「うなぎコーラ」に震撼走る!カレーラムネに『清水ラムネ博物館』、ぶっ飛び炭酸飲料を世に送り出す木村飲料の社長にインタビュー

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「なぜ静岡にはこんなに炭酸飲料があるのか」

その疑問は、駅の売店の棚を見てふと湧いたもの。

今まで当たり前すぎて見逃していた光景でしたが、

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県内の駅や高速のサービスエリア、道の駅などの売店の棚に「しずおかコーラ」「富士山頂コーラ」「お茶らむね」「芋サイダー」「カレーラムネ」など珍炭酸がずらりと並ぶ様は、全国的には普通じゃないんだろうな、と。


かくいう筆者も物珍しさに勢いで買ったことがあるし、手土産として県外の人に渡したこともあります。でも真面目に味わった記憶はなかったので、改めてこれらのご当地サイダーを飲み比べてみることにしました。

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しずおかコーラ

静岡県産の緑茶を使用したというご当地コーラのヒット商品。

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確かにコーラ!緑茶のような濃い緑に穏やかな炭酸、香りはそうもでなかったのに、飲むとお茶よりコーラが強めに出ている感じ。後味にお茶の名残なのか、青っぽい風味も感じます。「怖々飲んでみたら意外とイケる!」という世間の噂に激しく同意。

 

富士山頂コーラ

富士山頂をイメージしたとか。

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カルピスのような乳白色にきめ細かい気泡。 コーラ感はしずおかコーラより弱めですが、かなり甘いです。あの懐かしいラムネ菓子を入れたような香りと甘さ。

 

f:id:uralatokyo:20150709102752j:plainなのにカロリーゼロ!?

この2つを飲んですっかりわからなくなりました。

「そもそもコーラってどんな味だっけ?」

 

そこで本家を。

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……コーラって、こんな控えめだったっけ? 
炭酸はガツンとくるのに、2つの地コーラを飲んだ後だと本家の風味の方が弱く感じるんです。しずおかコーラの方がコーラよりコーラっぽいだと…!?(混乱)

そこで、しずおかコーラと同じく静岡茶を使用したというこちら。

 

お茶らむね

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お茶だ! 明確にお茶だ! しずおかコーラと大差ないんじゃないかと思いきや、爽やかなお茶の風味に交じって渋みもあり、そもそもコーラのように甘くない!  完全に大人向けのさっぱり飲料です。

 

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▲この3つ、どれも見た目は完全にお茶(右は自宅の水出し緑茶のパック)

 

カレーラムネ

これも大ヒット商品だけど、罰ゲームのにおいを感じるので未経験でした。

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▲ベタすぎるインド人のセリフに不安を覚える

 

味は、カレー味のラムネ。
「カレー味のスナック菓子」を飲んでしまった、みたいな。うん。
ツーンと強烈なカレースパイスの香り、味は香りほどのインパクトはないものの確かにカレー。甘さは控えめどころか酸味を感じます。そして全然辛くない。
「不味くはないけど特別美味しいわけでもない」という絶妙なラインにいます。

そしてまたわからなくなりました。

「そもそもラムネってどんな味だっけ?」

 

 元祖ビー玉ラムネ

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これこれ! 涼しげなガラス瓶にカラカラと鳴るビー玉、パチパチ弾ける炭酸。
これぞ時代を超えて愛されてきた、ザ・ラムネ!

 

ここまでご紹介した炭酸飲料は、すべて静岡県島田市の飲料メーカー『木村飲料』のヒット商品。
今や全国区で有名なので聞いたことがある人もいるかもしれませんが、わさびやウコン、かつては焼き鳥味など、出すたびに世間を震撼させる個性的過ぎる炭酸飲料を出し続けている会社です。
調べてみると、他にも多くのユニーク炭酸が集結した日本初の「ラムネ博物館」が去年オープンしたとか。これは炭酸飲料マニア(一定数いると思う)垂涎の地に違いない!……というわけで現地へ。

 

清水ラムネ博物館

場所は静岡県清水区の清水港にある『エスパルスドリームプラザ』(通称ドリプラ)内。ドリプラは静岡の特産品や銘菓などを扱った専門店や、地元の寿司店が軒を連ねる『清水すし横丁』、清水が生んだ元祖二次元アイドルの『ちびまる子ちゃんランド』に映画館などが集まった複合商業施設です。

その一角に……

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あった!

