明太子が好きすぎて東京から福岡へ移住!元OLの田口めんたいこさんが明太子に恩返ししたい理由

明太子が好きすぎて東京から福岡に移住した田口めんたいこさん。日々、明太子業界を盛り上げるために奔走する彼女に、なぜそこまで明太子に心酔するのか詳しく聞いてみました。

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こんにちは。福岡在住のライター、大塚たくまです。

 

Twitterでずっと気になっている方がいました。明太子活動のために東京から福岡に移住した、田口めんたいこさんです。

 

なんと彼女は明太子の仕事をするためではなく、明太子業界全体を盛り上げる「明太子活動」に本腰を入れるために、職も決めないまま福岡に移住してきたのだそう。

 

明太子が好きなら明太子メーカーに就職すればいいと思うのですが、「一社に肩入れしたくない」との理由で、明太子業界を勝手に背負って立っています。

 

単なる明太子ファンが、なんでそこまで心酔できるの?

 

福岡に住み、福岡の食を伝えるライターとして、彼女のことを知る必要があると思ったぼくは詳しく話を聞いてきました。

 

 

福岡の人は意外と明太子を食べない

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──田口めんたいこさん、ようこそ福岡へ。どうですか、福岡は。

 

田口めんたいこさん:いいですよ。東京から福岡にくると「東京もんが」みたいに言われることもあるかな、と思ったけど、そんなことはないですね。移住してきたと話をするとみんな喜んでくれます。

 

──地元に対してポジティブな、福岡っぽいお話ですね。生まれも育ちも東京だったんですよね。

 

田口めんたいこさん:そうです。明太子が好きすぎて、福岡に来ちゃいました。

 

──でも、もうお気づきかと思いますが、福岡県民って日常的に明太子を食べない人が多いんですよ……。

 

田口めんたいこさん:そうなんですよね。福岡に行けば、私みたいな明太子マニアがいると思ったんですけど、全然いなくて。

 

──そうでしょうね。「贈答品」「高級品」のイメージが強くて、普段の食卓に並ぶことは意外と少ないんですよ。

 

田口めんたいこさん:すごくもったいないと思います。こんなに個性豊かで、おいしい明太子屋さんがたくさんあるのに。

 

──福岡で「うどん屋さんの味の違い」とか「ラーメン屋さんの味の違い」の話で盛り上がったことはありますけど、「明太子屋さんの味の違い」で盛り上がったことはないですからね。

 

田口めんたいこさん:明太子メーカー各社で、味に大きな違いがあり、それぞれに魅力があります。まずはそこを知ってほしいです。

 

田口めんたいこさんが選ぶ明太子の世界を広げる3選

──田口めんたいこさんが見ている明太子の景色と、僕が見ている明太子の景色が違う気がするんですよね。ぼくはまだ明太子の世界を知らない。

 

田口めんたいこさん:ですよね。そこで、今日は明太子初心者の方が「明太子って面白い」と思ってもらえるような明太子を3種類準備しました。実際に食べてもらおうと思います。

 

──楽しそう! めちゃめちゃ興味あります。

 

あき乃家「ワイン仕込からし明太子」

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▲ワイン仕込からし明太子(100g)1,080円

 

──ワイン仕込の明太子。味は想像つかないけど、たしかに美味しそう。

 

田口めんたいこさん:ワインが含まれた調味液を使っているんですよ。

 

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──明太子の風味のあと、ワインの香りがフワッとしますね。お酒のおつまみはもちろん、ちゃんとご飯のおかずになる食卓の味でもあるのがすごい。美味しい!

 

田口めんたいこさん:しっかり、昆布やかつおのうま味も生きていますよね。「ワイン仕込からし明太子」はあき乃屋さんの看板商品であり、単なる「変わり種」では終わらない完成度があります。

 

www.akinoya.co.jp

 

楢﨑商店「青唐辛子明太子」

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▲青唐辛子明太子(100g)648円

 

──明太子に青唐辛子のイメージはないですね。これも面白い。

 

田口めんたいこさん:珍しいと思います。爽やかな辛味が特徴なんですよ。

 

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──食べてみると、意外とお出汁の香りが濃厚ですね。後から青唐辛子の香りが爽やかにやってくる。さっきの明太子と全然違う。

 

田口めんたいこさん:青唐辛子がいいアクセントになっています。だんだん明太子の奥深さがわかってきたんじゃないですか。

 

──いや、この世界は深いぞ……。

 

www.narazaki.jp

 

めんたいこのお店 三楽「きわめんたい」

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▲きわめんたい「中辛」200g(100g×2コ入り)1,512円

 

──この明太子、なんか色が黒くないですか?

