【閉店】ワイン通もうなるセレクト&お手頃感のバー「Drill」。ツマミのうまさに隠された秘密とは【渋谷】

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渋谷駅から徒歩数分、駅前の喧騒がうそのように静かな裏通りにお店を構える、隠れ家的なバー「Drill」
看板を見るとごく普通のワインバーのようですが、実はものすごい秘密があるんです。

特に『メシ通』読者の皆さんのような、おいしいもの好きの方は必見!
今回は、本当はあんまり人に教えたくないこのお店の魅力をじっくりとレポートしたいと思います。

 

地下の隠れ家的バー「Drill」

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夜道に浮かび上がるこちらの看板が目印

 

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地下へと続く階段を降りれば

 

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かわいらしい猫のオブジェがお出迎え

 

バーの扉を開けるのってちょっと緊張しますが、勇気をだして、

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おじゃましま〜す!

 

白と赤を基調としたスタイリッシュな内装。
地下でありながら明るい雰囲気で、カウンターと厨房の距離感もちょうどよく、ものすごく居心地の良いお店です。

 

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照明もかわいい〜

 

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うわ、あの小上がり、秘密基地っぽくて最高!

 

このお店を知っているというだけで、ほんの少しだけ、しかし確実に大人としての余裕をかもし出せそうな、そんな素敵さです。


プロの目が選んだ良質ワイン

こちら「Drill」はグラス飲みが基本のワインバーで、ワインは1杯 500円から。
他に、ビールや梅酒、ソフトドリンクのメニューもあります。

フードも充実していて、「生ハム」「オリーブ」「フライドチキン&ポテト」といった軽食系から、「ミートソース・スパゲティー」「マカロニグラタン」、そして、20年以上継ぎ足し続けているデミグラスソースがポイントの名物「オムライス」といった、食事メニューまで充実。

これだけでもう、じゅうぶんに良いお店だと思うんですが、「Drill」のすごいのは、実はここからなんです。

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時季ごとに変わるワインのメニューは壁の黒板に

 

オーナーの大塚三生(みつお)さん、長い料理人生で築いた、本当に良いワインをなるべくリーズナブルに提供できるルートをお持ちです。
ここに並んでいるワインも、他のお店だったらとてもこの値段では飲めないものばかり。

日本人には、ワインと聞くとハードルの高さを感じてしまう人も多く、また逆に「五大シャトー」や「ドン ペリニヨン」でなければ飲まない! というような、高級志向のこだわり派の人もいる。
だけど、もっと日常的に、手頃な値段でもおいしいワインがあるんだということを知ってもらい、1〜2杯飲んで帰っても大丈夫な、バーというより「ワインスタンド」という感覚のお店を作りたかったとは、みつおさんの談。

確かに、メニューに値段が記されていなかったりして、限られた人でないと楽しめないような高級店とは違い、ふらりと寄って本当においしいワインが気軽に飲める、こういうありがたいお店はそうないですよね。

 

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ワインに明るくなければ、スタッフさんに気軽におすすめを尋ねてみるべし

 

スタッフさんもとても気さくで、「私もまだまだ勉強中なんで!」と、決してお高くとまったりしてません。
ものすごく安心できる〜!


さて、今日はずいぶん蒸し暑かったので、一杯目は「泡」からスタートなんてどうでしょう?


夏季限定メニューだという、

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▲セリエ ド ボール シードル ブリュット(620円)

 

フランスの、リンゴが原料の発砲アルコール飲料、シードル。
ノルマンディー地方で、地元で取れたリンゴだけを使って作られたものだそうです。
日本で市販されているシードルって、少し甘ったるいイメージがあるかもしれませんが、こちらはそんなことはなく、すっきりとしていて、だけど深みも感じる。
ビールよりちょっと高いアルコール度数で、飲み応えも十分です。

体から一気に熱がスーッと引いていくような心地良さ!

