蕎麦界に革命!?「しょうゆ蕎麦」が目からウロコのうまさだった【東京ソバット団】

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「革命的な蕎麦」があらわれた

こんにちは! 東京ソバット団のソバット本橋です。

今回は今までにない、ある意味で革命的な蕎麦を食べてきました! その蕎麦が食べられるのは、JR駒込駅近くにある「蕎麦いなり」。 

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表に置いてある看板をよく見てください。

 

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右端にあるのが「しょうゆ蕎麦」。

ん? 蕎麦のツユにしょうゆを使うのは当たり前だし、なぜにわざわざメニュー名に明記しているのか? そしてその隣、ちょっと見にくいんですが「しょうゆそば(中華麺)」とあります。ラーメンを出す蕎麦店もたまにありますけど、だったら「ラーメン」か「中華そば」と書けばいいんではないの? なにやら、いろいろな仕掛けがありそうな予感……。

 

まぁ、食べる前にあれこれ考えても仕方ないので、お店に入って看板メニューの「しょうゆ蕎麦」(780円)を注文したんですが、出てきたのがこれ。

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なんでしょう、このビジュアルは。

具は鶏と鴨のチャーシューに海苔とタケノコ小松菜。ツユをひと口すすったら、これがカツオのきいた、いわゆるそばツユじゃないんですよ。コクがあって複雑なうま味があって、しょうゆがすごい香ってくる。思い切って言ってしまえば、しょうゆラーメンのスープで、すごく上品なやつ。未知のツユに頭をクラクラさせながら麺を上げてみれば、これはまごうことなき蕎麦。

 

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そしてひと口すすると、これもやっぱり蕎麦。

でも、ズズッとやるとツユのうま味、そしてしょうゆの香りが口に広がっていく。ラーメンみたいだけど……いや、これは蕎麦でしょ。ちょっと頭が混乱するけど、うまいのは間違いない。

いったい、なんなんですか、この「しょうゆ蕎麦」って? と顔を上げたら、厨房にいらっしゃったのが、こちらの方。

 

「ラーメンみたいな蕎麦」をやりたかった

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覚えている方、いますでしょうか。以前に紹介した、「四谷政吉」を運営するイナサワ商店の稲澤社長です。

www.hotpepper.jp

 

そういえば「四谷政吉」も、限定で「トムヤムつけ蕎麦」や「鴨塩蕎麦」という、攻めたメニューを出していました。それを考えると、こんな変わり蕎麦(と言っていいのか?)を作っちゃうのも納得なんですが、お店を構えてまでやるとは、いろいろ考えがあるはず。さっそく稲澤社長にあれこれ聞いてみました。

 

──まずは普通の蕎麦店ではなく、なんでこの「しょうゆ蕎麦」を売りにしたお店を始めたんですか?

 

f:id:Meshi2_IB:20180802152451p:plain稲澤社長:天ぷらなしの蕎麦、ラーメンみたいな蕎麦をやりたかったんですよ。普通は蕎麦とうどんがあるけど、うちは蕎麦とラーメンがありますよって。それでできたのが、この「しょうゆ蕎麦」。

 

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──「ラーメンみたいな蕎麦」と言っても、普通のラーメンスープに蕎麦を入れても蕎麦が生きないですよね。蕎麦に合わせるためにこの独特なツユを作り出したんでしょうけど、ダシは何を使っているんですか?

 

f:id:Meshi2_IB:20180802152451p:plain稲澤社長:7割がかつお節で、あとは煮干し。それ以外はさば節に昆布としいたけ、後はあさりとかいろいろ。動物系は使わないで、鶏油と鴨脂を少し足しています。あと、中華麺の「醤油そば」のツユは、煮干しを多くしてカツオを減らしています。

 

どこにもない、完全オリジナルなツユを提供する「蕎麦いなり」。ここに至るまではいろいろとあったのですが、そのきっかけの1つに、あるラーメン店の存在があったのです。それを説明する前に、まずはこの「しおそば」(780円)を見ていただきましょう。

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しょうゆより、ダシのうま味がダイレクトに感じられるツユ。あさりのうま味が下支えしているのが、はっきり分かります。ハリっとした麺に良く合っていて、ラーメンとしてめちゃめちゃレベルが高い。蕎麦もいいけど、中華麺もいい!

