全国どこにでもあるけどナゼか名古屋限定?最強オトコめし「チャーラー」とはなんなのか

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『メシ通』の読者様はご存じないと思うが、私は『永谷正樹のなごやめし生活』というブログを今年2019年の1月から毎日更新している。

nagoya-meshi.hateblo.jp

タイトルこそ「なごやめし」とあるが、日々思うことや考えていることなんかも書き綴っている。五十路のおっさんの戯言ゆえに訪れる人も少なく、閑古鳥が鳴いているブログだが、アクセス数がぐっと上がることがある。

 

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それが「チャーラーの旅。」という不定期連載。

内容はむろん、私がチャーラーを食べ歩いて、旨いチャーラーを……。

 

ええっ、なんだって?

 

チ、チャーラーが何かわからない?

 

担当編集・ムナカタもチャーラーの意味がわからず、ポカーンとしていた。何を言うとるのだ、中華屋ランチの定番、チャーハンとラーメンのセットに決まっているではないか。

どうやらチャーラーと呼ぶのは名古屋をはじめとした東海エリアだけのようだ。関西では「半チャンセット」というらしい。つまり、ハーフのチャーハンが付くということだが、ここ名古屋ではハーフじゃなく、まるっと1人前付く太っ腹な店だってある。だからチャーラーという呼び名の方がしっくりくると思うのだが。

とにかく、チャーラーの食べ歩きレポートを載せると、アクセス数がぐんと伸びるのである。ラーメンとチャーハンの組み合わせ自体は、全国区だってことなんだろう。

 

ラーメンは王道の中華そば

ブログで公開しているのは20軒ほど。その中でいちばん美味しいと思ったのが、地下鉄東山線中村公園駅を北へ3分ほど歩いたところにある『太陽食堂』。

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それもそのはず、ここには中華そばと焼きめししかメニューにない、いわばチャーラーの専門店なのである。

今やラーメンはミシュランガイドに載るほど料理の1ジャンルとして確立している。そこをめざさず、なぜチャーラーなのか。聞きたいことはいっぱいあるが、何はともあれ、ここのチャーラーを食レポしよう。

 

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まずは「中華そば」(並・680円)。

スープは鶏ガラと豚骨、昆布がベース。シンプルではあるものの、澄みきったスープを抽出するには相当な技術が必要である。

しかも、ここの中華そばは化学調味料を一切使っていない。麺はやや太めで噛み応えがあるのが特徴だ。出来上がりが楽しみ♪

 

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来た来た、これが「中華そば」。

このビジュアル!うん、これはラーメンじゃない。中華そばだ。誰もがイメージする中華そば。

具材は豚バラ肉を使ったチャーシューとメンマ、海苔、ネギ。やはり、これも王道。もう、見ただけで旨いことが伝わると思う。

 

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箸で麺を持ち上げて、フーフーしながら口へすすり込む。麺が纏ったスープの旨みと麺を噛んだときの小麦の味と香りが一体になる。

「あっさり」や「さっぱり」といった表現ではない。だからといって、今どきのラーメンのような複雑な味でもない。誰もが昔に食べたことのある、素朴でやさしい味わい。

心が和むなぁ。

 

頼もしい相棒、「焼きめし」

中華そばの美味しさに浸りきっていたら、相棒となる「焼きめし」(小・400円、中華そばとセットの場合300円)が目の前に運ばれた。

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これもまた、いかにも焼きめし。お米の一粒一粒に具材の旨みがコーティングされているのがよくわかる。しかも、何とも香ばしい香りが鼻腔をくすぐり、一刻も早くレンゲで掻き込みたくなる。

 

おっと、その前に焼きめしの調理プロセスを。

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焼きめしの材料は、チャーシューとネギ、玉子といたってシンプル。ただ、ラードで炒め、香り付けにネギ油を使うのが家庭のチャーハンとまるで違うところ(もちろん、それ以前に火力も圧倒的に違うが)。

 

中華鍋に火を入れてからものの2、3分くらいだろうか。あっという間に完成した。

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いよいよ実食。

おおーっ! 口の中で香ばしい香りとほのかな甘みがふわっと広がる。これは仕上げに用いたチャーシューのタレだろう。さらに米粒を噛むごとに染み込んだチャーシューの旨みがじんわり。

うっ、旨い……。

チャーハンを論じるのに、パラパラとかしっとりという類いの話は正直、どうでもいいと思えてきた。パラパラでもしっとりでも旨けりゃそれでいいのだ。

 

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不思議なことに、焼きめしを食べるとラーメンが、ラーメンを食べると焼きめしが食べたくなる。交互に食べると、それは美味しさの足し算ではなく、掛け算になるのだ!

