
こんにちは。いつも「ほろ酔い調査隊」という連載でお世話になっております、メシ通レポーターのパリッコと申します。普段はタイトル通り、居酒屋さん、酒場を舞台に記事を書かせてもらっているのですが、今回はどうしてもメシ通読者の皆さんにお伝えしたい情報があり、今こうして、キーボードをカタカタと叩いております。
タイトルにある通り、僕は多くの方が好きだと語る、飲んだあとの締めのラーメン、いわゆる“締めラー”ってやつをほとんどやらないんです。最後にラーメンを食べられるほど胃袋に余裕を残すくらいなら、チビチビとしたつまみで一杯でも多くのお酒を飲んでいたいっていう、意地汚い男です。また、そもそもラーメンがそこまで大好物ってほどではなく、ラーメンとカレーを比べたら、大いにカレー優勢、そういう男でもあるんです。
ところが仕事柄、雑誌媒体などでラーメン屋さんを取材させてもらう機会なんかもけっこうあって、ありがたいことに、ここ一年だけでも何十杯ものラーメンやつけ麺をいただいてきました。どのお店もこだわり、創意工夫、そして愛を一杯のどんぶりにこれでもかと詰め込まれており、「ラーメンとはこんなに美味しいものだったのか!」と、日々自分の中で広がってゆく世界に目を輝かせている次第です。
って、この導入、ラーメン好きの方からしたら「なめんな!」って話ですよね。面目ないっす……。
とにかく! そのような日々の中で、特に自分の好みにぴったりだったり、気迫すら感じる完成度の高い一杯に出会うと、脳がしびれるような、胸を撃ち抜かれたような、感動でしばし無言になってしまうような体験をすることがあるんですね。今回は、そんな中から特に僕が「もう大好きすぎ! 心中してもいい!」とすら思ってしまった、至高の一杯をご紹介したいと思います。
麺を覆い尽くす、迫力満点の豚バラ“とろ肉”

ここです! ここ!
「とろ肉つけ麺 魚とん」です。東京は神田にありまして、地下鉄の「小川町」「淡路町」あたりが最寄駅になります。

▲カウンターのみの清潔な店内
ラーメンというと、とかく、ダシには何と何と何を使って、塩は内モンゴルのなんたらをはじめとした何種類のブレンドで、みたいなこだわりの部分が前面に出てきがちですが、そういう話は後ほど、申し訳程度に触れますので、とにかく注文しましょう! 早く食べたい。
店名の通り、看板メニューは「とろ肉つけ麺」になります。麺を浅草開花楼製の「中太」と独自の「平打ち極太」の2種類から、スープを「魚介豚骨」と「カレー豚骨」から、それぞれ選ぶことができて、どの組み合わせも絶品なので、自分なりの好みを探してみてくださいね。今日はまずオーソドックスに、中太麺×魚介豚骨スープの組み合わせからいってみましょう!
ワクワクしながら待つこと数分。
お、いよいよ待望の「とろ肉つけ麺」が到着!

ドーーーン!!!
いや、テンションあがる! 見てくださいよこの麺を覆う豚肉! そう、こちらの最大の売りと言えるのがこの「とろ肉」で、僕も初めて見た時は思わず目をゴシゴシこすってしまったほど。
写真より実物の方が絶対にインパクトあるので、それをお見せできないのが悔しいくらいなんですが、本当にどでかい豚肉が、麺が見えないくらい隙間なく敷き詰められていて、すごい迫力です。これでお値段が900円の一番基本のやつですからね。豚バラ肉至上主義の自分としては、すでにうまい!

っていうか、外の看板の写真より実物の方が全然豪華!これじゃあ逆詐欺じゃないですか!(満面の笑み)
丁寧に脂を落としつつ、煮込みに13時間、熟成に2日間もの時間をかけるため、店員さんはローテーションで早朝にお店に出てこなければいけないという、ありがたい「とろ肉」。

▲近寄るほどに迫力倍増
これをペロッとめくってみますと、

▲ついに顔を出した頼りがいのありそうな麺
で、肉が見ての通り、全っ然薄っぺらくない! 箸にズシリと重みを感じます。ホロホロと繊維に沿って崩れながらもなんとか持ち上げた一片をまずはそのまま口へ運ぶと、甘辛く優しい味わいと豚肉独特の旨味を広げつつ、トロっととろけて、あっというまになくなってしまいます。あー、この瞬間、たまらん!
ちなみに、この肉の柔らかさを証明する面白いエピソードを伺ったことがあるんですが、以前に店員さんが、仕込んだとろ肉が入ったバットを手を滑らせて床に落としてしまったそうなんです。そしたらなんと、バシャーン! という音とともに肉と漬けダレが霧散して、跡形もなく消え去ってしまったそうで。つまりはこのとろ肉、ほぼ“液体の手前”って話ですよ。
麺は並盛、大盛、特盛までが同一料金!
次にこちら、

▲魚介豚骨スープ
に、肉だけを浸して食べてみましょう。国産豚の生ゲンコツ、鶏肉からとった動物系と、カタクチイワシや羅臼昆布からとった魚介系を合わせた、深みのあるダブルスープです。濃厚だけどトゲトゲしくなくて、どこか優しい味わいにまとまっているのもいいんですよね。これらの旨味が、すでに絶品なとろ肉に絡んでしまった日には、幸せ以外の言葉が見つからないです……。
さぁ、あとはもうプリプリと歯切れのよい麺をスープに浸し、

▲とろ肉がなくても通いたい、完成されたつけ麺
時に肉とともに、時に麺の小麦味のみを噛み締めながら、無心ですすりこみましょう! 食べるほどに美味が積み重なり、脳内麻薬出まくりの幸福な時間をきっと過ごせることでしょう。
ちなみに、

