グルタミン酸が豊富なトマト味噌汁&豚汁は、複雑で不思議と落ち着く味

実は春って、トマトが美味しい季節なんです。トマト以外にも野菜がたっぷり取れる味噌汁&豚汁レシピを、野菜ソムリエプロである「野菜と豆腐の料理家」江戸野陽子さんにお教えいただきました。

f:id:Meshi2_IB:20220317081422j:plain

『メシ通』読者の皆さん、こんにちは。野菜と豆腐の料理家・江戸野陽子です。

 

味噌汁にトマトって、試したことはありますか?

「え、それ美味しいの?」

「あったかいトマトって、ピザかミネストローネくらいじゃない?」

なんて声が聞こえてきそうです。

 

でも、味噌汁にトマトも全然アリなんです。

 

春のトマトが味噌汁に合う理由とは?

f:id:yohko-edono:20220310142807j:plain

トマトには、グルタミン酸という味噌と同じうま味成分と、さらにグアニル酸という他のうま味成分も含まれています。

グルタミン酸は、グアニル酸やイノシン酸(こちらもうま味成分)と合わさると、相乗効果でうま味が強くなります。

さらに、トマトのグアニル酸は、加熱すると増えることが近年の研究で判明。

トマトの加熱調理によって、うま味成分であるグアニル酸が増加する。オーブン加熱の場合、加熱前(10 mg)の約1.8倍となる。グアニル酸増加の最適温度は、50~60°Cである。(農研機構HPより

つまり、味噌汁にトマトを入れると、生のとき以上のうま味が感じられるのです。

 

f:id:yohko-edono:20220311114859j:plain

また、トマトは夏のイメージが強いですが、春のトマトも美味しいことをご存じでしょうか?

トマトは、南米のアンデス地方が原産地。日本でいえば、夏よりも、乾燥している春先の方が原産地の気候に近く、トマト本来の味に栽培できるのです。穏やかな日差しを浴びてゆっくりと育つ春トマトは、うま味がしっかり蓄えられ、酸味だけでなく甘みも強くなっています。実もキュッと引き締まっていって、たまらないほどジューシーに。

トマトの滋味あふれるうま味と酸味が、味噌汁の落ち着く味に加わることで、ほっとしつつも複雑な美味しさの味噌汁に仕上がりますよ。

 

せっかくなので多めに仕込んで、1食目は「春野菜とトマトの味噌汁」を、2食目は豚肉をプラスして「春のトマト豚汁」にアレンジして、2段階で楽しんじゃいましょう。

 

春野菜とトマトの味噌汁&春のトマト豚汁の材料

f:id:yohko-edono:20220311094433j:plain

【材料】(4杯分)

  • 水 4カップ(800ml)
  • だしパック 1個
  • 新じゃがいも 2個
    ※今回はサイズが大きいので1個だけ使用
  • 新玉ねぎ 1/2個
  • トマト(中玉) 2個
  • スナップえんどう 4個
  • 油揚げ 1枚
  • 味噌 大さじ1と1/2 

(トマト豚汁用)

  • 豚こま肉 50g

だしは、もちろんだしパック以外を使ってもOK。
顆粒だしを使う場合は、パッケージ表記通りの量を使用してください。

 

春野菜とトマトの味噌汁の作り方

1.材料を切る

f:id:yohko-edono:20220311094452j:plain

新じゃがいもは皮つきのまま、食べやすい大きさで乱切りに。新玉ねぎはくし切りに。スナップえんどうはすじを取り、半分に斜め切りします。

 

f:id:yohko-edono:20220311094509j:plain

トマトをくし切りにします。

今回は赤みがきれいな中玉トマトをチョイス。中玉は実が締まっているので、火を通しても崩れにくくておすすめです。大玉トマトなら1/2個をくし切りに、ミニトマトなら4〜5個を半切りにして使ってください。

 

f:id:yohko-edono:20220311094546j:plain

油揚げは1cm幅程度の短冊切りにします。

ここでは薄くて、かつ油抜き不要のものをチョイス(調理が楽だから)。油抜きする場合は、沸騰した湯で5分ほど下茹でしてください。

 

