みなさんは「女性ひとりでも入りやすい飲食店」と聞いて、どんなお店をイメージしますか。この表現、飲食店ガイドとか投稿サイトでしょっちゅう出てきます。
しかし具体的には、どんなお店なんだろう…?
ピンと来るような、来ないような。ともかくもまず、アンケートを取ってみたんです。
【教えてください】よく飲食店紹介に「女性ひとりでも入りやすい店」的な表現がありますが、あなたにとっての「飲食店や飲み屋の入りやすさ」ってどういうポイントですか? ごく個人的なことで結構ですので、気になる点を教えてください。
— 白央篤司 (@hakuo416) March 24, 2019
最終的に317リツイート、184件ほどリプライをいただけました。ご協力くださった皆様、ありがとうございます。それらのご意見、まとめてみましたよ。
入りやすいお店の造り、構造はどんなだ?
- カウンター席がある
- 2人用の席がある(そこを1人で利用できる)
納得ですよね。ひとりで行くからにはカウンターがあるとうれしい。
- 「2人用の席が、4人がけに挟まれていないこと」
という声もありました。両隣が4人客で、その間に自分ひとり……なんて状況はたしかに居づらい。構造面からは離れますが、
- 「相席にならないこと」
- 「団体客が少ないお店」
という声も。
さらに、かなり多く聞かれた声として
- 中の様子が分かること
- 店内の雰囲気があらかじめ分かる
というのがあります。ただし、
- 「適度に見えるぐらいで、丸見えはイヤ」
という意見も多かったですね。
「表から見たとき、カウンターがあるのは分かるけど、一部が曇りガラスになっていて顔のあたりは分からないようにしてあると、配慮を感じます」なんて具体的なコメントもいただきました。
▲以前『メシ通』でも取材させていただいた東京・大井町のバー『Gatito』さん。窓からなんとなく様子がうかがえますが、小物が置いてあって丸見えにはならず。窓の位置は、中のカウンター席に対してちょうど真後ろになります
お客は外から何をチェックしているのか?
- 開放感があるか
- ひとり客が他にもいるか
- 女性客がいるか
- 女性の店員がいるか
- 同世代がいるか
- 照明の具合(暗すぎないか、明るすぎないか)
- 適度に混んでいるか
挙がったのは上記のような点です。
中でも印象的だったのが「店員さん同士が自然に明るく話し合っているか」「店員さんが適度にリラックスしているか」という答え。
共感!
本記事をまとめてる私は男なんですが、店員さん同士の雰囲気って、男女を問わず客の居心地を左右しませんか。
すごく仲良くあってほしいというわけじゃないけど、ギスギスしてたらそりゃ嫌ですよね(笑)。またお店側に「店員の私語などもってのほか!」みたいな空気が漂ってるのもけっこう居づらい。
寄せられた意見の中には「バックヤードの不穏な上下関係が伝わってこないお店」なんていうのも。たまにあるな、そういうお店(笑)。
また、さっきの構造的な話に戻るようですが、
- 隣席が近すぎないこと
という意見もありました。
席が近いと「お隣さんと不必要な会話が生まれやすい。それを避けたい」といった理由から。「女性ひとり」で気にされる点として最も多く挙がったのが次のことなんです。
「放っておいてくれるのか」問題
「女ひとりだと、話しかけられることがある」「それがちょっと……つらい」「困る」という声、実に多かった!
