味噌の達人に聞く!「おいしい味噌の選び方」ってどんなですか?

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味噌蔵「糀屋三郎右衛門」で味噌のおいしい食べ方を教わってきた

味噌といえば日本人のソウルフード。

けれど、味噌について詳しく知っているという人はどのぐらいいるでしょうか?

かくいう私も、考えてみると味噌のことってよく知らない。

ほぼ毎日味噌汁を作っているというのに……!!

というわけで、今回は東京都内に唯一残る味噌蔵「糀屋三郎右衛門」にお邪魔し、仕込みの様子を見せてもらうとともに、ご主人に話をうかがうことに。

  • 「味噌汁には必ずしもダシは必要ない」ってホント?
  • 「高い味噌」=「いい味噌」なの

誰もが知りたいけれど実は知る機会のない味噌のあれこれ、この道のプロに聞いてきましたよ!

 

練馬の住宅街に突如あらわれる味噌蔵

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今回訪れた「糀屋三郎右衛門」があるのは、東京都練馬区。のどかな住宅街を歩いていくと、「昔みそ」と大きく書かれた看板が突如として出現。東京に唯一残る味噌蔵がこんな場所にあるとは。

 

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さっそく中に入って仕込みの様子を見せていただきましょう!

 

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2日かけておこなう「仕込み」

大手の味噌会社であれば、工場で大量生産していることもあるかもしれませんが、「糀屋三郎右衛門」では「味噌蔵」と呼ぶのにふさわしい昔ながらの木造の建物を使い、少人数で味噌づくりをおこなっています。

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建物の中に足を踏み入れると、すでにほんのりと豆の香りが漂っています。

 

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「糀屋三郎右衛門」では常時8種類ほどの味噌を取り扱っているのですが、この日は「おふくろ自慢 甘口」という味噌の仕込みをおこなうそう。

 

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この方がご主人の辻田雅寛さん。

 

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仕込みの手順としては、最初に巨大な圧力釜に味噌の原料となる大豆と水を入れ、蒸かしていきます。

 

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火をかけるとだんだんと巨大な圧力釜からシューシュー湯気が出てきます。

 

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……こんなデカい圧力釜、生まれて初めて見たよ……

 

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30分少々火にかけたら、火を止めて圧を抜いていきます。

 

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シューーーーーーーーーーーーーッ!!

 

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そして圧が抜けたら、留め具を外してフタを開けます。

 

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白い湯気の向こうには蒸かしたての大豆が!

 

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鍋を傾けてジャーーーーッと中身を出します。

 

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この光景はなんとも圧巻!

 

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アツアツの大豆を人肌程度に冷ますため、巨大扇風機2台を回し、二人がかりで大きな木べらを使ってかき混ぜていきます。

 

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豆、豆、豆……当たり前だけど、味噌の原料って大豆なんですね!

 

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「豆は指で軽くつぶせる程度のやわらかさなんですよ」とご主人の奥様。

 

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「食べてみます?」と大豆を手に乗せてくれたのでいただいてみましたが、これがこの世のものとは思えぬほどおいしい!!

……なーんてことはなく、ふかした大豆そのままのシンプルな味でした。そう、これを発酵させるからこそ甘みとうま味が出て、おいしい味噌へと変わるのです。

 

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さて、蒸かして人肌程度に冷ました大豆は機械を使ってペースト状につぶしていきます。

 

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そして、「糀屋三郎右衛門」ではここに食塩と糀を混ぜた「塩切り糀(しおきりこうじ)」と「味噌種(みそだね)」と言われる味噌を加え、攪拌(かくはん)します。

 

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材料はこれだけ。味噌のパッケージの原材料表示を見ればわかりますが、基本的に味噌は糀・大豆・食塩という3つの材料のみでできているんです。

 

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こうしてできたものをバケツに移し、運んでいく辻田さん。どうするのかと思いついていくと……。別の部屋にある巨大な樽にこれを移していました。

 

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こうして大豆を蒸かす→冷ます→つぶす→塩切り糀・味噌種と混ぜる→大きな樽に移す、という作業を一日2回、2日にかけておこない、仕込みは終了となります。

この2日間で作られる仕込み状態の味噌は1.21.4トンにもなるのだとか!

 

あとは発酵・熟成や調整、検査という工程を経て、私たちが口にできる味噌の状態になります。気温などによっても変化するので時期にもよりますが、だいたい味噌ができるまでは4〜5カ月ぐらいかかるそうです。

 

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▲こちらが現在発酵途中の味噌。おいしくな~れ、おいしくな~れ!

味噌ほどドメスティックな食べ物はない!

さて、仕込みが終わったところでご主人の辻田さんにお話をうかがってみることにします。

 

ーーさっそくですが、おいしい味噌の見分け方を教えてください!

