東京ならではの楽しみというと、何を思いますか?
そりゃたくさんあるでしょうが、私の場合は「県のアンテナショップ巡りができる」というのが思い浮かびます。
都内各所にあれど、新橋から銀座、そして有楽町から日本橋にかけては5分~10分も歩けばどこかのアンテナショップがあるという活況ぶり。
入ってみれば必ず何かしら「これは……一体?」と思うような、その地ならではの見慣れぬ食べ物、飲み物に出くわします。それらを試してみるのが、なんとも楽しい。アンテナショップ巡りは一種の小旅行、食好奇心の強いメシ通読者の皆さんならきっと楽しめると思いますよ!
日本橋ふくしま館 MIDETTE
東京メトロ「三越前」駅から徒歩3分、福島県のアンテナショップ「日本橋ふくしま館 MIDETTE(ミデッテ)」に到着です。
こちらが正面入り口。
館長の根本卓也さん(45)が出迎えてくれました。根本さんは福島県いわき市のご出身だそう。
根本館長:ミデッテ、とは福島の言葉で「見ていって」という意味です。日本橋に来たらぜひぜひ見ていってくださいね。
さあ、さっそく中へ……と、その前に。
ちょっと福島に関して プレ知識を。
福島は、上記の地図で色分けされている3つのパートでそれぞれカルチャーが異なります。右の青いところが「浜通り」と呼ばれる海沿い文化のエリア。
真ん中のピンクに塗られたところが「中通り」と呼ばれる中部地域。
そして左側の緑のところが「会津」と呼ばれる山間部を含む地域です。海と山、そしてその中間部。食べものも必然的に変わってきます!
ちなみに福島県って、茨城、栃木、群馬、新潟、山形、宮城の6県に隣しているってご存じでした?
さあ前置きはこのぐらいにして、中に入りましょうか。
「浜通り」は練り物天国
正面玄関を入るとこんな感じで、奥に続いています。都心のアンテナショップとしてはかなり広めの部類です。
「浜通り」のプロダクツからご紹介しますよ。すぐ隣が海、魚介が名物なのは言うまでもありません。
この地域の人々に愛されてきた魚といえば、サンマやキンメ、メヒカリといった魚が代表的なもの。
それらの加工品がいっぱいです。全国の練りもの好きよ、ご注目!
個人的なおすすめ、3つをセレクト。ちょっとむいてみましょう。
上から
- めひかり焼かまぼこ(154円)
- さんまのぽーぽー焼風蒲鉾(216円)
- かつおのたたき風蒲鉾(278円)
いずれも、いわきでよく食べられる魚をカマボコに加工したもの。メヒカリは特にいわき人の大好物なんです。
根本館長:そうですね、私も小さい頃からやっぱりよく食べました! 地元ではから揚げにして食べることが多いんです。
私も最初、「メヒカリをカマボコに?」と驚きました。しかし食べてみれば上品なのにうま味はしっかり濃厚。うどんなどに入れるのもよさそう!
サンマのカマボコは、「ポーポー焼き」という地元の名物料理があるんですね。おろしたサンマをたたいてショウガ、ネギ、味噌で味つけして焼いたもの。いわばサンマのなめろうを焼いたような感じ。これをイメージして作られたカマボコなんです。すり身の50%にサンマを使用。サンマ独得のほろ苦さがちゃんといきてますよ! 日本酒のアテにもおすすめ。
かつおのたたき風カマボコは、聞けば「いわきでは、カツオのたたきにはニンニクをたっぷり使うことが多い」そうで、こちらも新鮮なカツオをすり身全量の半分ほど使用し、ニンニクと大葉を練り込んで作ったもの。それぞれの風味がきちんと感じられて、“おとなの魚ニソ”として最高だと思います。ちょっとあぶって七味マヨなんかつけてもいいだろうなあ。
ヤバすぎる最強のつまみ?
酒好きなメシ通読者に推しておきたいのが、こちら。
▲海のフォアグラ あん肝のみそ漬(972円)
根本館長:福島県は酒どころでもあり、あとでご紹介しますが当アンテナショップは日本酒コーナーも充実してるんです。スタッフも酒好きが多いんですよ。彼らのおすすめ&人気の商品がこちらなんです。
さっそく試してみましょう。いただきまーす!
のッ……濃厚!!
普段あんまりこういう表現使わないんですが……思わず「ヤバい」と口にしてしまいました。なんだこれ。ひと切れで日本酒3合はいってしまいそうでヤバい!
危険です。お酒を控えている人は危険です。ああああああ酒を欲す!! そしてまた食べたくなる!!!
あん肝のうま味がすごい勢いで凝縮されてますよ。ちょっとウニにも通じる妙味。こんないい酒の肴あるんですね……熱々の白いごはんにも合いそう。
食べ続けたいのを我慢して、次は「中通り」の名物をご紹介!
「中通り」の銘菓「檸檬」
▲三春油揚(248円)
「中通り」のプロダクツでおすすめしたいのが、この三角形の油揚げ。厚みが4㎝ぐらいあるんです。切り込みを入れて刻んだネギや納豆を詰め、あぶって食べてみてください!
