こんにちは、料理・食文化研究家の庭乃桃です。暑くなってきてビールのおいしい季節! ということで、今回はタイ風焼き鳥の「ガイヤーン」をご紹介します。鶏肉をたれに漬け込んで焼くだけで、香ばしくジューシーに仕上がる一品です。
タイの屋台料理としても知られる「ガイヤーン」。タイ語で、ガイヤーンの「ガイ」は鶏肉を、「ヤーン」は「あぶり焼き」を意味し、作り方は地域やお店によっても実に多種多様です。基本的には、さまざまな部位の鶏肉をパクチーやニンニク、ホワイトペッパー、ナンプラーなどで漬け込み、あぶり焼きをしたものが多いようです。
今回は、リーズナブルでヘルシーな鶏むね肉を使って、このガイヤーンを家でも簡単に作れる方法をご紹介したいと思います。エスニックな味わいの引き立つ漬けだれの作り方や、鶏むね肉をやわらかく仕上げる方法は必見です!
味の決め手はパクチーの“根”を使った漬けだれ
ガイヤーンの味の決め手となるのは、漬けだれ。調味料に香味野菜やスパイスを加えて鶏肉を漬け込むと、本格的な味わいになります。
特に重要なのがパクチーの根。普段、葉や茎の部分を食べることの多いパクチーですが、実は根元から5cmほどの部分は風味が強く、漬けだれやスープに使用することで、独特の香りや味わいを堪能することができます。
またホワイトペッパーは、じんわりとさわやかな辛さがあり、少量入れるだけで味を引き締めてくれます。
香ばしさとうま味のたっぷり詰まった鶏むね肉のガイヤーンを早速作っていきましょう!
鶏むね肉のガイヤーン
材料(2人分)
- 鶏むね肉……1枚(約350g)
- パクチーの根……2本
- ニンニク……1片
- しょうが……1/2片
- ホワイトペッパー(なければこしょうでも可)……少々
- パクチーの葉……お好みで
- レモン(くし切り)……お好みで
- スイートチリソース……お好みで
※そのまま食べてもおいしいガイヤーンですが、お好みでパクチーの葉やレモン、スイートチリソースを添えて食べるのがおすすめです。
【漬けだれ用調味料】
- ナンプラー……大さじ1と1/2
- はちみつ……小さじ4(※)
- オイスターソース……小さじ2
※はちみつがない場合は、「みりん大さじ1と1/2、砂糖小さじ4」を混ぜたもので代用できます(はちみつやみりんを加えることで鶏肉の表面に照り感が出ます)。
①漬けだれを作る(パクチーの根、ニンニク、しょうがを刻む)
最初に、ガイヤーンの味の決め手となる漬けだれの準備から始めます。
まずは、風味をしっかり際立たせるため、パクチーの根をできるだけ細かく刻みます。ニンニク、しょうがは粗めに刻んでおきましょう。
※パクチーの根は、あらかじめよく洗い、土を落としておく。
パクチーの根、ニンニク、しょうが、ホワイトペッパー、漬けだれ用の調味料を食品用ビニール袋に入れて、よく混ぜます。
※なお、今回香味野菜は刻んでいますが、フードプロセッサーなどにかけてペースト状にしておいてもかまいません。
②鶏むね肉を漬け込む
漬けだれの用意ができたら、次は鶏むね肉を準備しましょう。
鶏むね肉は、まず皮がついていない方を上にして置き、厚みのある部分に包丁を斜めに入れます。
そして、全体的に均等な厚さになるように開きます。
続いて、鶏むね肉をフォークでまんべんなく刺していきます。特に、厚みのある部分や、皮がついている面は念入りに。
こうすることで、漬けだれが鶏むね肉の中までしっかり染み込みやすくなります。
先ほど用意した漬けだれに鶏むね肉を加え、よくなじませます。
※食品用ビニール袋がない場合は、漬けだれを鶏むね肉になじませてから、上から密着させるようにラップをかぶせてもOKです。
全体がなじんだら袋の空気を抜き、室温で20〜30分置きます。夏場は、エアコンの効いた室内であれば、15〜20分が目安です。
この工程では、あえて冷蔵庫に入れず、室温に置いておくのがおすすめ。鶏むね肉の冷たさがとれ、焼いたときに生焼けや焼きむらの状態になりにくくなります。
※鶏むね肉を置くときは、直射日光の当たる場所は避けてください。
③鶏むね肉を焼く
20~30分もたてば、鶏むね肉は漬けだれが染みておいしそうなあめ色に。
さあ、鶏むね肉を香ばしく、ジューシーに焼き上げていきます。
フライパンに油(分量外・小さじ1/2~1程度)を引き、皮目を下にして、鶏むね肉を広げるように入れます。皮までしっかり広げるようにすると、できあがりの見た目がよくなります。
このとき、漬けだれは後の工程で使用するため、できるだけ食品用ビニール袋に残すようにします。鶏むね肉についた表面の漬けだれを拭うのもお忘れなく!