すると辻田さんは苦笑い。

 

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「これはよく聞かれるんだけど、ひとことでは言えないんだよねぇ。味噌というのはその土地や家庭の好みの味というものがあるし、必ずしも『値段が高い=おいしい味噌』ってわけでもない。だからこれがいいって一概には言えないんだよ」

 

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(※写真:みそ健康づくり委員会発行『みそができるまで』より抜粋)

 

ここで辻田さんは「みその種類と分布」という図を見せてくれました。

分布図を見てみると、日本で総生産量の8割は米味噌ですが、だから米味噌がいいというわけでもないし、米味噌をとってみても甘味噌、甘口味噌、辛口味噌にわかれ、色も白、淡色、赤があるという複雑さなのです。 

 

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「だからね、こればかりは自分でいろいろと買って食べ比べてみるしかないね!」

 

と辻田さん。味噌というのは地域や家庭ごとに根付いている非常にドメスティックなものである。だからこそ、「これがよい」と決めるような言い方はできない。

……はい、おっしゃることはとってもよくわかります! 

けれど、ここで終えるわけにはいきません。さらに辻田さんに質問をして、味噌を選ぶときにどんな点に注意したらよいか、おいしい味噌汁を作るアドバイスなどをうかがいました。

 

知っておくと役立つ味噌のあれこれ

①味噌を選ぶ指標は「糀歩合」

パッケージに記載されている「糀歩合」。これは大豆に対する糀の割合を意味しています。一般的に糀の分量が多いほど発酵・熟成がうながされコクや甘みを感じられるため、ぜいたくな味噌かどうかの判断材料になります。

 

②原材料の記載の順番にも意味がある

もし糀歩合が記載されていない場合は、原材料の順番をチェックしてみるべし! 

味噌は大豆・糀・食塩という3つの材料からなるものですが、実は分量の多い順に左から記載されているんです。「大豆・糀・食塩」の順ではなく「糀・大豆・食塩」の記載になっていると、糀の歩合が高いという目安になります。

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③味噌は最低でも2種類常備しておくとよい

原料や発酵・熟成期間によって何種類もに分類される味噌。味もそれぞれちがうので、何種類か常備していると料理によって使い分けができて便利とのこと。

 

④料理によって味噌の使い分けをすべし

味噌には赤味噌、淡色味噌、白味噌の3種がありますが、これらの色の違いは発酵・熟成期間の差によってできるもの。

 

長く発酵・熟成させてコクや香りが強い赤味噌は、具材にパンチがある豚汁などと相性がよい。いっぽう、淡泊で甘みのある味わいの白味噌は根菜の味噌汁を作るときなどがおすすめとのこと。

 

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⑤ダシなしで作るのもさっぱりしてよい

味噌汁にダシは必要不可欠だと思っている人も多いのでは? 

たとえば「糀屋三郎右衛門」の味噌は、味噌自体のコクが深いので、ダシを入れなくても味噌だけでも十分おいしいんです。

さっぱりとした味わいのダシを入れない味噌汁。二日酔いや食欲がないときもこれなら意外と飲めたりしますよ。

 

⑥葉物の具材は別ゆでがおすすめ

味噌汁にホウレンソウや小松菜などの葉っぱを入れるときは、味噌汁のお鍋とは別にゆでておいて、最後に合わせるぐらいが葉っぱの緑色がキレイに見えてよいそう。別ゆでが面倒な人は、電子レンジでチンして最後に味噌汁に合わせるのでもOKです。

 

⑦「味噌玉」は簡易味噌汁に最適

丁寧に作っている時間がない、会社の昼食でも味噌汁が飲みたいなどという人には味噌玉がおすすめ! これは単に味噌を丸くまるめたものですが、辻田さんいわく「具を加えるなら乾燥ワカメとかつおぶしがいいんじゃないかな」とのこと。

乾燥ワカメやかつおぶしは味噌玉に入れることで、味噌の水分でふやけてダシが抽出されるためうま味が増しやすいとのこと。試してみて!

 

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自分のお気に入りの味噌を見つけよう!

地域や家庭によって食される味噌は千差万別。けれど一度おいしい味噌を食べると、そしてその味噌で味噌汁を作ると、あまりのおいしさに衝撃を受けるはず。

 

私は親元を離れ一人暮らしを始めてから、味噌はスーパーなどで適当に選んで買っていましたが、「糀屋三郎右衛門」の味噌を初めて食べたときは「味噌ってこんなにおいしいものなんだ!」と衝撃を受けたほど。

 

ぜひ皆さんも今回の記事を参考に、皆さんなりのおいしい味噌を探してみてください。私たちが味噌汁などで一生をかけてほぼ毎日食べるものなだけに、自分のお気に入りの味噌に出会えたら、きっとそれだけでまた少し人生が豊かなものになるはずです。

ちなみに今回取材した「糀屋三郎右衛門」の味噌はホームページから購入することもできますよ!

 

お店情報

糀屋三郎右衛門

住所:東京都練馬区中村2-29-8
電話番号:03-3999-2276
営業時間:月曜日~金曜日9:0017:00、土曜日9:0017:00(変更あり)
定休日:日曜日・祭日・土曜日(不定休)
ウェブサイト:昔みそ・糀屋三郎右衛門

※この記事は2017年4月の情報です。

 

書いた人:鷺ノ宮やよい

鷺ノ宮やよい

三重県出身。旅行代理店、編集プロダクションを経て2009年よりフリーライターとして活動中。学生時代に池波正太郎の小説やエッセイを読んで、食べ物の魅力を文章で伝えることに惹かれる。これまで雑誌やウェブサイトなどで携わったグルメ関係の記事は100本以上。三度の飯より食べることが好き。激辛ジャンキー。慢性眼精疲労。

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