女性ひとりで飲食店を利用する上で、「放っておいてもらえる」というのはかなり重要なポイントのようです。
そして話しかけるのは「お店の人から」と「周囲の客から」の2つのケースが。
まずは店側の人間から話しかけられるケースについて。
- ひとりになりたくて行ってることを分かってほしい
- お店の人がおしゃべりでないとうれしい
- 「放っておいてオーラ」を感じてくれる店員さんがいてほしい
- そっとしておいて
- 話しかけるにしても、深入りしてこないで
もっともですわな。
お店の人からしたら、一種の気づかいや心配りでやっていることが逆効果なケースは多そう。
「こういう対応なら、ひとりでも入りやすい」という指摘を以下にまとめてみました。
- 向こうからあまり絡んでこないが、話しかけやすい雰囲気はある
- 放っておいてはくれるが、冷たくはない
- 店員さんが適度に無関心
- 店員さんが遠からず近からず
微妙なんだけど、絶妙な条件といいますか。共感する人多そうですね。
さて、隣り合うお客さんから話しかけられるケース。
こちらもまた「ひとりを楽しみたくて来ているのだから、そこを理解して放っておいてほしい」という声が多数でしたが、頻出したのが「常連」というワード。
「常連」問題
- 常連が多いお店は、からまれる率が高くて引く
- 常連で固まっているお店は、ひとりでは入らない
- 常連さんが多いとアウェーを感じてしまうから
「常連が多そうかどうかチェックするためにも、外から中が見えるとありがたい」といった声もよく聞かれました。「開放感のあるお店がいい」というリクエストって、単に店内の構造ではなく、こういうことも関係してくるんでしょうね。
もちろん、常連さんの多いお店って良店も多いもの。ただ、その常連さんの発言権が妙に強いこともあれば、ちょっと「自由」に行動しすぎてしまうときもある。
「そういうときに、お店の人が守ってくれるかどうか」が見られています。
- むやみやたらに話しかけられたとき
- しつこくナンパされたとき
- 干渉されたとき
などのケースにおいて「お店の人が止めてくれるかどうか」「サッと割って入ってくれるかどうか」が大事という意見多数。そういった対応がなくて失望した、再訪できないと判断したという声も。
ここでライターの千葉望さんのコメントを紹介しますね。国内外の取材旅行も日常的、ひとりで飲食店を利用される機会も多い千葉さんです。
千葉望:お店の人の場合はもてなしの一環という気持ちもあるんでしょうが、好奇心丸出しの人も中にはいます。ひとりになりたいから行ってるということをわかってほしいですねえ。「人恋しくて来てるんだろ」と誤解されることもある。そういう人もいるだろうけど、私の場合「うるさい!」の一語であります(笑)。そういう女性は結構多いと思う。
だってね、身上調査みたいな話が多いんですよ。自然にはじまる会話はいいんですけどね。人恋しいのは、話しかけてくる人の方かもしれませんね、「相手をしてもらいたい」という……。根掘り葉掘り聞き出そうとする人がいたら、私は逆方向を向いて持参した本を読みます(笑)。
昔、「女性がひとりで飲みに来ていたら、話しかけるのが礼儀だ」って発言していた男性をふと思い出しました。もう20年ぐらい前、当時で50歳ぐらいの人だったかなあ。「冗談じゃないよ」という女の人も多いでしょうね。今でもこういう考えの男性、少なくないものだろうか?
そして、飲食店取材も多い『メシ通』ライター、名久井梨香さんのご意見。
名久井:私の場合はランチと夜飲みでちょっと条件が違うんです。
ランチなら、駅ビルや商業施設に入っているチェーン展開のお店が入りやすい。個人店のおしゃれなカフェなどは、Instagram好きの若い女子とかカフェ好きなおしゃれさんが集まってそうで、入りづらいんですよ。
夜に飲みに行く場合は逆なんです。ちょっと小ぎれいな町中華っぽいお店のカウンター席に座って、ビールと餃子、チャーハンなどで、サクっと飲みたいですね。そうそう、電源やWi-Fiが利用できるお店はひとりで入りやすい。「ゆっくり使ってください」とお店が示してくれている感じがして。
Wi-Fiが用意されていると「ごゆっくりどうぞ」という店側の意思を感じる、って納得ですね。町中華もひとり利用が多いし、ビールと餃子だけでもよし、そこからシメものまでじっくりやるもよしと、楽しみ方も幅広い。
メニューや量に関すること、設備面に関しても「ひとりにうれしい」ポイントはいろいろと挙がりました。
メニュー・量・値段・設備面で「入りやすい」のは?
- 入らずともメニューや値段が分かる
- メニュー内容が分かりやすい
- シェア前提でないメニューがある
- ひとりで食べ切れない量が出ないこと
- 焼き鳥1本から注文できる
- お酒の量が選べる
- ごはんの量が選べる
- 小皿料理がある
- 頼めば半量にしてくれる
- ノンアルコールのメニューが複数ある
どれも納得です。「少しずついろいろ食べたい、飲みたい」と願う人、男女問わず少なくないですよね。お酒の量を細かく選べる店も増えている印象です。
つまみにしても、注文の際に「おひとりだと多いかもなんで、少なめにしましょうか?」なんて聞かれるとうれしいもんなあ。「再訪したい度」かなり上がります!
