野菜もたっぷりとれる「春キャベツと豚ひき肉の回鍋肉」は、本格四川風でご飯がすすみすぎる!

料理・食文化研究家の庭乃桃(にわのもも)さんが教える「春キャベツと豚ひき肉の回鍋肉」。豆板醤、甜麺醤、豆豉醬を使って本格四川風の味わいに仕上げるコツは必見です!

こんにちは、料理・食文化研究家の庭乃桃です。今年も春キャベツが出回る季節がやってきました。

今回は、そんな旬の春キャベツをたっぷりと使って本格的な四川風の味わいを再現した旨辛「回鍋肉(ホイコーロー)」の作り方をご紹介したいと思います。

早い所では2月頃から出回り始める春キャベツ

本場である中国四川省では、皮つきの豚肉と葉にんにくを炒めて作られることが多い回鍋肉。「回鍋」とは、茹でた肉を再び鍋に戻して調理する方法に由来しています。もともと家庭料理ということもあり、地域や家庭によってもさまざまな具材の組み合わせが存在するんだとか。 日本ではキャベツやピーマンなどの具材を甘辛く炒めたものが定番になっていますね。

そこで今回は、この時期ならではの甘みが強くて葉がやわらかい春キャベツを使って回鍋肉を作っていきたいと思います。

合わせるのは春キャベツと相性抜群の豚ひき肉。回鍋肉といえば豚バラや豚こまを使用することも多いですが、ジューシーでコクがあり、それでいてクセのない味わいの豚ひき肉は調味料との味なじみも良いため、うま味をしっかりプラスしつつ、春キャベツの魅力を一層引き立ててくれます。

さらには厚揚げも加えてたんぱく質をプラスしながら、ご飯によく合うボリューミーな一品に仕上げていきますよ。

そしてこのレシピの大きな特徴として、春キャベツが持つ甘みを存分に活かすため、日本風の甘めの味付けではなく、うま味や辛み、深いコクをしっかりと引き出した本格四川風の味付けにしています。難しいイメージのある中華調味料3種(豆板醤、甜麺醤、豆豉醬)を使いこなし、ワンランク上の回鍋肉に仕上げるためのポイントも解説します! また、余りがちなこれらの調味料の活用方法も記事の最後でご紹介しています。

家庭でも手に入りやすい食材を使った本格的な味わいの回鍋肉、さっそく作っていきましょう!

春キャベツと豚ひき肉の回鍋肉

材料(2人分)

  • 春キャベツ……2~3枚(150g)
  • 豚ひき肉……120g
  • 厚揚げ……1/2枚(100g)
  • ピーマン……1個(35g)
  • 油……大さじ1(ごま油、オリーブオイル以外の植物油)
  • 水……大さじ1~2
  • 豆板醤……大さじ1と1/2
  • 甜麺醤……小さじ2
  • 豆豉醤……小さじ2
  • 醤油……小さじ1/2

※豆豉醤は、豆豉(トウチ)をペースト状にして使いやすくしたもの。市販品には食塩のみが添加されたものと、にんにくや砂糖、醤油などを加えたものがあります。本レシピでは、うま味と香りをしっかりと引き立たせるために、にんにく入りのものを使用します。食塩のみのものを使う場合には、別途「おろしにんにく……小さじ1程度」をご用意ください(加えるタイミングは豆板醤と同じです。詳しくは後述)。

左から順に、豆板醤(トウバンジャン)、甜麺醤(テンメンジャン)、豆豉醤(トウチジャン)

さて今回、本格的な味わいの回鍋肉を作っていく上で欠かせないのが、中国を代表するこちらの3つの調味料です。

しっかりした辛みとうま味、塩気を感じられる「豆板醤(トウバンジャン)」

甘みとまろやかさ、奥深いコクがある「甜麺醤(テンメンジャン)」

豆の風味がきわ立ち、塩気とうま味、食欲をそそる独特の風味がある「豆豉醤(トウチジャン)」

この3つは、いずれも豆類や小麦粉に麹を加えて作られた発酵調味料。少量でも味が決まりやすく、奥深さやコク、うま味を手軽にプラスすることができ、四川風の本格的な味わいを再現するためには欠かせない調味料です。

豆豉(トウチ)をペースト状にしてにんにくなどを混ぜ入れた豆豉醤。
手軽に使えて手に入りやすいのでおすすめ

これらの調味料は、初めてだと「使い方が難しいのでは?」と少々ハードル高めに感じがちですが、実は意外と使いやすいものばかり。最近はスーパーなどでも手軽に買えるようになってきたので、簡単に手に入りやすいのも嬉しいポイントです。

また、「買ってみたものの調味料が余りそう……」という方に向けて、気軽にトライできるおすすめの使い方なども記事の最後でご紹介していきます。ぜひこの機会に使い方をマスターして、いろいろな料理を楽しんでみてくださいね!