鶏むね肉についている刻み香味野菜は、スプーンなどで軽く取り除いておきましょう。
鶏むね肉をフライパンに入れたら、火をつけます。まずは中弱火で焼き始めましょう。鶏むね肉は加熱するとパサつきやすいため、フライパンが冷たい状態から、じっくりと火を通すのがポイント。できるだけ皮目を中心にじわじわと焼くようにしましょう。
最初だけ鶏むね肉の真ん中あたりをトングなどで押さえて焼くと、身が比較的縮みにくくなります。
皮目(中弱火)→皮目(ふた+弱火)の順に焼いていきます。
まずは1分ほど皮目を焼いて、少し焼き色がついたらすぐに弱火に落としてふたをします。そして、そのまま鶏むね肉にある程度火が通るまで、4〜5分蒸し焼きにします。
ナンプラーやニンニクの香ばしいよい香りがしてきました……!
ここで、鶏むね肉をひっくり返し、弱火・ふたなしで反対側をさっと1分ほど焼きます。最後に、ビニール袋に残った漬けだれもフライパンに入れ、火を通していきます。
少し火を強めて中弱火にし、鶏むね肉の両面に漬けだれをしっかりとからめます。全体にたれがなじんだら鶏むね肉を取り出し、フライパンに残ったたれはとろみがつく程度まで煮詰めてから、器などに取り出しておきます。
3分ほど鶏むね肉を休ませたら、食べやすく切って盛り付けましょう。
先ほど煮詰めたたれをかけたら、お好みでパクチーの葉と、レモンを添えて。ガイヤーンはそのままでもおいしいですが、スイートチリソースと食べるのもおすすめです。
さあ、できました! 表面の照り感がなんとも食欲をそそりますね。
冷たいビールも用意できたら、早速いただきましょう。
味の染みた鶏むね肉は、ぷりっとした皮に、やわらかくジューシーな肉の食感がたまりません。口いっぱいに香ばしさとうま味が広がります。
ちょっと甘めのたれは、ニンニク、しょうが、そしてパクチーの根の風味が引き立ち、「これぞエスニック!」と言いたくなるような味わい。淡泊な鶏むね肉も、パクチーが香るたれのおかげで本格的な仕上がりです。
スイートチリソースとの相性も抜群!
エスニック風のパンチが効いたガイヤーンは、ビールが進むのはもちろんですが、ご飯にもよく合う味つけ。食べる手が止まらないこと間違いなしです。
窓から夏の夕日が差し込む中、冷えたビールにジューシーな鶏むね肉のガイヤーン。まさに至福の時間ですね。
まとめ
鶏むね肉を刻み香味野菜を使ったたれで漬け込んで焼くだけの、お手軽なガイヤーン。パクチーの根を使うことでエスニックならではの香りが引き立ち、とても食欲をそそる味に仕上がります。
ほかにも、刻んだレモングラスを加えてさらに香り高く風味付けしたり、ホワイトペッパーの量を増やしてピリリと辛さを効かせてみたりするのもおすすめです。
いろいろなアレンジを楽しみつつ、ぜひこの夏はガイヤーンとビールですてきな夕べをお過ごしください!
書いた人:庭乃桃
料理・食文化研究家、女子栄養大学 食生活指導士。「おいしい」を取り巻くさまざまな食卓の風景に目を向けながら、企業向けレシピの開発や、執筆、講演など多方面で活動中。著書『おいしく世界史』(柏書房、2017年)。