こんにちは。料理家の美窪たえです。
本日は香港の冬の風物詩、土鍋で炊き上げる香港風土鍋ごはん「ボウジャイファン(煲仔飯)」をご紹介します。
ボウジャイファンは、お米と具材を一緒に炊き込むのではなく、まずお米を炊き、途中でお肉などの具材をのせる「時間差調理」で仕上げます。また長粒米を使うのも特徴の一つです。
使う具材に厳格な決まりはなく、本場ではさまざまな材料を使ったボウジャイファンが存在しています。今回作るのは、ベーシックな鶏モモ肉と干し椎茸を使ったものになりますが、他にも牛ひき肉や、豚軟骨、塩漬けの魚、うなぎが具材としてよく選ばれているようです。
炊き上がった白いごはんと、その蒸気で柔らかく火入れされた具材をまぜ合わせて、醤油ベースの甘辛な特製ダレを回しかけていただきます。香ばしいおこげも楽しめます。
ボウジャイファンならではの作り方を押さえながら進めていけば、いつもとは趣の違うおいしい土鍋ごはんがおうちで楽しめます。
それでは、香港風土鍋ごはん「ボウジャイファン」を作っていきましょう。
材料(2人前)
- 鶏モモ肉……150g
- 干し椎茸(水で戻したもの)……6個程度
- しょうが(千切りにしたもの)……15g
- ジャスミンライス(タイ香り米)……200g
- サラダ油……小さじ1
〈下味用〉
- 醤油……小さじ1
- 紹興酒(または日本酒)……小さじ1
- 砂糖……小さじ1
- 片栗粉……小さじ1
- ごま油……小さじ1
- 黒こしょう……適量
〈特製ダレ〉
- 醤油……大さじ1
- オイスターソース……大さじ1
- 砂糖……小さじ2
- ごま油……小さじ1
香港風土鍋ごはん「ボウジャイファン」の作り方
1.ボウルに〈下味用〉の調味料を全て入れ、まぜ合わせておきます。
2.鶏モモ肉を一口大にカットします。角切りではなく、細長に切っておくと火の通りがよくなります。
3.鶏モモ肉を1のボウルに入れ、軽くまぜて味をなじませておきます。
全体の味付けは、食べる時に特製ダレをかけて調整するので、具材に濃い味をつけておく必要はありません。
また、お米と具材を一つの土鍋でそれぞれ調理するイメージなので、あまり味移りしないように下味の調味料は少なめにしておくのが適切です。
4.干し椎茸は鶏モモ肉よりやや小ぶり(7〜8mm幅)に切り、しょうがと共にボウルに加えたら、ざっと全体をあえておきます。※干し椎茸は水で戻すと膨らみますので、水戻し後の重さで50〜60gを目安に使用してください。
これで具材の下準備は完了です。
ちなみに干し椎茸は、事前にさっと水洗いしてから、干し椎茸がギリギリ浸る程度の水(分量外)で戻しておいてください。できれば半日〜1日程冷蔵庫に置いておき、時間をかけて戻すのがおすすめです。少なめの水でじっくり戻した干し椎茸の食感は格別です。お時間があれば、ぜひお試しください。
5.ジャスミンライスはさっと水で洗い、ザルで水気を切ります。小さめの土鍋(鍋焼きうどんに使うような1人用サイズのもの)に入れ、水180cc(分量外)、サラダ油、塩ひとつまみ(分量外)を加えて軽くまぜておきます。
ジャスミンライスは、日本米のようにとぐ必要はありません。また浸水しなくても炊くことができるため、さっと水で洗う程度で大丈夫です。
ボウジャイファンを作る上で、特徴的なのは長粒米を使う点です。日本ではこの「ジャスミンライス」と呼ばれるタイ米が手に入れやすいと思います。
別名「タイ香り米」とも呼ばれるとおり、トウモロコシを思わせるホクホクとした甘い香りが持ち味のタイ米の最高級品種で、輸入食材売り場等で手に入れられます。
もし日本米で代用する場合には、1時間以上浸水させてから同じように炊いてみてください。