作り方① 具材を切る

それでは、まずは具材を準備していきましょう。

今回、回鍋肉のメインとなる春キャベツの葉は、あらかじめたっぷりの水(分量外)に浸けておき、シャキッとさせておきます。もともと水分が多い春キャベツですが、こうして一度水に浸けておくことでみずみずしさが戻り、炒めた時にも食感や甘みがより引き出されます。

葉を手で大きめにちぎります。

ここでは、あえて包丁を使わないのがポイント。手でちぎった方が断面が多くなるため、調味料がよく絡むようになります。また、硬い芯(太い葉脈)の部分は包丁の腹などを使って押しつぶし、割れ目を入れておくと火の通りが良くなります。

続いて、厚揚げとピーマン。

厚揚げはキッチンペーパーで包んで余分な油を取り除き、1cmの厚さのひと口大に切ります。ピーマンは縦半分に切ってへたと種とワタを取り、さらにひと口大に切っておきましょう。

作り方② 厚揚げとピーマンを焼く

具材の準備ができたら、いよいよ炒めていきます。

まずは先に小さじ1/2程度の油(分量外)をフライパンに引き、厚揚げとピーマンを並べ入れて炒めます。炒めるといっても、ここでは強めの中火であまり動かさずに両面を1分程度ずつ焼き、軽く焼き色がつけばOKです。

一度焼いておくことで炒めた時の身崩れが防げるほか、食感や味なじみも良くなります

焼けたら、厚揚げとピーマンは一度取り出しておきます。

作り方③ 豚ひき肉と春キャベツを炒める

火にかけて、豚ひき肉の脂が出てきたらさっと拭います

続いて、同じフライパンで豚ひき肉を炒めます。

ここで、今回の回鍋肉を美味しく作るためのワンポイント!

豚ひき肉を入れて中火で焼き始めたら、最初に出てきた脂をキッチンペーパーなどで軽く拭っておきましょう。こうすることで、豚ひき肉の臭みが抑えられ、調味料を入れて炒めた時もすっきりと雑味のない、メリハリのある味に仕上げることができます。

豚ひき肉の色が8割程度変わってきたら、フライパンの中で場所を空けて、油と豆板醤を入れて炒めます(※食塩のみが添加された豆豉醤を使う場合は、おろしにんにくもここで一緒に加えましょう)。

豆板醤を豚ひき肉になじませるようにしながら、辛みや香りをじっくりと引き出すように炒めていきます。炒めものの場合、豆板醤は仕上げの段階で加えるのではなく、このように最初に油と一緒にしっかり炒めてから全体になじませるように使うと、豆板醤の辛みやうま味が引き出され、料理が格段に美味しくなります。

豆板醤が全体になじんできたら、いよいよ春キャベツを投入。

そして、今回のもうひとつのポイントがこちら!

春キャベツを加えたら、水を大さじ1程度(※硬めのキャベツの場合は大さじ2程度でもOK)振り入れましょう。そして上がってきた水蒸気を全体にしっかりと絡ませながら、強めの中火で具材を炒め合わせていきます。

この水を振り入れる工程によって、キャベツが炒め蒸しされたような状態になり、うま味が凝縮されたジューシーかつ甘みのある美味しい春キャベツの回鍋肉に仕上がります。

春キャベツに油と豆板醤と水蒸気が絡み、なんとも美味しそうなツヤが出てきましたね!

作り方④ 調味料を加えて炒め合わせる

ここまでできたら、あとは残りの調味料(甜麺醤、豆豉醤、醤油)を加えていきます。この3つは焦げつきやすく、比較的風味が飛びやすいので最後に入れるようにします。

これらの調味料を春キャベツと豚ひき肉に軽くなじませてから、厚揚げとピーマンをフライパンに戻し、全体を炒め合わせていきましょう。

この時、春キャベツの葉を広げながら、時折炒りつけるように炒めると、重なり合った葉の部分にもしっかりと味が入っていきますよ。

そして、調味料が全体にしっかり絡んだあとも、すぐには火を止めず、こころもち長めに炒めることで、調味料の味わいをしっかりと引き出していきます。このひと手間によって、これまでに加えたすべての調味料が油となじんで混ざり合い、深いコクとうま味のある味わいに変わっていきます。