 

田口めんたいこさん:調味液に黒糖を使っています。無添加の辛子明太子をウリにしていて、着色料を使っていないので、黒糖の黒味や素材の色がそのまま出ているんですよ。

 

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 ──おお、黒糖の甘みと明太子を漬けている調味液のお出汁の味がマッチングしている。かなりコクのある味わいですね。こんな明太子もあるのか。

 

田口めんたいこさん:そうなんです。明太子は卵そのものの品質はもちろんですが、調味液によっても味が変わるんですよ。各社で味づくりの研究を行っており、今もなお進化が続いています。

 

──なるほど。明太子って和洋問わず、様々な味とのマッチングが面白いですね。もっといろんな明太子を食べてみたくなってきました。

 

sanraku.site

 

【番外編】はかた寿賀や「明太子味くらべ」

田口めんたいこさん:各メーカーの明太子がそれぞれ違うことを楽しむのにおすすめのセットがあります。こちらです。

 

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▲明太子味くらべ18社セット 8,856円

 

──すごい。小さな箱がたくさん!

 

田口めんたいこさん:はかた寿賀やさんの「明太子味くらべ」というセットです。これ全部、別々のメーカーの明太子なんですよ。

 

──えっ、各社が協力してくれているんですか! すごい。明太子のオールスターゲームじゃないですか。夢がある。

 

田口めんたいこさん:食べて美味しかった明太子は、各店舗で買ってくださいというスタンスの商品です。

 

www.neo-9.com

 

なぜこんなにも明太子にハマッたのか

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──ぼくは田口めんたいこさんのことを知ったとき「どこかの明太子屋さんの娘さんなのかな」と勝手に思っていました。作り手側の方かと。

 

田口めんたいこさん:私は元々、事務員のOLでした。

 

──なんでここまで明太子にハマっちゃったんでしょうか。

 

田口めんたいこさん:明太子に感動したのは、社会人になって福岡旅行に行った時です。いろんなお店で明太子メニューを食べて美味しさに感動し、東京に帰ってからも明太子のお店を探して行くようになりました。

 

──美味しい明太子との出会いも福岡だったんですね。

 

田口めんたいこさん:その頃はまだ自分でも「明太子好き」という自覚はなくて、とくに発信もしていませんでした。状況が変わり始めたのは、インスタを始めてからですね。

 

──そのインスタは明太子の発信をしようと思って始めたんですか?

 

田口めんたいこさん:いや、友達に「楽しいよ」と言われて。でも、私にはおしゃれな写真なんて投稿できないし。「せっかくやるなら、面白いものがいいな」と思ったんです。

 

──自分の中の面白いものは「明太子」だったと。

 

田口めんたいこさん:そうです。「#1日1明太」とタグをつけて、明太子関連の投稿を続けました。すると、だんだん明太子屋さんや、明太子が好きな人にフォローしてもらえるようになったんです。

 

──そこから発信が楽しくなっていったんですね。

 

田口めんたいこさん:フォロワーさんから明太子商品のDMが届くようになったりして、楽しくなりました。みんなインスタで発信しようと思ってもすぐやめちゃうじゃないですか。やっぱり継続が大事ですね。

 

退職直後に2週間の「福岡明太旅」

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▲(写真提供/田口めんたいこさん)

 

──インスタの投稿を始めてからも、福岡には何度かいらっしゃってたんですか?

