ご飯は敵じゃない!今こそ見直したいご飯中心の食生活

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炭水化物を食べない食生活、いわゆる糖質制限ダイエット。病気のため食事療法をしている人もいるでしょうが、それ以外で実践している人の多くはダイエットや体型維持のために糖質制限、つまり炭水化物を食べない食生活を送っています。

 

でも、本当にその食生活でいいですか?

元気に長生きできる体は、それまでに何を食べてきたかが大きく影響します。炭水化物を一生口にしない食生活を続けますか?

炭水化物の中でもご飯を食べることで、健康で代謝のいい体づくりができるとしたら? それでもまだ炭水化物を敬遠しますか?

 

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実は、米は極めて優れたマルチ食材。体にも財布にもやさしい、いいことずくめのキングオブ炭水化物です。日本人にとってあまりに身近すぎる食材ゆえ、そのスペックの高さが逆に見過ごされてきてしまったのかもしれません。

そこで今回は、日本健康食育協会代表理事の柏原ゆきよさんに、ご飯中心の食生活についていろいろ教えていただきました。目からうろこが落ちるような事実、きっとたくさんありますよ。何を隠そう筆者も初めて柏原さんのお話をうかがったとき非常に感銘を受け、自身の食事を見直す大きなきっかけとなりました。以来、パンもパスタも好きですが、基本はご飯と味噌汁の食生活に!

 

まずは柏原さんのご紹介を。管理栄養士でもある柏原さんは、4万人以上の食事サポートの経験を通じて「おなかからやせて健康になる」食べ方メソッドを開発。女優やモデル、トップアスリートへの食事指導、介護食アドバイス、妊娠力をあげる食事、こどもの食育など、幅広い分野で食を通じたサポートを実施されてきました。これまでの講演数は2000回を超え、2008年より定食チェーン大戸屋の食育プロジェクトを推進。国内外で「大人の食育セミナー」を開催しているという、まさに「食のプロ」。専門家から「ご飯中心の食事がベスト」と言われると説得力大です。

 

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▲健康的で美しく生命力があふれている、まさに「イキイキしている」を具現化した柏原さん

 

Q.糖質、つまり炭水化物が敬遠されがちな流れが相変わらず続いているのはなぜでしょう。

 

A.日本の場合、炭水化物といえば消費量から見てお米がその代表です。ダイエット中の人の前にご飯と一汁三菜といった定食が出されたとき、おかずを減らすと見た目が貧相になってしまいますが、ご飯を減らせばビジュアル的にもさほど寂しくならないし、簡単に摂取カロリーが減らせますよね。カロリーで食べ物を見た場合、ご飯を減らすのはわかりやすい方法なのでしょう。実際、短期的に体重が減る人もいるので、「1カ月で〇キロ痩せる」といった目標を掲げている人に支持されました。

けれど食事はカロリーだけではなく、満足感や腹持ちも大事です。ご飯は科学的にも腹持ちに効果的であることがわかっています。そのご飯を抜くと、その時は満腹になったつもりでも、その後すぐにおなかが空いたり、物足りなくて何か食べたくなったりしてしまいます。

また、体重が減ったといっても「何が」減ったかが問題です。体脂肪が減っていればいいのですが、炭水化物を抜いて最初に減るのは筋肉や水分です。体重計に乗って数字が落ちているとつい「痩せた!」と思いますが、筋肉が減っていればかえって太りやすくなりますし、水分量が減れば肌は乾燥し、代謝機能も低下します。

 

Q.炭水化物を制限した食生活を続けると、体にはどのような変化が起こりますか?

 

A.炭水化物は体の一番の熱源なので、その燃料を取り入れなければ体温は上がらず、疲れやすくなります。また、食事からの燃料が足りないと体は別のところから燃料を調達すべく最初に筋肉を使うので、筋肉が落ちてしまいます。ですから糖質制限しつつ運動によるダイエットをしている人は、相当ハードなトレーニングをしないと筋肉はつくどころか落ちやすくなります。

さらに極端な糖質制限は心臓に負担がかかり心筋梗塞のリスクが高まるほか、腎臓、肝臓、脳にも影響があります。

 

Q.臓器に悪影響ですか……!?

