皆さん、こんにちは! 料理・食文化研究家の庭乃桃です。寒くなってきて、温かなお料理が恋しい季節ですね。
そこで、本日ご紹介するのは、ノルウェー料理「フォーリコール」風煮込みです。
「ノルウェーの国民食」とも呼ばれるフォーリコール。具材は羊肉・キャベツ・黒粒こしょうだけ、味つけは塩のみ、香りづけにローリエを入れるだけと驚くほどにシンプル! でもおいしい! のが特徴です。
本来フォーリコールは、骨つきの羊肉(マトン)を使用し、2時間ほど煮込んで作ります。ただ、なかなかスーパーなどで手軽に手に入る食材ではないので、今回はジンギスカン用などでよく売られている薄切りの羊肉(ラム)を使用。煮込み時間も短縮でき、より気軽に挑戦できると思います。薄切りでもおいしく作るためのポイントはしっかりお伝えしていきます。
このお料理の魅力は、なんといっても羊肉の風味と、それを吸ったやわらかなキャベツのおいしさ……! シンプルな塩ベースの味つけながら、パンチのある黒粒こしょうもしっかりと効いています。
また記事の後半では、骨つきの羊肉(ラムチョップ)での作り方もご紹介。とても簡単なのにとびきりおいしい羊肉とキャベツの「フォーリコール」風煮込み、早速一緒に作っていきましょう!
「フォーリコール」風煮込み
材料(2~3人分)
- 薄切りの羊肉(ラム) 200~250g
- キャベツ 1/2玉(500g)
- 水 1L
- 塩(※) 小さじ1~
- 黒粒こしょう 20粒
- ローリエ 1枚
【つけ合わせ】
- じゃがいも 4個(380g)
※塩が味の決め手となるので、精製塩ではなく、天然塩がおすすめです。
作り方① キャベツを切る
包丁を使う作業はここだけ、本当に簡単です!
まずはメイン具材のひとつであるキャベツを切ります。キャベツの芯の部分を残して、4cm幅くらいの大ぶりに切っていきます。
キャベツ半玉なら、だいたい4等分です。こうすると芯の部分でつながっているので、煮込んでもキャベツがバラバラにならずに扱いやすくなります。
作り方② 鍋に具材を入れていく
まずは鍋底に、キャベツの半量を敷きます。
その上に薄切りの羊肉(ラム)をふんわりと広げ入れたら、
上に残りのキャベツをのせます。
塩と黒粒こしょう、ローリエを入れて……
塩の上から水を注ぎましょう。こうすると全体に塩がまわりやすくなります。
薄切りの羊肉(ラム)を使うので、コンロの火に当たりすぎて肉が硬くならないよう、キャベツを敷いてクッションにするのがおすすめです。さらに、上もキャベツで軽く覆ってパサつきを抑えます。
作り方③ 煮る
具材をすべて鍋に入れたら火にかけます。まずはふたなしで強火に。
煮立つまでしばらく待って、こんな風にこんもりアクが出てきたら……
まとめてすくいます。
スープに透明感が出るくらいアクが出たところで、火を弱めてふたをします。
作業は、これでほぼ終わり。あとはこのまま弱火で10~20分、キャベツが好みのやわらかさになるまで煮ます。
作り方④ つけ合わせのじゃがいもを作る
さて、煮ている間に、余裕があればつけ合わせのじゃがいもを用意しておきましょう。
ノルウェーでは、フォーリコールにはゆでじゃがいもを添えて食べるのが定番。手軽に電子レンジで作ってみましょう。
じゃがいもは皮つきのままよく洗い、芽を取ります。まるごと1個ずつ濡(ぬ)らしたキッチンペーパーで包み、さらにラップを巻いて電子レンジ(600W)に8分ほどかけます。
そのまま、庫内に3分ほど置いてから取り出します。できるだけ熱いうちに皮をむきますが、やけどには十分ご注意ください! キッチンペーパーを何枚か重ねたり、布巾で包んだりしながら皮をむくとやりやすいです。
そうこうしているうちに、「フォーリコール」風煮込みも仕上がってきました。キャベツが好みの具合まで煮えたら、火を止めて塩(お好みで)で味を調え、盛りつけます。
素材のうま味を堪能!
それでは、いただいてみましょう。
まずは薄切りの羊肉(ラム)のうま味が染み込んだキャベツから。ナイフがすっと入るやわらかなキャベツは、甘みがあってとてもジューシー。羊肉の独特な風味が全体にまわり、甘みだけではないしっかりしたコクと奥深さがあります。もうこれだけでも素晴らしいごちそうです!
次は、メインの薄切りの羊肉(ラム)と一緒に。
多少硬さが気になるかと思いきや、キャベツの間で蒸し煮にしたためか、しっとりしていてとてもジューシー! キャベツと一緒に口に運ぶと思わずうなりたくなるような相性のよさです。
薄切りの羊肉(ラム)とキャベツ、どちらが欠けても成立しない、絶妙な味のバランス。極上の塩ベースのスープに黒粒こしょうがアクセント。食べる手が止まりません。
骨つきの羊肉(ラムチョップ)でも作ってみます!
薄切りの羊肉(ラム)でも風味やおいしさをしっかり味わえますが、骨つき肉であれば、さらに本場の雰囲気の一皿に。骨つきの羊肉(ラムチョップ)で作る場合のポイントをご紹介します。
骨つきの羊肉(ラムチョップ)での作り方も、基本は薄切りの羊肉(ラム)の時と同じ。ただ、厚みがあるので、味つけの塩は、肉に直接振りかける形で加えると、しっかり味がなじみます。塩の量も、気持ち多めがおすすめです。骨つきの羊肉(ラムチョップ)は4〜5本が作りやすいと思います。それ以外の材料は薄切りの羊肉(ラム)で作る場合と同量でOKです。
また、煮込み時間は最低でも30分。それくらい煮込めば肉がやわらかくなり、身離れもよくなっておいしくいただけます。
骨つきの羊肉(ラムチョップ)なら、見た目も豪華! 濃厚なうま味もしっかり楽しめますね。パーティーなどの一皿にもよさそうです。
まとめ
今回は、手に入りやすい薄切りの羊肉(ラム)を使った「フォーリコール」風煮込みの作り方をご紹介しました。
羊肉のおいしさはもちろん、キャベツの甘みややわらかさ、素材のうま味が溶け出したすっきりと雑味のないスープなど、ぜひ一度は作ってみていただきたい要素が満載です。心も身体も温まるこの味、ぜひお試しください!
書いた人:庭乃桃
料理・食文化研究家、女子栄養大学 食生活指導士。「おいしい」を取り巻くさまざまな食卓の風景に目を向けながら、企業向けレシピの開発や、執筆、講演など多方面で活動中。著書『おいしく世界史』(柏書房、2017年)。