【そばマニアが本当は秘密にしたい穴場店】ちょっとシャイな店主が語る「そば愛」とは

日本中のそばの名店を追いかけて、今日も東京ソバット団が東奔西走! ジャンク系から本格派まで、ガツンと濃い系から淡く優しい味まで……進化しているそばの世界をご紹介します。

f:id:Meshi2_IB:20190220151116j:plain

地元民も気づかぬ謎立地のそば店が成功した深いわけ

こんにちは、東京ソバット団のソバット本橋です。

今回は「なんでこんな場所で?」と思ってしまう、辺鄙(へんぴ)な場所にあるそば店を紹介しましょう。

f:id:motohashitak:20190219121822j:plain

そのお店のいちおうの最寄り駅は、東武東上線の東武練馬駅。

 

f:id:motohashitak:20190219121916j:plain

南口を出まして商店街を抜けたら、線路沿いに下赤塚駅方面に進みます。

しばらく行ったら左折して川越街道方面へ。東武練馬駅から歩くこと10分ちょい。

 

f:id:motohashitak:20190219122125j:plain

周囲に飲食店はゼロ。車がビュンビュン走る川越街道沿いにある、「蕎麦たりお」がそれです。

 

f:id:motohashitak:20190219122213j:plain

ちなみに近くのランドマークは陸上自衛隊練馬駐屯地と、練馬自動車検査登録事務所(いわゆる車検場)。けっしておいしいものにありつけそうなロケーションではないのですが、ここのそばが絶品なんですよ。

 

まずは天もりそば(690円)のルックスを見てください。

f:id:motohashitak:20190219122236j:plain

自家製麺のそばは白っぽくて細く、ツルッとした喉越しで繊細な香り。

甘めのそばツユも、そばに良く合っています。天ぷらは油切れのいいサクッとした衣に包まれて、具の味わいもしっかり。

天ツユも別にちゃんとついていて、これ、普通のそば店だったら、1,000円近くするはずですよ。ちなみにもりそばは380円です。

 

f:id:motohashitak:20190219122329j:plain

いやはや、こんなところでこんなお店でこんなそばが食べられるなんて、正直、驚きです。この場所って、最近は飲食店ができては閉店してを繰り返していた鬼門らしいんですよ。

実は初めて来て以来ずっと「なんでこんな場所でやっているんだろ? 駅前でやれば絶対に評判店になるのに」と思っていたんですが、しっかり定着して続いているんですよ。

いったい、どういう狙いで「蕎麦たりお」を始めたのか、店主の山本さんに聞いてみました。

 

「あえてお客さんの少なそうなところを選んだ」

f:id:motohashitak:20190219122411j:plain

ちなみに店主の山本さん、かなりシャイな方で顔出しはNGとのこと。

体はガッシリしていますが、話してみると真面目で優しい雰囲気の方でした(店内写真で厨房に立っている方です)。

 

f:id:motohashitak:20190219122620j:plain

▲厨房の奥に鎮座している製麺機

 

山本さんがこちらの「蕎麦たりお」を始めたのは2015年の11月のこと。

山本さんはそれまで、本郷にある「小松庵」という暖簾会系のそば店で働いていたそうです。そして「小松庵」の経営者が引退することになり、自分でお店を始めたのです。

 

f:id:motohashitak:20190219122711j:plain

せっかく独立開業するのに、なぜこんな辺鄙な立地を選んだのか聞いたところ、あえてお客さんが少なそうなところを選んだんですと(!)。

「小松庵」では店長をやっていて、店員にあれこれ指示を出す立場だった山本さん。新しくやるお店では自分だけでそばの調理を全部やりたかったんだとか。

 

f:id:motohashitak:20190219122747j:plain

しかし駅前やオフィス街では昼に集中して大勢のお客さんが来るから、ひとりでは回せない。その点、現在の立地なら、車検場に来る人がバラバラに来るので混み合うことなく、ひとりでもできると。

 

さらに辺鄙な場所だからテナント料も安く、なおかつ人件費がかからないので、そばの質を落とすことなく値段を低く抑えられる。

利用者にとっては「?」な場所ですが、ここは山本さんにとって、まさに理想の物件だったわけなんです。

f:id:motohashitak:20190219122845j:plain

「飲食店は立地が8割」という言葉がありますが、こういう理由での立地の選び方もあるんですね。勉強になりました。

 

ここに来たら絶対に食べて欲しい「たぬきごはん」

さてさて、長年の疑問が氷解したところで、こちらもかなりお値打ちな価格になっている肉そば(540円)もいただきましょうか。

f:id:motohashitak:20190219122954j:plain

これもきれいですね。柔らかめな味わいのツユに、豚肉のうま味がうまくまとまっています。けんかすることのない見事な調和。

細めのそばも良く合う。ホッとする味わいです。

 

f:id:motohashitak:20190219123033j:plain

そして個人的に好きなたぬきごはん(150円)を追加。

ごはんにたぬきとネギをのせて、天ツユをかけたシンプルなものなんですが、これがうまい。油っこいジャンクな味わいではなく、スッキリきれいにまとまっています。

今回は特別に玉子(50円)をのせてたぬ玉ごはんにしちゃいましょう。

 

f:id:motohashitak:20190219123106j:plain

う~ん、これはうまいに決まっているんで、あえて説明しません。

それにしても、どれも味がきれいですね。しつこいようですが、こんなところでこんなお店で食べられるとは、思っていませんでした。お見事です。

 

f:id:motohashitak:20190219123229j:plain

内装やサービスはそっけないけど、そばには自信がある」と、力強く言い切る山本さん。昨今は原材料の値上げや人件費の高騰から各飲食店で値上げが相次ぎ、お店にもユーザーにも厳しい状況となっています。

そんななか、おいしいそばを安く提供している「蕎麦たりお」は、一見、変わったスタイルに見えますが、実はベストチョイスなのかもしれませんね。

 

お店情報

蕎麦たりお

住所:東京都練馬区北町3-1-1
営業時間:月曜日~金曜日10:00~19:00、 土曜日・祝日11:00~15:00
定休日:日曜日

 

東京ソバット団の新刊が絶賛発売中!

メシ通でも連載中の東京ソバット団さんの新刊が発売されました。これまで東京ソバット団が取材してきた数々のそばの名店を、ガイド本として再構成。立ち食いそば食べ歩きのおともに、一冊いかがでしょうか?

立ち食いそば大図鑑 (首都圏編)

立ち食いそば大図鑑 (首都圏編)

  • 作者: 東京ソバット団
  • 出版社/メーカー: standards
  • 発売日: 2019/01/23
  • メディア: 単行本
 

 

書いた人:本橋隆司

本橋隆司

フリーランスの編集、ライターとしてウェブや雑誌などで仕事中。近著は『東京立ち食いそばジャーニー』『立ち食いそば大図鑑』(ともにスタンダーズプレス)そばであればだいたい好き。


撮った人:安藤青太

安藤青太

カメラマン、書籍制作。グラビア系から食べ物系まで何でも撮るカメラマン。本橋とは『立ち食いそば図鑑 東京編』『立ち食いそば図鑑 ディープ東京編』を制作。その他『檀蜜DVD色情遊戯2』『相撲部屋の幸せな猫たち』『東京の、すごい旅館』など。好きな立ち食いそばはコロッケそば。

過去記事も読む

トップに戻る