こんにちは、料理・食文化研究家の庭乃桃です。今回は、濃厚なうま味と深い味わいがたまらない「牡蠣」を使った極上の雑炊をご紹介します。
焼いたり煮たり、生でシンプルにいただいてもおいしい牡蠣ですが、実は雑炊にすると、そのうま味を最後まで余すことなく堪能することができて最高なんです。
そんな牡蠣雑炊を、牡蠣のうま味がつまった「オイスターソース」ベースと、牡蠣との相性が良い「味噌」ベースのものと、2種類の味付けでご紹介。
牡蠣の身縮みを防ぎ、うま味をギュッと閉じ込める方法も2つお伝えしますよ。
主に11~4月で買い求めやすい生牡蠣(加熱用)のほか、通年で手に入る冷凍牡蠣(加熱用)でも作ることができますので、ぜひ最後までご覧くださいね!
牡蠣の下処理
まずは、基本となる牡蠣の下処理から。
生牡蠣(加熱用)の場合
生牡蠣(加熱用 ※以下、加熱用の表記は省略)は、2~3%程度の塩水(分量外)の中で優しく振り洗いをして汚れを落とします。
身をつぶさないようにそっと持ちながら、特にひだ部分の汚れが落ちにくいため、丁寧に振り洗いをします。
途中で何度か水を替えて洗います(あまり何度も洗うとうま味が逃げてしまうため、上の写真のように目立つ汚れが出なくなったら、水洗いは終了でOKです)。
洗い終わったらざるにあげ、キッチンペーパーで水気を切ります。
冷凍牡蠣(加熱用)の場合
冷凍牡蠣(加熱用 ※以下、加熱用の表記は省略)は、基本的に、パッケージに書かれた説明通りのやり方で解凍します。
パッケージに書かれていることの多い解凍法は、うま味が逃げないよう流水にごく短時間さらし、表面のグレーズ(氷)が溶けるくらいまで解凍する、というもの。
※注意点としては、牡蠣が半解凍の状態から調理を始めることになるため、中心部までしっかりと火が通るように加熱時間を長めにとる必要があります(詳細は後ほど)。
それでは、牡蠣の下処理が完了したら、いよいよ雑炊を作っていきますよ!
うま味が凝縮! オイスターソースを使った「Wオイスター牡蠣雑炊」
まずご紹介するのは、牡蠣そのもののうま味と、濃厚なオイスターソースのWオイスター使いがたまらないごちそう雑炊。たっぷりの薬味で、あと引く味に仕上げます!
材料(1人分)
- 生牡蠣……80g(冷凍牡蠣なら100g程度)
- 冷やご飯(冷凍ご飯や、レトルトパックご飯でもOK)……160g
- しょうが……1片
- 小ねぎ……1本
- 酒(塩分の添加されていない清酒など※)……大さじ1
【スープの材料】
- 水……300ml
- オイスターソース……大さじ1
- みりん……大さじ1/2
- 鶏ガラスープの素(顆粒)……大さじ1/2
- 醤油……小さじ1
- 粗挽きブラックペッパー……小さじ1/4~
※料理酒のような塩分が添加されているものを使うと、牡蠣
作り方① 薬味とご飯を準備する
雑炊が、加熱し始めたら文字通りあっという間にできてしまうため、完成後すぐに食べられるよう、薬味の準備を先にしておきます。
用意するのは、小口切りにした小ねぎと、極細に切ったしょうが(針しょうが)。それに粗挽きのブラックペッパーをたっぷりと。
針しょうがはしょうがの皮をむいて薄切りにし、繊維に沿ってできるだけ細く切ってから、水にさらして作ります。その後、水気を手でギュッとしぼると、辛みやアクが抜け、シャキシャキとした食感が残ります。
そして、雑炊作りに欠かせない、簡単だけどとても大切なひと手間。冷やご飯を流水で洗い、余計な粘りやぬめりを取り除きます。これだけでスープへのなじみが良くなるだけでなく、さらっとした口当たりに仕上がり、格段においしくなります。しかも、冷やご飯が適度に水分を吸うため、スープに入れた際に「汁気を吸い、スープが想像以上に減ってしまった……」ということもなくなりますよ!
作り方② 牡蠣を酒煎りする
さて、加熱すると身が縮み、うま味も逃げてしまいやすい牡蠣。それを防ぐ1つ目の方法が、「酒煎り」という調理法で、やり方はとっても簡単!
小鍋に牡蠣を入れ、酒を振ったら強火にかけます。牡蠣が徐々に膨らんでくるので、適当なところでひっくり返し、両面をふっくらさせるだけ。
酒煎りが完了したら、一度皿に取り出しておきます。これで牡蠣の生臭さも取れ、同時にうま味がしっかりと閉じ込められました。
作り方③ 雑炊を作る
さあ、ここまできたら、あとはもう「作る=仕上げる」だけです!
先ほどの小鍋(酒炒りで牡蠣から出たうま味満載の煮汁もそのまま使いたいため、絶対に洗わないでください)にスープの材料を入れて中火にかけ、煮立ったら牡蠣を投入。フツフツするくらいの火加減に調整し1~2分煮て、しっかりと中まで火を通します。
※煮る時間は牡蠣の大きさによって異なるため、大きめのものの場合はもっと長く煮るようにしてください(特に冷凍牡蠣を使う場合は中心部がまだ凍っているため、パッケージの説明書きにある目安時間などを参考に、長めに加熱しましょう)。
牡蠣に火が通ったら、ご飯を入れてさっと煮ます。
再び煮立ったら、器に盛って牡蠣と薬味をあしらいます。
ふっくらプリプリの牡蠣。もう、見た目からおいしそうな雑炊ができました!