で、ここまで読んで「蕎麦いなり」という店名と駒込という立地、そして「しおそば」というメニュー名やトッピングでガリが入っているのを見て、ピンときたラオタの方もいるんじゃないでしょうか。実は「蕎麦いなり」のラーメンみたいな蕎麦というコンセプトには、今年の4月までこの地で営業していた「麺処きなり」が大きな影響を与えていたのです。(「麺処きなり」は東中野に移転し、「メンドコロ キナリ」として営業中)

 

f:id:Meshi2_IB:20180802152451p:plain稲澤社長:私の会社のイナサワ商店が近くだったんで、「きなり」さんでよく食べていたんだけど、この塩のスープで蕎麦を食べてみたいって思ったんですよ。「きなり」さんにはいろいろ良くしていただいて、2年前の北区のイベントではイナサワ商店とコラボして出店もしました。今の塩スープは「きなり」さんに教わったものなんですよ。

 

「メンドコロ キナリ」は、動物系オフのスープで有名なラーメン店。なるほど、それだったら、蕎麦に合うと考えても不思議はなかったでしょう。

 

ツユやスープにも徹底したこだわりが

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さて、「ラーメンみたいな蕎麦」がテーマの「蕎麦いなり」ですが、そこから派生したとも言える、もう一つのテーマがあるのです。

それは「生かえし」。

 

かえしとはダシ汁と合わせて、もりそばの辛汁やかけそばの甘汁を作る、ラーメンで言うところのタレ。しょうゆ、砂糖、みりんを合わせ、火を入れてから寝かせて作るんですが、「蕎麦いなり」では、しょうゆに火を入れない、「生かえし」を用意しているんです。

火を入れていないということは、しょうゆのうま味がダイレクトに味わえるということ。今回は特別に「生かえし」(もり/600円)と、火を入れた「本かえし」(もり/600円)、さらにみりんを多く使った「御膳かえし」(もり/700円)の3種を食べ比べさせてもらいました。

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左から「本かえし」、「生かえし」、「御膳かえし」。はっきり言って、見た目じゃ違いが分かりません。というわけで、さっそく実食!

 

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おおっ! むむぅ、これは……。

 

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わかりますよ、わかります。「本かえし」はいわゆるおなじみの辛汁で、これこれ、これだよねと落ち着く感じ。一方、「生かえし」は「本かえし」に比べて、しょうゆの香りうま味がストレートに来ます。「御膳かえし」はいいみりんをふんだんに使っているだけあって、甘みが強くて奥深い感じですね。

どれが好きかと言うと、個人的には「生かえし」。火を入れた「本かえし」は角が取れてまろやかなんですが、「生かえし」はしょうゆがグイグイ来ます。ただ、しょっぱいのではなく、しょうゆのうまさを存分に味わえるんですよ。大豆の香りがしっかりあって、しょうゆって、それだけですごくうまいということがよく分かるんです。

 

f:id:Meshi2_IB:20180802152451p:plain稲澤社長:蕎麦に使うしょうゆは「ヒゲタ醤油」が定番なんですが、うちは「キノエネ醤油」の丸大豆を使っているんですよ。これが一番、大豆のうま味があって「生かえし」に合っていましたね。

 

通常の「かえし」は10日ほど寝かせるんですが、「生かえし」は火を入れないこともあって、1カ月近く寝かせるんだとか。そんな手間のかかるかえしだけに、お店では他のかえしと一緒にワインセラーで大切に保管しています。

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──「しょうゆ蕎麦」も「しおそば」も、そしてこの「生かえし」も、とにかくツユ、スープにこだわりまくっていますよね。正直、なんでここまで? と思ってしまうんですが……。

 

f:id:Meshi2_IB:20180802152451p:plain稲澤社長:蕎麦ってこだわり始めると、蕎麦自体を深める方向に行くんですよ。蕎麦粉を厳選して手打ちでって。もちろんそっちの方向ですごいお店はたくさんあるんですけど、商売を考えるとコスト的に難しいんです。

 