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▲木村社長曰く「一番お金がかかった」という看板

 

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2014年10月にオープンした国内初のラムネ・サイダー専門施設です(入場無料)

 

サイダー・ラムネの歴史がわかる

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大正から昭和にかけて使われたラムネ瓶や、手動の製造機械、全国のご当地サイダーなど、炭酸飲料の歴史(と木村飲料の社史)が紹介されています。

 

ラムネの中のビー玉はビー玉じゃない

あのラムネの中のビー玉も販売中。

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正式にはエー玉(A玉)!

 

まさかの「地サイダーソング」も販売

そして館内でガンガン流れている聞き覚えのあるBGM……

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CDも出してた! 社長も歌ってた!
久保ひとみ(←静岡で知らない人はいないローカルタレント)とコラボしてた!

 

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当時、静岡のFM局で猛烈にヘビロテされていたので、静岡県民ならそのメロディに聞き覚えがあるはず(社長曰く「静岡の着うたランキング20位までいった」そうだけど、20位がすごいのかはちょっとわからなかったです)

 

社長の著書は炭酸飲料のデータベース

CDの横には社長の著書も。

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過去に作っていた幻のドリンクの紹介など、さながらオリジナルドリンクのデータベースのような本でした。

 

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▲聖飢魔Ⅱのコーラって、血のイメージって、だいぶエキセントリック

 

巨大ショーケースの中がほぼ炭酸飲料

そして圧倒的な存在感を放つのが、コンビニに置いてあるような巨冷蔵庫。

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ショーケース内がほぼサイダーという驚異の品揃え!
(しかもこれは全商品ではありません。繰り返しますが全部ではありません)
地サイダー飴などを含めて、木村飲料の主力商品55種類が揃っているとか。

 

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▲何かを学ぼうとしている(ように見えた)サラリーマン

 

こうして炭酸飲料の意外な発祥に驚き、偏ったラインナップに度肝を抜かれ、サイダーマンの脳内再生が止まらなくなり、お腹いっぱいになりながら、バナナラムネ(5月の新商品)を買って博物館を後にしました。

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「無果汁」って書いてあるけど何がバナナなんだろうな、と思いながら。


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▲バナナだ!

 

そして清水港を臨むベンチで一人、バナナラムネ(バナナは入っていない)を飲みながら思ったんです。

「これは是非ラスボスに話を聞いてみたい」

というわけで早速アポを取り、木村飲料さんの本拠地に行ってきました。

 

静岡県島田市の木村飲料株式会社

茶畑に囲まれた実に静岡っぽい地、静岡県島田市に本社があります。
勝手にビル的な建物を想像していたら住宅街で迷い、辿り着いた先には、

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昔ながらの酒屋さんという店構え。実際「木村酒店」の看板も。
店内にも昭和な空気が流れています。

 

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▲壁一面にズラリと並ぶ炭酸飲料。さすが本拠地!

 

一帯に漂うのんびりとした空気に危うく目的を忘れるところでしたが、しかしそこは全国区で脚光を浴びるカンパニー。さぞや鼻息荒いやり手社長が登場するんじゃないかと思いきや、呼び鈴を鳴らして登場したのは、とても穏やかで優しそうな普通のおじさんでした(この雰囲気にとてもマッチしている)
そして食器棚に囲まれた居間らしきスペースでお話を伺うことに。

 

――(完全に個人宅にお邪魔している感じなんですが)ここが「本社」ということで良いんでしょうか?

 

「そうですね。ここは創業当時からあるお店で、昔はこの隣の工場で製造していたんです。工場機能は吉田町に移したのでその場所は駐車場にしましたが、今でもここで販売してますよ」

 

午後2時、確かにお店の方からは、学校帰りの小学生が100円玉を握りしめてジュースを買いに来た音が聞こえます(見てないけど、たぶん音で)

 

そもそもコーラは敵

――ところで「しずおかコーラ」と「富士山頂コーラ」と「コカ・コーラ」を飲んで思ったんですが、そもそも「コーラ」の正体って何でしょう?

