凝り性マスターが凝りに凝ったラムは、常時300種以上!「ラム酒最強宣言」カフェに夢中【福岡・天神】

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「あのカフェ」はこの春、もっとカフェになる。

 

飲んでますか? メシ通レポーターのあずま梓です。
ラムはお好きですか? ビール酒、ワイン酒とは言わないのに、シェリー酒と並び「ラム酒」と表記されるのはなぜでしょう? これは、主に製菓材料として輸入されていた時代の名残。ラムがお酒の名であることが知られていなかった時代の製菓レシピ本の表記から来ているそう。また、仔羊の肉(lamb)との誤解を避ける意図もあるそうです。ビキニの鬼娘の話は、またの機会に。
今回はラム好き、さらにコーヒー好き垂ぜんのとっておきをご紹介しますね。

 

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天神三丁目のランドマーク、安国寺隣。多数の飲食店が入る、雑居ビルの2階にひっそりと「あのカフェ」はあります。和の雰囲気もある、特徴的な扉。知らないとなかなかたどり着かない場所ですが、一人でもくつろげる優しいお店ですのでどうぞ開けてみてください。

 

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「あのカフェ」ってどのカフェ? 「Un Known Cafe」と書いて、「あのカフェ」なんです。センスを感じるネーミングに、コピーライターとして素直に嫉妬しています。

 

知られざる、未知のカフェ。アン ノウン カフェ→「あのカフェ」。
2017年3月にオープン7周年を迎えました。

 

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バーカウンター内の棚に、ラムばかりがずらりと並ぶさまは壮観!


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わたしはいつも、一人でカウンター。

 

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グループの皆さんは広いソファ席でくつろいでください。

「あのカフェ」は、九州最大級の品ぞろえを誇るラムのお店として、一部のマニアにしっかり定着しています。しかし実はマスターの野中さん、輝国のササコーヒーでの修行を経て独り立ちしたそうで、今後コーヒーにも力を入れ、ますますカフェの名にふさわしいお店になるそうです。

 

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「エスプレッソマシンも、近日導入することになりました」と、野中朗マスター。

 

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本格的なひきたて、入れたての自家焙煎コーヒーが、常時7種類ほどそろいます。焙煎まで手がける辺りに、マスターの凝り性ぶりがうかがえます。

 

ノンアル派の支持も厚い、フードメニューも魅力。

ともかく種類豊富なラムは、ガツンとパンチの効いたものから甘く飲みやすいデザート系まで、さまざまな味わいや香りがあるので、料理に合わせるのも楽しいお酒です。今日はマスターにおまかせで、オススメのフードとそれに合うラムをコーディネイトしていただくことにしました。

 

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最初の一品、いきなりドカンとローストビーフ(700円)が出て来ました。ふわっと香り高い柔らかなお肉。口いっぱいに頬ばるサイズ感もたまりません。
「肉のドリップをラムで洗い流してから、味付けしています。表面を直火で焼いた後に、オーブンで40分くらいかけてゆっくり焼きました」。
ここに合わせる一杯目のラムは?

 

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マルテコのハイボール(1,000円)。香りが甘く味もまろやかで、ソーダの刺激の奥に、ミルキーな後味がふんわり残る、魅力的な一杯。ふんわり柔らかいお肉や、甘さが引き出されたバルサミコソースによく合います。

 

「マルテコはグァテマラのラムで、もともとコーヒーやカカオのフレーバー、オイリーなアロマがあるんですが、そこに炭酸が混ざることで、カフェオレのような甘さが出るんです。ロックやストレートで飲むと、この味にはならないんですよ」とマスター。いろいろな飲み方を試した人ならではの解説です。

 

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軽々と飲み干したところに、次の一杯。ジャマイカマティーニ(1,000円)。
「アップルトンというラムを使っています。マティーニと言えばジンとベルモットですが、ジャマイカマティーニはジンでなくラム、ベルモットでなくシェリーのフィノが使われたと言われています」。


こちらはさっきと打って変わって、ハードボイルドな一杯。肉汁とカクテルに甘やかされた口中を、一気に洗い流してくれました。

ちなみにラムの表記、英語はRUM、スペイン語がRON、フランス語がRHUM。そのくらいは、酒飲みライターには常識です。しかし。
「もともとフランスでも、RUM表記で扱いが始まったんですが、フランス人がそれを『ルム』と呼んでしまうため、読み違いをなくすためにHを入れるようになったんだそうです」。
それは初耳です! ラムのことなら何でも知っているマスターの前では、知ったかぶりせず謙虚に学びたいと思います。

 

続いて「あのカフェ」のお肉メニュー。

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骨付きポークソテー(1,600円)、ドカンと400g!