スープにも肉の破片がゴロゴロ。
やりすぎですって(笑)。

最後はスープ割りでほっこりと締め
はぁ、ごちそうさまでした。今日も幸せだったな!
麺は並盛、大盛、特盛までが同一料金で、さらに「肉ダブル(1,150円)」「肉トリプル(1,350円)」なんて頼み方もできるそうですが、ごく一般的な食事量の30代男性である自分だと、並盛の肉追加なしで十分満腹。しばらくは「苦しい~」なんてうなってるくらいなので、自信のある方のみ、様子を見ながら挑戦してみてください。
美人店主、激旨の秘密は母国の味
ところでここ「魚とん」は、つけ麺だけではなく、お店の成り立ちにもものすごく興味深いエピソードがあるんですよ。それを知ってから食べると、さらにありがたみも増すってもんなので、この場を借りてご紹介しますね。
まず、店主さんが日本のラーメン屋さんとしては珍しくて、こちらの

フィリピン出身の女性、カンラスさんです。
す、すごい美人ですね! そのせいか、オープン当初は「話題作りだろう」なんて心無いことを言うお客さんもいたようですが、すでにこの地で7年以上もお店を続けてこられ、地元にすっかりと定着。常連さんの中にはファンも多いです。
カンラスさんは、もともとこの場所にあった、別のチェーン系ラーメン店の従業員さんだったそうなんですが、母体の会社による経営が立ちゆかなくなり、その店はわずか数年で閉店することになってしまいました。
当時6人いたスタッフたちからは自然と「次の仕事どうする?」「あそこの飲食店が待遇いいらしいよ」なんて話題が出ますが、カンラスさんだけが「今いるスタッフで、ここでラーメン屋を続けることはできないの?」とご提案されたそうです。
しかし、いちからお店を作り直し、経営を立て直すなんて並大抵のことじゃない。「資金はどうする?」となればなんとかしてかき集め「残った設備ローンを引き継ぐには新たに法人登録が必要」とわかれば「会社ってどうやって作ればいいの?」と、とにかく前向き。
怖いもの知らずとも言えるそんな情熱に感化され、スタッフたちもアイデアを出し合って、ついに「とろ肉つけ麺 魚とん」はオープンしたそうなんですね。だから、もとは一従業員だったカンラスさんが、今やお店の店主。
男性スタッフさんは「カンラスさんは本当に男前なんですよ。肉だって“もっと乗せた方がお客さんが喜ぶから!”ってどんどん増やしていって、ついにこんなことになっちゃって」と笑って話されていましたが、なるほど、そういう経緯があってこそ、このようにサービス精神満点の、とんでもない一杯が生まれたんですね。うん、納得。
ちなみに、フィリピン出身という経緯は味の方にも活かされていて、例えば先ほどいただいた魚介豚骨スープにも、アクセントにナンプラーや、フィリピン独自のサトウキビから作られるお酢などが使われているのだとか。日本人が日常的に食べるのに全く違和感はありませんが、それが抜けてしまうとやはり味が完成しないそうで、ぜひ注意深く味わってみたい箇所です。
とろ肉の方も、肉やジャガイモ、ニンジンなどを煮込んで作る、フィリピン版「肉じゃが」のような料理「アドボ」が味付けのベースになっているそうです。ちょっと甘めで、これまた日本食に通じる安心感のある味付けなんですが、そこにはカンラスさんのお母さんから受け継がれてきた「高級でない食材でも手をかけることによって美味しくいただく」という、母国の思想までもが詰まっていたんですね。
濃厚なカレー豚骨スープに、白米投入でシメ!
さて、一杯食べれば身も心も満足な「魚とん」のつけ麺ですが、平打ち麺、そしてカレースープの方も気になりますよね? はい、ご紹介しましょう。

バーーーン!!!
これまた大迫力。そして、オリジナルの平打ち極太麺の、とろ肉に負けないインパクト!

こっちも手強そうだ……
かつて出会ったことのないぶっとい麺です。

▲カレー豚骨スープ
豚骨をベースにしながら、各種の野菜や肉がドロドロに煮込まれて濃厚な状態。こちらもまた、マンゴーチャツネや料理用バナナといったフィリピンのアクセントが効いており、甘く華やかな香りとしっかりとしたスパイスのバランスが素晴らしい!

平打ち麺によく絡めて……
ムチムチ、フワフワとした食感で、すするというよりはモグモグ食べ進めるというイメージの、食べ応えのある麺なんですが、もったりとしたカレースープがよく絡んで最高です。中太麺、魚介豚骨スープと甲乙つけがたい美味。

そんでこちらも具沢山。
カレー豚骨スープの締めの定番はスープ割りではなく、大きめのレンゲに一杯分の白米をポンッと投入する、

▲レンゲごはん(トッピングライス150円)
こんなの……うまいに決まってますって! 「麺じゃなくてカレーライスで出してもらえない?」って言う常連さんも少なくないそうなんですが、それも納得。
というわけで、個人的にこれからも絶対通ってしまうであろう名店「とろ肉つけ麺 魚とん」さん。ご興味のある方は、是非足を運んでみてくださいね!

最後にもう一度、とろ肉の迫力を。
お店情報
とろ肉つけ麺 魚とん
住所:東京都千代田区神田小川町1-7 神田小川町ハイツ1F
電話番号:03-3233-3377
営業時間:月曜日~金曜日11:00~21:00、土曜日・日曜日・祝日11:00~15:00
定休日:不定休



