「月額制のビール」は本当に実現できるのか
お家で「いつでも生ビールを愉しめるビールサーバーがあればいいのに」って思ったこと、ありませんか?
もし自宅にあれば、いつでもキンキンに冷えた生ビールがあるし、飲みたいだけ飲めるし、泡の量だって自由自在で、毎晩最高の晩酌ができますよね。
夏なら、ベランダでビアガーデン気分を味わったりもできそうじゃないですか。
そんな夢のようなビールライフを叶えてくれるサービスが、なんとビールメーカーのKIRINから提供されているとのこと。
その名も「Home Tap(ホームタップ)」。
おおお、これは欲しい! と思ったものの、設置場所とかメンテナンスとか、コストとか、実際のところどうなの? という疑問も湧いてきます。
そこで、中野にあるキリンビール株式会社さんの本社へお邪魔して、Home Tapについてとことん聞いてみることにしました。
「社員だけが知っている味」のビールが届く
対応くださったのは、マーケティング部新規事業創造担当 Home Tapチームリーダーの山口洋平さん。
ありとあらゆる疑問質問にお答えくださるとのこと。
──今日はよろしくお願いします! まず、「Home Tap」がどのようなものなのか教えてください。
山口さん:キリンビールの工場でつくられたこだわりの生ビールを、ご家庭に直送。専用のレンタルビールサーバーでお楽しみいただける会員制サービスです。「Tank to Glass(タンクからグラスへ)」をコンセプトに、まさにつくりたての味をご家庭へお届けしています。
──「つくりたて」って、普段のビールとどう違うんですか?
山口さん:つくりたてのビールは雑味がなく、芳醇なホップの香りがして、しかもとってもまろやかなんです。でも、ビールって、酸素や光の影響はもちろん、温度や振動、経過時間などでも味が変わってしまうので、その美味しさは工場でしか味わえないんですよ。
──つくりたてならではの味わいなんですね。
山口さん:キリンビールの新入社員は、工場研修で全員がその味を体験するのですが、「僕らだけが知っている“タンクから注ぐつくりたて生ビールの美味しさ”をご家庭で味わってもらうにはどうしたらいいだろう?」との思いから「Home Tap」の開発に至りました。それが、こちらです。
▲通常は右のビールが2本セットで届きます。左はプラン内で選べるクラフトビール
──えっと……透明の容器で思いっきりビールに光が当たっていますけど……。
山口さん:ビールが劣化しにくい特殊コーティングを施したペットボトルなので、大丈夫です。これにつくりたてのビールを詰め、さらに光を遮断する段ボールに入れて工場から直送するので、新鮮な状態をキープしたままお手元に届きます。
──お店のビールサーバーみたいなでっかい樽を想像していたのですが、思っていたより小さいんですね。
山口さん:1本の容量は1リットルなんです。開封後2日程度で飲みきれて、冷蔵庫で保管もしやすい、ご家庭向けのサイズになっています。
誰でも美味しくビールが注げるように
──ボトルがこのサイズなら、ビールサーバーもコンパクトなんでしょうか?
山口さん:幅23センチ、奥行き28.3センチ、高さ35.5センチなので、ご想像のサーバーみたいに場所を取る心配はありませんよ。ちょっと大きめのジャーポットと思っていただければいいかもしれません。
──デザインもおしゃれですね。
山口さん:インテリアに馴染むデザインも意識しました。さらに、いちばんおいしく味わえる最適な冷たさをキープできる保冷機能や、劣化を防ぐ酸素に触れない構造など、機能面も重視しています。でも、いちばんこだわったのは扱いやすさですね。セッティングも簡単で、ビールも泡もタップを軽く倒すだけなど、だれでも確実に美味しいビールが注げるようになっています。
▲サーバー内部。セッティングはボトルにキャップをしてインするだけ
──ビールサーバーってメンテナンス次第で味が変わるって言いますけど、やっぱり管理は大変ですか?
