1300年の歴史ある湯河原温泉で見つけたB級グルメ「担々やきそば」。温泉感ゼロだけどとにかくウマい

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近年、地域独自のメシ「B級グルメ」が大ブームです。まちごとに郷土料理をアレンジしたり、特産品を活用したり、様々なメシがあります。

今回私が訪れたのは歴史ある温泉地で有名な「湯河原」。ここ湯河原では「担々やきそば」というご当地B級グルメを推しています。「担々って……中国の料理じゃないのか……?」。その疑問は、今回の取材で明らかになりました。

東京駅から1時間。手軽にアクセスできる湯河原温泉

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湯河原温泉は神奈川県の西端にある温泉地。温泉街のある「湯河原駅」は、東京駅から東海道新幹線「こだま」を使えば1時間ちょっとでたどり着くことができる、都心から非常にアクセスのよい場所です。

駅前には大きなロータリーがあり、その周辺にはいくつもの土産物店が並んでいます。店内をのぞいてみると、並んでいるのは海の幸ばかり。今のところ、まったく担々していません。

 

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駅でバスに乗り、10分程で温泉地の中心部に到着します。今回の取材先である湯河原観光会館は「落合橋」停留所で下車するとすぐ目の前にあります。

 

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この一帯は、藤木川に沿って旅館やホテルが立ち並んでいます。都心から電車とバスに乗って約1時間15分程度で昔ながらの風景を遺す温泉地に行ける……。このような温泉地はどんどん姿を消しており、とても貴重な「文化」と言っていいと思います。

 

足湯のテーマパークであったまる

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観光会館があるのは「万葉公園」という公園の敷地内。ここには日本最大級の足湯のテーマパーク、「独歩の湯」があるということで、メシをいただく前に行ってみたいと思います。

昔、歴史の授業で習った「万葉集」には温泉の湧き出る様子をうたった歌が一つだけ出てきます。その温泉地が、まさにこの湯河原温泉で、「万葉公園」の名前の由来になったのだそう。

 

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その歌は入口近くに石碑として残されています。

 

【歌】
「足柄の 土肥の河内に 出ずる湯の 世にもたよらに 子ろが言わなくに」

【現代語訳】
『足柄の土肥の川辺に噴出する温泉の湯煙、それが中空に漂い揺らぐように、あの娘は私との関係を不安げには言わなかったのに心配で……』


温泉の湯けむりが揺らぐ様子を自身の恋心に例えているのだそうです。1300年前でも草食系男子がいたのかと思うと、どこかほっこりしてきます。

 

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川のせせらぎと木々のざわめきを聞きながら歩いていると、いくつもの立札が並ぶ道が続きます。

この立札には湯河原を愛した文人たちの歌や俳句が書かれており、浮かぶ情景が想像力を湧きたてます。

 

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作家、国木田独歩も湯河原温泉を愛した文人の一人です。万葉公園最深部にたどりつくと、独歩の碑が佇んでいます。その碑のすぐ奥、足湯のテーマパーク「独歩の湯」に到着です。

 

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上から眺めてみるとこのような形になっています。
お気づきでしょうか、ウッドデッキの部分がほんのりの日本列島の形になっています。 写真左側が北海道、右側に九州、四国が見えます。

 

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先ほどの写真は、こちらのマップの右下にあるもぎり処から撮影しました。このマップを見ると、園内には山、四方には門がつくられていますね。これは風水学に基づいた良い気が集まりやすい配置なのだそうです。

 

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入場料300円を支払い、いざ入湯。写真のような足湯が9種類あり、湯めぐりを楽しむことができます。

 

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「どうしたら9種類も差をつけられるのか」
その答えがこれ。床の凹凸です。それぞれ刺激する足ツボが違うので、効果効能も違うのだそう。凹凸以外にもぶくぶくと泡が出たり、温度設定を高めにしているものもありました。足湯に入っただけで、少し歩いて疲労のたまった足が軽くなった気がします。

「担々やきそば」でもあったまる

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歩いて、足湯に浸かってお腹を空かせたところで、湯河原温泉のご当地グルメ、「担々やきそば」を食べにまいります。湯河原観光会館内の食事処、パノラマラウンジです。

 

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オススメの席はこちらのテラス席。外には4脚しかない、貴重な席です。万葉公園の豊かな自然に抱かれながら食事ができます。

 

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「お待たせいたしました、『担々やきそば』です。ピリ辛ですので辛く感じるようでしたら卵を混ぜて食べてください」

前もって説明しないといけないピリ辛……。少し気になりましたが、着席して5分ほどで「担々やきそば」がやってきました。

 

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焼きそばに和えたゴロゴロ野菜、そのうえに半熟の目玉焼き、豚そぼろ。
豚そぼろにちらほら見える唐辛子がピリ辛な味を想像させ、思わずよだれが……。

 

食べ方で味が変わるとは!?