 

A.はい、そうです。人間のエネルギー源は炭水化物と脂質とたんぱく質で、炭水化物を減らせばおのずとあとの2つを増やすことになります。

脂質は増えると体脂肪が増えやすくなり、血液もどろどろになります。たんぱく質は本来、エネルギーとして燃やすより筋肉など体の材料なので、これを燃やすと代謝に負担がかかります。また、炭水化物と脂質は燃焼した後にゴミが残らず二酸化炭素と水になって消えるのですが、たんぱく質は体内に窒素が残ります。これを体外に出すときに肝臓や腎臓に負担がかかってくるのです。

脳のエネルギー源も圧倒的に炭水化物なので、炭水化物が不足すると集中力がなくなったりイライラしやすくなったりします。それだけでなく認知症が増えるとも言われています。極端な糖質制限での健康被害は、現場の事例はすでに多く、注意喚起が出ています。日本糖尿病学会や日本栄養士会も、極端な糖質制限は危険だという否定的な見解です。

 

食のプロの言葉には説得力があります。

 

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Q.炭水化物の中でもご飯を推奨される理由を教えてください。

 

A.ほかの炭水化物よりもお得な点が多いからです。まず、加工が少ないですよね。稲を脱穀して精米したら、水を加えて加熱するだけでできあがりです。何の加工もなく、余計なものも入っておらず、自然のものをそのまま食べることができます。一方、小麦系はまず粉にして、パンや麺類だったら工場で製パン、製麺をするため、工場で作る加工食品です。加工するということは、余計なものがいろいろ入る可能性があるということでもあります。

次に、ご飯は他の食材に比べて咀嚼(そしゃく)しやすいのも魅力。パンはふわふわでほとんどかまず、麺類にいたってはほとんど飲み込んでいます。この咀嚼の違いもとても大きくて、同じカロリーを食べていても、咀嚼しているほうが消費が増えて太りにくいんです。また、ちゃんとかむと食べたものは唾液と混ざって胃に入るので、胃の負担が減って消化吸収効率がよくなり、腸内環境も変わってきます。

栄養価の点でも、ご飯は非常に優秀です。糖質だけのイメージかもしれませんが、たんぱく質、ビタミン、ミネラル、食物繊維もほぼオールマイティに含まれています。脂質はほとんど含まれていませんが取りすぎない方がいいものですし、おかずから摂取できるので問題ありません。

それからお米にはたんぱく質が含まれていることも見逃せません。

たんぱく質というとステーキなどの肉が真っ先に思い浮かびますよね。意外にも日本人のたんぱく質摂取源の第1位は、肉ではなく穀物由来なんです。穀物というと小麦も含まれますが、米由来のたんぱく質の方が優秀で体内で利用されやすく、筋肉や骨やお肌など体の構成要素になりやすい。さらに、お米は大豆と一緒に取ると栄養的価値が上がり、肉レベルのたんぱく質になります。

実際、肉に含まれるたんぱく質の量は重量当たりでみるとお米よりも多いのですが、食べる量や頻度からするとお米の方が効果的だということになります。

1日3食肉を食べるのは胃腸の負担も大きく大変ですし、脂質の摂取量も多くなります。

 

Q.米中心の食生活の具体的なメニューを教えてください。

 

A.「ご飯、味噌汁、ちょっとのおかず」の3点セットです。

 

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これですね。

 

味噌汁の具は何を入れてもOKで、3種類以上の具を入れて具だくさんにすることをおすすめしています。毎日味噌汁では飽きるという人は、具をいろいろ替えてみてください。変わったところでは唐揚げやソーセージも意外といけますよ。

 

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▲唐揚げ……入れてみた!

 

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▲ソーセージも合います!