 

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お隣の常連さんは「今日の赤見せて」とボトルを吟味しています

 

この何気ない仕草がかっこいい!
いつかは自分も、こういうことがさらっとできる大人になりたいもんですな〜。

 

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ちなみにこちらが本日の赤3種

勉強不足の僕にはわかりませんが、いずれも名品に違いありません。

 

本格料理の秘密は小料理屋さん

さてさて、さっきから名前だけは出ている「みつお」さんをご紹介しなければいけませんよね。


奥の赤い扉から登場したみつおさん、一体今までどこにいたんでしょうか?

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▲大塚三生さん

 

はい、ここで種明かしをしましょう!

実はこちらのお店、隣にある某和食小料理屋さんと、裏口でつながっています。
何を隠そう、そちらのオーナーもみつおさん。

つまり「Drill」の料理は、注文が入るたびにみつおさんが小料理屋さんの厨房に移動し、そこで作って持ってきてくれるというシステム。
だから、驚くべき素材と料理技術、その2つを兼ね備えた、かつ、バーという枠を飛び越えた料理の数々がいただけるというわけなんです!

小料理屋さんの方は基本予約制の営業なので、もしも気になる方は、まず「Drill」でみつおさんにいろいろと話を聞いてみてください。
最大の強みは仕入れにあり、お酒と同じく、長い料理人生で築き上げた、幅広い業者さんとのつながり、そして、ご自身が築地で働かれていた時のルートも駆使し、季節ごとに最上の素材を厳選。
それらを使って自由な発想で作られる料理は本当に絶品で、この地で13年間、ファンの胃袋をつかみ続けている名店なんです。

もちろん、そんなみつおさんが作る料理がここ、「Drill」でもいただけるわけで、それが普通なはずはない!

というわけで、ワインとともに、お料理もをいただいていきましょう。

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▲ソアーヴェ コルテ・デル・ソーレ(670円)、ハムサンド(600円)

 

蒸し暑い時期にぴったりだという白ワインと、おつまみにハムサンドを。

ワインは、僕が専門でなく、正確に味をお伝えすることができなくて大変面目ないんですが、普段何気なく飲んでいるものとは情報量が違うというか、あきらかに複雑で深い味わいに驚かされます。
とはいえ、しつこいとかそういうことじゃなくて、すっきりとしてスイスイ飲めてしまうんですが!

 

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そしてこれですよ!

 

ワインと同じく、料理のメニューも季節ごと、いや、みつおさんの気分で日々変わってゆくので、足を運ぶたびに新鮮な驚きと出会えるお店です。
この日は、「とびきり良いキュウリが手に入ったから」という斬新な理由で、メニューに加わっていたハムサンド。

もちろんキュウリはシャキシャキとしておいしいんですが、見ての通りハムもたっぷり!
さらに、特製であろうドレッシングが濃厚かつ爽やかな風味で、そもそもこんなにおいしいハムサンドは初めて食べた! っていう逸品です。

今までの人生でほとんど意識したことのなかったハムサンドが、急に大好物になってしまいましたよ。

 

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▲ブルゴーニュ アリゴデ13(1,000円)

 

グラス1杯 1,000円もするワインというと、人生でも数えるほどしか頼んだことのない飲み物ではありますが、それでもワイン通の方が驚くお手頃さとのこと。

クロード・マレシャルさんという作り手による、爽やかな酸味が特徴のブルゴーニュワイン。
どうしても味わってみたく、勇気を出してお願いしました。


なにせ、合わせる料理が、

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▲鮎(アユ)の塩焼き(630円)

 

ですからね!
「白ワインにも合うよ」とのことで、奮発したというわけです。

それにしてもワインバーで鮎の塩焼き、これぞみつおさんの真骨頂というやつです。
栃木県「明星漁業生産組合」に、わざわざ出向いて仕入れたという鮎。
スダチをキュッと絞って、頭からがぶりといくと、小苦い風味とふくよかなうま味、そしてキリッとした塩気がたまりません!

ここに人生初の「鮎に白ワイン」を合わせてみると……うん、天国……。

 

スパイシーで柔らかい絶品鶏

さて、「Drill」では、個人的にもうひとつ、ぜひとも頼んで欲しいメニューがあります。

それが、鶏の「かぶと揚げ」!

