名古屋の「味噌かつ」の驚くべき進化!中華風、フレンチ風、天むすとのコラボ!?【新名古屋めし】

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とんかつ+味噌ダレ=味噌かつ。だし汁+薬味+鰻=ひつまぶし。このように、「名古屋めし」は、従来のメニューをアレンジしたものが多い。だから「結局のところはパクリじゃね?」という声も聞こえてくる。

 

しかし、よく考えてみてほしい。愛知県は自動車をはじめ、日本経済を支える製造メーカーの本社や工場が建ち並ぶ、モノ作り王国なのだ。全世界から絶賛される日本製品も海外で生まれた従来品を、より使いやすく、より多機能にアレンジしたものではないか。名古屋めしも愛知県民に脈々と受け継がれているクラフトマンシップに満ち溢れているのだ。世界に誇る食文化であり、世界遺産に登録されてもおかしくはない。って、それは言いすぎか。

 

そんな名古屋めしのひとつ、ご当地ラーメンである「台湾ラーメン」をアレンジした「台湾まぜそば」が全国のラーメンマニアを唸らせたのは記憶に新しい。名古屋めしは今もなお進化し続けているのだ。このシリーズでは、アレンジから生まれた名古屋めしをさらにアレンジした「新名古屋めし」ともいうべきメニューの数々を紹介しよう。

 

竜党に捧ぐ!中華風アレンジの「ドラ勝った丼」

まずは名古屋めしの代表選手「味噌かつ」。その発祥は、戦後間もない頃といわれている。当時、名古屋の街に建ち並んでいた屋台で定番だった、牛すじやモツを赤味噌で煮込んだ「どて煮」の鍋に串かつを浸して食べたのが味噌かつの始まりという説がある。揚げ置きして冷めてしまった串かつをどて煮の鍋で温めるというこの食べ方は、瞬く間に広まる。やがて、味噌かつは屋台のみならず、定食屋や洋食店などでも食べられるようになった。

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さっそく味噌かつの進化形メニューを紹介しよう。ここは千種区今池にある『中国料理 ピカイチ』。

 

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地元では、ドラゴンズファンが集まる店として有名だ。プロ野球が開幕すると、店内のテレビにお客さんの目はクギ付け。点が入るごとに盛り上がり、見知らぬ客同士が肩を抱き合って勝利を喜び合う光景も珍しくない。

 

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「ナゴヤドームでの野球観戦の帰りに立ち寄ってくださるお客さんも多いですね。なかには中高生もいますから、1,000円以内でお腹がいっぱいになるメニューを作ろうと思ったのがきっかけです」と、店主の兵頭忠保さん。

 

ただし、ありきたりなメニューを作っても面白くない。しかも客は地元のみならず、全国から訪れるのだ。そこで着目したのが名古屋めし。勝負ごとの前にゲン担ぎで食べるとんかつを使って新しいメニューができないかと考えた。で、誕生したのがコレ。中華風にアレンジされた味噌かつ丼で、その名も「ドラ勝った丼」(864円)。

 

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八丁味噌と自家製のバーベキューソースを合わせた味噌ダレには豚挽き肉と卵がたっり。中華らしく、とろみがあって、ほのかな酸味と深みのあるコクが後を引く。大ぶりなロースかつも食べ応え十分だ。ドラゴンズを全力で応援して腹ペコの中高生も、これなら大満足に違いない。

 

お店情報

中国料理 ピカイチ

住所:愛知名古屋市千種区今池1-14-5
電話:052-731-8413
営業時間:18:00~翌2:00(翌1:20L.O.)
定休日:日曜日

 

フレンチトーストとの奇跡的融合!「味噌フレンチとんかつ定食」

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続いて紹介するのは、緑区徳重の『キッチン カナン』。ここは昭和47年に創業したとんかつ専門店。

 

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現在は2代目店主、中島良平さんが厨房で腕を振るうが、先代が考案した「ワールドとんかつシリーズ」なるとんかつが評判だ。

 

たとえば、ケチャップ味の「アメリカン」(1,004円)やピザ風の「イタリアン」(1,274円)、キムチをのせた「コリアン」(1,220円)などがソレ。ほかにも豚肉にソーセージとチーズを挟んで揚げた「ジャーマン」やカレーソースで味わう「インディアン」(各1,220円)などもあるが、本場の味ではなくて、あくまでも雰囲気ってことで(笑)。

 

そんなユニークなお店なものだから、味噌かつの進化形メニューも当たり前のように存在する。中島さんにたずねてみると「朝、母がフライパンでフレンチトーストを作っているのを見た父(先代)がとんかつにアレンジしました」というメニューがあるという。それが「味噌フレンチとんかつ定食」(1,004円)!

 

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「フレンチトーストと同様に、揚げる前のとんかつを卵に浸してフライパンで焼きます。油で揚げていないのでヘルシーですよ」と中島さん。卵のふんわりとした食感もさることながら、マヨネーズとオイスターソースを隠し味に加えた味噌ダレは相性抜群。これはクセになる味だ。

 

お店情報

キッチン カナン

住所:愛知名古屋市緑区徳重5-909
電話:052-876-7762
営業時間:11:00~14:00(L.O.)、17:00~21:00(L.O.)※金・土は~21:30(L.O.)
定休日:月曜日

 

名古屋めし2大スターが共演!その名も「豚むす」

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進化形味噌かつのトリを務めるのは、伏見にある『広小路 キッチン マツヤ』。昭和37年にとんかつとステーキの店として創業した歴史ある店だ。

 

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現在は味噌かつやエビフライなどの名古屋めしが豊富に揃い、夜は居酒屋として営業中。地元のサラリーマンを中心ににぎわいを見せ、週末は県外からの観光客も多い。

 

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「とくに味噌かつは好評ですね。ウチの味噌ダレは、創業当時働いていたフレンチ出身のシェフが考案したもので、見た目よりもさっぱりとしているのが特徴です」と、オーナーの鈴木大介さん。

 

ここの味噌かつの進化形メニューの特徴は、お酒の〆に軽くつまめること。それが味噌かつにご飯と海苔を巻いた、その名も「豚むす」(1個216円)。

 

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味噌かつと天むす、名古屋めしの2大スターを共演させるという力ワザで誕生したこのメニュー、味噌かつとご飯の間に大葉を挟んでいたりと芸が細かい。この大葉の清涼感が味噌のコクと絶妙にマッチする。うん、これはお酒の〆にぴったりの一品だ。

 

お店情報

広小路 キッチン マツヤ

住所:愛知名古屋市中区錦1-20-22 広小路YMDビル1階
電話:052-201-2082
営業時間:11:00~23:00(22:15L.O.)※土・日・祝は~22:00(21:15L.O.)
定休日:無休

 

※金額はすべて消費税込です。
※本記事の情報は2015年6月のものです。

 

書いた人:永谷正樹

永谷正樹

名古屋を拠点に活動するフードライター兼フォトグラファー。地元目線による名古屋の食文化を全国発信することをライフワークとして、グルメ情報誌や月刊誌、週刊誌などに写真と記事を提供。最近は「きしめん」の魅力にハマり、ほぼ毎日食べ歩いている。

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