じつは「担々やきそば」、食べ方によって味、辛さが変わるのだそう。

 

①そのまま食べる

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まずはやきそばだけを食べてみます。
よく見ると麺も野菜も辛そうな色をしているぞ……。

 

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結構辛い……!!! 担々そぼろを混ぜ込んでいないのに……! 口の周りがヒリヒリする。

やきそばは豚そぼろをつくる際に使う辛味ソースをかけて炒めています。ただのやきそばに豚そぼろ乗せただけだろうと、高を括っていた自分が恥ずかしい……!

 

②豚そぼろと一緒に食べる

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豚そぼろを混ぜて食べてみます。
豚そぼろに使っている辛味ソースだけで結構ピリッとしているのに、本陣の豚そぼろが来たらもっと辛いんじゃ……。

 

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やっぱ辛……!!?? あれ……!?
肉からにじみだしてくるジューシーなうま味脂。辛さを中和してくれています。口に入れた一発目の辛さが抑えられたせいでしょうか、野菜の甘みも感じられ、後に残る辛味も抑えられていますね。

 

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ぐわぁー! 止まらん! 箸が!!
辛さとうま味、こいつらは出合ってはいけない組み合わせでした。
次のやきそば! 次のやきそば! 口が催促しています。

 

③卵を絡めて食べる

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ただでさえ出合ったら大変なことになる辛さとうま味に、半熟卵が混ざり合う。いったいどうなってしまうのでしょうか。

私は白身ごとぐちゃぐちゃ派。血液型はA型です。

 

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箸の上に集結したそぼろとやきそばと半熟卵。辛さとうま味にこれ以上何か加わったらどうなってしまうのか。

私のリアクションを見て感じてください。

 

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辛さが……ものすごい抑えられている……。別の食べ物かと思うくらい辛さが緩和されている!

口に入れた瞬間のガツンとくる辛味は完全になりを潜め、かむほどにじわじわっと辛さがでてきます。

卵が入るだけでここまで変わるとは。

 

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勢いのまま食べ伏せてしまった「担々やきそば」。

お腹に手を添えて、食べ合わせの奥深さに感動しつつ、耳に届く川のせせらぎや頬をなでる爽やかな風をかみ締めます。

紅ショウガを残した罪悪感みたいなのは全然ないのです。

 

担々のルーツもあったかい

万葉公園内を散策していた時、こんな神社を見つけました。

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社を囲む3匹の狸。ここは狸福(りふく)神社です。

ある雄狸が怪我をして湯に浸かっていたところ、やけどを負った雌狸もやってきて仲良く傷をいやし、夫婦になったのだそう。

その後も人間に化けて湯河原温泉の良さを伝え、旅人の願いを今もかなえていると伝えられています。

そう、「担々やきそば」のルーツは狸にあるのです。

 

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「担々やきそば」と狸は関係ない?

そんなことはありません。「たんたんたぬきの○玉は~風もないのにぶ~らぶら」という歌をご存知でしょうか。そう、たんたんと言えば狸、狸といえば担々(たんたん)。

そういうわけで湯河原温泉に縁のある狸から「担々やきそば」は生まれました。現在、湯河原温泉では18のお店で、それぞれオリジナルの「担々やきそば」を提供しています。

 

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「担々やきそば」には、万葉集のような深い歴史はありません。文学を読み解くような深い味わいもあるとは言い難いです。しかし温泉に浸かって気持ちいいように、食べたらうまい、止まらない。そんな本能に訴えかけるようなメシでした。

東京から簡単に行ける温泉地です。チェックインの少し早めに来て、ぜひお昼ごはんに「担々やきそば」を!

 

お店情報

パノラマラウンジ

住所:神奈川県足柄下郡湯河原町宮上566 湯河原観光会館4階
電話番号:0465-62-3761
営業時間:10:00~16:00
定休日:12月29日~1月3日

 

【閉園】独歩の湯(足湯)

住所:神奈川県足柄下郡湯河原町宮上704
電話番号:0465-64-2326
営業時間:10:00~18:00(11月~2月は17:00まで)
定休日:毎月末木曜日(祝日にあたる場合はその前日)

 

書いた人:毎川直也

毎川直也

風呂が好きで、風呂デューサーを名乗り活動中。銭湯、スーパー銭湯、温泉旅館での勤務経験を持ち、銭湯に勤めながらメディア出演をしている。酒が弱いうえに小食なため、「メシ通」には間違いなく向いていないライター。

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