
お店レベルの水炊きを作りたい
こんにちはライターの半澤です。
みなさん、鍋作ってますか。
僕は冬の自炊=鍋というほど、めっちゃ鍋を作ります。がしかし、最近思ったことが。
家で作る水炊きって、なんかちょっと惜しいなあ、ということ。

おいしくないわけじゃないんです。だけど、鶏肉もちょっと固くて、スープもどこか味気ない。うぬー、やはりお店レベルは難しいのか。
そう、うなだれていたころ、料理家の風間さんがこう教えてくれました。
風間:家で作る水炊きも、とっても簡単においしく作れますよ!
彼女は以前、「土鍋の育て方」をレクチャーしてくれた鍋料理にも詳しい料理のプロ。
まさに鍋シーズンまっさかりなので、今回は水炊きを徹底研究。「水炊きレベルアップ術」を教えてもらいましょう。
水炊きレベルアップ術①「鶏肉の選び方」

ではさっそく鍋を作ってみましょう。
と思ったら調理前に大切な作業がある、と風間さん。
風間:水炊きは肉選びがかなり大切! なんとなくではなく、スーパーでしっかり良いお肉を選ぶだけで水炊きが格段においしくなるんです。
えっ、そうなんですか? いつもよく考えないで鶏もも肉で作ってました。まあまあのおいしさにはできるので。

▲鶏もも肉角切り(138円/100g ※半澤調べ)
いつも買うのがコレ。最初から切ってあるし、便利ですよね。もも肉なのでむね肉ほどパサつかないし、肉の味もしっかり感じられるのでそこそこ満足していました。
風間:もちろんもも肉もおいしいですが、スープの味を考えれば骨付きを使ったほうがいいですよ!
なるほど、聞いたことあります。
骨からイイ出汁が出ると。
ラーメンのスープに使う鶏ガラはほとんど骨ですしね。思えば実家の寄せ鍋にも手羽元が入っていたなあ。僕も手羽元を使って水炊きを作ることもあります。プルプルになって、皮もおいしいんだよなあ。

▲手羽元(78円/100g ※半澤調べ)
むね肉に近い部分のお肉。味は淡白で脂肪も少なめ。可食部が少ないので、もも肉よりもかなり安く買えます。ただ骨があるので食べにくいのが難点。
風間:手羽元もいいですが食べにくいから苦手という人もいますね。そこでおすすめなのがコチラです。冬ならスーパーで見る機会も少なくないので、見かけたらぜひ選びたい!

▲骨付きもも肉ブツ切り(138円/100g ※半澤調べ)
あ、お店で水炊き食べたときに使われていたのがまさにコレ。
たしかに冬は鍋用に売ってますね。骨つきで出汁が出るし、手羽元より食べやすそう! 骨に近いからお肉自体もうま味成分たっぷりだし。
風間:骨を切ってあるのがポイントなんです。骨髄からイイ出汁が出るので、手羽元だけで作るよりもスープがおいしくなりますよ。
なるほどなるほど。
あまり買う機会はなかったけど、ブツ切りってスゴいんですね。なんとなく「鍋用」とうたっているだけかと思っていたけど、鍋のスープのことまで視野に入れたネーミングだったとは。
では今回はいろんな味を楽しむことと、コスパを考えて「手羽元×骨付きもも肉ブツ切り」で水炊きを作ることにしましょう。
骨つきの部位を活用することで、肉の味だけでなくスープにまでアプローチしようというわけです!
水炊きレベルアップ術②「出汁のとりかた」

とはいえ、骨付き肉を入れれば完ぺきなスープができるというわけではないみたい。
やはりしっかり出汁をとらねば。「さあ、水炊きを作りましょう」という段になって風間さんが最初に用意したのがコレでした。

そうそう、風間さんは以前の「土鍋」記事のときも「鍋を育てる」方法として出汁をとることをおすすめしてくれました。出汁をとると、鍋自体にも味が染み込んで、使いこむに連れて段々イイ鍋になるというお話。
風間:出汁といっても昆布1枚だけでOKです。水炊きはスープも飲むので、ストック用1.5ℓ、鍋用1.5ℓで計3ℓくらい出汁スープがあると安心ですね(4人前の目安)。

昆布には三大うまみ成分の一つ「グルタミン酸」がたっぷり含まれています。
これが鍋をおいしくするんです! 昆布を入れて沸騰させて取り出すだけだから、これなら誰でもすぐできますね。