チャーハンとラーメンのセットであるはずのチャーラーが1つの完成された料理とさえ思えてしまう。

 

試行錯誤の末に行き着いたオレ流「チャーラー」

では、これほどのチャーラーを作る店主とはいったい何者なのか。

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「そもそも、ラーメンがそんなに好きではなかったんです。昔から好んで食べていたのは、やはり昔ながらの中華そばでしたね」と、店主の前田健さん。

店を開く前は飲食店を営む父親の手伝いをしていたという。当時、中華そばは見よう見まねで作っていたが、本格的に学ぼうと一念発起。名古屋市東区の繁盛店『中華そば 白壁 あおい』の扉を叩いた。

 

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前田さん:ところが、父の店を任せていた人が辞めることになり、私が跡を継ぐことになりました。だから、3カ月くらいしか修業していないんです。それが2010年10月のことでしょうか。辞めた後も修業先の社長はとても親身になって相談にのってくれました。今でも親しくさせてもらっています。

 

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店をはじめるにあたって、前田さんがこだわったのはラーメン屋のラーメンではなく、幼い頃に中華屋さんや食堂で食べた懐かしい味わい。

オープン当初は中華そばと焼きめしのほか、味噌らーめんも用意していた。これもまた、注文ごとに具材の玉ネギとモヤシ、ひき肉を炒めてのせるというクラシックなスタイルだった。

 

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前田さん:まず、味噌らーめんがメディアに採り上げられたんです。その後に焼きめしも注目されました。その後、塩そばを作ったりもしましたね。どれも人気が出て、すごく嬉しかったんですけど、何か違うな、と。私のやりたかったのは、これだったのかと自問自答を繰り返しました。

 

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モヤモヤした気持ちが続く中、味噌らーめんと焼きめし、塩そばと焼きめしを作って食べてみた。すると、互いの味を打ち消し合っていることに気がついて愕然とした。

そして、味噌らーめんと塩そばの販売中止を決めた。あらためて中華そばと焼きめしのチャーラーにとことんこだわってみようと決心したのだった。

 

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前田さん:修業先の社長からは、ずっと「焼きめしをやめろ」と言われています。注文ごとに中華鍋を振らなければならないので手間がかかる上に肉体的にもしんどいですからね。でも、私はどうしてもチャーラーにこだわりたいんです。最近では社長も「お前はあえて苦難の道を選ぶ修行僧だ」って呆れてますけどね(笑)。

 

今も試食を繰り返しては中華そばと焼きめしのマッチングを第一に味を改良し続けている。とはいえ、中華そばだけ、焼きめしだけを単品で注文される客も少なくはない。そこは、中華そばも焼きめしも単品で食べた場合、あえて物足りなく感じるように作ってあるという。

 

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前田さん:ラーメン屋さんでチャーハンを出すお店もたまに見かけます。その多くはラーメンがメイン。チャーハンはサイドメニューなんですよね。チャーラーは単なるセットメニューではなく、ひとつの料理だと思うんです。美味しくて満腹になるチャーラーをこれからも作り続けていきます。

 

気軽に食べられて満腹になるのは当たり前。中華そばと焼きめしを交互に食べたときに感じる味の掛け算をどんどん広めていってほしいと願うばかりである。

 

店舗情報

太陽食堂

住所:愛知名古屋市中村区中村町7-40-5
電話:052-413-3700
営業時間:11:30~14:00、18:00~21:00
定休日:土曜日夜、日曜、祝日

www.hotpepper.jp

 

書いた人:永谷正樹

永谷正樹

名古屋を拠点に活動するフードライター兼フォトグラファー。地元目線による名古屋の食文化を全国発信することをライフワークとして、グルメ情報誌や月刊誌、週刊誌などに写真と記事を提供。最近は「きしめん」の魅力にハマり、ほぼ毎日食べ歩いている。

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