こんにちは、料理・食文化研究家の庭乃桃です。皆さん、鶏レバーや砂肝はお好きですか? 好きな人にはたまらない、レバーと砂肝。いつもは焼き鳥でいただくことが多いかもしれませんが、値段が安くてとてもおいしいので、上手に料理すれば毎日のおかずやおつまみにも重宝します。
とはいえ、こうしたモツ系は、下処理が面倒だったり、臭みが気になったりと、意外と作るのに気を使うもの。
そこで、この鶏レバーと砂肝を簡単に、しかもひとつの調味料だけで味付けするお手軽なレシピをご紹介します!
今回使うのは、市販のしょうゆ麹。あまりなじみがない方もいらっしゃるかもしれませんが、ひと昔前に話題となったあの「塩麹」と同じ調味料で、スーパーなどで手軽に買うことができます。
特徴は、しょうゆベースの食欲そそる味わいの中に、米麹の自然な甘みとまろやかさ、深みやコクがしっかりと感じられること。うま味が強く、うま味成分のグルタミン酸は塩麹よりも多いといわれています。
今回は、しょうゆ麹に刻みニンニクを加えて、さらにガツンとパンチのある味に! ついでに半熟卵も添えて、おかずだけでなくおつまみにも最高な一品に仕上げます。
定番の甘辛味かと思いきや、ニンニクの香りとしょうゆ麹が味に奥行きを与え、しかも鶏レバーと砂肝を同時にいただけるという、「お店にありそうでない味」がおうちで楽しめますよ。それでは、作り置きもできる「鶏レバーと砂肝のニンニクしょうゆ麹煮」、早速一緒に作ってみましょう。
鶏レバーと砂肝のニンニクしょうゆ麹煮
材料(作りやすい分量:2~3人分)
- 鶏レバー……1パック(180g)
- 砂肝……1パック(150g)
- しょうゆ麹……66g(レバーと砂肝の合計グラム数の20%が目安)※
- ニンニク……2かけ
【半熟卵用】(お好みで)
- 卵……2個
- しょうゆ麹……小さじ2(約10g)※
※ しょうゆ麹:大さじ1杯=約15g、小さじ1杯=約5g
① ニンニクしょうゆ麹を作る
まずは、味の決め手となる「ニンニクしょうゆ麹」を作ります。刻んだニンニクを混ぜ込むだけなので簡単です。
ここでポイントとなるのは、使うしょうゆ麹の量。
スーパーで売られている鶏レバーや砂肝はパックによって量がまちまちなので、使うしょうゆ麹の量も、パックに記載されているグラム数の合計から決めることをおすすめします。
例えば、上の写真の鶏レバーと砂肝の場合、合計で重さが330gありました。そこでしょうゆ麹の量は、その20%の重さとなる66gとなります。
半熟卵を作る場合は、卵1個あたり小さじ1杯のしょうゆ麹も用意しておきます。
ニンニクは、みじん切りにしてからしょうゆ麹に混ぜ入れましょう。
鶏レバー&砂肝用は、大きめの粗みじん切りに。半熟卵用は細かめのみじん切りにしておくと、加熱と生、2種類のニンニクの味わいや食感が楽しめますよ。
なお、半熟卵はあくまでもオプションなので、使うニンニクも、鶏レバー&砂肝用からあらかじめ少量(1/3かけ程度)取り分けておくくらいでOKです!
②鶏レバーと砂肝を準備する
次は鶏レバーと砂肝を下処理していきます。包丁を使ってもできますが、どちらもキッチンバサミを使うと簡単です。
まずは、簡単な砂肝から。
砂肝は盛り上がった山が2つにつながった形をしているので、最初に山がつながっている部分をハサミで半分に切ります。さらに、このままだと銀皮と呼ばれる青白い筋の部分が硬くて食べにくいため、そこもハサミで数カ所切り込みを入れておきましょう。
砂肝の下処理は、これでおしまいです。できたら鍋に入れておきます。
続いて、鶏レバーです。こちらには血の塊や臭みなどがあるので、まずはそれを取っていきます。鶏レバーはハツと呼ばれる心臓の部分がくっついた形で売られていることが多いですが、ハツもおいしく食べられるので併せて下処理していきましょう!
