無類の「あんみつ」好きの先輩が、あんみつ専門店を開いてしまった理由

エリア曳舟

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ちょっと「攻めぎみ」な専門店

私の先輩は、あんみつの専門店をやっています。

それもあんみつだけに特化したお店なんです。

 

数年前、先輩からそのお店を始めるという報告を聞いたとき、正直「そんな攻めた専門店、正気なんですか?」と思ってしまいました。

 

ですが、実際に食べに行ってみたところ、その心配を吹き飛ばすほどそのお店のあんみつは絶品! 現在もお店は好評のようで、しっかりと続いております。

 

以前から仲良くさせてもらっている先輩なので、いつもお店であんみつを堪能した後は雑談をするだけで終わっていました。あらためていろいろ聞いてみたい……。

 

というわけで、お店を紹介させていただきつつ、気になっていた「あんみつへのこだわりと愛情」について聞きに行きました!

 

お出かけついでに、あんみつを食べよう

押上駅から歩いて15分ほど。都心から少々遠いかもですが、行くだけの価値は大あり! スカイツリー観光もできます。

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少し懐かしい雰囲気の町並みは、お散歩気分であっという間。

 

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さあ着きました!

 

f:id:Meshi2_IB:20181218112424p:plainKEMCO:やあ~、よく来たね~。

 

f:id:Meshi2_IB:20181031184743p:plain百合おん:今日はよろしくお願いします!

 

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こちらの穏やかそうな人が店主のDJ KEMCOさん。

 

知る人ぞ知るオモロテクノユニット「スペランカーズ」の中心人物。

DJ活動もしていて、忘れ去られたネタ系ソングをかけ倒す「リギャグ」というスタイルを得意としております。孤高の天才。めちゃくちゃ影響を受けている先輩です。

 

www.instagram.com

▲イベント中、DJ仲間と盛り上がる様子

 

f:id:Meshi2_IB:20181031184743p:plain百合おん:今日はありがとうございます。それではさっそくいつもの、いただけますか!

 

f:id:Meshi2_IB:20181218112424p:plainKEMCO:はーい、どうぞどうぞ。

 

これが無類の「あんみつ好き」によるあんみつだ

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▲あんみつ(700円)

 

うっとり……。

 

これだけでも二十分に素晴らしいですが、さらにココへ……。

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黒みつをとろ~り。

 

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この美しさ……もはや芸術品。

 

f:id:Meshi2_IB:20181031184743p:plain百合おん:さっそくいただきます! ああ……口に運ぶたび、ジーンと感動してしまうこの甘み……。

 

f:id:Meshi2_IB:20181218112424p:plainKEMCO:ははは! ありがとう。そんじょそこらの甘味屋さんに負けないよう、かなりこだわっているからね。今日はいろいろ聞いてくれるんでしょ?

 

f:id:Meshi2_IB:20181031184743p:plain百合おん:あ、そうでした! で、ではまず黒みつについて……最初食べたとき、これが特に衝撃だったんです。コクがしっかりあるのに喉が焼ける感じがないですよね。

 

f:id:Meshi2_IB:20181218112424p:plainKEMCO:黒みつはね、波照間島産と西表島産のブレンドなんだ。

 

f:id:Meshi2_IB:20181031184743p:plain百合おん:ブレンド!?

 

f:id:Meshi2_IB:20181218112424p:plainKEMCO:そうだよ。西表島は癖のあるビター系、波照間島は素直な味わいでスタンダード系。これを合わせるとバランスがよくなって、「切れ」がよくなるんだ。

 

f:id:Meshi2_IB:20181031184743p:plain百合おん:さっそく強めのこだわりだ……本当、この黒みつが寒天と合うんですよね~。

 

f:id:Meshi2_IB:20181218112424p:plainKEMCO:あ、寒天も伊豆諸島産と伊豆半島産のブレンド。

 

f:id:Meshi2_IB:20181031184743p:plain百合おん:これもブレンド!?

 

f:id:Meshi2_IB:20181218112424p:plainKEMCO:混ぜると弾力と固さが自分の求める寒天になるんだよ。プリっとしつつも歯応えがありすぎず、かみ締めるとほどよい「返し」がある。

 

f:id:Meshi2_IB:20181031184743p:plain百合おん:くぅ~、なるほど! いつも寒天の歯切れの良さに魅了されちゃいます。

 

f:id:Meshi2_IB:20181218112424p:plainKEMCO:うれしいなあ~。あ、そういえばこれはトッピングしないの?

 

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f:id:Meshi2_IB:20181031184743p:plain百合おん:あ! そうだ! バニラアイスを忘れてた~!! くださいください!

