赤い日本酒「伊根満開」は冷酒よりも熱燗で飲むのがおすすめ!

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どうやら今、空前の「日本酒ブーム」らしい。

 

確かに、お酒を飲みに居酒屋さんへ行くと日本酒がかなり置いてあることが多い。

 

それに、以前より日本酒を好んで飲む女性も増えた気がする。きっと、飲み会で日本酒通なところを見せたらリスペクトされるんじゃないだろうか? それにはひときわ個性的な日本酒を飲まなければ!

 

誰もが飲みたくなる個性的な日本酒はないものか……とネット上を酩酊(めいてい)気味にリサーチしてみたところ、あった! ありました!!

 

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「伊根満開」というお酒が。普通の無色透明なお酒と違い、赤いお酒だというではないか。なんと、古代米である赤米を使って造られた日本酒なんだとか。見た目はちょっとワインのようだけど、実際どんな味がするんだろう? 

 

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というわけで、実際に入手してみると、ものすごくフルーティーだ。果樹酒のように、甘みがあって酸味もあり、すっきりしていて飲みやすい。

 

いったい、どうやって造ったんだろう? そもそも、どうして古代米を使って日本酒を造ろうなんて思ったんだろうか……。

 

そこで、「伊根満開」を製造・販売している京都府与謝郡伊根町にある蔵元「向井酒造株式会社」の向井久仁子さんにこの日本酒について、根掘り葉掘り聞いてみました。

 

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女性の杜氏によって生まれた「伊根満開」

――まず、向井酒造の創業年は?

 

向井さん:1754年9月、宝暦4年です。

 

――宝暦4年!? ものすごい歴史があるんですね。(向井)久仁子さんは現在、どんな立場なんでしょう?

 

向井さん:酒造りの最高製造責任者に当たる杜氏(とうじ)をやっています。今から19年前に、父から引き継ぎました。弟が社長を務めていて、製造のほうは私が責任者として働いています。

 

――「伊根満開」は古代米の「赤米」を使っているそうですけど、なんでまた、そのような一風変わったお米でお酒を作ろうと思ったのでしょう?

 

向井さん:東京農業大学の農学部 醸造学科に通っていたんですけど、そこで出会った研究室の先生が品種開発をやっておられたんです。その先生があるとき、「日本全国の精米技術が上がって、マズいお酒を探す方が難しいくらい全国的においしい日本酒ばかりだから、これからは話題性のあるお酒作りをしないと生き残れないよ」っていうお話をされていて。それで卒論のために品種開発をやっていたんですけど、私が卒業する頃に「赤いお酒が造れるか」という話になって。新潟に、赤い酵母で色を付けているお酒があるんですが、そのお酒は酵母で色を付けているけど、古代米の赤米を使ってお酒が赤くなるのかっていう実験をすることになったんです。
そこから始まって、1年越しくらいに赤い色のお酒ができたので、「じゃあ向井酒造で売り出したらどうか」ということになって、今に至ります。

 

――久仁子さんが杜氏を始めたのとほぼ同時に誕生したお酒なんですね。ところで、古代米って、簡単に入手できるんですか?

 

向井さん:大学の先生のご実家も、九州で造り酒屋さんをされていたんです。それで、その先生から古代米の種をもらって、農家さんに頼んで古代米の栽培をしてもらうところから始めたんです。

 

――あ、古代米を栽培するところから!?

 

向井さん:そうです。ただ、実際に作ってみたら、九州からの種もみだったので、京都の風土に合わなくて。最初の頃はまだら模様のお米ができたりしたんですけど、地元の農家さんたちが、ネットワークを使って新潟長野のほうから種もみを集めてくださったんですよ。それで、4、5年はいろんな品種の古代米を植えて、農家さんにとっても作りやすくてうちにとっても色の出やすいお米ということでいろいろ選定してもらって、今使っている「紫こまち」という古代米に落ち着いたんです。

 

――すごく試行錯誤されていたんですね! 今では「伊根満開」が向井酒造の看板商品になっているんですよね。

 

向井さん:はい、他のお酒の12倍出てますね。

 

――12倍って……すごい好評ですね。実際に飲んでみたんですけど、こんなにフルーティーで甘酸っぱい日本酒は初めてですよ。

 

向井さん:そうですね、味の特徴を聞かれたときには、「甘酸っぱい、果樹酒のようなお酒」っていう風に説明しています。

 

「伊根満開」のおいしい飲み方は?

――おすすめの飲み方ってありますか?

 

向井さん:一番おすすめなのは、熱燗ですね。

 

――甘酸っぱいお酒なので、キーンと冷やして飲んだ方が良いのかなと思ったんですが、熱燗が一番いいんですか?

 

向井さん:60℃くらいの熱めの燗で飲んでもらうと、ホットワインみたいな感じで、スッキリ飲めると思いますよ。もちろん、今みたいな夏場は冷やして飲んでもおいしいですし、最近だとロックで飲んだり、ソーダ割にして飲んだりしている方もいらっしゃるみたいです。そういう意味では、どんな飲み方にも対応できるお酒ですね。ただ、最初から燗で飲まれる方が少ないと思うので、うちでは燗で飲んでみることをおすすめしています。一度燗で飲んでみたら、ハマる人が多いですよ(笑)。

 

――なるほど! では後で熱燗にして飲んでみます。「伊根満開」は居酒屋さんでも飲むことができるんでしょうか?