 

味噌も最低2種類用意して、気分によって使い分けたり、ブレンドしたりしてください。豆乳や粕汁、キムチ、カレー粉などを加えれば鍋風味の味噌汁になるし、柚子胡椒やラー油などの調味料のちょい足しで味変も楽しめます。

 

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▲だし入り味噌も売っているので、出汁をひくのが面倒な人はぜひ活用を

 

鍋で味噌汁を作るのは面倒という人は、お椀に味噌とだし粉(鰹節や昆布、煮干しなどの粉末または鰹節だけでもOK)を入れ、乾物の野菜やきのこなどを加えてお湯を注げば即席味噌汁のできあがりです。簡単でしょう? この一式をボール状にしてラップに包んだ「みそ玉」として会社に持参すれば、ランチタイムにマグカップで楽しむこともできます。インスタント味噌汁を買うよりも安上がりでおいしいですよ。乾物はあおさやとろろ昆布、きのこ類、切り干し大根など多彩ですし、海藻サラダの素もそのまま味噌汁の具として使えます。乾物は長期保存できるので、何種類かストックして大いに活用してください。

 

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お椀1杯に対して味噌小さじ1、だし粉小さじ1/2。これに具を加えてお湯を注げば味噌汁のできあがり。

 

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▲左から切り干し大根、干ししいたけ、キャベツとにんじん

 

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▲乾物だけを使った味噌汁。うまい!

 

ご飯と具だくさん味噌汁だけではたんぱく質がちょっと足りないので、おかずはたんぱく源が取れる食材を意識して選んでください。そうなると肉、魚、卵、豆腐のいずれかがあるといいですね。揚げ物でも構いませんが、どんなおかずでも量は控えめにするのがポイントです。通常の定食のおかずの量でいえば、ちょうど半分くらいと考えてください。会社帰りにスーパーでお総菜を2~3個買っていた人は1つだけにして、その分ご飯を食べましょう。買い物が減り、味噌汁も自分で作ると安上がりですから、このシンプルな食生活にすると食費がぐっと減ります。そうしたら、その浮いたお金で週に一度、好きなものを食べに行くのはどうでしょう。その日だけは栄養バランスもおかずの量も気にせずに食べれば、ストレスもかかりません。

 

Q.アルコールは飲んでもいいのですか?

 

A.二日酔いにならない程度なら気にせず飲んでもかまいません。アルコールそのものでは基本的に太りません。一緒に食べるものによって太りやすさや肝臓の負担などが変わってきます。

お酒を飲むときはご飯を食べずつまみばかりという方が多いですね。アルコールを分解する時は肝臓のエネルギー源として糖質が必要なので、糖質制限は肝機能を悪くする可能性があります。

そこで、つまみはいつもより控えめにして、〆にご飯と味噌汁を食べるようにしてください。そうすればアルコールの分解が早まり、翌朝の胃のもたれも少なくなります。お酒で肝臓をいためないためにも、これはぜひ実践してほしいですね。ご飯はお茶漬けではなく、しっかり咀嚼して食べるためにおにぎりなどがおすすめです。

 

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▲味噌汁はこんな具だくさんの豚汁の日があってもOK

 

Q.ご飯食中心の食生活にしたらかえって太ってしまったという場合、その原因と対策は?

 

A.おかずの量が多いままご飯を大盛にしていることが考えられます。ご飯と一緒におかずも増えやすいので注意です。これでは単なる大食いですから太るのは当然です。また、しっかり咀嚼せずに早食いしてしまっている可能性もありますね。ご飯はかまずに早食いすると食べ過ぎにもつながります。

これまでご飯を食べていない、あるいは食べていても少量だった人は、代謝が下がって太りやすい体になっていることが考えられます。代謝が下がったまま食べればおのずと太りますが、正しい食べ方をしていればそれは一過性のもの。しっかりかんでご飯メインの食事を続けていると、まずは体温が上がります。すると基礎代謝が上がるので、同じカロリーを摂取していても痩せやすくなります。よくかんで消費が上がる食べ方をすればさらに効果的です。