早速、いただいてみましょう。
ご飯とスープを口に入れた瞬間、ぶわっと広がる濃厚な牡蠣とオイスターソースのWのうま味とコク。酒煎りをしておいた牡蠣は身縮みも少なく、一口ごとに溢れ出るごちそう感がたまりません!
ちなみに薬味の針しょうがと小ねぎは、たっぷりのせるのがおすすめです(横の小皿に置いてあるのは、追い針しょうがと、追い小ねぎです。笑)。そして、スープに加えたたっぷりの粗挽きブラックペッパーも良い仕事をしており、グッと味が引き締まります。晩酌の〆にもぴったりなおいしさで、最後まで飽きることなくいただけます!
とろ~りアツアツ! 味噌を使った「土手鍋風牡蠣雑炊」
続いて、Wオイスター牡蠣雑炊に負けず劣らずおいしい、土手鍋風牡蠣雑炊。とろみの付いた味噌スープが牡蠣によく絡んで、口の中がうま味に満たされます。
材料(1人分)
- 生牡蠣……60g(冷凍牡蠣なら75g程度)
- 冷やご飯(冷凍ご飯や、レトルトパックご飯でもOK)……160g
- 焼き豆腐……70g
- 小ねぎ……1本
- 春菊……適量
- 片栗粉……適量
【スープの材料】
- だし汁(※)……300ml
- 味噌……大さじ1と1/3
- みりん……小さじ1と1/2
- 酒……小さじ1
- 砂糖……小さじ1
※だし汁は、「水300ml+顆粒だしの素小さじ1/2」でも作れます。
作り方① 具材を準備する
具材は、牡蠣以外に3種類です。
小口切りにした小ねぎに、食べやすいサイズに切った焼き豆腐。春菊はやわらかい葉先部分だけを使います。
ご飯はWオイスター牡蠣雑炊と同様、流水で洗ってざるにあげ、水気を切っておきます。
作り方② 雑炊を作る
では、作っていきましょう。牡蠣の身縮みを防ぎ、うま味を閉じ込めるための2つ目の方法もお伝えしますよ!
まずは、鍋にスープの材料を入れて中火で煮立てます。煮立ったら、焼き豆腐を入れます。
ここで、牡蠣の身縮みを防ぐ2つ目の方法の登場です。
下処理をした牡蠣に、片栗粉をまぶしてからスープに入れます。たったこれだけで、身縮みを防いで、うま味を閉じ込めることができるんです(特に身の小さな牡蠣の場合、片栗粉のとろみでボリュームや食べ応えも増しますよ)。
そのままWオイスター牡蠣雑炊と同様、フツフツするくらいの火加減で牡蠣にしっかりと火が通るまで煮て、最後にご飯を加えます。
そして仕上げに、小ねぎと春菊をのせればできあがり。
食べる前から、「これはたまらん!」が伝わってきますね。
牡蠣に片栗粉をまぶしてから煮ているので、スープに軽くとろみが付いているのもよく分かります。では、いただいてみましょう!
少し甘めのコクがある味噌ベースの味付けは、まさに土手鍋風。それが濃厚な味わいの牡蠣にとてもよく合っています。牡蠣は小さくてもふっくらプルプルで、うま味がギュッとつまっています。とろみの付いたスープや、やわらかな焼き豆腐と一緒に食べると、もう最高です!
一味唐辛子や七味唐辛子、黒七味、山椒なども合いますので、お好みでふりかけても良いでしょう。春菊や小ねぎも、彩りだけでなく香りや食感の良いアクセントになっています。具材同士のマリアージュで、最後までノンストップでいただけてしまいます!
ポイントを押さえて牡蠣をおいしく食べよう
さて、ご紹介した2つの味付けの雑炊は、いかがでしたか?
どちらも簡単に作れてとてもおいしいのですが、一点、生牡蠣と冷凍牡蠣とで煮る時間にかなり違いが出ることがありますので、最後にそちらをおさらいしておきましょう。
まず、牡蠣は生、冷凍を問わず、上の写真のように大きさの個体差がかなりあります。
さらに、冷凍牡蠣の場合は半解凍の状態から調理を始めるため、中心部に火が通るまでには結構時間がかかることがあります(パッケージの説明を見ると、大きいものの場合、煮汁が沸騰してから7分くらい煮るようにと書かれていることもあります)。
また、加熱時間は牡蠣の大きさだけでなく、使う鍋によっても変わることがありますので、心持ち長めにしっかりと加熱するようにしてください。
あとは、酒煎りや片栗粉をまぶしての調理法は、身縮みやうま味の流出を防ぐだけでなく、長めに加熱してもおいしさをキープしてくれますので、覚えておくと他の牡蠣料理を作る際にも重宝しますよ。
こうした手法も取り入れながら、お気に入りの味わいの牡蠣雑炊をぜひ作ってみてください!
書いた人:庭乃桃
料理・食文化研究家、女子栄養大学 食生活指導士。「おいしい」を取り巻くさまざまな食卓の風景に目を向けながら、企業向けレシピの開発や、執筆、講演など多方面で活動中。著書『おいしく世界史』(柏書房、2017年)。