 

田口めんたいこさん:それからも何度か行っていました。その中でもっとも大きな転機になった「2週間の福岡明太旅」というのがあって。

 

──えっ。明太子のためだけに、福岡に2週間滞在したんですか。

 

田口めんたいこさん:そうです。長年続けていた事務職OLを退職した直後「せっかくなら、好きなことを極めたい」と思って、いろんな明太子屋さんを巡りました。それがもう感動の連続で。

 

──すでに明太子の世界に浸っていたわけですが、さらなる感動があったんですね。

 

田口めんたいこさん:「SUiTO FUKUOKA」というところで、食べ比べ体験をやっていたので、参加したんです。そのときにとても感動して。

 

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▲感動した「SUiTO FUKUOKA」の食べ比べ体験 (写真提供/田口めんたいこさん)

 

※SUiTO FUKUOKA/福岡の文化を体験できる観光旅行案内所。現在、明太子の食べ比べ体験は行われておらず、2021年4月からはオンラインのみでの運営となる予定。

suito.inboundhub.jp

 

──そこで初めて食べ比べを体験したんですね。

 

田口めんたいこさん:各社でこんなに違って、こんなにそれぞれ違う美味しさがあることを知りました。この食べ比べ体験での感動は今の活動にも大きな影響を与えています。

 

──2週間の間、明太子屋さんをたくさん回ったんですか。

 

田口めんたいこさん:いろんな明太子屋さんに行ったんですけど、どのお店でも本当によくしてもらって。インスタで活動してたこともあり、応接間に通され、工場長さんや社長さんが現れて。

 

──えっ。それはすごいですね。大歓迎されたのか。

 

田口めんたいこさん:明太子の話をたくさんしました。5時間くらいこだわりを話してくれる社長さんもいましたよ。

 

2週間の福岡滞在で「明太子人」に惚れ込んだ

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──どこか一社ではなく、各社手厚い待遇をしてくれたというのがすごい。業界全体で懐が深いというか、そういうムードがあるんですね。

 

田口めんたいこさん:私は事務職の仕事で精神を病んで、退職をした直後でした。「仕事って、辛いな」と思ってたんですが、明太子に携わる人たちはみんな誇りを持って働いていたんです。「仕事って、こんなに楽しくやれるんだな」と思いました。

 

──明太子だけに感動したわけではなく、明太子に携わる人たちにも感動していたんですね。

 

田口めんたいこさん:そうなんです。私は2週間の博多明太旅の間にたくさんの明太子業界の方々と話しました。毎日とても楽しいんですけど、もともと人と話すのが苦手だったから、体がびっくりしちゃって。

 

──そうなんですね。元々コミュニケーションが好きな方なのかと思っていました。

 

田口めんたいこさん:夜は栄養ドリンクを飲みながら、宿泊していたゲストハウスのオーナーさんに話を聞いてもらって、疲れを癒しつつ。起きたら、また明太子屋さんへ。

 

──充実の日々ですね。

 

田口めんたいこさん:私はそれまで「人生がうまくいっていない」と思っていました。2週間の福岡滞在で、明太子の美味しさに感動したのはもちろん、明太子に情熱を燃やす人たちの姿を見て「楽しく生きていこう」と思えたんです。

 

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──この2週間が田口めんたいこさんの人生を変えたわけですか。

 

田口めんたいこさん:そうですね。「私でも楽しく生きていける」という希望を与えてくれた明太子に恩返しがしたいと思うようになりました。この2週間の福岡滞在を境に「明太子に人生を捧げたい」と思うようになったんです。

 

──まさかそこまで深い理由があったとは。熱量にも納得です。

 

マニアが集うイベントの出店が第二の転機

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▲(写真提供/田口めんたいこさん)

 

──「明太子に人生を捧げたい」と思うようになって、発信内容に変化はありましたか。

 

田口めんたいこさん:発信内容として大きな転機になったのは「マニアフェスタ」への出展ですね。

 

※マニアフェスタ/何かにハマっている人(マニア)が活動成果を発表する展示即売会。東京で開催していたが、2021年3月に開催された「マニアフェスタ Vol.5」で関西初上陸。

maniafesta.jp

 

──出展ということは、インスタやネットを通じた発信ではなく、オフラインでの接点を持つ場になったということですね。

 

田口めんたいこさん:オフラインでの活動も行っていたんですが、ここまでたくさんの人が集まるのは初めてでした。出展のために衣装や名刺を作り、自分の発信スタイルが出来上がりました。

 

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▲マニアフェスタに参加したときの様子 (写真提供/田口めんたいこさん)

 

──ここで今のスタイルが確立したわけですね。

 

田口めんたいこさん:まず私のことを知って欲しかったので、「やるならやろう」とインパクト重視に振り切りました。

 

──ブースでいろんな人との会話をして、何か発見はありました?