 

「コーラというのは一般名称で、もとになる“コーラの実”があるんですよ。それにバニラなどのスパイスや香料を混ぜるとあの味になるんです。レシピは今でもトップシークレットですが、『コカ・コーラ』の名前が示すように、昔はコカインが入っていて常習性があったんですよ」

 

――「コカ」の由来はコカインから! 物騒!(もちろん今は入っていません)

 

 「もとは薬剤師が風邪薬として作ったもので、コカインによる興奮作用があったんですね。『コカ・コーラ』のレシピは厳格ですが、うちにはそういう縛りがないのでお茶でコーラを作ったり、富士山頂をイメージしたコーラが作れるんです。富士山は登ったことないんですけどね

 

――イメージだけで!

 

「コーラを飲のむとスーッとするでしょ? 富士山頂もたぶんスーッとするでしょ?」

 

――しますね。私も登ったことないですけど。なぜ「しずおかコーラ」はサイダーじゃなくてコーラなんですか?

 

「うちの子がまだ小さかった頃、和食屋に行くといつも瓶のコーラを頼んでいたんですが、『コーラは商売敵だから飲むな』って言ってたんです。でも『だっておいしいんだもん』って言うもんだから、それなら和食に合うお茶でコーラを作れば子どもも飲んでくれるんじゃないかって閃いたんです」

 

――飲料屋の子どもはコーラ禁止!

 

 「『コカ・コーラ』が上陸してから大手飲料メーカーがどんどん自社コーラを作りましたが、やっぱり本家には全く適わなくてね。でもお茶のコーラなら全国的には売れなくても、静岡限定なら結構イケるんじゃないかと思いましてね。地元の素材を使って、静岡県民が大好きな緑を全面に使って出してみたんです」

 

――あえて狭いところを狙うと。最初の反応はどうでしたか?

 

 「『どうせカレーラムネみたいにまずいに決まってる』って一斉に言われましてねぇ。ははは」


そう、先行者に「まずい」で爆発的に売れたカレーラムネの存在があるんです。
2007年の発売当時はブログが流行りだした時期でもあり、「まずい」カレーラムネが議論を呼び、ネットで一気に広まって注文が殺到したとか。

 

思い出を社員に全否定される社長

――でも飲料屋さんとして「まずい」って言われるのは悲しくないですか?

 

 「そりゃショックでしたよ。あれはそんなにまずいのか~って」

 

――社長はまずいと思ってなかったんですね!

 

「思ってなかったですよ。これは私が通った小学校の給食で出たカレースープの味なんです。昔は釘が打てるぐらいかたいコッペパンと脱脂粉乳が定番でしたが、10日に1回だけカレースープが出たんです。カレー風味のお湯みたいなお粗末なものでしたが、当時はそれがご馳走でね。その日を指折り数えて楽しみにしてたんですよ。だからそれが再現できて喜んでたんです。これなら同級生も泣いて喜ぶに違いない、大ヒット間違いない!って」

 

――それだけの想いが込められていたのに「まずい」と。

 

「何回も会議にかけたんですが若い社員に『社長これはダメでしょ』って言われましてね。『こんなの出したら会社が潰れますよ』って社員全員が大反対で」

 

――社員が社長の思い出を全否定。

 

 「当時の営業部長は最後まで反対で『これが売れるようなことがあれば丸坊主にして逆立ちします』とまで言われちゃって、さすがに悩みましたけどねぇ」

 

――そこまで言われるってすごいですね。でも出したんですね?

 

「その前年に売上が落ちたこともあって、それなら今年は私のわがままを通させてもらおうと思って。『もういいじゃん』って出しちゃった

 

出しちゃった!結果「まずい」で大ヒット。

 

「まずい」は自分が経験したことのない味

「でもそこで学んだんですよ。“まずい”というのは自分が経験したことのない味であることが多いんです。だから反響を呼ぶ。“まずい”というのは失敗ではなく、その人が初めて遭遇した新しい味、という褒め言葉だと思うようにしたんです!」

 

――出会いに感謝! めちゃくちゃポジティブですね。

 

「そうしたらまた次の力が湧いてきて『もっと過激なやつやろうかなって』」

 

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▲そして発売された「もっと過激なやつ」。最初は5辛だったが飲むと声が出なくなったり、むせたりする人が続出したので3辛にマイナーチェンジしたそう。製造現場ではガスマスク着用とのこと

 

「でもカレーラムネやわさびラムネがお土産として売れることを知って、これは中小企業が生き残る道だと思いましてね。中小企業が大手さんの真似をして大勢が好む味を作ったって売れませんよ。だったら100人のうち2人だけでも、本気で飲みたいと思ってもらえるような商品を目指せばいいと」

 

――少数派に価値を見出したんですね。でも実行するのは難しそうですが。

 

「大手(世間)が右っていったら、うちは左を向けばいい」

 

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▲へそ曲がり! 