久々に作ってみました。うん、やっぱりうまいぞ。
オーブントースターで5分弱あぶりました。いいキツネ色でしょう? カリカリになった皮が香ばしいんです。
味つけはシンプルに醤油やポン酢。また、みりんと少々の砂糖で溶いた味噌なんかつけるのもおすすめ。ボリュームもあって、おかずとしても、つまみとしても◎!
ここいらでスイーツもご紹介。
「中通り」といえばフルーツの栽培が盛んで、とりわけ桃の大産地。アンテナショップでは桃ジュースや桃のお菓子類も定番賞品……なんですが、あえて今日はこちらをピックアップ。
館長、持っていただいてすみません(笑)!
▲檸檬(3個入り 486円)
「檸檬」と書いて「れも」と読みます。
レモンの風味をいかしたクリームチーズの焼き菓子で、ちょっと冷やして食べるとね、おいしいんだ。福島のお菓子といえば全国的には「ままどおる」が有名ですが、この「檸檬」も隠れファンが多いそうですよ。
さて、最後に会津地方です! 「会津」もうまいものたくさんの地域ですが、評判の郷土料理を一品ご紹介します。
酒の肴に! 会津の乾物料理
▲鰊の山椒漬け(648円)
会津の郷土料理で、ニシンという魚を山椒、醤油と酢、みりんなどで漬けたものです。先に説明したとおり、会津は山の多い地方。「海から離れているのに魚の料理……?」と思われるでしょうが、これ身欠きニシンなんです。いわゆる乾物。
冠婚葬祭に欠かせない会津の郷土料理です。江戸時代後期に北海道の身欠きにしんや棒たらなどが北前船にのって新潟につき、阿賀野川を上り運ばれてくるようになりました。(パッケージ裏面より)
「会津」や「中通り」には、このほかにも干し貝柱やスルメなど、魚介の乾物を使った料理が今も残ります。干して日持ちをよくした魚介類は、会津地方の貴重なタンパク源だったんですね。そして今もこのニシン漬け、地元で実際に作られつづけている料理なんですよ。
根本館長:東京では食べられないから、といってここに買いに来る県人はけっこういます。
山椒と酢の風味がきいた味わいで、こちらも日本酒が恋しくなる味。さ、つまみは充分そろいました。酒コーナーに移動しましょう!
日本酒コーナーも大充実
福島県のアンテナショップで最も売り場面積を占めるのは、
酒です!
冷蔵庫もほら、ご覧のとおり。
「口万」「風が吹く」「國権」「会津中将」「奈良萬」など名だたる酒がずらりと並び、常時400種類の銘柄が選べるんです。
根本館長:福島県は、全国新酒鑑評会において金賞受賞数が5年連続で日本一なんですよ。良いお酒がたくさんあることを、もっともっと発信していきたいです。
そりゃもういろんなタイプの酒があるんですが、ここで日本酒大好きスタッフ、石塚さんに個人的なおすすめをうかがってみました。
石塚さん:純米酒「百十五」(ひゃくじゅうご)というお酒は誰からも愛されると思いますよ。飲みやすくて、常温でよし、冷やしてもよし。いろんな食べものに合いますので、食中酒としても最適です。
このちょっと変わった名前、国道115号線に由来するのだそう。115号線沿いにある田んぼで収穫された「夢の香」という酒造好適米で造られたお酒なんですね。値段は四合瓶で1,728円。ちなみにこの「夢の香」というお米も、福島県が開発したもの。
私もいただいてみましたが、すっきり爽やか、角のないやさしい味わい。日々の晩酌にピッタリでした。
根本館長、きょうはご案内いただき、ありがとうございました!
ラーメン好きに耳より情報
ああ、まだまだ紹介しきれません。福島はすぐれた乳製品も多いんですよ。
ここに来たら買ってしまう「べこの乳」、牛乳好きならぜひ飲んでほしいなあ。
取材時にはちょうど奥のスペースで、福島名物・喜多方ラーメンの出張営業も行われていました。
「喜多方老麺 まるや」のラーメン(写真上、700円)、チャーシューがしっかり厚めで4枚のっているのがまずうれしい。クリアスープはすっきりコク深、平打ちでゆるやかに縮れた麺はほどよい弾力。ボリューム感はあるのにあっさりと食べられます。
そして食べ終わってちょうどよい満足感……。うーん、また食べたいぞ!
定期的にこのイートインは開催されるようです。2017年10月の開催日はHPを参照してください。
あの大震災から6年半が経ち、さまざまな特産品がまた以前のように販売され、楽しめるようになりました。
3つの地域から構成される福島県の食文化は本当にバラエティーに富んでいて、豊かなもの。日本橋でぜひぜひ、それらを体験してみてください。
お店情報
日本橋ふくしま館 MIDETTE
住所:東京都中央区日本橋室町4-3-16 柳屋太洋ビル1F
電話:03-6262-3977
営業時間:平日 11:00〜20:00、土曜日・日曜日・祝日 11:00〜18:00
休業日:12月31日、1月1日
※この記事は2017年9月の情報です。
※金額はすべて税込みです。