昆布で出汁を取って土鍋に移したら、あとはお酒100mℓ(3ℓに対して)をプラス。なんと、スープのベースはこれでもう完成です。
風間:お酒はコク、うま味をアップさせてくれるので必須です。体を温めてくる効果もあるし肉の臭み消しにも有効ですね。スープ全体になめらかになるので、ぜひ入れましょう。
風間さんによれば、塩分が入って味がついている料理酒より「清酒」が良いとのこと。鍋を食べながら飲めますし、 鍋のときは絶対に日本酒を買ってこよう!
水炊きレベルアップ術③「タレのポン酢をつくる」

スープと並行して作りたいのがタレ。
一般的に食べられている水炊きには「博多風」と「関西風」がありますが、前者が濃厚鶏スープで食べるのに対し、後者はポン酢をつけてあっさりいただくという方法。
風間:博多風は鶏ガラを長時間煮込む必要があるので、家ではなかなか大変ですね。関西風なら全国的に食べられていて、私の家では基本こちらです。
僕も福岡に行ったときに博多風を食べましたが、いつも家で食べていたものと違ってびっくりしました。家ではポン酢で食べますね。
風間:ポン酢だとさっぱりして食べやすいですよね。なので、今回はポン酢を作りますよ!

【ポン酢の材料】(4人前)
- ゆず 2個
- 昆布 3cm角
- お酢 適量
- しょうゆ 100㎖
そうか、ポン酢って家で作っていいんだ。
調味料を作るってちょっとハードル高い気がするのですが、僕でも作れますか?
風間:自家製「即席」ポン酢なんで、とっても簡単。半澤さんでも作れますよ!

①ゆずを絞る。種が落ちないように容器の上に茶こしを当てる。

②ゆず果汁+お酢で100㎖になるようお酢を追加。

③しょうゆを100㎖入れる。

④昆布を入れる。

⑤ゆずの皮をすりおろしてポン酢にいれたら完成!

なんと、わずか5分そこそこで自家製ポン酢が完成してしまいました。
なめてみると、すっきりした絞りたてのゆずの風味が最高! キリッとした酸味で既製品にないフレッシュさありました。こりゃ、水炊き以外のときも作りたくなりますね。
風間:かぼすなどほかの柑橘類でも同じ方法でつくれます。簡単なのでぜひ試してほしいですね。
家でポン酢を作れるというだけでもうれしいのに、これだけ完成度が高いとテンションが上がりますね。
風間:ではもっとテンションを上げるために、薬味も用意して!

なるほど、ここまでこだわれば家の水炊きがもっと楽しくなりますね。
小ねぎは定番ですが、ほかの薬味は「味変」に効果的。ポン酢がシンプルでさっぱりした味付けだからこそ、コクや辛味で味のバリエーションを楽しむのがオススメです。
水炊きレベルアップ術④「もうひと手間でもっとおいしく」
じゃあ、そろそろ肉を煮ていきましょう! と、思ったらほかにもまだやるべきことはあるようです。
風間:もちろんお肉をそのまま煮てしまっても食べられますが、オススメは「ゆでこぼし」。この一手間で、水炊きがよりおいしくなりますよ。
ゆ、ゆでこぼし? 聞いたことはあるけど、どういうことですか?
風間:実際にやってみましょう。
①ゆでる

沸騰したお湯で1分ほど湯がく。
②洗う

ザルに開けたらぬるま湯で洗う。たったこれだけ!
風間:血や骨のまわりなど、気になるところをサッと洗いましょう。水だと脂が固まってしまうのでぬるま湯が良いですね。アクと肉の臭みをあらかじめ取ってしまえば、肉はもちろんスープも澄んで、さらにおいしくなります。
なるほどこのひと手間もおいしいスープに通じるということですね。コンロが2つあれば気軽にできるので「ゆでこぼし」、これからはちゃんとやらねば。
水炊きレベルアップ術⑤「煮る」
そ、そろそろお腹へりました。さっそく鍋をつくりましょう。
風間:もうほとんど完成、ここからは早いですよ!
と、頼もしいお言葉。そして、本当にここからが早かった。

【材料】(4人前/鶏肉300gに対する目安)
- ねぎ 1本
- 白菜 1/4個
- にんじん 1/2本
- 水菜 1パック
- しめじ 1パック
- えのき茸 1パック
- 豆腐 1丁
わぁ、野菜たっぷりでいいですね。鍋は野菜を食べられる料理なので、冬はほかの季節よりなんだか食事が健康的です。

①鶏肉をすべて投入。

今回は骨つきもも肉と手羽元であわせて約300gを用意。鍋に入れてフタをして沸騰させる。

②アクをとる。アクはおたまの裏側で土鍋の端に集め、一網打尽に!

