とて……? 「土手焼き」の間違いでは……? 調べてみると、がっつり食べられるメシから甘いデザートまで幅広い味があり、塩原温泉の飲食店など13店舗でそれぞれ違ったものを食べられるのだそう。
全然想像できないですね。なので、実際に行って食べてみました。
静かな温泉地の新ご当地グルメ
塩原温泉は昔から療養目的の滞在で多くのお客さんを集めた温泉地。その中心を流れる箒川(ほうきがわ)沿いは秋になると紅葉の名所として有名な、栃木県の一大観光スポットです。
歴史を感じさせる中心街は、都会の騒がしさとは縁のない、のんびりと落ち着いた環境です。昔ながらの飲食店や旅館が営業を続けており、散歩がてら食べ歩きなんていいですよね。
それを実現させたのが「とて焼」なのだそう。
とっても手の込んだ「とて焼」
最初のお店は「昼頃塩原温泉に到着、お昼食べ損ねたなぁー」というかたにオススメの「とて焼」です。
こちらは「多助そば 湯津上屋」。老舗のそば屋さんです。
「こんにちは! 『とて焼』ください!」
「『とて焼』!? うちはそば一筋なんだよ!」
そんなやりとりを想像するほどに老舗そば屋さんの雰囲気があります。
そんな心配は裏切られ、優しいご主人が対応してくださいました。これが「とて焼」です。
クレープのように具材を巻いてありますね。湯津上屋の「とて焼」の名は「そば舞カレーとて」。この写真では全容がわからないので、巻く前の様子を見せてもらいました。
天ぷらにした舞茸どーーん!
その下に特製ソースで味をつけたそば、アクセントにカレー粉をまぶしてあります。注文を受けてから揚げる舞茸のジューシーサクサクがたまらん! そばはゆでたあとにあえて水で締めないことで、特製ソースと絡みやすく仕上げてあります。
計算し尽くされた「とて焼」!?
「散歩してたら小腹が空いてきたな……」そんなかたはこちらへ。
塩原温泉で温泉まんじゅうをつくって65年。こちらも老舗の「今井屋製菓」です。
「こんにちは! 『とて焼』ください!」
「『とて焼』!? うちは温泉まんじゅう一筋なんだよ!」
そんな流れが脳裏をよぎります。
そんな心配をよそに、とっても人の良さそうなご主人がつくってくれたのは「黒ミツきな粉とて」。
黒蜜の寒天、キャラメルホイップ、いった大豆をトッピング。最後に伝統のこだわり温泉まんじゅうを高々とかかげた逸品です。
開いてみると、計算してつくられているとわかります。巻くことで具材が層になるのです。
まずは温泉まんじゅう、次に「とて焼」とキャラメルホイップ、いった大豆の食感を楽しみながら食べ進めると、甘味を抑えたこしあん、黒蜜寒天が出現し、最後に粗挽ききな粉でしっとりと食べ終える。
物語を読んでいるような、起承転結が盛り込まれた「とて焼」なのです。
入浴後の栄養チャージができる「とて焼」セット!?
「足が疲れた! ちょっとお茶したい」
ありますよ、おすすめの「とて焼」!
こちらは「果物屋カフェ 藤屋」。写真上部の屋号、いい味出していますね……!
大正元年創業の超老舗で、食料品を取りそろえる、塩原温泉ではスーパーのような存在でした。6年前にカフェにリニューアルしています。
元青果取扱店こだわりの、季節のフルーツが「とて焼」に盛り込まれています。
この日の具材はキウイ、巨峰、オレンジ、イチゴ、クッキーがトッピングされ、カスタード、レアチーズムース、ぶどうのムースが包まれていました。
藤屋では「とて焼」とセットでドリンクを注文すると100円引きということで、りんご、梨、オレンジ、小松菜をすりおろした 「グリーンスムージー」を注文。湯めぐりで水分を失った人にはもちろん、乾いた都会の生活で失われた栄養補給に最適です。
甘みの強い果物と甘さ控えめのクリームの組み合わせに品を感じる「とて焼」、スムージーで口をリセットすれば、自然が生んだうま味を何度も楽しむことができます。
寿司屋さんも「とて焼」やっちゃうの!?
「晩ご飯ナシの素泊まりプランだから夕飯どうしようかな……」というかたにはコチラの「とて焼」にぜひ挑戦していただきたい!
「幸楽寿司」です。そりゃあもう、完全なる寿司屋さんです。
「こんにちは! 『とて焼』ください」
「『とて焼』!? うちは寿司一筋なんだよ!」
ないとわかっていても想像してしまう老舗感がありますね。
すごく丁寧な接客、言葉遣いが印象的な大将がこしらえたのがこちら。
やっちゃったよ!! 寿司屋さんだからってストレートすぎるよ!!
