、秘密基地を作ったり。新幹線の高架下とか給水施設の下に洞窟掘って、防空壕(ごう)みたいな感じの。わりと本格的な秘密基地をみんなで作るのにハマってましたね。あとは、小学校4、5年生くらいでビックリマンチョコがはやり始めたんですけど、あのチョコはめちゃくちゃ食ってました。みんなシールだけ取ってチョコはいらないっていうから、それをもらって食べて。お菓子を捨てるなんてもったいなかった。

 

── ありましたね〜、その問題!

 

f:id:Meshi2_IB:20180402013802p:plain丸山:ってお菓子の話ばかりしてますが、とはいっても一番好きなのは普通のご飯でした。駄菓子屋さんに行っても、スーパーボールを買ったりとかクジを引いたりとか、そういう形に残るものをコレクションしていて、お菓子はついでに、みんなに付き合ってちょこっとは買うけど、さっきも言ったけど、甘い系ではなくベビースターなんかの主食系。その後、オヤジに連れ出されるように……一緒に釣りに行ったりとかするようになってから、俺の食生活はどんどん変わっていくんですけど。

 

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── どう変わったんですか?

 

f:id:Meshi2_IB:20180402013802p:plain丸山:オヤジはアルコール依存症に近い酒飲みで、学校をずる休みさせて釣りに連れていったりする人で、かあちゃんもそれについては何も言わない。で、肉屋さんでとんかつとかコロッケとか買ってきて、それをつまみにビールを飲みながら釣りをするわけです。子ども心に「ご飯みたいなものを、こんなふうに食べちゃっていいのかな」って、罪悪感もあるんだけど、すごく楽しくって。そういう総菜的なものを、ご飯じゃなく食べるっていう、今でいう買い食い趣味の原点みたいなものがオヤジによって作り上げられていくわけですよ。

 

── お父さんってそういう“特別な体験”をくれたりしますよね。

 

f:id:Meshi2_IB:20180402013802p:plain丸山:オヤジの影響はずいぶん大きくて。俺は小学校の時からブラックコーヒーを飲んでたんです。オヤジと学校さぼってキャンプした時に、山の上の湧き水をくんでキャンプ用のコンロでコーヒーを沸かしてくれて。それがおいしかったんですよ。だから小学生のうちからブラックコーヒーを飲む習慣が身についた。そうやってオヤジにどんどん仕込まれていくんです。ナイフを使わずに魚をさばく方法とか。オヤジはキャッチアンドリリースが大嫌いで、キャッチアンドイート以外ないだろうっていって、魚は釣ったら必ず食べると。オヤジ、『B-PAL』が好きだったんですよね。自分で釣り竿も作ってました。そういうふうに、わりと自分たちで食材を採って食べるっていうのはありましたね。

 

── 魚以外だと何が採れるんですか?

 

f:id:Meshi2_IB:20180402013802p:plain丸山:春と秋は毎週末、山に入るんです。で、袋いっぱいに、山菜を採ったりきのこ採ったりして、それが食卓に並んでましたね。カニ鍋なんかも自分で採ったカニで作ってました。ワタリガニだったかな。それでカニ鍋を家で食べていたんで、世の中のカニ鍋ってそういうものだと思ってたから、東京に出てから居酒屋さんでカニ鍋ってメニュー見て「カニに金払うんだ!」って驚きました。でもうまいんですよ。ちゃんと味が出る。食べるところはあんまりなくて、ミソと脚のハサミのところくらいですけど。

 

── 旬のものを当たり前に口にしていたんですね。

 

f:id:Meshi2_IB:20180402013802p:plain丸山:でも、俺は当時、自分の家は貧乏だと思ったんです。自給自足みたいな生活じゃないですか。「とうちゃん、食材を採らない晩飯ないの?」って聞くと「うちは貧乏だから」っていうオヤジやおふくろのジョークを真に受けて、一生懸命、山菜を摘んでました。オヤジのBE-PAL的な趣味だったって理解するまでに時間かかって。後から父親の年収とか聞いて、「お前、実はそんなに稼いでたのかよ」って思いました(笑)。

 

── 子どもの頃って、親の嘘をまるっと信じちゃいますよね。まさか親が嘘をつくわけないって思ってるから。でも、結果的にいい子ども時代の思い出をもらえたって意味で、お父様、素晴らしいと思います。

 

f:id:Meshi2_IB:20180402013802p:plain丸山:食とは関係ないんですけど、本を読むっていう習慣も父親から受け継ぎました。土曜日に学校から帰って、かあちゃんかばあちゃんの作った昼飯を食って遊びにいって、で、夕方に家に戻ると仕事を早めに終えた父親が帰って来ているんです。それで、晩御飯までに近所の本屋さんに車で行くんですけど、付いていくと本を1冊買ってくる。でもオヤジは漫画を買うのは好きじゃなくって。1冊買ってもらったら帰ってから晩飯前後で本を読む。本屋さんに行く、漫画じゃない本を選ぶ、読むっていうのは、オヤジから学んだ習慣ですね。