③火を弱めてから、かための野菜(白菜の芯/にんじん)を投入。やわらかいねぎがお好みならこのタイミングで入れる。

④一度火を弱めて水菜以外の食材を入れ火にかける。②と同じ要領でアクを取って、水菜を入れてサッと火を通したら完成!
風間:ここではぐつぐつ煮込まないのがポイント。食材を加えたら強火にして、沸騰したらすぐに弱めるということを意識すれば、すべての具材をおいしい状態で食べられます。お肉はアクを取ったら放っておいてOKです。

放置でいいというのはラクチンですね。またアク取りテクに感動。
アクを取っているうちにスープがなくなるという「鍋あるある」もこれなら防げそう
せっかく昆布と骨付き肉で出汁を取ったのでスープは大切にしたい!

自家製ポン酢とオススメ薬味と一緒に、さあいただきましょう。
見た目もかなり華やかで、これなら人が集まる場面でも堂々出せますね。骨つき肉だから、いつものお肉よりもなんだか豪華。 ではいただきます!

いやあ、驚きました。骨付き肉は味が濃厚!
臭みがないうえ、身はふわっと皮や脂はトロトロに仕上がりました。昆布、鶏肉、そして野菜のうま味が渾然一体となったスープはまろやかで、キリッとしたポン酢とも相性バツグンです。これが家でできたら、絶対に自慢できる。
風間:食べにくいからと骨つき肉は敬遠されがちですが、鍋に使うとスープはやはり格段においしくなりますね。骨付きブツ切りをスーパーで見つけたら、水炊きを作ってみて欲しいです。
確かに、ただのもも肉とはワンランク違う鍋になったという印象がありました。
今回「水炊きレベルアップ術」は5つでしたが、どれもちょっとした工夫と簡単なルール。これだけで家の水炊きがグレードアップするから、ぜひ試してほしいですね。
いやあ、お腹いっぱい。今回は野菜もたっぷりだったしご飯を食べなくとも満足してしまいました。じゃあ片付けますか。
風間:半澤さん、何をいってるんですか。鍋は「〆」までおいしくいただかないと! 水炊きといったらやっぱり雑炊でしょ。
マジすか、やっぱりやっちゃいますか。お腹いっぱい発言は撤回します。けれど、もう具材はないですよ。
風間:大丈夫、スープだけで感動の雑炊ができるんです!
本日の〆「感動のたまご雑炊」
【材料】(4人前)
- 残ったスープ 適量
- たまご 1つ
- 小ねぎ 適量
- ご飯 1膳半〜2膳
- 塩・こしょう 適量

①スープを沸騰させる。

②塩を小さじ1/2だけ入れて味見しましょう。

③塩気が足りなければ1〜2つまみ程度足します。

④こしょうを2振りを目安に入れる。スパイシーにならないよう注意。

⑤ご飯を入れてサッとほぐし強火で煮る。2、3分たって表面がぽこぽこ泡立ったらOK。

⑥箸を使ってたまごを糸状に流し入れ、箸で1、2回ほど混ぜたら火を消してフタをして1分ほど蒸らし小ねぎを散らして完成!

火にかける時間が短いのがポイント。
雑炊を考えなく作るとベッタベタのおじやみたいになってしまいがちですが、短時間で作れば上手に雑炊が作れるんですね。元のスープがおいしいから、調味料も少しだけでOK。化学調味料は不要です。
風間:シンプルイズベストですよね。塩とこしょうは、スープの味を引きしめるために入れるので、味見しながら上手に調節しましょう。

食べてみるとお米はサラサラ、たまごはふわトロ。
お腹いっぱいでも、スルッと食べられる雑炊でした。とにかく味がやさしい。
この雑炊をいただくために水炊きを作ったのでは、と錯覚するほどの絶品でした!
今回は家で感動ものの水炊きを食べる方法を研究してみました。とはいえ「研究」というような難しさはありませんでしたね。
いつもより少しだけ頑張れば、家でも感動ものの水炊きを作れちゃうんですよ。皆さんも帰りがけにまずはスーパーで「骨付きもも肉ブツ切り」を探してみて!
書いた人:半澤則吉

1983年福島県生まれ。2003年大学入学を期に上京。以来14年に渡りながく一人暮らしを続けている。そのため自炊も好きで、会社員時代はお弁当を作り出勤していた。2013年よりフリーライターとして独立。『散歩の達人』(交通新聞社)にて「町中華探検隊がゆく!」を連載するなどグルメ取材も多い。朝ドラが好き。