山口さん:メンテナンスは、ボトルと注ぎ口をつなぐノズルをサッと水洗いしていただくだけです。ノズル自体も、およそ半年に1回、無料で新しいものが届くので、劣化する前に交換していただけます。新鮮なビールの美味しさを実感していただくためのツールとしてレンタルしているので、使い方の説明や不具合時の対応など、サポートもしっかり行っていますよ。
──メンテナンスが簡単で、誰でも確実に美味しいビールが注げるサーバー……夢のような商品ですね。
山口さん:ですが実は、初期のサーバーは上手く注げないなどのお客様からのお声があり、改良のために1年ほどお休みをいただいたんです。その成果が大きいと思います。
「上手く注げない」「使いにくい」と指摘されて
──改良のために1年もお休みを……その話は、ネットで話題になっていましたね。いったい何があったのでしょう?
山口さん:これまでプロ用のマシンを作ったことはあっても、ご家庭向けを手掛けたことはなかったんですよね。そんな生まれたてのサービスだったこともあってか、お客様から使い勝手に困られている、との声が聞こえてきてしまったんです。
──具体的には、どんな声が寄せられたんですか?
山口さん:「泡だらけになって、うまく注げない」などのお声をいただきました。
──なるほど、そういう声があったのですね。
山口さん:そこで、実際にお客様のご自宅へ足を運び、現状をお聞かせいただきました。すると、サーバーに慣れている自分たちでは気づけなかった使いにくさが浮き彫りになったんです。
▲例えばキャップ。初期のキャップは、締め方によっては炭酸ガスが抜けて注ぎにくくなっていたとのこと。そこで、締めやすくガスの抜けにくい仕様に改良したそう
山口さん:お客様からの声を聞くうちに、今こそ質を高めなきゃいけない時期だと判断し、とにかく改善できるところは改善し尽くそうと休止に踏み切りました。
──1年って、けっこう長いですよね。
山口さん:お客様からお聞きした改善点が本当に直っているのか、スタッフが家庭でテストをして再度改善策を見直すなど、ちょっとずつ改良を積み重ねていったので、やはりそれなりの時間を要しました。
でも、再開後はコールセンターへの問い合わせが激減したので、お客様の「楽しみに待っていたのに、うまく使えなくてガッカリ」という思いを失くせたのは、いい時間の使い方になったと感じています。
──利用者の声をもとに改良したことで、誰にも使いやすいサーバーになったんですね。
山口さん:改善を重ね、絶対に美味しく飲めるようにしていくのが僕らの使命です。もっと簡単にできないか、美味しく注ぐコツをわかりやすく伝えるにはどうしたらいいかなど、今も改良、改善は続けていますよ。タップのハンドルの重さとか、お客様が気づかないレベルの細かい改良もありますけどね。
素人でも美味しく注げるのか
改良を重ねた「誰にも使いやすいサーバー」は、本当に誰でも美味しく注げる仕組みになっているのか?
サーバーからビールを注ぐ経験は学生時代のアルバイト以来、20年以上ぶりの筆者が実際に体験させていただくことに。
タップはそれほど力を入れなくても倒せる軽さ。
木の質感とサイズ感も、手に馴染んでいい感じ。うん、確かに注ぎやすい。
難なくビールが入ったところで、お次は泡。タップを逆方向に倒してみます。
すると……。
「うおー!」と思わず声を上げてしまったほど、きめ細かくクリーミーな泡が出てくる出てくる。
あまりに滑らかすぎて、焦ってレバーを戻してしまったのですが、後から泡をちょこちょこ足せるのはサーバーのいいところ。
微調整でこんなに美味しそうに仕上げることができました。
せっかくなのでお味も拝見。
山口さんのおっしゃる通り、雑味のないすっきりとした味わいながら、ホップの風味とコクはしっかり感じられて、ひと口で普段飲んでいるビールとの違いを実感しました。
つくりたてのビールがこんなにまろやかでさわやかだったとは……。
「自宅にビールサーバー」の現実問題とは
──想像以上の美味しさでした。これが家で楽しめるとなれば、欲しいと思う人もかなり多いと思います。ちなみに料金ってどのくらいなんでしょう?
