とんこつラーメン、もつ鍋、水炊き、焼鳥など、博多にはいろんな名物がありますが、私が個人的にオススメしたいのは、ずばり餃子。
餃子といっても、ラーメン屋のサイドメニューでよくあるアレでも中華料理店で出てくる皮が厚いもっちもっちのアレでもありません。
博多の餃子はひとくちサイズ
餃子が主役の専門店があり、1人前8〜10個が盛られた小さな餃子を一人あたり2〜3人前注文し、ビールや焼酎をグビグビやります。
分厚い鉄鍋で両面をカリカリに焼いたものや片面をしっとり蒸し焼きにしたソフトなものなど、店によって餃子のスタイルは様々。
いろんなひとくち餃子を食べ比べるのも博多の楽しみです。
平日は仕事帰りのサラリーマン、休日は観光客で賑わう旭軒博多駅前店
さて、今回紹介する「旭軒 博多駅前店」は昭和29年創業の老舗。長さ約6cm、重さ7gという、博多ひとくち餃子の中でもひときわ極小サイズで評判の店です。
天気などから客の入りを予想し、仕込む餃子は1日なんと4500〜6000個! 売り切れれば早仕舞いし、残ると次の日には風味が変わってしまうので廃棄してしまうという徹底ぶりで、必ずその日に作った餃子だけを出しています。
店の奥ではおばちゃんたちが朝8時から開店1時間前の14時ごろまで、せっせせっせと皮をのばし、餡を詰めて、6000個の餃子を準備します。
餃子は1人前10個350円(写真は2人前)。薬味に赤い柚子胡椒を使うのもこの店の特徴です。豚と牛の合挽き肉に玉ねぎ、キャベツ、ニラなど、調味料も含めて14種類の素材を細かく刻んだ餡はサラサラの舌触り。
片面だけこんがりと焼かれ、食べるとサクサクの軽い食感で、2〜3人前と言わず、男性なら4〜5人前は食べられそう。しっかり下味がついているので、酒のつまみだけでなく、ごはんのおかずとしても十分いけます。
皮が2.4g、餡が4.6gで合計7g。
長年の餃子づくりで培ったこの比率で旨い餃子が生まれるのだ!
粒を感じさせないほど細かく刻んで練られた餡で、食べただけでは何が使ってあるのか分からない。これが飽きずに食べられる秘訣なのだとか。
餃子以外のマストなメニュー
メニューは至ってシンプルで、餃子は焼餃子と水餃子がある。たくさん食べるときは焼餃子と水餃子で変化をつけるのがオススメ
これが博多ひとくち餃子の一つの柱といえる旭軒の餃子ですが、この店にはもうひとつ、誰もが必ず注文するメニューがあります。
博多ひとくち餃子の店はどこも餃子の焼き上がりを待つ間につまむ、先付け的な料理があるのですが、この店のもう一つのマストメニューはその先付け料理である
「手羽先」1本90円。
タレに漬け込んだ手羽先の唐揚げで、手間をかけずにすぐ出せるよう大量に作り置きしてあるのですが、これが冷めていても香ばしくおいしいスグレモノなのです。その旨さの秘訣をご主人の松尾秀雄さんに訊いてみました。
この道51年の松尾秀雄さん
──みんな注文する手羽先、作り置きのわりに妙に旨いんですが、どうやって作ってるんですか?
「前の日からタレに漬け込んだ手羽先ば30分かけて揚げるとたい」
──30分も!?
「鶏は皮の下に脂のあるけん、揚げたては旨かけど、冷えたらべちゃべちゃになって美味しくなかやろ。だけん、じっくり揚げて、脂ば落とすと。ふつうは揚げもんばしたら油が減るとけど、手羽先ば揚げた後は鶏油の出て油が増えとるもんね。うわっはっは」
──1日どれぐらい揚げるんですか?
「週末でだいたい500個ぐらいかな」
──うっへ〜
「餃子は手がかかるけん、手をかけんで済むものと思うて作り置きしとくと。そいでもたまに『冷めてるから温めてください』とか言うとのおるけんね、おかしかろ。うわっはっは」
大きなバットに大量に並ぶ手羽先
二人で行ったとすると、「ビール2本、餃子5人前。あ、それと手羽先4本ね」というのが標準的な注文の仕方だ。
旭軒の餃子の前のお約束。手羽先1本90円。
締まった身の歯ごたえと醤油ダレの風味、香ばしさで、ビールが進む、進む。この手羽先を2〜3本つまんでいると、お待ちかねのひとくち餃子がやってくる。
しかし、中には取り憑かれたように手羽先を食べ続ける愛好家も。遅い時間に行くと売り切れていることもよくあるので、ご注意を。
お店情報
住所:福岡県福岡市博多区博多駅前2-15-22
電話:092-451-7896
営業時間:15:00〜OS24:30
定休日:日曜