思わず心の中で叫んでしまう「とて焼」ですね。
これは……手巻き寿司にさらにとて生地を巻いている! 具材は漬けマグロ、かんぴょう、出汁巻き卵、きゅうり、たっぷりのいくらです。
持ってみると、重たい……具材の量がスゴイぞ! 恐る恐る食べてみると、うまぁーい!
具材がかみ切れるようにマグロは漬けにしてあり、甘しょっぱい味付け。それに合わせて「とて焼」の生地も卵焼きのような味に変更してあり、見事に和風に仕上がっています。
今回食べられなかった「とて焼」紹介!
今回紹介した4つの他にも「とて焼」はあります。ご紹介しましょう。
(左)栄太楼
和菓子屋さんのマスカルポーネ、白玉、粒あん、フルーツ、コーンフレークを盛った「きまぐれなとて」
(中)パン屋さんとカフェ メロン亭
天然酵母を使ったパン&カフェの「芋栗なんきんとて」。食べ歩きに向いたパンもオススメ!
(右)亀屋本舗
かわいい!! こしあん、いちごあん、生クリームの「和スイーツとて」
(左)割烹旅館 湯の花荘
地鶏つくねときんぴらに、特製ダレとマヨネーズを和えた「きんぴら地鶏とて」
(中)お食事処 銚子屋
豚肉とスクランブルエッグを、塩原名物高原大根で包んだ「角煮とて」
(右)若松堂
生地がココア味! こだわりの粒あんと栗を包んだ「和風とて」
(左)美由堂
包んでいるのは那須塩原産のホウレンソウを使ったようかん!? 「ホウレンソウとて」2016年12月からは生クリーム、こしあん、コーヒーゼリーにかりんとうまんじゅうの皮をトッピングした「和コーヒーとて」に変わります。
(右)塩原もの語り館
野菜ソフトクリーム「べジソフトとて(写真中央)」。冬季は香りのあるバニラアイスに、しっとりと焼きあげたとて生地を巻いた「チョコレートとて(写真右)」に変わります。
掲載している「とて焼」は時期によって内容が変わったり、販売していない日も稀にあります。お気に入りがあったらお早めに、事前に電話確認してから行くのが確実です。
「とて焼」誕生のきっかけは震災だった
「とて焼」の考案者は、今井屋製菓の塩田さん。話を聞いてみました。
ーーなぜ「とて焼」をつくろうと考えたのですか?
きっかけは東日本大震災です。まちからお客さんがいなくなり、このままではいけないという危機感をみんなが持っていました。そこで、歩きながら食べられる、食事にもなり得る、地元の人も食べたくなる、この3つをコンセプトに2011年10月にスタートしました。
ーーそもそも「とて焼」の“とて”ってなんですか?
塩原温泉には、「とて馬車」という観光客を乗せる馬車があります。昔はラッパのような形のクラクションが付いていて、それが「トテトテー」という音を出すんです。ちょうど新ご当地グルメを考えている時に「とて馬車」が通って、これだと(笑)
馬車は現役なのですが、ラッパ型のクラクションはないのだそう。
こちらが「トテトテー」と鳴るクラクション。その当時は誰も、塩原温泉を代表するグルメになるなんて想像もしていなかったことでしょう。
東日本大震災後の大きな危機感と、ひょんなきっかけで生まれた「とて焼」13種。6種の泉質をもつ塩原温泉で、湯めぐりと合わせて楽しんでみてはいかがでしょうか。
お店情報
塩原温泉郷
ウェブサイト:http://www.siobara.or.jp/toteyaki.htm
多助そば湯津上屋
住所:栃木県那須塩原市塩原771-2
電話番号:0287-32-2127
営業時間:11:00〜15:00
定休日:不定休
今井屋製菓
住所:栃木県那須塩原市塩原786-8
電話番号:0287-32-2301
営業時間:6:30〜17:00
定休日:月一回不定休
ウェブサイト:http://www.imaiyaseika.com/
くだものやカフェ 藤屋
住所:栃木県那須塩原市塩原689
電話番号:0287-32-2314
営業時間:9:00〜18:00、日曜日・祝日は6:00〜18:00
定休日:不定休
ウェブサイト:https://shiobara-chaya-fujiya.jimdo.com/
幸楽寿司
住所:栃木県那須塩原市塩原725-1
電話番号:0287-32-2061
営業時間:11:00〜15:00、17:00〜22:00
定休日:月曜日
※この記事は2016年12月の情報です。
※金額はすべて税込みです。