6.土鍋に蓋をして弱めの中火にかけ、蓋の隙間から湯気が出てくるまで8分ほど加熱します。蓋に蒸気穴が開いている場合は、丸めたアルミホイル等を詰めて穴をふさいでください。
ごはん専用ではない土鍋の場合、蒸気が逃げやすく、炊飯に必要な水分が足りなくなって硬い炊き上がりになってしまうことがよくあります。できるだけ水分を逃がさないように蓋の穴をふさぐ工夫をしてみてください。
7.お米を炊いている間に、特製ダレを準備します。
器に〈特製ダレ〉の調味料を合わせて、砂糖が溶けるまでまぜればできあがりです。砂糖が溶けにくい場合は、軽く電子レンジ(600W30秒目安)で加熱すると溶けやすくなります。
8.8分ほど加熱し、土鍋の隙間から湯気が上がってきたら蓋を取り、鍋底から一度お米をまぜ合わせます。その上に、下味をつけておいた具材をできるだけ平らにのせます。ただし、全面に具材を広げるのではなく、具材の周囲にお米の部分が少し見えるように、円状にのせてください。
9.フチのお米が見えている部分から水100cc(分量外)を回し入れ、再び蓋をして5分ほど加熱していきます。先ほど周りにお米の部分を残して具材をのせた理由はここから水を足すためで、調味料が流れずお米を白いまま炊き上げることができます。
そして、この水を途中で足すことが一番のポイントです。はじめに土鍋に入れた水は「お米を炊くため」の水。ここで足す水は「具材を蒸すため」の水になります。
蒸気となって具材にふっくらと熱を加えてくれるのです。後から水を足すことを考えて、最初の水はやや少なめに入れています。お米の硬さもこれでちょうど良くなります。
10.5分後、再び蓋を開け、鶏モモ肉を一度裏返します。この時点ではまだ半生です。多少面倒ですが、途中で鶏モモ肉の火の通りを確認しておくと、お米の炊き上がりと具材の加熱具合をぴったり合わせられます。
弱火にして、さらに5分ほど加熱していきます。
11.最後に香ばしいおこげを目指して、火力をやや強めて15秒ほど加熱してから火を止め、そのまま10分ほど蒸らせば、ボウジャイファンの炊き上がりです!
水の量や火加減は土鍋によって変わりますので、お米の硬さや鶏モモ肉の加熱具合を確認しながら、水を少しずつ足して加熱時間を延ばすなど調整してみてください。
香港風土鍋ごはん「ボウジャイファン」の楽しみ方
蒸らし時間が終わったら、仕上げにお好みで卵黄をのせ、刻んだ青ネギ(それぞれ分量外)を散らせばボウジャイファンの完成です!
ざっくりまぜ合わせて、特製ダレを回しかけたら熱々を食べましょう。パリッとしたおこげもできています!
まず、蒸気でふっくらと火が通った鶏モモ肉と干し椎茸のうま味が広がります。鶏モモ肉は驚くほど柔らかく、しっとりした食感に仕上がっています。
ジャスミンライスも香り高くしっとりと炊き上がっていて、お米自体のおいしさと具材との相性も抜群です。甘辛な特製ダレは、オイスターソースとごま油の風味が感じられ、おこげの香ばしさとも相まって、非常に奥深い味わいになっています。
ごはんと鶏モモ肉がメインの料理なので、青菜の炒めものやスープなどのおかずがあるとバランス良好です。熱々のごはんをおなかいっぱい楽しんでください!
まとめ
本日は、香港風土鍋ごはん「ボウジャイファン」の作り方をご紹介しました。
土鍋ごはんは火加減などが難しいイメージがありますが、心配な時は途中で蓋を開けて確認しながら、じっくり炊いていけば大丈夫です。お好みの具材で、ぜひ試してみてください。
書いた人:美窪たえ
料理する人、食べる人。J.S.A.認定ソムリエ、SAKE DIPLOMA。OLからバーテンダー⇒日本料理人⇒フレンチコック⇒アメリカンデリという、異色の経歴を持つ料理家。料理のおいしさと酒への思いを発信するユニット[おとな料理制作室]としても活動。著書『おとな料理制作室へようこそ』(ワニブックス)が好評発売中。