2.材料を煮る

f:id:yohko-edono:20220311095610j:plain

鍋に水、だしパック、新じゃがいも、新玉ねぎを入れて中火にかけ、沸騰したら3分ほど煮ます。

 

f:id:yohko-edono:20220311094936j:plain

3分ほどたったらトマト、スナップえんどう、油揚げを加え、中火のまま加熱します。

 

f:id:yohko-edono:20220311095145j:plain

新じゃがいもに火が通ったら、だしパックを取り除き、火を止めます。

今回の材料の中で、新じゃがいもがいちばん火の通りにくい野菜なので、全体の火の通りの確認に使っています。

 

3.味噌を溶く

f:id:yohko-edono:20220311095339j:plain

味噌を溶き入れます。

味噌によって味の濃さは違うので、少しずつ加えて味を調整してください。

 

f:id:yohko-edono:20220311095735j:plain

2杯分をお椀に入れ、1食目「春野菜とトマトの味噌汁」の完成です!

 

続けて、残った味噌汁を豚汁にアレンジしていきましょう。

 

4.豚肉を加える

f:id:yohko-edono:20220311095902j:plain

豚こま肉をひと口サイズにカットします。

安いうえに脂身が控えめな豚こま肉は、トマトの酸味を邪魔しないのでうってつけ。制作者としては豚こま肉が特におすすめなのですが、ない場合は、脂身が多くなってしまうものの安さを優先させて、豚バラ肉50gで代用してもOKです。

 

f:id:yohko-edono:20220311100114j:plain

味噌汁を中火で沸騰直前まで加熱し、豚こま肉を少しずつほぐしながら投入。豚こま肉に火が通ったら、火を止めます。

 

f:id:Meshi2_IB:20220317080804j:plain

お椀に入れて、2食目の「春のトマト豚汁」完成です!

 

具だくさんだから、おかずにもピッタリ!

f:id:Meshi2_IB:20220317002633j:plain

まずは「春野菜とトマト味噌汁」からいただきます。

トマトの酸味がだしに溶け込んでいて、味噌の塩気ともマッチし、さっぱりとしたうま味が感じられます。

新じゃがいもと新玉ねぎの若々しい甘さを味わいつつ、スナップえんどうのシャキシャキの食感が良いアクセントに。

油揚げにも、トマトと味噌が醸し出すコクのある風味がじんわりと染みていて……う〜ん、たまらない!

具だくさんなので、ご飯とこの味噌汁の2品だけでも、栄養バランスの取れた食事になります。

 

続いて「春のトマト豚汁」を実食。

豚汁は冬の定番メニューですが、トマトを入れることでさっぱりとした味わいになり、春らしい一品に変身しました。

トマトのグルタミン酸と、豚肉のイノシン酸が合わさって、まるで長時間煮込んだスープのようなコクが感じられます。食べごたえも豚肉のおかげでさらにアップし、満足感が半端ないです! 

 

f:id:yohko-edono:20220311120929j:plain

ご飯(分量外)を適量入れて、思い切って雑炊風にしてもグッドです。

汁のうま味が直接しみこんだご飯と、ゴロゴロと切られた春野菜を一緒に食べていると、優しい味わいにしみじみと春を感じます。

 

ちなみに、味噌汁&豚汁を温め直して食べる場合は、風味が飛ばないように、沸騰直前で火を止めるのがおすすめです。

 

今回は春野菜を中心に野菜を選びましたが、もちろん他の野菜に置き換えても大丈夫。

トマトと味噌でうま味たっぷりになるので、お好きな野菜を入れて、気軽に野菜を食べる手段の1つにしてみてください!

書いた人:江戸野陽子

f:id:Meshi2_IB:20220317004703p:plain

野菜と豆腐の料理家。豆腐・油揚げ・おから・豆乳などの使い方や選び方を伝えるべく日々活動中。レシピやコラム執筆のほか、料理教室も開催。倉敷在住の2児の母で、大学在学時に野菜ソムリエ、母になってから豆腐マイスターの資格を取得。著書「すごい豆腐の最高においしい食べ方」(笠倉出版社)

トップに戻る