 

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▲バニラアイストッピング(150円)

 

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この美しさ……もはや国宝級。

 

f:id:Meshi2_IB:20181031184743p:plain百合おん:バニラアイスのクリーミーさが相性ピッタリ……。完璧だったのが、ますます完璧になりました……。

 

f:id:Meshi2_IB:20181218112424p:plainKEMCO:バニラアイスは手作りではないんだけど、蔵王の牧場のアイスクリームを取り寄せて使ってるよ。途中でちょい足しするのがオススメだね。

 

f:id:Meshi2_IB:20181031184743p:plain百合おん:ミルク感しっかりありながら、くどくない。いい仕事してますよね。

 

キメ細かいあんこを作るためのこだわりとは

f:id:Meshi2_IB:20181031184743p:plain百合おん:あんこも本当においしい……。上品な甘さ、しっとりとした舌触りで、さらっと口で溶けるというか……。

 

f:id:Meshi2_IB:20181218112424p:plainKEMCO:あんこは、製法にこだわってるんだ。小豆をゆでるところからこして作ってるよ。

 

f:id:Meshi2_IB:20181031184743p:plain百合おん:丁寧だな~。

 

f:id:Meshi2_IB:20181218112424p:plainKEMCO:道具にもこだわっててね。こす時にはこれを使ってるんだ。

 

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f:id:Meshi2_IB:20181218112424p:plainKEMCO:これは「馬毛」を使ったこし器。これのお影でキメの細かいあんこが出来るんだ。

 

f:id:Meshi2_IB:20181031184743p:plain百合おん:ひゃー!

 

f:id:Meshi2_IB:20181218112424p:plainKEMCO:注文して1年半かかったんだよね。なかなか手に入らない特注品という。

 

f:id:Meshi2_IB:20181031184743p:plain百合おん:手間がかかってるな~。手づくりの域を超えてますね。

 

f:id:Meshi2_IB:20181218112424p:plainKEMCO:お店によって手作りと言いつつ、こしたあんこ煮てるだけ、だったりするからね。よそではまねできないよ。

 

f:id:Meshi2_IB:20181031184743p:plain百合おん:参りました!

 

「あんみつ」は甘味の王道。なのに、極めている人がいなかった

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f:id:Meshi2_IB:20181031184743p:plain百合おん:いやはや、あっという間に食べてしまった……。こだわりも聞けたし、いつも以上においしく感じました。

 

f:id:Meshi2_IB:20181218112424p:plainKEMCO:それは良かった!

 

f:id:Meshi2_IB:20181031184743p:plain百合おん:さらにいろいろ聞ければと……。いまさらですが、やっぱりあんみつが好きなんですよね?

 

f:id:Meshi2_IB:20181218112424p:plainKEMCO:もちろん! 自分はなにかにハマるとどこが一番なのか気になり調べたくなっちゃう性分で。

 

f:id:Meshi2_IB:20181031184743p:plain百合おん:Twitterを見てるとすごく伝わってきます!(店主は休みの日によく食べ歩きツイートをしている)

 

twitter.com

 

f:id:Meshi2_IB:20181218112424p:plainKEMCO:岸朝子さんの『東京 五つ星の甘味処』というガイド本をもとに都内各地のあんみつを食べ歩いたりしたんだ。少し古い本で、無くなっちゃったお店もあるんだけど、現存するお店は一通り行ったんじゃないかな。

 

f:id:Meshi2_IB:20181031184743p:plain百合おん:ほほー! それ、愛が無いと出来ないですね。それがお店を始めるきっかけだったんですか?

 

f:id:Meshi2_IB:20181218112424p:plainKEMCO:それはまた別だね。25歳の時、アルバイトを辞めて京都旅行へ行ったんだ。そこでお茶・和菓子文化に触れて感銘をうけたんだよね。

 

f:id:Meshi2_IB:20181031184743p:plain百合おん:あ! けっこう前だったんですね。

 

f:id:Meshi2_IB:20181218112424p:plainKEMCO:そう、日本独自の文化にひきつけられた強烈な体験だった。そこで「東京で甘味屋さんをやりたい!」とひらめいたのがきっかけだね。そこから甘味処でアルバイトし、社員になり、退職してお店をオープンしたのが40歳の頃かな。

 

f:id:Meshi2_IB:20181031184743p:plain百合おん:10年以上の下積みがあってなんですねー。

 

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▲バイト時代の写真が昔のホームページに残っていました

 

f:id:Meshi2_IB:20181218112424p:plainKEMCO:ただ、同じようなことを考えている人はいっぱいいてね……。満を持して開店しようというタイミングには、「和カフェ」がもうたくさん出来てたんだよ。

 

f:id:Meshi2_IB:20181031184743p:plain百合おん:ああー! 確かにそういう時期でしたね。

 

f:id:Meshi2_IB:20181218112424p:plainKEMCO:そこで「あんみつ」の登場なんだ。甘味の王道なんだけど、極めている人がいないのに気づき、あんみつの専門店として始めたというわけ。

 

f:id:Meshi2_IB:20181031184743p:plain百合おん:つながった!

 

f:id:Meshi2_IB:20181218112424p:plainKEMCO:今は結婚して余裕が出来てきて、メニューを増やして甘味処にシフトしてきてるけどね。やっぱり主軸はこれからもあんみつだよ。

 

あんみつは「思い出の味」

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f:id:Meshi2_IB:20181031184743p:plain百合おん:あんみつが好きな理由も聞いてよいですか?