基礎代謝を上げるためには、ご飯しっかりでおかず少なめの食生活を最初は最低1週間、できれば2週間、集中して行ってください。次第に体温の上昇や疲れの感覚が変わっていき、それが代謝の上がった証拠です。

 

Q.読者の方へのメッセージをお願いします。

 

A.体重の数字を気にする人は多いですが、いくら痩せても気力や体力が落ちたら意味ないですよね。体重が軽いことよりも、引き締まっていてメリハリのある体型で肌ツヤがいい状態を目指してください。

よく食べる元気な人は、生命力がみなぎっていて素敵だと思います。「よく食べる」というのは大食いではなく、食べ方や組み合わせが上手な良い食べ方をしている人という意味です。

小食だったり、「今、ダイエット中で」とサラダしか食べない人は、一緒に食事をしても楽しくないし、全然魅力的じゃないですよ(笑)。ご飯中心、おかず少なめの食生活を続けていれば代謝のいい太りにくい体が作れますから、〇キロ落とすといった数値だけの目標ではなく、体そのものを変えることに目を向けてみてください。

また、老化が加速する40代から先をより元気に過ごすためには、今食べているものの延長に自分の老後がある、そう考えてください。日本人の寿命は延びていますが、寝たきりの年数も伸びているのが現状です。寝たきり期間の平均、今や10年以上ですよ。ただ長生きするのではなく最後まで楽しめる人生にするためには、ずばりしっかり食べること。食が細くなったり食べられなくなったりすると、人間は一気に衰えます。若いうちからしっかり食べられる体を作っておくことが、元気で楽しい老後につながるということを忘れないでください。

 

柏原さんのお話を聞いていると、「来月までに〇キロ痩せたい」という短期的な目標なら炭水化物抜きもありかもしれないけれど、健康に長生きするという長期的な視点で見れば、ご飯を中心とした食生活がおすすめだということがよくわかります。そしてそれが結果として太りにくい体づくりにもつながることも。

「今食べているものの延長に自分の老後がある」というのは、鋭い指摘です。未来の自分は今の自分が食べているものが作るのですね。そう考えると、偏った食事や目先の数字だけにとらわれたダイエットには走りたくないものです。

とりあえず2週間、ご飯と味噌汁、ちょっとのおかずという食生活をしてみませんか。ちなみに約半年前に筆者はやってみましたが、自分でも驚くほどストレスレスでした。もっと「パン食べたい」とか「パスタ食べたい」とかなるかなと思ったのですが、むしろ咀嚼してしっかり味わうという行為にはまりました。ご飯ってすごいです、ほんとに。

 

講師紹介

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柏原ゆきよ

一般社団法人 日本健康食育協会代表理事 

一般社団法人 食アスリート協会副代表理事 

管理栄養士。

1973年生まれ。共立女子大学卒業後、スーパーマーケットに就職。その後、フィットネスクラブでアスリートへの食のサポートや美容系ベンチャー企業の立ち上げ、企業の健康管理に携わり、サプリメントメーカーの役員を経て「ごはんの食べ方で人生が変わる」ことを実感。しっかり食べておなかからやせる食事法を体系化して2007年に起業。2011年に(一社)日本健康食育協会を設立。著書に『お腹からやせる食べ方』(講談社)、『10日間で人生が変わる食べ方』(学研プラス)、『食べて飲んでおなかからやせる』(かんき出版)などがある。

 

一般社団法人 日本健康食育協会

www.jhe.or.jp

 

一般社団法人 食アスリート協会

s-a.or.jp

 

無料メルマガ おなかやせメール http://shokuiku-imajine.com

 

 

書いた人:椿あきら

椿あきら

猫の下僕をしているライターです。猫と暮らすようになってから、断然家飲み派になりました。著書に『オリンピックと自衛隊 1964-2020』(並木書房)。

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