 

向井さん:もちろんです。うちのホームページに、「向井酒造のお酒が飲めるお店」の一覧が載っていますので、ぜひご覧になってみてください。今は関東方面に飲めるお店が多いです。例えば、青山のフランス料理店「NARISAWA」なんかにも置いてあります。あとは、三軒茶屋の「ルーナ ピッコラ」、「JOE’SMAN2号」、「名西酒蔵」なんかは「伊根満開」の出し方にこだわって提供してくださっています。三軒茶屋は「伊根満開」がアツいですね(笑)。東京都内では、他にも飲めるお店がどんどん増えています。
あとは、海外にも飲めるお店が増えていて、もともとはベルギー、オランダ、オーストラリア、ノルウェー、アメリカ、フランスあたりに輸出していたんですけど、ヨーロッパには結構広く出しているので、どこの国って絞るのは難しいくらいになっていますね。オーストラリアの「Quay(キー)」っていう、オペラハウスを眺めながら食事ができる2つ星のレストランとか、世界一予約が取りづらいと言われているコペンハーゲンのレストラン「noma(ノーマ)」とか。「noma」が東京で2015年にマンダリンオリエンタルホテルに期間限定店をしたときも、使ってもらっていました。信頼できるお店、ミシュランの2つ星を取っているようなお店で飲めることが多いです。

 

――そんなにすごいお酒なんですね……。海外の料理とも相性が良いからなんでしょうけど、とくに「伊根満開」に合うおすすめのおつまみって何でしょうか?

 

向井さん:お肉にすごく合うと思います。牛、または鴨ですかね。「noma」でも、鴨肉のオレンジソースがけに合わせていたみたいです。

 

――鴨肉のオレンジソースがけ……すみません、生活レベルが伴ってないので、もう少し庶民的な料理で何かないですか(泣)?

 

向井さん:普通に焼肉に合わせてもいい思いますよ(笑)。ステーキとか。あとは、野菜にも合いますね。野菜の苦みと、「伊根満開」の複雑なうま味がとっても合います。とくに春菊がおすすめです。

 

――なるほど、肉と春菊というと、すき焼きが良さそうですね。

 

向井さん:ああ~、そうですね、良いと思います。東京でもいろんなお店で飲めますし、酒屋さんにも置いてあるところもありますので、ホームページの「向井酒造のお酒が買えるお店」一覧を見て、お店に在庫があるか確認してもらうといいかもしれません。「伊根満開」は、本当にいろんな飲み方ができるオールランドなお酒なので、ぜひ、ご自身が好きな飲み方を試してみてください。

 

久仁子さん、ありがとうございました!

 

さて、今回はせっかくおすすめ料理をご紹介していただいたので、改めて自宅でおつまみを作って「伊根満開」を飲んでみました!

 

日本酒の概念を変えるほどの個性的な味

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ちょっと奮発して脂のサシがほどよく入ったサーロインステーキを用意。そして、野菜にも合うというので、某デパ地下で売っているお気に入りの「オクラときくらげの塩だれサラダ」を付け合わせにしてみました。

 

まずは肉を一口食べてから、「伊根満開」を飲んでみると、う~ん、肉の脂が甘い分、すっきりした「伊根満開」とバッチリ合う。肉のしつこさをさっぱりとさせくれるおかげで、肉を飽きることなく食べることができます。

 

さらに、オクラのネバネバ感やちょっとした苦みが、甘酸っぱさのある「伊根満開」の口当たりと意外にもマッチする。

 

なるほど、これは個性的ながら食べるものを選ばないオールラウンドな日本酒っていう感じですね。

 

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また、久仁子さんおすすめの熱燗にして飲んでみたところ、冷やして飲んだときとはまた違う、まったりと優しい味わいに。なんだか1人でゆったりと、音楽でも聴きながら味わいたいおいしさがある。

 

フルーティーとはいえ、ストレートで飲むとかなり酔いが回るので、お酒があまり強くない人は、ソーダ割にして飲んでみるのもおすすめです。

 

赤い日本酒という、珍しい見た目以上に、その味は日本酒の概念を変えてしまうくらいに個性的だった「伊根満開」。日本酒好きな人はぜひ!

 

また、向井酒造のホームページには、久仁子さんの大学時代から杜氏修行、現在のお酒造りへの思いまでがつづられているので、読みながら「伊根満開」を飲んでみると、味もまた格別になるのでこちらもおすすめしておきます。

 

お店情報

向井酒造株式会社

住所:京都府与謝郡伊根町平田67
電話番号:0772-32-0003
営業時間:9:00~18:00
定休日:月曜日
ウェブサイト:http://kuramoto-mukai.jp/index.html

 

書いた人:岡本貴之

岡本貴之

新潟生まれ東京育ちのフリーライター。音楽を聴くことも食事をすることも、人の暮らしには欠かせないもの!という言い訳のもと、音楽取材と食レポを中心に取材活動の40代です。

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