
住宅街にある和菓子のお店
平成27年の国勢調査で人口が5万人を越えて、平成30年に「市」に昇格することが確実になった福岡市のベッドタウン・那珂川町。その閑静な住宅街の一角に、お隣の福岡市や春日市だけでなく、遠方からもひっきりなしにお客さんが訪れるお店がある。
お店の名は「山月堂」。
お目当ては大福。もちろん、ただの大福じゃない。オリジナルの創作大福で、とっても柔らかくて、半分にちぎろうとするとびよ~んと伸びてしまう。仕方がないので丸ごと口に入れると、ふわっふわのトロットロ! 大福でこんな食感は初めての経験だ。
定番は「プリン風カスタード大福」と「レアチーズ大福」の2種類。カスタードはほんのりした甘さにカラメルのほろ苦さが効いて、レアチーズに至ってはほとんど甘くなくブルーベリーソースの酸味が効いる。これには僕のような酒飲みでも、とりこになること間違いなし!
定番以外にも11月の「クリーム焼いも大福」ほか、「いちごみるく大福」「白桃ヨーグルト大福」「マンゴー大福」「クリームトマト大福」「リンゴヨーグルト大福」など季節商品をこれまでいろいろと出している。

近くでお店らしいものといえばドライブスルーのクリーニング店ぐらいという、完全な住宅街の一角。それでも、取材中も大福目当てのお客さんが次々と来店。

店内には先代の頃の看板商品だった和菓子の賞状があるのだが……。

お昼過ぎですでに商品が半分ぐらいになったショーケースに入っているのは、大福と若干の洋菓子・和菓子。

定番の「カスタード大福(1個 162円)」と……、

「レアチーズ大福(1個 162円)」。
移転を後押しした大福のヒット
創業55年になる和菓子店「山月堂」はもとからこんな場所にあった訳ではない。
平成15年までは博多駅の南、福岡市博多区の比恵にあったのだが、建物が古くなって、立ち退きの話が出ていたという。オリジナルの大福が生まれたのはその2年ほど前。
「あんこが苦手だというお客さんがいらっしゃったんです」と言うのは二代目の店主・藤村賢造さん。あんこが入ってないお菓子をというリクエストを受けて、最初に試してみたのはプリン大福。現在の“プリン風”ではなく、なんと本当にプリンを入れてみたと言う。
しかし、プリンは割れると水分が出てべちゃべちゃになるので、皮や包み方などを工夫してみたのだが、よそのお店で同じようなものを売っているのを知って、これではモノマネになってしまうと止めてしまった。そこで生まれたのがプリンと同じような素材を使ったカスタード大福。アクセントにほろ苦いカラメルをつけたが、プリンではないので“プリン風”に。
それでも常連客には年配の方が多かったせいか、当初は全然売れなかったのだとか。父親である先代からは「そんな変なもんは止めとけ」と言われていたらしい。
デパートでの実演販売などを続けているうち、徐々に口コミで面白い大福があると評判が広がり、SNSのブームで口コミが加速。関東の知人まで「娘がその大福を食べたいと言ってる」と電話で話したと言う。「レアチーズ大福」は夏場の季節商品として登場したが、通年の定番になった。
立ち退きの件では、那珂川町の住まいの隣に店舗と工場に建てることを考えていたのだが、場所が良くないので躊躇(ちゅうちょ)していた。それが、オリジナル大福のヒットで住宅街でもわざわざ足を運んでもらえる柱ができたことで、那珂川町移転を決意したと言う。

▲店主の藤村賢造さん
ふわとろ食感を生んだ餅の工夫
さて、その特徴であるふわトロ食感の件。皮と言うか、餅の部分は求肥なのかと思ったのだが、聞いてみると餅粉・米粉の配合を工夫し空気を多く含ませるなどした、言わば餅自体もオリジナル。食感を一定にするために、空気中の湿気にも気を使ってると言う。
「中があんこではなくクリームなので、余計に柔らかいんですよ」と藤村さん。
「お客さんの中には、これを食べさせて(その不思議な食感に)驚く顔を見たいからって買っていく方もいるんです」と笑う。
ただ、大福作りに追われるようになって、もともと作っていた和菓子など他の商品に手が回らなくなってしまったと苦笑する。
賞味期限は翌日なので、ネットで評判になったにも関わらず、通信販売はやっていない。お店で伝票が書ける場合のみ、冷凍便での地方発送を受け付けている。
地元の人間だけが味わえる特権として、ふわトロ食感を楽しみたい。

「カスタード大福」をナイフで切れ目を入れて割ってみる。

こちらは「レアチーズ大福」。

引っ張ると柔らかい餅がびよ〜ん。
お店情報
御菓子司 山月堂
住所:福岡県筑紫郡那珂川町五郎丸2−5
電話番号:092-952-6928
営業時間:9:00~19:00(売り切れ次第終了)
定休日:月曜日
※この記事は2017年1月の情報です。
※金額はすべて税込みです。