「特別なお肉は使っていません。事前に塩こしょうでマリネして、オロロソシェリーでフランベして、しっかりとふたをして香りを中に閉じ込めてしまうんですよ。緑のソースは、自家製のバジルソースに生クリームを合わせたものです」。


道理でソテーしている時から良い香りがすると思っていました。シェリーと肉汁の混じった香りが、オーダーの連鎖を招くひと皿です。

 

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対するお酒は、キューバリブレ(650円)。合わないわけがない。
「ベースをライトな3年のハバナクラブで作って、最後に同じハバナクラブのダークラムをフロートさせているんですよ。表面を少しラムの香りで覆うことで、よりお酒らしさが引き立っています」。


コーラとダークラムは色が似ていて、フロートさせていることなんて言われなければ気づきませんが、確かにコクのあるラムの香りが鼻孔をくすぐり、コーラだけでは感じられない大人の飲み物になっています。


「実はかなり薄く作っても、表面のフロートで香りはしっかりお酒らしく仕上がるので、お酒の弱い方や守りに入りたいときに、オススメの作り方です」なんて、胃腸の疲れがちな大人にうれしいマスターの入れ知恵もごちそうです。

 

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続いてのラムは、イーストロンドン(850円)。
「ボトラーズなんですが、元はガイアナのラムです。その中でもちょっと特殊で、木製の蒸留器を使っているんですよ。3年という非常に短い熟成なんですが、蒸留器も樽も木を使うことで、しっかりとした熟成感があります」。


ちなみになぜ馬がひっくり返ったデザインなのか、そこまではマスターにも分からないそうですが、イーストロンドンがボトリングしたお酒は、ウォッカもジンも馬のひっくり返ったラベルが付いているそうです。


こちらはパワフルで重厚な味のラム。「ラムは甘くて飲みやすい」というイメージを覆す、かなり雄々しい味わいです。
チェイサーとして添えられたのは、何と水出しのアイスコーヒー。あのカフェでは、ラムをロックで飲む人にアイスコーヒーのサービスが付くのです。


「チェイサーとしては、どなたにも好かれるような優しいコーヒーをお出ししています。コーヒーの個性を楽しむと言うよりは、アロマウォーターとして捉えていただければ」。
コーヒーとラム、お互いの香りと甘さを引き立て合って、いくらでも飲めてしまう組み合わせです。ぜひ、お試しください。

 

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このお店の特徴的なメニューをもう一つ挙げるなら、こちらのミートソーススパゲティ(950円)。
「ミートソースは麺に絡まないくらいがちょうど良い」というマスターの持論通り、ソースという名の重いひき肉の塊が、ゴトッとパスタの上に乗っています。ナツメグやカルダモンなどのスパイスをきかせ、ブーケガルニを入れて煮詰めたお肉は、風味豊かでお酒を呼びます。これは本当に、ランチで食べる味じゃない。明らかに、酒飲みパスタです。

 

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▲JM(1,000円)

 

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シングルカスクと書いてあります。一つの樽からそのまま瓶詰めした原酒のことですが、ウィスキーでしか聞いたことがありません。ラムでもシングルカスクってあるんですね。
「ありますよ。ちゃんとシリアルも振ってあります」。

 

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本当だ! 世界にたった320本しか存在しない味わいが、ここに。

 

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▲剥き海老のアヒージョ(700円)

 

動画でお見せしたいくらい、グラグラに泡だった状態で供されました。興奮!

 

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続いて、きんかんのラムトニック(1,000円)。
奥の乳鉢でクローブをつぶし、コーヒー抽出用のエアロプレスで果肉のざらつきを徹底的にこして作ってくださいました。凝るなあ。
爽やかな甘さと後味が、アヒージョのオイルをさっぱりと切ってくれるので、いくらでも食べられるし飲めそうです。

 

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食後は、ロン デ ジェレミーXO(1,000円)。
ラベルの人物はチェ・ゲバラ……ではなく、アメリカのポルノ俳優さんだそう。彼の名「ロン・デ・ジェレミー」の「Ron」が、ラムと同じスペルのため、アダルトなイメージでネーミングに使ったのだそうですが、確かに濃厚で甘ったるくて、キスだけで3時間、なんて男を想像しました。付き合うならもう少しさっぱりした男が……なんて四十路の独り言。

 

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ふと、カウンターの奥にこんな手書きラベルを発見。
「うちで漬けているコーヒーラムです。ホワイトラムをベースに、右がグァテマラ、左がエチオピアの豆を仕込んだものです」。
世界に一本しかない味わいも、ここにありましたよ。懲りますね。マスター、どこまでも懲りますね。

 

日本でこのお店にしかない、外国土産のレアボトルも!

