創業以来、着実に店舗数を増やしているすごい立ち食いそばチェーン
こんにちは! 東京ソバット団の本橋です。
個人経営店、チェーン店に限らず、日頃、お店を取材していてよく聞くのが、ここのところの原材料費と人件費の高騰。
これは立ち食いそば店に限らずどこの飲食店も同じようで、なんとか工夫してやっているというのが、現状のようです。
しかし、そんな苦しい状況をものともせず、創業以来、着実に店舗を増やしている、すごい立ち食いそばチェーンがあるのです。
その名は「文殊」。
1995年に両国本店をオープンして以来、店舗を増やし続け、2018年の現在は12店舗。
最近は評判になるとまたたく間に店舗を増やすチェーン店が多いなかで、ゆっくりとした歩みに見えますが、なにしろ死屍累々、栄枯盛衰の激しい飲食業界。
時間をかけながらも着実に拡大を続けるってのは、実はものすごいことなんです。
ちなみに12店舗のうち、駅構内やガード下など鉄道施設に関係する立地にあるのが10店舗。
収益が良いため出店が難しい「駅そば」を確実に押さえているのも、「文殊」が好調な理由の一つでしょう。
今回は、そんな立ち食いそば界の優良企業と言える、株式会社文殊の大橋俊春社長に、その成長の秘訣(ひけつ)を聞いてきました。
と、その前に「文殊」のそばを紹介しましょうか。
自家製の生麺を使用した「文殊」のそば
今は多くのお店で取り入れている、生麺を注文後にゆでるスタイルの元祖だけあって、そばのうまさが絶品なんですよ。
こちらはざる定食(570円・鶏丼)。
細めで喉越し良いそばを楽しめます。
薬味にゆずとすりごまがついてくるのが、うれしいじゃないですか。
また「文殊」はツユにも手を抜きません。
鰹(カツオ)枯れ節の一番ダシを使うこだわりようで、スッキリしつつもうま味がしっかりした絶品のうまさ。
ふわっと香る鰹の香りがたまりません。
春菊天そば(380円)。
この値段でこのクオリティでいいの? と思ってしまうぐらいうまいです。
カラッと揚がった春菊のほろ苦感とビッとしたおツユが、また合うんですよ。
すみません、段取りの都合上、インタビュー前に1杯いただいております。
さて、おいしいそばをいただいたところで、いよいよ大橋社長に話をうかがいます!
「成功するためには好立地が必要」
もともと高級ホテルで働いていた大橋社長。
ホテルに泊まる企業の経営者たちを見ていて、いつかは自分もと、独立開業を夢見ていたそうです。
そして、おいしいものを安い価格で提供できれば成功するはずと、本格的なそばを提供する立ち食いそば店の経営に思い至り、準備をすること1年。
そば作りを研究し、お店の物件を粘り強く探し、1995年に、「文殊 両国本店」をオープンしたのです。
こちらが「文殊 両国本店」。
駅からは少し離れていますが交差点のカドで目立つ上、近くにはオフィスも多いと、飲食店をやるにはなかなかの好立地。
両国を見つけたのはたまたま。いい物件があれば、他の土地で「文殊」を始めた可能性はありますね。オフィス街で角地で駅から近い、ここならなんとかなるかなって。
当時は自分と妻の他に、兄が本業をしながら、旅行会社で働いていた友人が勤務が終わった後に手伝ってくれていました。忙しかったんですが、最初からチェーン展開するつもりだったんで、あちこち物件を探していましたね。
「成功するためには好立地が必要」と強く考えていた大橋社長でしたが、当時はまだ25、6歳。経営の経験も浅かったため、不動産業者も本気で相手にしてくれず、物件探しは難航したそうです。
そんなときに見つけたのが、現在の「両国駅前店」の物件。
本店を決めた不動産業者が専任(自社でのみ契約を行う方法)で持っていたのですが、1年ぐらい空いていたんですよ。その間ずっとお願いをし続けて、やっと決まったんですよ。
1998年、「両国駅前店」をオープンさせると、駅を出てすぐという好立地だったこともあり、なんと売上は3倍になったといいます。
「駅近く」の強みを痛感した大橋社長は、今度はJR浅草橋駅のガード下に「浅草橋店」をオープン。
そしてこの浅草橋店が「駅ナカ展開」の始まりとなりました。
次の「浅草店」は鉄道会社ではなく民間の持つ物件だったものの、その次の「市川店」「亀戸店」はやはりJRの駅施設。
さらに「馬喰横山店」は都営地下鉄馬喰横山駅の施設で、これが改札横という絶好の立地で驚くほどの売上をあげたのです。
「文殊」の好調さは東武鉄道にまで伝わったのか、さらに「川越ホーム店」など、今度は東武鉄道の駅施設へと出店を続けていくことになります。
このような施設へは入札を経ての出店になるのですが、その競争を勝ち抜けた理由とは?
本店が軌道に乗って、その実績が評価されて駅前店を手に入れることができた。今度はその成功がJRさんに評価されて、さらに東京都、さらに東武鉄道さんと、いろいろなところで評価されるようになったんですよ。そんな下地もあったんですが、それだけじゃないと思いますよ。やっぱりおいしいそばを、ちゃんと作ってきたというのが、評価されたんでしょうね。
よく考えれば(いや、考えなくても)、そもそもおいしいそばでなければ、ファンはできない。シンプルに商品がちゃんとしていたからこそ、駅ナカへの出店がかなったのでしょう。
実際に「市川店」は「文殊」が出店する以前にJR直営のそば店があったのですが、うまくいかなかったようで撤退。その後、「文殊」に声がかかり、繁盛店となっているのです。
いい場所=流動人口の多い所
インタビュー中、「立地が大事」という言葉を何度も口にした大橋社長。
今後も駅への出店メインでやっていくつもりと語ります。
いい場所というのは、まず流動人口の多いところ。そうなると路面より駅の構内、しかも改札の横というのがベストなんですよ。「文殊」で言えば、「馬喰横山店」ですね。ここの売上はナンバーワンですから。あと、都心じゃいろいろなお店がたくさんあってお客さんの取り合いになっているけど、駅ナカはそもそも敵が入ってこられないんですよ。そういう立地はやっぱり強いですよね。うちはこれからも駅そばでやっていきますよ。
そば、ツユ、天ぷらとそれぞれが高い次元でバランスされた「文殊」のそばは、立ち食いそばファンの間では「チェーン系のなかではナンバーワン」という声も多い。
「駅ナカ出店」という明確な戦略をたて、それを実行してきたからこそ今の「文殊」の成功があるわけですが、それを支えているのが、やはりこのそばなんです。
「おいしい」だけじゃダメ。
「戦略」だけでもダメ。
おいしいうえに、戦略があったからこそ、「文殊」は成功したんですね。
次はどこにお店を出してくれるのか、期待しましょう!
お店情報
文殊 両国駅前店
住所:東京都墨田区両国3-25-4
電話番号:03-3635-6552
営業時間:月曜日~金曜日6:00~22:30 土曜日・日曜日・祝日6:30~20:00
定休日:無休