【酒のつまみ】たまごかけご飯に絶品すぎる「冷凍たまご」を科学する【理系メシ】

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「冷凍たまご」との出会い

私がよく行く飯田橋の「粋々(すいすい)」という日本酒バーがある。

そこで出しているたまごの黄身の味噌漬けが滅法うまい。

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黄身の味噌漬けは簡単なので、私も良く作るが、ここまでねっとりと奥まで味が入らない。ちびちびと箸の先でねぶっていると、ウニの瓶詰から磯の匂いを抜いたような不思議な味で、日本酒が進む。たまらない。

 

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やたらうまいけどさ、どうやって作ってるの、これ?

 

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冷凍たまごだよ
と調理担当の井出くん。
井出くんは料理の変態で、まったくの未経験ながら、料理好きが高じてお店を出してしまった。だから料理の基本を無視した、変な料理をよく作る。鯛だけでスープをとった鯛ラーメンとか、牡蠣を分解して作った牡蠣味噌とか魯山人風すき焼きとか。

それが滅法おいしいから困る。

 

冷凍たまご?

 

冷凍たまごというのが流行っているらしいことは、ネットで読んだことはあるが、作ったことはなかった。

 

「見る?」

見る見る!

 

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割れてるじゃん。

「割れてていいんだよ。殻をむくとさ、ほら」

おお! ホントだ、冷凍たまごだ。

 

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これ、自然解凍させるの?

「待ってもいいし、流水で洗って白身だけとっちゃってもいいよ」

へえ。溶けてるのを待ってみるよ。

「何かお持ちしましょうか?」

 

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おっと、日本酒ソムリエ。じゃあすっきりした辛口で、何かお願いします。

……おお、溶けてきたね。

 

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「黄身だけがぎゅっと固まるんだよね」

そうか、冷凍の際に水の分子が凍って膨張して、黄身のタンパク質を押し付けてまとめてしまうんだな。面白いね。

「これを味噌にみりんを少し入れたものに漬けて、だいたいひと晩でできあがり」

 

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冷凍たまごだと黄身が固まっているから、味噌漬けや醤油漬けが簡単にできるね。

「すごく簡単。黄身が崩れないし、凍る時に水分が抜けているから、そこに味が染み込んで、普通の味噌漬けよりおいしいんだよ」

 

あの「絶品冷凍たまご」の味を研究してみる

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家に帰ってさっそく作ってみた。まずたまごを冷凍室へ。

ひと晩で完全に凍る。

殻が割れたら、凍っている証拠だ。

 

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急いでいないので、そのまま室温で放置。急ぐ時は水洗いして白身を流してしまおう。ガチガチに凍っていても、2時間あればキレイに溶ける。

 

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つまめる黄身。

 

不思議な感じだ。このままたまごかけ(?)ごはんにしてもいいが、雑菌がやや怖い。黄身をしょうゆ漬けにすれば、塩分で殺菌されるので、そちらの方がおすすめ。

 

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2パック分の冷凍の黄身。コロコロで面白い。さてこれから漬け込むのだが、味噌漬けもしょう油漬けもおいしいのはわかっている。ここはちょっと違う趣向でやってみたい。

 

用意したのは乳酸飲料、はちみつ、トマトジュース、キムチの素、とんかつソース、ドレッシング。何が合うのかわからないので、実験だ。

 

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ドレッシングに漬けてみる。牛丼にドレッシングをかけたらうまいという話を思い出したのだ。案外いけるんじゃないか?

 

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とんかつソースにも漬け込む。ゆでたまごはよくあるが、生たまごとソースの組み合わせはあまり聞かない。おいしいのか?

 

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ハチミツにも漬けてみる。ご飯のおかずにはならないだろうが、たまご焼きだってハチミツとたまごだし、カステラもそうだ。ゆでたまごの黄身にハチミツをかけると栗の味になるしな(本当。味覚センサーで確認した話を読んだ)。

相性は悪くないと思うが、どうだろう。

 

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ひととおり漬け込んで、12時間放置した。

 

さて試食だ。

 

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まずはハチミツ(左)と乳酸飲料(右)から。つまみになるかどうかはともかく、それなりの味にはなると思うのだが……。

 

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……ダメだ、こりゃ!

 

生たまごと乳酸飲料の相性は最悪だな。ほめるところが1mgもないな。生たまごと乳酸飲料を混ぜるのはやめておけ。すごくおいしくない。ハチミツとの組み合わせはもっとひどい。舌がムチャクチャだ。牛乳とハチミツと卵を混ぜたらミルクシェーキになっておいしいのに、どういうことだよ。

 

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ドレッシング(左)とキムチの素(右)。口の中が乳酸飲料とハチミツでおかしな具合で、味がわからないぞ。そこの子ども、ちょっとこれ食べて。

 

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「うめえ!」

お? うまい? どっち? ドレッシングの方か。うまい?

「超うまいよ、マヨネーズみたい」

……! なるほど、そりゃそうだ。ドレッシングとたまごなら、そりゃマヨネーズだ。うまいはずだ。キムチの方は?

「俺、辛いのダメ」

いいよ、じゃあ食べるよ……うーむ。「キムチの素の味のたまご」以上でも以下でもないな。そうか、ドレッシングねえ。発見だな。

 

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じゃあトマトジュースに漬けたものを……おや、黄身の色が白いな。なんでだろう。

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とんかつソース(左)とトマトジュース(右)。ソースは、ただのソースがけたまごだな。生たまごって、意外と味が難しいんだな。しょうゆと味噌は偉大だよ。

 

トマトジュースは……あ、ダメだ。たまごの生臭さが際立つ。後味はさっぱりしているから、改良の余地はありそうだけど、味噌漬けのうまさに勝てる気はしない。

 

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ジャーン!

そういうわけで、第一回冷凍たまご選手権、

優勝はドレッシング漬けでした!

 

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ご飯に乗せて、おしょう油かけたらうまいんじゃないか、これ? たまごの黄身成分が異常に多いマヨネーズにしょう油だろ? では……うーん、うまいけど、そこまでじゃない。これは単体の方がいいな。

 

ならば、キムチの素に漬けたやつは?

 

……これだ! これはうまい!「冷凍卵のキムチ漬け」のたまごかけごはん! これはうまい! キムチの素のしょっぱさと辛さが、いい具合にご飯で中和されて、うまみがぐいぐい乗ってくる。

 

ドレッシングに漬けたのはおつまみに。焼酎には合った。ドレッシングの種類次第でワインもOK。気がきいた前菜になるぞ。キムチの素に漬けたのは、パンチの効いた、濃厚たまごかけごはんに。あと、くれぐれも乳酸飲料とハチミツはやめておけ!

 

※ 衛生管理には十分ご注意ください。新鮮なたまごを使い、解凍後はなるべく早く消費しましょう。

 

お店情報

日本酒スタンド 粋々

住所:東京新宿区揚場町1-12オーララビル地下1階
営業時間:17:00~23:00
定休日:日曜日、祝日

※本記事の情報は取材時点のものであり、情報の正確性を保証するものではございません。最新情報はお電話等で直接取材先へご確認ください。 

 

書いた人:川口友万

川口友万

サイエンスライター。科学情報サイト『サイエンスニュース』の編集統括。企業取材からコラム、科学解説まで、科学をテーマに幅広く扱う。東京・武蔵小山で、毎週日曜日のみ、肉に電気を流して食べたり、ワインを超音波で振動させて飲むイベントバー『科学実験酒場』を主宰。

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