 

「お前ばっかり、肉食うな」

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── 話を聞いていると、いい少年時代だなぁって思います。

 

f:id:Meshi2_IB:20180402013802p:plain丸山:ところが、小学校5年生になる時に、引っ越しして仙台駅の近くの小学校に通うようになるんです、街のほうですね。それまでの牧歌的な空気が一変して、都会的な子どもたちに囲まれるようになって。「出身は東京です」みたいな子とか。最初は、なんか居づらくってどうしようかなって思いながらも、だんだんと友達も出来ていって。

 

── 転校って、小学生にとっては一大事ですからね。

 

f:id:Meshi2_IB:20180402013802p:plain丸山:で、近所に100円バーガーっていわれてる、ローカルなハンバーガー屋さんがあったんです。ハンバーガーが1個100円の。あれ、なんて名前のお店だったかな……とにかくそこのハンバーガーは、小学生でも買える値段だったから、友達同士で連れだって行って、そこで初めて、自分でファストフードってものを買ったんです。

 

── おやつにファストフードって男子っぽいですよね。ご飯だけじゃお腹が持たないっていう。

 

f:id:Meshi2_IB:20180402013802p:plain丸山:とにかくいつもお腹が減ってましたからね。

 

── 体格からして、やっぱりたくさん食べるほう……ですよね。

 

f:id:Meshi2_IB:20180402013802p:plain丸山:ものすごく食べるほうです。実家の炊飯器は一升炊きでしたから。俺が家を出てから、一人暮らし用の3合炊きになってて、アレ? って思いました。うち、姉と妹がいるんですけど、ほとんど俺ばっかり食べてましたね。小さい頃、妹は鰻(ウナギ)のかば焼きとか出ても食えなくて、タレだけ掛けたごはんを食べてたんですけど、その鰻も俺がもらったり。

 

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── 一番好きだった食べ物は?

 

f:id:Meshi2_IB:20180402013802p:plain丸山:カレーライスが大好物だったんですけど、肉がブロックで入ってると、俺がおかわりする時に、全部たいらげちゃうもんだから、家族の中で不協和音が鳴り響いて。で、母親が考えた苦肉の策が、肉を全部ひき肉にしちゃうっていう。そうすると肉だけを取れないじゃないですか。我が家のカレーはある時を境にして、すべてひき肉になったんです。カレーだけじゃなく、煮込み系のもの全般、シチューもひき肉。「お前ばっかり、肉食うな」って。シチューだけはツナでしたけど。「はごろも」の。Lサイズ缶があったからだと思いますけど。

 

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▲丸山家のカレー作りに大鍋はマスト

 

── 最近あんまり見かけないですが、そういえば大きいサイズのツナ缶ってありますよね! お母さまの苦労がしのばれます。ちなみにお母さまの料理で他に印象に残ってるものってありますか? 得意料理とか。

 

f:id:Meshi2_IB:20180402013802p:plain丸山:母親はね、土曜日は少し早く帰ってくるんです。で、当時は土曜日も学校あって。半日でしたけど。それで、学校から帰ると、母親がいつもチャーハンとか焼きそばを作っていたイメージですね。得意料理はなにかなぁ。印象に残っているのは、たまに作ってくれたんですけど、人参のケーキ。今でいうといわゆるキャロットケーキなんだけど、その頃どこからかレシピを手に入れて作るようになったんですよ。なんでかわからないし、母親も覚えてないんですけど。

 

── 子どもの頃の記憶って残りますもんね。大人はすぐに忘れちゃうけど。

 

f:id:Meshi2_IB:20180402013802p:plain丸山:その後、東京きて何年も経った数年前、「DEAN & DELUCA」でキャロットケーキを発見して。「あ、母親と同じ味だ」ってビックリしました。こんなハイカラなもん作ってたんだって。あっ、あと、かあちゃんの作る麻婆豆腐が、赤くないのが気にくわなかったのは覚えてます。

 

── なぜ麻婆豆腐が赤くないんですか。

 

f:id:Meshi2_IB:20180402013802p:plain丸山:添加物とか着色料的なのが大嫌いな母親だったので。けど俺は、子どもながらに「ちょっと物足りないな」って思ってました。

 

── 市販の素を使わずにいちから作るって、料理上手ですよね。

 

f:id:Meshi2_IB:20180402013802p:plain丸山:そう、俺はむしろ、それらを使って作ったようなのが好きなんですけどね。ジャンクフードに慣れ親しんでたんで、合成着色料とか食品添加物は未来の味だって思ってましたから。なので友達の家で、素を使った料理が出てくるとすごくうれしかったんです。「うちのかあちゃんゼロから作るんですよ、だからおいしくなくって」とか無邪気に言ってましたけど、たぶん向こうのお母さんはカチンと来てましたよね(笑)。