──手間がかかりますからね。おいしいけど、その分、人件費とかが原価にのって、もりそばで1,000円とかになっちゃいますしね。

 

f:id:Meshi2_IB:20180802152451p:plain稲澤社長:それだったら蕎麦は手打ちでやらずに業者に任せて、ツユにこだわっていったほうがいいと思うんですよ。ラーメン店って、その方向ですよね。麺は業者から買って、スープにこだわる。蕎麦もその方法でやってみたいと考えているんです。

 

この蕎麦で海外に進出したい

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──単純に新しい蕎麦を作ったわけではなく、先々の商売のことも考えていたんですね。

 

f:id:Meshi2_IB:20180802152451p:plain稲澤社長:あとは、ふだん蕎麦を食べない人たちに、食べてもらいたかったんですよ。日本の若い人たちだけでなく、海外の人たちにも食べてもらいたい。ラーメンが好きな人なら、この蕎麦は親しみやすいでしょう。ゆくゆくはこの蕎麦で海外に出たいんですよね。

 

──海外進出まで考えていらっしゃるんですね。

 

f:id:Meshi2_IB:20180802152451p:plain稲澤社長:うちのツユみたいに、蕎麦のダシに昆布を使うのは実は邪道なんですけど、海外では入れたほうが受け入れられると思うんですよ。動物性の脂も入れているんで、それも海外の人たちには食べやすい。うちのツユは、世界的に見れば、グローバルスタンダードだと思います。

 

たしかに、もはや国際語となっていて古くから各地で食べられている蕎麦ですが、そば店が海外進出する際の障壁になっているのがツユ。カツオのきいた蕎麦ツユは、食べ慣れていない人にとっては、生臭く感じてしまうことが多いのだそうです。実際、海外に進出しているそば店では、ツユ、特にダシをローカライズすることが多いと聞きます。

 

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いやはや、変わった蕎麦があるもんだと思っていたら、実は世界につながっていたとは! ひょっとしたら「蕎麦いなり」から、日本の蕎麦が大きく変わっていくかも……なんて、でっかいことをつい考えちゃいましたよ。

 

「パスタみたいな蕎麦」も

で、取ってつけたようで恐縮なんですけど、「蕎麦いなり」ではこれら以外にも、評判のメニューがあるんですよ。それが「冷製シソベーゼ蕎麦」(880円)。

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ジェノベーゼのバジルを大葉に置き換えたもの。下には白しょうゆを使ったダシ汁が張られていて、食べていくと途中で味変する仕組み。上にはトマトのシャーベットがのって、ラーメンの次はパスタみたいな蕎麦ですか! と言いたくなるけど、これがうまいうえにしっかり蕎麦なんだから困っちゃう。しかもあれですよ、すごくインスタ映えしますよ、これ。

 

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いやはや、驚きばっかりの「蕎麦いなり」ですが、発想からして今までにない蕎麦ですし、本当にこれがワールドスタンダードになるかもしれませんね。

 

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ちなみに上の写真のシャツはイナサワ商店のユニフォームなんですが、背中には蕎麦が各国語で書かれています。

はい、どうやら本気です。社長、世界に行っちゃってください!

 

お店情報

蕎麦いなり

住所:東京都北区西ヶ原1-1-15
電話番号:非公開
営業時間:月曜日~土曜日11:30~14:10(土曜日不定休)
定休日:日曜日・祝日(土曜日不定休)
※営業日はFBページで確認を
Facebook:蕎麦いなり

 

書いた人:本橋隆司

本橋隆司

フリーランスの編集、ライターとしてウェブや雑誌などで仕事中。立ち食いそば好きが高じて2013年に『立ち食いそば図鑑 東京編』を、2014年に『立ち食いそば図鑑 ディープ東京編』を制作。そばであればだいたい好き。


撮った人:安藤青太

安藤青太

カメラマン、書籍制作。グラビア系から食べ物系まで何でも撮るカメラマン。本橋とは『立ち食いそば図鑑 東京編』『立ち食いそば図鑑 ディープ東京編』を制作。その他『檀蜜DVD色情遊戯2』『DK 男子高校生萌え』『書店男子』など。好きな立ち食いそばは「コロッケそば」。

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