キッチンペーパーで鶏レバーの余分な水分を取り、ハツの部分を切り離します。ハツに縦に切り込みを入れて開き、中にたまった血の塊をキッチンペーパーなどでつまんで拭い取りましょう。
次は、レバーの部分です。こちらはそのままだと少し大きいので、分けやすそうな所で2〜3等分に切ります。
レバーも、所々に血がたまっていることがあるので、黒ずんでいる部分を少し切り開き、取り除いておくと臭みが残りにくいです。余分な脂肪が気になる場合は、それも取り除いておきます。
ひと通りできたら、全部ボウルに入れて、流水で洗って血や臭みをさらに落とします。
4〜5回水をかえながら指先でやさしく洗い、赤く濁っていた水がすっきり透明になってきたら、キッチンペーパーにあげて水気を取ります。
こちらも、できたものから砂肝と同じ鍋に入れましょう。
なお、鶏レバーの臭みの取り方については、さっと熱湯にくぐらせる、牛乳にしばらく浸けておくなど、いろいろな方法がありますが、あまりやりすぎるとレバーそのもののうま味まで流れ出てしまいますので、おおまかに血や汚れを洗い流す程度で大丈夫です。
③ ニンニクしょうゆ麹で煮る
1. 鶏レバーと砂肝の下処理が済んだら、先ほどのニンニクしょうゆ麹をからめます。鍋の中で直接なじませ、密着させるようにラップをしたら、このまま室温で10分ほど置いておきましょう。
このひと手間でわずかな漬け込み時間でも味のしみ込みがよくなるだけでなく、冷たかったレバーと砂肝が室温に戻るため、後で煮た時にも比較的硬くなりにくくなります。
2. 10分たったら、ラップをはずして水(分量外)をひたひたに注ぎます。
この時、水の量が多いと出来上がりの味が薄くなってしまうので、あくまで“ひたひた”(レバーと砂肝の頭が少しのぞく程度)を目安に。できるだけ鍋のサイズを合わせて煮込むようにしてください。
3. はじめは強火にかけ、煮立ったら弱火にして10~15分煮ましょう。
アクは取らなくてかまいませんが、臭みを逃がすため、必ずふたはせずに煮るようにしてください。
時々スプーンなどで上下を入れ替えて、煮汁から頭を出した鶏レバーや砂肝に生の部分があれば、しっかり中まで火が通るようにします。
15分ほど煮て、完全に火を通したものがこちら。
煮ているそばから、徐々に食欲をかきたてる良い香りが立ち昇ってきていましたが、なんともふっくらおいしそうにできました。粗めに刻んだニンニクも食欲をそそります……!
ひとつ味見してみると、鶏レバーも砂肝も臭みは取れていました。それでいて、味わいはしっかり。できたてもおいしいですが、一度冷ますとさらに味がなじむので、常備菜にもおすすめです。
④番外編 半熟卵のニンニクしょうゆ麹あえ
さて、これだけでも十分ごちそうになる鶏レバーと砂肝ですが、先ほどのニンニクしょうゆ麹と相性ばっちりな半熟卵を添えてみたいと思います。
1. 卵を半熟にゆでます。
沸騰した湯に、冷蔵庫から出したばかりの卵をやさしく投入。中火で7分ほどゆでて、すぐに冷水に取れば半熟卵の完成です。流水でしっかり冷やしてから殻をむいてくださいね。
2. 半熟卵に、準備しておいた細かいニンニクのみじん切りを混ぜ込んだしょうゆ麹をあえて完成です。
それでは全部一緒に盛り付けて、合わせて食べてみましょう!
お好みで刻んだ小ねぎや七味唐辛子(ともに分量外)を振りかけてもOKです。
まずは、鶏レバーから。食べた瞬間、やわらかくねっとりした舌ざわりと一緒に、レバー特有の味わいが広がります。
臭みはまったくなく、むしろレバーとしょうゆ麹のうま味が重なり合って層になり、おいしさがひと切れひと切れに凝縮されている感じです。しっかり煮ているのに、パサつきを感じさせません。
続いて、砂肝。こちらはとにかく、プリッとした身とコリコリした歯ざわりがたまりません……。もともとうま味成分の多い砂肝ですが、しょうゆ麹と合わさることでよりクセになる味に仕上がっています。大きめに切ったのでかみ応えがあり、温かいうちは中の方も意外にやわらか。
いずれも冷めると徐々に硬くなってはきますが、かむたびに奥深い味わいを楽しめるので気になりません。そして、時々出合うニンニクのパンチが、絶妙に食欲をそそります!
一方、半熟に仕上げた卵は、割った瞬間のビジュアルがとにかく至福。
こちらはしょうゆ麹に生のニンニクを刻んで混ぜ入れてあるので、辛みとパンチがとても良いアクセントになります。
これだけでもお酒がぐいぐいと進みます。そして、レバーや砂肝を半熟卵にからめて食べると、黄身のコク、ニンニクが香るしょうゆ麹のタレが絶妙に合わさって、やみつきになる味わいを堪能できます。
まとめ
酒も生姜もいらず、シンプルな下処理だけで作れる「鶏レバーと砂肝のニンニクしょうゆ麹煮」。
しょうゆ麹の奥深いうま味やニンニクのホクホク感がアクセントになり、半熟卵も添えればそれだけで至福の晩酌タイムを楽しめます。日本酒をはじめ、ビール、焼酎、赤ワインなど、さまざまなお酒に合うのも魅力です。
もちろん、ごはんとの相性は間違いないですし、パンに挟んでも意外とおいしくいただけます。
ぜひ皆さんも、いろいろなシーンで楽しんでみてくださいね!
書いた人:庭乃桃
料理・食文化研究家、女子栄養大学 食生活指導士。「おいしい」を取り巻くさまざまな食卓の風景に目を向けながら、企業向けレシピの開発や、執筆、講演など多方面で活動中。著書『おいしく世界史』(柏書房、2017年)。