こんにちは、料理・食文化研究家の庭乃桃です。今回ご紹介するのは、鶏肉をフライパンでジューシーに焼きあげた、食欲をそそるサテ風エスニック焼き鳥です。
インドネシアなど東南アジア各国でよく食べられている、サテという料理をイメージして作っていきます。サテといえば、たまらないのが濃厚で甘辛なピーナッツソース。スーパーなどで手軽に買えるピーナッツバターと身近なスパイスを使うことで、おうちにいながらにしてこのサテの本格的な味わいを再現していきます。
鶏のむね肉ともも肉の2種類を使いますが、あらかじめ調味料に漬け込んでおき、さらにピーナッツソースもかけていただきますので、どちらもジューシーで満足感の得られる味わいに。あとは、食感の違いでそれぞれのおいしさを楽しんでください。
また、ピーナッツソースにパンチとコクがあるため、箸やお酒がすすむレシピになっています。
それでは、一緒に作っていきましょう!
おうちで本格的に! サテ風エスニック焼き鳥
材料(1〜2人分)
- 鶏むね肉、鶏もも肉……各1/2枚(計300g程度)
【漬け込み用調味料】
- ごま油……小さじ2
- ナンプラー(醤油でも代用可)……小さじ1と1/2
- 砂糖……小さじ1と1/2
- カレー粉……小さじ1/4
- おろしにんにく……小さじ1/4(※2)
- 塩……ひとつまみ
- 赤唐辛子(一味唐辛子か七味唐辛子でも代用可)……少々
【ピーナッツソース(ベース)】
- ピーナッツバター……大さじ2(※1)
- ナンプラー(醤油でも代用可)……小さじ1/4
- 水……大さじ1
- 粉山椒……小さじ1/4
【ピーナッツソース(具材分)】
- みじん切りにした玉ねぎ……1/2個分(100g)
- サラダ油……大さじ1
- おろしにんにく……小さじ1/4(※2)
※1 市販のピーナッツバターにはさまざまなタイプがあるため、詳細は下記(ピーナッツバターの選び方)を参照ください。
※2 漬け込み用調味料、ピーナッツソース(具材分)のおろしにんにく1/4は、チューブにんにく約2cm、または粗びきガーリック小さじ1~2で代用できます。
ピーナッツバターの選び方
味の最大の決め手となるのが、ピーナッツバター。基本的にはどんなタイプのものでも作ることはできますが、最近は種類も豊富に出回っているので、まずはその特徴を見ていきましょう。
大きく分けて3つのタイプがあります。
上の写真で、左端2種はピーナッツそのものがゴロゴロと入った濃厚なペーストタイプ。真ん中2種がスーパーなどで昔から売られている手頃な価格が特徴のなめらかタイプ。そして右端がパンなどにも塗り広げやすいふわふわで軽めなクリーミータイプです。
これ以外に味の種類だと、甘いタイプだけでなく、無糖タイプのものなどもあります。
主な違いは、ピーナッツの風味の濃厚さと甘さ。調味料として使う場合は、真ん中のもっともよく見かける、なめらかタイプのもので十分です。ピーナッツの味わいをよりしっかりと感じたい場合は、ここに粗く砕いたピーナッツを追加すると良いでしょう。
左端の濃厚なペーストタイプを購入した場合は、水を加えてなめらかさを調節し、無糖タイプの場合は砂糖を加えて、それぞれお好みのピーナッツソースを作ります。
今回は、「ピーナッツクリーム」という名前で紙製の容器に入って売られている、100円ショップでも入手が可能な、なめらかタイプのもので作っていきます。
サテ風エスニック焼き鳥 漬け込み編
①鶏肉の皮ははずし、黄色みがかった脂や血などをきれいに取り除き、2cmくらいの食べやすい大きさの角切りにします。
ポイントは、あまりお肉のサイズを小さくし過ぎないこと。炭火で焼きあげられることが多い本場のサテの場合、お肉が小さく切られていることが多いのですが、フライパンで焼くため、あまり小さいと焼いている間にお肉の水分が失われてパサついてしまいます。また、はずした皮も食べられますので、捨てずに他の料理に使いましょう。
②食品保存用のビニール袋などに①を入れ、あらかじめ混ぜ合わせておいた漬け込み用の調味料を半量ずつ加えて、よくもみ込んで袋の空気を抜きます。
③このまま最低30分、できればひと晩ほど置いて、味をしっかりとなじませます。
ちなみに、漬け込みに使う調味料は、自宅にあるもので代用ができます。
例えば複雑なうま味が感じられるナンプラーは、なければ醤油でもかまいません。また本場で使われているターメリックやコリアンダーなどは、カレー粉で十分です。赤唐辛子は、一味唐辛子か七味唐辛子を1~2振りで代用ができます。
サテ風エスニック焼き鳥 ピーナッツソース編
次に、味の決め手となるピーナッツバターを使って、ピーナッツソースを作ります。
ピーナッツバター(今回は市販の「ピーナッツクリーム」を使用)に、ナンプラー、水、粉山椒を順に加えてよく混ぜます。
以上で、ピーナッツソースは完成です。
ちなみにここで登場する、粉山椒。これは代用できないの? と思われるかもしれませんが、ピーナッツソースの味を完成させるのにもっとも重要なアイテムのため、頑張って入手してみてください!
