こんにちは、料理・食文化研究家の庭乃桃です。今回は、魚料理はハードルが高い、面倒という方におすすめしたい、切り身でできるレンチンレシピをご紹介します。
作るのは、「清蒸(チンジョン)」という中国の魚料理。本来は、白身魚を丸ごと蒸し上げる高級料理ですが、電子レンジを使って少量からでも手軽に作れるようアレンジしています。
ポイントは、電子レンジで蒸し上げた魚にたれをかけた後、たっぷりのせたねぎの上から熱々のごま油をまわしかけること! (スミマセン、ごま油の工程だけフライパンを使います)
ふんわりやわらかな魚に、食欲をそそるたれ、シャキシャキの香味野菜、もうそれだけでも既においしいのですが、さらにそこに熱々のごま油をかけることでねぎの風味が立ち、一瞬でごちそうに変身するんです。
また、このレシピでは鱈(タラ)で作っていますが、鯛(タイ)、鰆(サワラ)などの他の白身魚でも作れますし、鰤(ブリ)などの少しクセのある青魚にも合うたれの作り方も併せてご紹介します。
それでは、早速作っていきましょう!
切り身で作る「魚の清蒸(チンジョン)風」
材料(1~2人分)
- 生の鱈(タラ)……2切れ(200g)
- ねぎ……1/2本(青い部分と白い部分を使用)
- しょうが……薄切り2枚
- 紹興酒(または酒)……小さじ2
- ごま油……大さじ1
- 香菜……1本
【たれ】
- 酒……大さじ1
- 醤油……小さじ1と1/2
- オイスターソース……小さじ1
- 砂糖……小さじ2/3
- ブラックペッパー……少々
作り方① たれを作る
最初に味の要となる、たれを作ります。本来、清蒸は醤油と砂糖と酒を煮立てた甘辛いたれでいただきますが、今回はそこにオイスターソースを少量加えることで、味が決まりやすく、どんな種類の魚にも合わせやすいたれに仕上げています。
作り方はとても簡単。たれの材料を耐熱ボウルに入れて混ぜ合わせ、電子レンジ600Wに30秒かけるだけ。上の写真のように少し煮立ったところで取り出しておきます。
作り方② トッピングを準備する
続いて、トッピングの香味野菜を切ります。
まずはねぎの白い部分を5cmくらいの長さに切り、さらに縦に切り開いて(上の写真参照)、外側の白い部分を白髪ねぎ(極細の千切り)にします。
少し黄みがかった芯の部分(写真左上)は、同じく白髪ねぎにしてもいいですし、スープや味噌汁など他の料理に使ってもかまいません。
白髪ねぎにしたら、あとは水(分量外)にさらしてキッチンペーパーに取り、ギュッと水気をしぼっておきます。
香菜の茎と葉は、手でちぎるか包丁で切って、食べやすいサイズに。
※香菜が苦手な場合は、(少し風味は変わりますが)三つ葉やニラ、セロリの葉などに変更してもおいしくいただけます。
作り方③ 魚を蒸す
たれとトッピングの準備ができたら、次は魚を蒸します。今回は電子レンジを使うので、蒸し器など特別な道具は不要ですよ。
キッチンペーパーで切り身を挟んで軽く押さえ、ドリップや臭みなどを取ります(それでも臭みが気になる場合は、全体に塩を振って10分ほど置き、出てきた水分を同様にキッチンペーパーで取ります)。
耐熱容器に切り身を入れて紹興酒(または酒)を振りかけ、ねぎの青い部分としょうがをのせます。あとはラップをして、電子レンジ600Wで2分30秒~3分ほど加熱します。
加熱時間は切り身の種類や大きさ、厚みなどで違ってきますが、どの魚を使う場合でも、ポイントは「火が通る一歩手前」で止めること(電子レンジで完全に火を通してしまうと身がかたくなるため、必ずあとひと息のところで止めます)。
電子レンジから取り出したら、ラップをしたまま3分ほど置き、余熱で中まで火を通します(これが、ふんわりとした食感に仕上げるコツなんです)。
※ただし3分経った時点で確認し、まだ生っぽい部分が残っている場合は、10秒ずつ電子レンジ600Wで様子をみながら追加加熱します。
作り方④ ごま油をまわしかける
切り身に火が通ったら、いよいよ皿に盛り付けます。
この時、切り身から蒸し汁が多めに出ているようであれば、大さじ2程度だけを切り身と一緒に盛り付けるようにしましょう(多すぎると味がぼやけてしまうため)。
切り身の上から大さじ1のたれをかけて、白髪ねぎをトッピング。
そして仕上げに、清蒸の最大の特徴、熱々のごま油を準備!