さあ、できました! 猛烈に食欲をそそるいい香りがたまりません。

白いご飯(分量外)も用意して、さっそく出来立てをいただいてみます。

見るからにツヤツヤの春キャベツはシャキッとした食感もしっかり残っていますね。やわらかくみずみずしい葉をコクのある調味料が包み込み、噛み締めるほどにその甘さとジューシーさが口いっぱいに広がります。

豚ひき肉は雑味のないすっきりした味わいなのに、うま味が凝縮されていて香ばしい……! 春キャベツの甘みをさらに引き立ててくれる存在となっています。

今回は本格四川風ということで、通常の日本風回鍋肉よりもかなり辛めの味付けですが、豆板醤の辛みや塩気だけが飛び抜けることもなく、甜麺醤や豆豉醤のコクとうま味がやみつきになる深い味わいを引き出してくれていますね。

辛みの強い刺激的な味わいだからこそ、ふんわりした厚揚げがところどころ良いアクセントに!

白いご飯にのせて食べると、まさに至福……!

白いご飯に旨辛でジューシーな回鍋肉をたっぷりのせて食べると、ご飯があっという間になくなること間違いなしです。

豆板醤、甜麺醤、豆豉醤の手軽な使い方

今回のレシピでもお分かりいただけるように、豆板醤、甜麺醤、豆豉醬の3つの調味料は、合わせて使うことで料理の風味が格段にアップし、なんとも食欲をそそる味わいに仕上がります。

回鍋肉に加えて、定番の麻婆豆腐に使うのももちろんおすすめ。しかし、実はもっと手軽に使うこともできるので、調味料が余った場合の手軽なおすすめレシピをいくつかご紹介します。

中華ダレ豆腐

シンプルなのに奥深い味わいの一品に
材料(1人分)
  • 木綿豆腐……120g
  • 豆板醤……小さじ1
  • 甜麺醤……小さじ2
  • 豆豉醤......小さじ1
  • ごま油……適量(なめらかさ調節のため。お好み量で)
  • 小ねぎ…適量

こちらは、食べやすい大きさに切って皿に盛りつけた木綿豆腐に、豆板醤、甜麺醤、豆豉醤を1:2:1で混ぜたタレをかけただけの簡単お豆腐レシピ。

3つの調味料が互いに美味しさを引き立て合い、シンプルな豆腐が最高のおつまみに生まれ変わります! 調味料を混ぜる時にごま油を加えて、お好みのとろみ加減にしてかけるのも◎。さらに蒸し鶏や茹で野菜などを添えて、このタレで食べるのもおすすめです。

豚肉の豆豉醤蒸し

ごま油と豆豉醬の組み合わせがおつまみにもぴったり
材料(1人分)
  • 豚肉(切り落としまたは薄切り)……100g
  • 長ねぎ……1/3本
  • 豆豉醤……小さじ1
  • 酒……小さじ1/2 
  • ごま油......小さじ1/2

そしてこちらも、豆豉醬を活用した簡単レシピ。豚肉に豆豉醤と酒、ごま油をもみ込み、斜め切りにした長ねぎと共に600Wの電子レンジで2分30秒チンすれば出来上がり。少量の豆豉醤で豚肉の臭みも抑えられ、味も簡単に決まります。

しんなりと味のしみた長ねぎも相まってとても美味。手軽にできるのに、これひとつで立派なメインのおかずになりますね!

もちろん、お好みで豆板醤や甜麺醤を入れて作ってもいいですよ。豚肉だけでなく、さまざまな肉や魚にも合う味付けなので、いろいろなアレンジができそうですね。

奥深い味わいで、そのままでも加熱しても使えるのが便利

そのほか、豆板醤、甜麺醤、豆豉醤は、今回の回鍋肉のような炒めものはもちろん、スープに入れたり、あえものに使ったり、漬けダレにしたりと実に幅広い使い方ができます。ぜひ皆さんも、「春キャベツと豚ひき肉の回鍋肉」と共に、いろいろな料理でこれらの調味料を活用してみてくださいね!

書いた人:庭乃桃

niwanomomo

料理・食文化研究家、女子栄養大学 食生活指導士。「おいしい」を取り巻くさまざまな食卓の風景に目を向けながら、企業向けレシピの開発や、執筆、講演など多方面で活動中。著書『おいしく世界史』(柏書房、2017年)。

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