 

モンドセレクション金賞でも売り上げが落ちた

――ラムネ博物館にモンドセレクションの写真がありましたね。

 

「2006年に『元祖ビー玉ラムネ』が金賞受賞してから、10年連続で受賞しています。ところが、大手飲料メーカーは受賞をアピールした商品で売り上げが10倍になったと聞いたのに、うちは翌年の売り上げが落ちたんですよ」

 

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「そこで私の『いいものを作れば必ず売れる』という信念は挫折しましたね。世界に認められた商品でも、売る力がないと売れない。大手さんのような宣伝費はかけられないですから、オリジナルで話題性のある商品開発にシフトしなければと思ったんです」

 

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▲今や37か国に輸出するほどのグローバル企業。各国で使える香料や色素などのルールが異なるため、国ごとに中身やラベルをカスタマイズしている

 

世界初の「祈願済み商品」は木村飲料

――やはりターニングポイントは「カレーラムネ」ですか?

 

「その前に『だるまサイダー』があります。実際に神社で合格祈願してもらったサイダーを飲んで、体の中から清められた気持ちで受験に臨んだら1点でも上がるかもしれないと思って作ったんですが、いざ祈祷をお願いしようと思ったら36カ所の神社さんに断られてしまってねぇ」

 

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――36カ所断られて諦めなかったのもすごいです。

 

 「37社目でようやく『同じ静岡県民として可哀想だから』って引き受けてもらえたんです。こんなバカなこと本気でしたのは世界初だったので大当たりでしたね。これが話題になって、この後に大手さんから合格祈願をした飲料水やお菓子が続々と発売されたのを見て、中小企業でもアイディア次第で可能性があるんだと学びましたね」

 

こうして世の逆をいくという木村飲料(というか社長)のへそ曲がり戦略が生まれ、新商品を出すたびに世間を震撼させるという流れに。

 

――予想外のものが売れるケースもありそうですね。

 

「それは『伊三郎』ですねぇ。なぜか台湾で評判です」

 

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▲まるで焼酎のような芋サイダー『伊三郎』は創業者である社長のおじいちゃんの思い出。「手伝いをすると落ち葉で炊いた焼き芋をくれたんです。それをサイダーに」。なぜ台湾で評判なのかは謎

 

――アイディアの素は社長の思い出なんですね。

 

「小さい頃、弟と工場に忍び込んでイタズラ感覚で飲料水を作った経験を思い出してね。ワクワクしながら混ぜていたあの感覚。自分の経験を商品化すれば誰にも真似できないですよね。流行を追いかけて大手さんの二番煎じを私たち中小企業がやったって絶対に売れない。それに面白くないじゃないですか」

 

――面白そうなことをやることにしたんですね。

 

「最近この年になってやっと気づいたんですよ。『ヒントは自分の中にある』って。だから若い人には海外やいろんな場所で、いろんな経験をして来いと言っています。それが糧になる日が来るかもしれないから」

 

なんでも炭酸飲料化しちゃう社長

――もはや何でもサイダーにできるんですね。

 

「サイダーでもコーラでもジュースでも何でもできますよ。人や場所をイメージした飲み物だって作れるんです」

 

――聖飢魔Ⅱのコラボコーラ!

 

「あれはもともとドラキュラをイメージしたコーラを新商品として準備していたんですが、発売前に芸能プロダクションからお話をいただいて、とんとん拍子で話が進みましてね。聖飢魔Ⅱのミサ(ライブ)会場限定で販売したら、1日で完売でしたね。私も顔に悪魔のペイントして売り子になったんですよ~」

 

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▲ちなみに特に聖飢魔Ⅱのファンというわけではなかったそう。ですよね

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▲6月から大井川鐡道の主要駅売店(金谷、プラザロコ、新金谷、千頭)限定で販売中の『きかんしゃトーマスサイダー』。350円とお高めだが340ml(昔のサイダーの量)のビッグサイズ

 

――話題性のある商品で会社の認知度はかなり上がったんじゃないでしょうか。

 

「でも最近はすっかり皆さんも慣れてしまったようで、あまり話題にならないんですよね。社員にも『社長、最近インパクトが足りません!』と言われてしまって。だから次は『うなぎ』です」

 

――スタッフが社長のリズムに慣れてきましたね。

 

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▲リリース直後からネット民を震撼させていた『うなぎコーラ』。どう見ても色がうなぎのタレ

 

――(どっひゃー!)まさか本物のうなぎが……?