フライパンにごま油を入れたら、強めの中火にかけ、時折フライパンを大きく円を描くように静かに揺すりながら温めていきます(あくまでも静かにフライパンを動かし、ふちからごま油がこぼれないよう注意しましょう)。
しばらくするとフライパンから煙が立つので、火を止めて静かに白髪ねぎの上から、まずは少量のごま油をまわしかけます。
この時、必ず「ジュッ!」という音がするか確認してください(音がしない場合は、ごま油の温めが足りないので追加でもう少し加熱します)。確認ができたら、ごま油を全量まわしかけます。
熱々のごま油の場合は、音がした後に白髪ねぎから香ばしい香りが立ちのぼってきますので、そうしたら完成です。あとは香菜をのせて、おいしくいただくだけ!
はぁ、なんとも食欲をそそる香りです。では、早速いただいてみましょう……!
余熱を利用して火を入れた切り身は、見るからにふんわり。シャキシャキのねぎと香菜が、見た目にも食欲をそそりますね。
箸でほぐすと、ほろりと簡単に身がはがれます。
醤油ベースの甘辛いたれに、ごま油と白髪ねぎのうま味とコクが混ざり合い、まさに極上の味わい……! 切り身によく絡んで、もはやお箸が止まりません。ご飯またはお酒が猛烈に欲しくなる味わいです(笑)。
しかもシャキシャキの白髪ねぎと香菜の香りと食感も、最高のアクセントになっています。
野菜を添えるのもおすすめ
清蒸と一緒に「野菜も食べたい」という方のために、付け合わせも同時に調理する方法をご紹介しておきますね。
と言っても、やり方はとても簡単!
切り身を蒸す時に、まわりに好みの野菜を食べやすく切ったものを並べて、一緒にレンチンするだけです。
付け合わせにおすすめの野菜は、アスパラガスをはじめ、水菜や少し長めに切った小ねぎなど。彩りも良くなりますし、味の相性も抜群です!
いろいろな種類の切り身で楽しんで
今回ご紹介したレンチンでできる「魚の清蒸風」は、生の魚を使う割には洗いものも少なく、とにかく手軽なのでいろいろな種類の切り身で楽しんでいただけたらと思います。
例えば、養殖ものも出回っているため一年を通じて入手しやすい鰤(ブリ)。青魚で、白身魚と比較すると少しクセのあるイメージかもしれませんが、今回ご紹介したたれは、青魚でもとても食べやすい味つけになっています。
この他にも、春なら鯛(タイ)や鰆(サワラ)、秋なら鮭(シャケ)、冬なら鱈(タラ)や鰤(ブリ)と、季節ごとに魚の種類を変えて楽しむこともできます。旬の魚はおいしいだけでなく価格も安定していて手頃なので、ぜひ皆さんもその時々のお気に入りの魚で楽しんでみてくださいね!
書いた人:庭乃桃
料理・食文化研究家、女子栄養大学 食生活指導士。「おいしい」を取り巻くさまざまな食卓の風景に目を向けながら、企業向けレシピの開発や、執筆、講演など多方面で活動中。著書『おいしく世界史』(柏書房、2017年)。