▲小皿料理が多いお店は入りやすい!?
さらにはノンアルコールドリンクのニーズの高まり、感じますよね!
ご意見いただいた中では「メニューを見て、ノンアルコールドリンクをないがしろにしてないと、ひとりでも入りやすい店だと感じる」といった内容の意見もあり、印象的でした。これに関してはまた別に研究します。
また「メニューを大声で復唱されると恥ずかしい」という意見も。わかる(笑)。
さて、お次は水まわりや清潔感についてのことです。
重要ですよね、トイレや収納
- 清潔感がある
- トイレが清潔
- トイレができれば男女別
- 玄関がきれいに掃除されている
やっぱり、清潔感やトイレのことは挙がりますよね。さらにいえば、男女問わず「客側がきれいに使う」ことを心がけたいもの。汚しがちなのは「狙いをはずした」男性であるケースも多いでしょうし。
- バッグやコートをかけるフック、荷物カゴや棚があるとうれしい
この意見も多かった。ラーメン店や立ち食いのお店でも、荷物をかけるフックやカゴを用意するところ、増えてます。
▲福岡市にある屋台「レミさんち」からフック写真をお借りしましたよ
フードライターとして日々飲食店取材を重ねる、小石原はるかさんにもコメントをいただきました。
小石原さん:「カウンター席がある」は“基本のキ”! 外から丸見えだったり、通行人と目が合ったりするのも気になりますよね。「放っておいてくれるかどうか」問題もデリケートなもの。絶対話しかけられたくないときは、混んでいるお店を選ぶのもいいのかもしれません。千葉さんも同様のお話をされていましたが、本を読むのはひとつの手段、スマートフォンを見るよりもスマート。とはいえ、お料理をしっかり楽しむタイプのお店ではちょっとはばかられますね。大衆的な居酒屋やバーっぽいお店限定の手段でしょうか。
隣のお客様や常連さんとの会話については苦手な方が多いと思います。ただ、自分が好きなお店の常連さんとは何かしらウマが合うところがある……気がするんです(笑)。私は職業柄もありますが、そういうとき「聞き込みモード」で話してますね。メニューに関しては、「ハーフサイズOK」「1つからオーダーできる」など融通を効かせてくれるのがやはりうれしい。
細かな要望を言い出せばきりがありませんが、いずれにせよ客とお店の相性。何か一点、バチッと好みのツボにハマれば多少のことには目をつぶります。
まとめ
最終的に「ひとりで入りやすいお店」に男も女もないな……と思いました。
ひとりならカウンターが気楽だし、ひとりにちょうどよい量の飲食ができることは当然ありがたい。店員さんや周囲から必要以上に干渉されたくもない。自然に仲良くなるのはいいけれど、ほどよい距離感は大事。小汚いお店が好き、って人もいるっちゃいますが(笑)、清潔感のあるほうがいいという人は多数派でしょう。
「女性ひとりで入りやすい店」は、男ひとりだってうれしい店だ。
「女性ひとりでも入りやすい」という表現がよく見られるというのは、「女性がひとりで飲食する=めずらしい、レア」だった時代の長さの証明でもあるんでしょうね。
今まで考えてきた「入りやすいポイント」を考慮してる「ひとり飲みウェルカム」な飲食店さん、どんどんそのへんを発信してほしいです。お店選びの検索時に参考になる人も多いんじゃないでしょうか。
そして小石原さんの仰るように、最終的に店と客は相性。自分にとって「環境と相性のよい店」を見つけられたら最高だもんな。
そんな店を探すべく、今夜もまちに出るとします。
イラスト/てらかわよしこ
企画・文・撮影:白央篤司(はくおう あつし)
「暮らしと食」、郷土料理やローカルフードがメインテーマのフードライター。CREA WEB、Hot Pepper、サイゾーウーマン、hitotemaなどで連載中。主な著書に『にっぽんのおにぎり』『ジャパめし』『自炊力』『たまごかけご飯だって、立派な自炊です。』など。家では炊事全般と土日の洗濯、猫2匹の世話を担当。