 

田口めんたいこさん:ブースに立って対面で話していると、みなさん自分の話に興味を持って聞いてくれて、自己肯定感が上がりました。「意味のあることをやっているんだ」と思えたんです。明太子の話を聞いてもらえるのが、とにかく楽しかった。

 

──もともと人と話をするのが苦手な方だったのに、すごい成長ですよね。

 

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▲(写真提供/田口めんたいこさん)

 

田口めんたいこさん:マニアフェスタだけで名刺を400枚も交換しました。これまでじゃ考えられないことです。写真を撮ってもらって、記事にしてもらったものを後から見たら、自分がすごく楽しそうでびっくりしました。

 

──マニアフェスタ以降、反響はありました?

 

田口めんたいこさん:メディアから取材を受ける機会が増えました。「これからも明太子の発信活動を頑張っていいんだ」と自信を与えてくれるイベントでした。

 

メーカーを集めて「明太子フェス」を開きたい

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──田口めんたいこさんにとって、明太子は人生を楽しく生きるためのカギなんですね。

 

田口めんたいこさん:そうですね。明太子に関することだと、物事がスムーズに進むし、楽しいんです。人と喋ることが苦手な私でも、楽しくべらべら喋れます。

 

──今後も明太子一社に絞って肩入れはしないんですか?

 

田口めんたいこさん:もちろんです。どこか一社に就職しようとも思わないし、明太子屋さんの人とも結婚しないって決めています。

 

──そこまでこだわるのはどうしてですか?

 

田口めんたいこさん:私がもっとも伝えたいのは、「各メーカーにそれぞれいい明太子がある」ということ。メッセージの力が弱まるようなことはしたくないです。

 

──そこが田口めんたいこさんが、明太子活動で伝えたい、一番のメッセージなんですね。

 

田口めんたいこさん:そうです。アレンジレシピとかよく聞かれるんですけど……。まずは、そのままで各社の味の違いを楽しんでほしいと思います。そのままの魅力がちゃんとあるので。

 

──たしかに、ぼくも今回で明太子の世界の幅広さがよくわかりました。

 

田口めんたいこさん:将来的には明太子だけの物産展を開いてみたいんですよ。一日でたくさんの明太子を食べ比べできるような。

 

──おお、それはいいですね。それこそ、福岡の地元民にもたくさん来てほしい。

 

田口めんたいこさん:そうですね。福岡には200社程度の明太子の会社があると言われています。日常的に明太子の食べ比べを楽しめるのは、福岡県民の特権なんですよ。地元の方から、明太子の美味しさや楽しさが広がっていけばいいなと思います。

 

──ぜひ開催できる時は、ぼくにも協力させてください。本日はありがとうございました。

 

明太子の世界は思いのほか広大だった

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田口めんたいこさんは、福岡に移住してから、福岡県内の各メーカーに取材を行い、それぞれの味のこだわりやストーリーを記事化する活動に取り組んでいます。

 

ぼくも福岡に住んでいながら、明太子についてぜんぜん語れないなと反省。けっこうそういう福岡県民は多いのではないでしょうか。

 

この取材をきっかけにぼくは田口めんたいこさんと一緒に「福岡めんたいこ地位向上協会」というものをはじめました。

 

menchikyo.com

これからも田口めんたいこさんの発信内容に注目しながら、他県の方におすすめの明太子をいろいろと語れるようになりたいと思います。

あなたもぜひこの記事で紹介した明太子から、広くて深い明太子沼に飛び込んでみてください。

書いた人:大塚たくま

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福岡に住む九州を愛するライターで二児の父。グルメ、旅行、子育てに関する記事を多数執筆。便利で心を動かす記事を書きたい。取材が大好きで、情報量の多い記事を目指しています。

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