本場インドネシアの料理では、柑橘類の汁やタマリンドと呼ばれるフルーツを乾燥させた甘酸っぱいスパイスがよく使われますが、その役割を果たすのが、粉山椒なんです。山椒はもともとミカン科の植物であり、柑橘系の香りを思わせるさわやかな風味と辛みが特徴のため、これがピーナッツソースの味の要となります。
サテ風エスニック焼き鳥 ピーナッツソース(具材)編
さて、ピーナッツソースが完成したところで、もうひと工夫を。コクをさらにアップさせたい、という場合は、炒めた玉ねぎを加えましょう。
①ひたすら炒めてもいいですが、ここで簡単にできる時短テクを(このひと手間のありなしで、以降でかかる時間が変わります)。みじん切りにした玉ねぎを耐熱皿に入れてサラダ油をまわしかけ、全体になじませたあと平らにします。ラップをかけ、電子レンジ600Wで5分ほど加熱します。
②フライパンに移し、塩少々(分量外)を振って中弱火で炒めます。上の写真のように、ところどころほんのり黄色っぽく色づいてきたら、弱火にして玉ねぎを広げます。そのまま、玉ねぎをあまり動かさずに20秒ずつくらい炒めては混ぜる、炒めては混ぜる、というのを4~5分ほどくり返します。
③全体が上の写真くらい茶色くなったら、火を止めておろしにんにくを混ぜ入れます。
なお、玉ねぎは甘みや香ばしさが出ればいいので、あめ色玉ねぎにまでする必要はありません。火の入り方にも、ムラがあってOKです。
④最後に、玉ねぎがまだ熱いうちに先ほど作ったピーナッツソースに加えて混ぜます。玉ねぎの食感と甘み、香ばしさが、スパイシーでコクのあるピーナッツソースととてもよく合います!
サテ風エスニック焼き鳥 焼き方編
ピーナッツソースが完成したので、いよいよ鶏肉を焼いていきますよ。
①鶏肉を竹串などに均等に刺します。鶏むね肉と鶏もも肉を混ぜて刺してもいいのですが、食感や味わいなどを食べ比べしたい場合は、ぜひ別々に刺しましょう。
②刺し終わった鶏肉を、しっかり温めたフライパンで中火で焼いていきます。
漬け込み調味料のごま油が鶏肉に染み込んでいますので、フッ素樹脂加工のフライパンであれば油は引かなくて大丈夫です。フッ素加工でなく鶏肉がくっつく場合は、少量のサラダ油(分量外)を引くようにしましょう。
③おいしそうな焼き色がついたらひっくり返し、弱火にして蓋をします。この状態で、2分ほど蒸し焼きにします。
④蓋を開け、肉が白くなっていたら焼き面を変え、弱火のまま焼けて
最後は蓋をはずして火を少し強め、中火でこんがりと焼き色をつけたらできあがりです。
インドネシアではあぶり焼きで作られるサテですが、こうして中まで蒸し焼きでじっくり火を通し、最後は肉の香ばしさを閉じ込めるようにこんがり焼きあげると、フライパンでも焼き鳥のおいしさを存分に楽しむことができます!
野菜もたっぷり添えて 付け合わせ編
あとは、お好みの野菜とともにお皿に盛りつけます。
ここでは、お酒のおつまみにもなるエスニックなピクルスも、ご紹介しておきます!
インドネシアでは「アチャール」と呼ばれ(上の写真の角切り野菜たちがそうです)、本場では、こうしてサテと一緒に食べられることが多いです。
材料(1〜2人分)
- きゅうり……100g
- にんじん……50g
【調味料】
- 酢……大さじ3
- 砂糖……大さじ1と1/2
- みじん切りにしたにんにく……1/2片
- 赤唐辛子か一味唐辛子(お好みで)……少々
①きゅうりとにんじんを1cm角程度に切り、それぞれ塩もみして30分ほど置きます。
②調味料を電子レンジ600Wで40秒ほど加熱してよく混ぜます。
③塩を洗い流して水気をしぼった野菜をビニール袋に入れ、②を加えてもみ込み、冷蔵庫で冷やしたら完成です。
漬け込んで焼くことで、肉がプリプリ、ジューシーに
では、早速いただきます。最初はピーナッツソースなしで食べてみます。
まずは鶏もも肉から。香ばしく焼きあがっており、期待通りジューシーでプリプリの食感! 漬け込んでから焼きあげているので、ピーナッツソースなしでも味がしっかりとついており、たまらないおいしさです。
こちらは鶏むね肉。香ばしく焼きあがっていますが、パサつきやかたさはまったくなく、こちらもしっとりとジューシー。噛むほどにおいしいお肉の味わいが楽しめます!
そして、ここにピーナッツソースをかけていただいてみます。
ピーナッツソースの甘辛く、深いコクが最初に押し寄せてきて、あとから山椒のさわやかな辛みが追いかけてくる、多層的な味わい。お肉そのもののうま味に加え、ピーナッツソースがかかることで思わず手が伸びるやみつきのおいしさです!
その勢いで、たっぷりの野菜も知らぬ間にペロリ。甘酸っぱいアチャールが、またとてもよく合います。
漬け込んでから焼きあげるサテ風エスニック焼き鳥は、一度作っておけば「下味冷凍(味をつけた状態で冷凍すること)」もできる優れもの。好きなときにフライパンで焼くだけなので、とても便利です。
スパイス香る本格派のピーナッツソースを添えれば、暑くなるこれからの季節にも最高の一品になりますよ。
書いた人:庭乃桃
料理・食文化研究家、女子栄養大学 食生活指導士。「おいしい」を取り巻くさまざまな食卓の風景に目を向けながら、企業向けレシピの開発や、執筆、講演など多方面で活動中。著書『おいしく世界史』(柏書房、2017年)。