山口さん:月額基本料金は2,900円(税抜)、ビールは2本セットを月2回のお届けで4,600円(税抜)なので、スタンダードなプランならひと月で7,500円(税抜)になります。ビールは2本セット2,300円(税抜)単位で追加することもできますし、2019年の4月からは、4本セットを月2回お届けする11,300円(税抜)のヘビープランも登場しています。
──ビールの中身だけでも1リットルで1,150円ですか……。金額的にはちょっと高いと感じます。
山口さん:正直、高いと思います。ただ、お届けするビールは、料飲店やギフトでしか取り扱っていない「一番搾りプレミアム」です。東北産ホップ「IBUKI」の第一等品をふんだんに使い、一番搾り麦汁を使用したこだわりのビールの味わいを楽しめるんです。また、クラフトビールの「SPRING VALLEY BREWERY 496」など、期間限定ビールも味わうこともできるんですよ。
──なるほど。でも、私はビールは毎日飲みたい派なので、コスト面はまだちょっと気になりました。
山口さん:毎日となると、確かに厳しいですよね。なので僕は、普段は一番搾りの缶ビールで、ゆっくり飲める週末だけはHome Tapを楽しむといったふうに、使い分けています。
──なるほど、缶ビールと使い分けですか。それなら自宅サーバーライフも実現できそうな気がしてきました。ちなみに、実際の利用者はどんな方が多いのでしょうか?
山口さん:ご利用されているお客様は、量より質にこだわるタイプの方や、ワイン党だけど、最初の1杯はビールを楽しみたい方、ひとり暮らしで家飲みを満喫したい方や、週末だけ夫婦でお酒を楽しまれる方などですね。「Home Tap」は、趣味の領域というか、ビールを「超嗜好品」として楽しんでいるお客様が多いように感じます。
──サーバーの楽しみ方などはいかがですか?
山口さん:通常このサーバーは電源供給で冷えた状態をキープするのですが、ボトルを冷やしてからセットすればコードレスでも使えるので、庭先で雰囲気を味わいながら飲むとか、サーバーをお花見などに持参したという話も聞きましたね。
工場のつくりたてのビールの味を、自宅で
──Home Tapは、「ビールのある日常」をちょっぴり贅沢にしてくれるといった感じなんですね。
山口さん:キリンビールの工場見学では、つくりたてのビールの試飲ができます。そのつくりたての味を、自宅で好きなだけ楽しめると思っていただけたらこの商品のことをイメージしやすいかもしれません。沖縄と一部の離島を除く全国に対応していますし、とにかく美味しいビールなんです。もとより騙す気はないですが(笑)、とにかくいちど騙されたと思って飲んでみてほしいです。
自宅サーバーで毎日生ビール三昧……するにはまだちょっと贅沢な価格帯ではあるものの、寛ぎたい時間にワンランク上のビールライフを楽しんだり、ホームパーティやBBQでおもてなし用のビールにしたり、ひと味違ったビール時間を過ごすのにはかなり良さそうです。
とはいえ、こんなサーバーが自宅にあったらついつい飲み過ぎちゃうかも……なんてことを考えながら、つくりたての味の余韻に浸って帰路についたのでした。
う~ん、「自分専用サーバー」、憧れるなあ。
※Home Tapは会員登録制のサービスです。現在、サービス本契約のご案内は、2019年2月28日までにプレ会員登録をいただいた方から順にご案内しているとのことです。
書いた人:千葉こころ
自由とビールとMr.Childrenをこよなく愛するフリーライター。旺盛な食欲と好奇心を武器に、人生を楽しむことに全力を注いで滑走中。