 

f:id:Meshi2_IB:20181218112424p:plainKEMCO:実は、小さい頃『男はつらいよ』でおなじみ、柴又帝釈天におやじがよく連れてってくれたんだ。矢切の渡しのあたりで遊んでたり。

 

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▲店主の子どもの頃

 

f:id:Meshi2_IB:20181218112424p:plainKEMCO:そこでいつも食べさせてくれていたのがあんみつとラーメンでね。だからあんみつは自分にとって思い出の忘れられない食べ物なんだよね。

 

f:id:Meshi2_IB:20181031184743p:plain百合おん:わあ~! 幼少期の体験が今につながってるんですね。なんか感動的だなあ。

 

f:id:Meshi2_IB:20181218112424p:plainKEMCO:そうだね~。

 

f:id:Meshi2_IB:20181031184743p:plain百合おん:ということは、ゆくゆくはラーメンも……!

 

f:id:Meshi2_IB:20181218112424p:plainKEMCO:いつかラーメンも出せたら良いなあと思ってるよ。

 

f:id:Meshi2_IB:20181031184743p:plain百合おん:ラーメン、大好きですもんね~。(昔よくKEMCOさんに案内してもらっていた)応援してます!

 

絶品の新メニュー「豚汁雑煮」

f:id:Meshi2_IB:20181031184743p:plain百合おん:先ほどメニューが増えてきていると聞きましたが、ぜひ新作を食べてみたいです!

 

f:id:Meshi2_IB:20181218112424p:plainKEMCO:じゃあ、こちらなんてどうかな?

 

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▲豚汁雑煮(400円)

 

f:id:Meshi2_IB:20181031184743p:plain百合おん:おお! お店のTwitterを見て気になってました! う~ん、根菜がたっぷり入ってて食べ応えあり! やさしく奥行きのある汁で体も心もあったまります~。

 

f:id:Meshi2_IB:20181218112424p:plainKEMCO:これは奥さんが仕込んでるんだ。けずり節から出汁をしっかり丁寧に取っているので、味に濁りが無いよね。

 

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f:id:Meshi2_IB:20181031184743p:plain百合おん:すごく澄んだうま味って感じがします。そして、お餅は外カリ、中とろふんわり~。

 

f:id:Meshi2_IB:20181218112424p:plainKEMCO:実はお店でランチメニューを検討してて、サイドとして豚汁を考えたんだよね。そしたら「これにお餅を入れれば良いんじゃないか!」とひらめいて、やってみたらこれがバッチリ。メインに格上げされたんだよ。

 

f:id:Meshi2_IB:20181031184743p:plain百合おん:甘味の後はちょっとしたしょっぱいのが食べたくなるから画期的ですよ! いい塩梅だ。

 

f:id:Meshi2_IB:20181218112424p:plainKEMCO:ありがとう! おかげ様で地元のお客様や芸者さんにも好評で、2月までは出す予定だよ。

 

f:id:Meshi2_IB:20181031184743p:plain百合おん:定番になって欲しいな~。ありそうで無かったメニューなのも素敵!

 

f:id:Meshi2_IB:20181218112424p:plainKEMCO:そうそう! こういう新メニューは自分のDJスタイル「リギャグ」につながるところがあるんだよね。せっかくだからそのあたりの話も詳しくしていいかな?

 

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f:id:Meshi2_IB:20181031184743p:plain百合おん:あわわ、すみません。がぜん興味あるんですが、その話はまだ今度……。

 

おいしいあんみつにはたくさんの思いが詰まっていた

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いやはや、まさかこんなにいい話が聞けるなんて思ってもみませんでした……。

 

小さい頃に大好きだったものは、人生に大きなきっかけを与えてくれるんだなあ。

 

もちろん、店主のこだわりと思い出が詰まったあんみつの味は唯一無二。

ぜひ皆さんも食べに行ってみてくださいね~!

 

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テイクアウト(530円)もオススメです!

 

お店情報

あんみつの深緑堂 (シンリョクドウ)

住所:東京都墨田区向島5-27-17
電話番号:03-6658-5449
営業時間:11:00〜18:00(LO 17:00)
売切れの場合早じまいすることもあります。
年内は30日まで、正月は1日から営業します(1日は午後3時で閉店)。1月は15〜21日の1週間お休みいたします。
定休日:月曜日・木曜日 (ただし祝日の場合営業し、翌平日をお休みとします)

www.hotpepper.jp

 

書いた人:ディスク百合おん

ディスク百合おん

ナードコアという特別なテクノを得意とするミュージシャン。コンビニで手に入る食品を合わせて新しい料理を作りあげる「コンビニかけ合わせグルメ」を紹介する人として様々な媒体に取り上げられ、同名の初書籍が2017年11月2日(木)に発売。山本さほ「岡崎に捧ぐ」に登場する杉ちゃんのモデルという棚ぼた知名度も獲得している。

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