これだけの種類のラム、なかなか一度に見る機会も飲む機会もありませんが、マスターは全部飲んだんですか?
「初めて入荷したラムは、すべてお客さまを待たずに飲みます! 自分で飲まずにお客さまにはすすめられませんから」。
福岡でここにしかない銘柄もありますか?
「あると思います。もしかしたら、日本でうちだけという銘柄も、中にはあるかも知れません」。
その可能性が高いボトルを、一つ見せていただけますか?

 

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「ドイツのスパイスラムです。シトラス系の味わいで、アニスのフレーバーがあります」。
ラムにアニス?? それって、おいしいんですか?
「ペルノやアブサンほどアニスは強くありませんが、僕はあまり好きじゃありません(笑)」
やっぱり。わたしも遠慮しておきます。

さっきから気になっていたんですが、バカルディだけで何本あるんですか?


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「ざっとこのくらいですね」。
……多すぎでしょう。で、ロン・サカパは?

 

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「こんなもんでしょうか」。
……ほとんど見たことないし(笑)。懐かしい“おくるみサカパ”もあって、何と中身も入っています。若い方は、この懐かしいボトルをご存じないかも知れませんね。

 

カフェも凝りに凝った「あのカフェ」クオリティー。

なぜわざわざ焙煎からしようと思ったんですか?
「僕は実は、あまりコーヒーが好きじゃないんですよ。でも今年の頭に『コーヒー イン グッド スピリッツ』というコーヒーを使用したカクテルの大会に出場するに当たって、なるべく奥深く潜る必要があると思い、焙煎の勉強を始めたんです。良いものを飲み続けているうちに、コーヒーっておいしいものだなと思うようになりましたね」。
そんなマスターの入れるコーヒーなら、コーヒー嫌いの扉まで開いてしまうかも知れません。

 

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サイフォンでコポコポと。「86〜88度くらいに調節します」。そんなにピンポイントなんですね! 書ききれないほどの豆や入れ方のウンチクをうかがっているうちに、恐れ多くなり「1杯 1,800円くらいします?」と尋ねると「600円ですよ」。こんなスペシャリティーコーヒーをこの値段で飲めるとは!

さて、そろそろお腹もいっぱいです。せっかくなので、デザート代わりに「あのカフェ」特製ラム版アイリッシュコーヒー(1,300円)をいただけませんか?

 

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「かしこまりました」と、マスターがおもむろに取り出したのは乳鉢。クローブにカルダモン。何が始まるのでしょうか。

 

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几帳面に豆を量り、お湯の温度を調節して、

 

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丁寧に、丁寧に。

 

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ハーブ入り乳鉢にも、豆を少し分けて、そこへラムが入ります。コーヒーとスパイスをラムになじませて、

 

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またもエアロプレス登場。

 

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スパイスとコーヒーの香りをいっぱいに吸ったラムをこします。

 

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温めたグラスにコーヒーとラムを注ぎ、

 

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香り付けしたホイップを浮かべて

 

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ようやく完成! ここまで何工程あったでしょう? もったいなくてグラスを持つ手が震えそうです。


お味は、とても言い尽くせないような複雑さと豊かさで、思ったほど甘くなく、濃縮したコーヒー豆の輪郭を感じました。ぜいたくなケーキをいただくように、じっくり時間をかけて飲み干し、お店を後にしました。

 

丁寧な仕事で、集まる人を幸せにしてくれる「あのカフェ」。
まだ見ぬお気に入りに、必ず出合える素敵カフェです。ぜひ、お出かけください。

※ハイボールをはじめカクテルの価格は、使うラムやフルーツにより変わります。

 

お店情報

あのカフェ Un Known Cafe

住所:福岡福岡市中央区天神3-14-9 公建ビル2F
電話番号:092-731-0011
営業時間:19:00〜翌3:00(LO)
定休日:日曜日(月曜が祝日の場合日曜営業、月曜定休)
Facebook:UnKnownCafe~あのカフェ~

※この記事は2017年3月の情報です。
※金額はすべて消費税込です。

 

書いた人:あずま梓

あずま梓

福岡県生まれの40代。地元情報誌の編集・ライターを経て2000年独立。現在コピーライター、エディター、プランナー、ディレクターとして、主に紙媒体と映像を中心とした広告制作に携わる。趣味は料理と食べ歩きと俳句。

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