 

── それは完全にカチンと来てますよね。すみませんね、うちは手抜きで! って。けど、手間を惜しまずにイチから作るのはお母さまの愛ですよ。

 

f:id:Meshi2_IB:20180402013802p:plain丸山:大人になってから聞いたんだけど、共稼ぎっていうのが母親的には悪いと考えていて、俺が食いたいっていうものは、なるべく食わせてあげようと思ってたって、言ってましたけどね。ただ、中学生になると弁当が始まるんですけど、その頃は尋常じゃない量を食べるようになって。普通の弁当箱じゃ間に合わなくて、花見とか運動会で使うようなでっかいタッパがあるじゃないですか。あれがデフォルトになりました。がっちがちに米をつめて。

 

── おかずは?

 

f:id:Meshi2_IB:20180402013802p:plain丸山:母親は、その頃から俺の弁当を作ることを諦め始めて、肉を焼いたやつを乗っけたりとか。「量」重視になって、まともな晩御飯を作ることも諦めてましたね。家族で外食する時も、俺だけ食べてから家族で外食するんですよ。「今夜、寿司に行くからこれ食べておいて」って、おにぎりとかカレーとか食べさせられるんです。

 

食べると口の中になにかが刺さるスープ

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── 確かに普段、一升炊きでご飯炊いてる家庭で、外食したらめちゃくちゃお金かかりますもんね。ちなみに好き嫌いとかあります?

 

f:id:Meshi2_IB:20180402013802p:plain丸山:偏食はなかったですね。我が家では食べられないものがあるのはダメっていうか、許されなかった。おばあちゃんがいたからだと思うんですけど。「食べられない」っていうと、戦争の話をするから(笑)。

 

── 戦争の話されたら、もう食べないとですね。

 

f:id:Meshi2_IB:20180402013802p:plain丸山:そう、あとは、オヤジがつまみでホヤとか食べてたんですよ。「お父さんのだからダメ」って言われると余計に食べたくなるじゃないですか。それで食ったら、不思議と最初からいけましたね。

 

── 子ども時代から珍味もイケたと。

 

f:id:Meshi2_IB:20180402013802p:plain丸山:はい。イナゴの佃煮も家で作ってましたよ。オヤジの実家が農家だから、親戚総出で稲刈りするんですよ、その後、親戚の子どもたちが何してるかっていうと、イナゴを捕ってる。で、袋につめて持って帰って、で、ばーっとゆでて、佃煮作るんですよ。で、時々どこの誰が捕ったのかわからないけど、トノサマバッタが入っててあれは食えなかったですけど。

 

── 好き嫌いや偏食がなく、珍味もいける。それなら、海外での食事にも苦労しなさそうですよね。

 

f:id:Meshi2_IB:20180402013802p:plain丸山:全然しないです。なんでも食べられるから。ただ、食べることは苦じゃないんだけど、選ぶのはちょっと苦労しますよね。俺が頼んだものはアタリなのか、ハズレなのかっていう。一緒にいる人が頼んだもののほうがおいしそうだったりすると、悔しくて仕方ない。

 

── でもチャレンジしちゃうんですね。

 

f:id:Meshi2_IB:20180402013802p:plain丸山:そうなんです。例えば謎の肉がのっているご飯とかを「名物ですよ」って言われると、それを頼んでみる。けど、同行してる人が「僕は魚のが好きなんで」とかいって鱒(マス)のソテーとか頼んで、それは明らかにおいしそうで。僕のほうは出てきた瞬間に「これはハズレ……」とかよくあります。例えばナイジェリアで人気のランチプレートお願いします、って頼んだら揚げバナナがのったこれが出てきたり。これ、本当は停電してて暗いんですけど、頑張って明るさ調整してます。

 

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f:id:Meshi2_IB:20180402013802p:plain丸山:あと、「ここら辺の地元で名物のスープください」っていったら、これです。

 

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── わー、いかにも……。

 

f:id:Meshi2_IB:20180402013802p:plain丸山:これは正直まずかったです。見たままの味ですよ、葉っぱと魚の干物と鶏の出汁なんですけど、魚も骨を取ってないし、葉っぱもそのままなんで、食べると口の中に何かが刺さるんですよ。ローリエが大量に入ってるような感じで。名物くれっていって、これが出てくるわけなんで。でも、そこはなんでもチャレンジしちゃう。それにしてもダメな食生活ですね……山菜以外、野菜が出てこない。

 

──(笑)。ハズレることを恐れずにどんどん突き進んでチャレンジする好奇心が、面白いレポートにつながっているんだと思います。今日はどうもありがとうございました!

 

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書いた人:タケダキョウコ

タケダキョウコ

タケダキョウコ。東京生まれ。webや雑誌などを中心に執筆するフリーライター。夫と息子と犬と一緒に都内に住んでます。辛いものも甘いものも家メシも外食も大好き。趣味は塊肉を捌くこと。

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