立ちそばファンたちが大絶賛する「古くて新しい味」
2020年の1月、年明け早々に新しい立ち食いそばのお店「三丁目」が仲御徒町でオープンした。だがこの店、ちょっと変わっているのだ。
一番の売りは天ぷら3種が乗った、海鮮そば（450円）。
具材は日替わりで、この日はアナゴとエビとイカ。まずはそのボリュームに驚くのだが、変わっているのはそこではない。
ここは、カツオだしに鶏だしを合わせたツユを使っているのだ。
ひと口すすると、下町の立ち食いそばらしいしっかりした味わいながら、どこかまろみと深みを感じる。
これが鶏だしの効果なのだろう。
鶏のうまみが濃厚に感じられるというわけではないが、気持ちが和らいでいくようなおいしさがあり、それを薬味に添えられたショウガがピッと引き締めている。
この味が、立ち食いそばファンの間では「古くて新しい味」とすでに大評判なのだ。
ちょっと変わったツユながら、そばそのものは品川にある富田屋のゆで麺を使用とオーソドックスなセレクト。
雰囲気ある立ち食いカウンターということもあって、立ち食いそばファンの間では、この新店が早くも話題の店となっている。
ここ最近の立ち食いそば界隈では大きなトピックとなった新店「三丁目」なわけだが、実は店主は飲食店経営の大ベテラン。かつて秋葉原で人気だったラーメン店の店主だったのだ。
人気ラーメン店のご主人が新規開店
そのラーメン店は18年続いていたのだが、諸般の事情で2年前に閉店。引退後の店主は奥さんと一緒にあちこちを旅行したりと、悠々自適の生活を楽しんでいたのだが、なんとなく物足りなさを覚え始め……。
やっぱりお客さんの笑顔が見たい、人を喜ばせるような商売をやりたいという思いに至った2人は、再び飲食店をやろうと物件を探し、「三丁目」を始めることになったんだとか。鶏だしを使っているのも、ショウガをトッピングするのも、かつてのラーメン店でやっていたからなのだ。
でもなぜ、前にやっていたラーメン店をやらなかったのだろうか？
店主によると「もういいトシだから、2人で無理せずやれるものと考えると、ゆで麺を使った立ち食いそばがちょうどよかったんですよ。前の店では自家製麺だったんですけど、今の店では製麺するスペースもありませんしね」とのこと。
無理せずやりたいと言いつつ、なにかとこだわってしまう店主。
鶏だしにしたのも、ラーメンスープのノウハウがあるからというだけでなく、「普通と同じじゃつまらない」と思ったから。
当然、だしをひく寸胴は2つで、手間も2倍。
奥さんは「よせばいいのに、凝っちゃうのよね」と笑う。ただこれも、お客さんに喜んでほしいという気持ちからのことだ。
圧倒的なそのボリューム感
そんな愛情あふれる「三丁目」だから、当然、そばもボリュームたっぷりになる。そのことは先述の海鮮そばもそうなのだが、他のメニューも同様だ。
最近始めた、げそ天そば（450円）は大ぶりのげそがゴロゴロ入っていて、そのボリュームに圧倒される。さらにエビまで入っていて、豪華そのもの。
これじゃ、お客さんを喜ばせすぎでしょう。ちなみにこの日は、いか天そば（400円）を頼んだ人には、ミニげそ天をサービスしていました。
まさにいかまみれ！
さらにサイドメニューも手抜きなし。
ミニカレー（230円）は、ミニとは思えないサイズで、鶏肉もゴロゴロ。
もったりルーの「おうちカレー系」ながら、適度にスパイシーでパクパクと食べすすめられてしまう。
凝り性の店主は、このカレーを使ったカレーそばや、以前のラーメン店で好評だった担々麺風そばも考えているんだとか。
ちなみにオープン当初には、なんとおでんもメニューにのっていた（！）。
「無理せずのんびりやりたい」と始めた「三丁目」だが、これからもいろいろな動きを見せてくれそうだ。
お店情報
三丁目
住所：東京都台東区台東3-42-7
電話番号：03-5846-8832
営業時間：月曜日～金曜日7:00～14:00
定休日：土曜日、日曜日、祝日
書いた人：本橋隆司
フリーランスの編集、ライターとしてウェブや雑誌などで仕事中。近著は『東京立ち食いそばジャーニー』『立ち食いそば大図鑑』（ともにスタンダーズプレス）そばであればだいたい好き。
- サイト：立ち食いそば図鑑の中の人のサイト
- Facebook：東京ソバット団
撮った人：安藤青太
カメラマン、書籍制作。グラビア系から食べ物系まで何でも撮るカメラマン。本橋とは『立ち食いそば図鑑 東京編』『立ち食いそば図鑑 ディープ東京編』を制作。その他『檀蜜DVD色情遊戯2』『相撲部屋の幸せな猫たち』『東京の、すごい旅館』など。好きな立ち食いそばはコロッケそば。