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▲かぶと揚げ スパイシー(800円)

これ!

「かぶと揚げ」とはそもそも、栃木県は宇都宮発祥のご当地料理で、いわゆる鶏の丸揚げ。
これを食べて感激し、ご自身でも作ってみようと考えたわけですが、そこはみつおさん、普通に作るわけがありません!

まずは鶏問屋に相談し、宮城の契約農家で育てられた、生後40日ほどの若鶏を仕入れるルートを確保した。
この肉がフワフワと柔らかい極上品。
ただ、うま味の濃い親鳥と違って、若鶏というのは味自体はあっさりしています。
そこで、本家宇都宮では塩コショウのみで揚げるところ、独自の調合によるスパイスをまとわせ、若鶏の優しさはいかしつつ、刺激的な味わいに仕上げました。

これがもうね、たまんない!

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半身分で一人前

 

じっくり15分以上かけて油で揚げることにより、軟骨までホロホロ。
スパイシーな皮目、究極にふわっと柔らかい身、そのハーモニーが、「あれ? さっきまで自分、ワインバーにいなかったっけ?」と混乱してしまうほどに絶品です。

「かぶと揚げ」は持ち帰りにも対応していて、冷めてもまったく柔らかさは変わらないというのがまたすごい。


しかもですよ! こちらは店舗で食べる方限定になりますが、

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鶏団子のスープ付き

 

これがまた、何気ないようですごい!

野菜を一切使わず、鶏だけを科学の力、温度のマジックを駆使して煮込むことで、見事な白湯スープに仕上げてしまう、この手腕!
このスープには、「かぶと揚げ」に使用しなかった、ネックからぼんじりから、もう全てをぜいたくに使ってしまっているそうで、知り合いの焼鳥屋さんいわく「超〜もったいない!」とのことです。

実際にいただいてみると、その濃厚さ、滋味深い味わいには、黙るしかありませんでした。

 

自己満足ゆえのクオリティ

我慢できずに赤ワインを。

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▲トゥレーヌ・トゥシェロンド(750円)

 

ギィ・アリオンさんというブレンデッドの名手がブレンドしたワイン。
ワイン好きには「ブレンドこそ究極」という方も少なくないそうで、確かに、大変バランス良く、かつ驚くほど深みのある一杯。

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「結局ここは、僕の自己満足のお店なんですよ」

 

失礼ながら、敬意を込めて「変態料理人」とお呼びしたいほど、料理やお酒に対して深すぎるこだわりを持ったみつおさん。
お仕事を心から楽しんでいることが伝わってくるからこそ、みつおさんの作る料理はどれもおいしく、そしてまた楽しい。

「自己満足のお店」、全くその通りだと思います。
だって、そうじゃないと、儲け優先でやっていたら、こんな値段でこんなおいしいものを出せるわけないっすもん!

ファンとしてはぜひぜひ、今後も自己満足のお店を続けていってもらいたいと願うばかりです。

メニューにはなんと、玉子かけごはんも!

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一羽の鶏が一生にひとつだけ生む、初めての卵「初卵」の玉子かけごはんを食べれられることもあるとか。これぞ自己満足の極み!

 

お店情報

Drill

住所:東京渋谷区桜丘町30-9 桜丘芳和ビルB1
電話番号:03-3496-5399
営業時間:月曜日~土曜日・祝前日 19:00~翌2:00 (料理LO 翌1:00、ドリンクLO 翌1:30)
定休日:日曜日、祝日

※この記事は2017年6月の情報です。
※金額はすべて税込みです。 

※このお店は現在閉店しています。
飲食店の掲載情報について。

 

書いた人:パリッコ

パリッコ

DJ/トラックメイカー/漫画家/居酒屋ライター/他。FUNKY DANCE MUSIC LABEL「LBT」代表。酒好きが高じ、雑誌、Webなどの媒体で居酒屋に関する記事を多数執筆中。

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