 

「最初は『マムシ酒みたいにそのまま(瓶に)入れちゃえ』って思ったんですけど、ドジョウじゃないから入らないし、さすがに見た目もグロテスクかなぁと思って、うなぎから抽出したエキスを使ったんです。本物のうなぎは高くて食べられなくても、これなら食べた気分だけは味わってもらえるかもと思って」

 

とりあえず本物のうなぎは使われているようです。

 

「昔30社ほど静岡にあった飲料屋は大手さんの参入で次々に潰れてしまって、県内で残ったのはうちだけ。みんな悔しい思いで代々続けてきた家業を廃業したと思うんです。私はそんな同業者の想いも受け継いだと思っているので、できるだけ地元の素材を使って、少しでも地域活性につながる話題性のあるものを作りたいんですよ」

 

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▲水の豊かな静岡には代々続く飲料屋が数多く存在したという証。それが県内からラムネ瓶をかき集めたという『清水ラムネ博物館』

 

でも常に大手の逆をいくとは限らない

「実は、まだ世に出していないアイテムがまだ100ぐらいありましてね」

 

――……え?

 

「アイディアが浮かんだり、コラボできる素材が見つかれば、そのプロトタイプをブラッシュアップして商品化しようと思ってるんです。専務(社長の弟)が部屋にこもって日々作ってるんですよ

 

秘蔵在庫多数!  日々刃を研ぐ専務を想像して震えます。

 

「たとえば最近ハイボールが好評でしょ。だからウイスキーを少し入れてね。『すこっちウイスキー』とかね。少しだけね、スコッチだけに」

 

――完全にダジャレですね(それは大手の逆というか、完全に懐で商売している気がしますがそこは柔軟なんですね)

 

「なんでもありです。多少失敗したって致命傷にはなりません。何かと何かを掛けあわせたり、ダジャレに引っ掛けてみたり、自分の思い出や経験、同業者や親の苦労、それらすべての経験がきっかけになるんです。可能性は無限ですよ」

 

――ちなみに次はどんなものを炭酸化したいですか?

 

東京オリンピックにちなんで、金・銀・銅メダルをイメージしたサイダーですね。できれば本物を加えてね。ナノレベルまで分解すればイケるんじゃないかなぁ。ははは」


……金メダルサイダーに売り上げが偏らないですかね。

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穏やかな笑顔でワイルドかつダイナミックなことをおっしゃる木村社長。
今後も枠にはまらない商品で世間を驚かせてくれそうな静岡のスターでした。

 

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▲最後に社長の写真を撮らせてもらうとしたら、社長自ら棚の商品を並べ直してくれた(本当は筆者の仕事ですが)

 

取材後記

サイダーマンのCDの話になった時、かつて「ラー娘(むす)」という女子社員3名からなるユニットがあったことも判明。変わりラムネの宣伝のために「わさびラムネ=静岡、カレーラムネ=横須賀、杏仁ラムネ=中華街」のイメージでちょっとだけ活動していたとか。なぜかエリアがどんどん狭くなってるし、いろいろ便乗感もすごいけど、この積極性というかチャレンジ精神が木村飲料さんらしさ。きっとまだまだぶっ飛びストーリーがあるに違いない、と思いました。

 

施設情報

清水ラムネ博物館

住所:静岡静岡市清水区入船町13-15「エスパルスドリームプラザ」1F清水いりふね通り
電話番号:054-376-6181
営業時間:10:00~20:00
定休日:年中無休

 

メーカー情報

木村飲料株式会社

住所:静岡県島田市宮川町2429
電話番号:0547-35-1505
会社HP:木村飲料株式会社

www.kimura-drink.co.jp

 

書いた人:山口紗佳

山口紗佳

ビアジャーナリスト/ビアテイスター 1982年愛知県出身、名古屋と東京の編集プロダクションで雑誌や広告、書籍の制作経験を経て、静岡県西部でビール代を稼ぐフリーライターに。休日はオートバイで食材調達ツーリング。ビールとバイクと赤が好き。

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