とある夫婦の冷や汁にまつわる犬も食わない話。でも、美味い冷や汁を食いました

f:id:uralatokyo:20150810182820j:plain

あるところに冷や汁をよくつくる夫婦がいた

こう暑い日が続くと、ホカホカご飯を想像するだけで食欲が減退するもんです。そうめんはとっくに食い飽きたし、一体なにを食えば…?

そんなときにふと思い出したのが宮崎名物の「冷や汁」。筆者は食べたことはないのですが、想像するに冷たいネコマンマみたいなものではないかと。調べてみたら鎌倉時代には食されていた記録があるそうで、宮崎県にかぎらず、埼玉県や山形県でも家庭料理として定着しているんだとか。まあWikipediaを読んだだけなんですが。

とある先輩にそんな話をしたところ、「うちは夏になるとよく作るよ。おれも妻も」とのこと。たしかふたりとも宮崎県とは縁もゆかりもなかったような…。何がきっかけで夫婦揃って冷や汁食いに……!?

 

そんなわけで「ちょっと食わせてもらえませんか?」とおじゃますることにしました。

 

f:id:uralatokyo:20150810182743j:plain

先輩の自宅最寄り駅に到着。たしか徒歩数分と近かった記憶が…。

 

f:id:uralatokyo:20150810182748j:plain

無事にマンションに着き、エレベーターに乗って部屋の前へ。

モザイクだらけで恐縮ですが、「絶対にどこの誰なのかわからないように取材してくれ」と強く要請されたのです。「たかが冷や汁で大げさな(笑)」とこのときは思っていました。

 

冷や汁は同時進行の作業が多い

f:id:uralatokyo:20150810182755j:plain

部屋に入ると材料が用意されていました。持つべきものは面倒見のいい先輩です。奥さんは出かけていて留守でした。

 

f:id:uralatokyo:20150810182800j:plain

さっそく調理を始めます。

丁寧に撮影したんですが、同時進行の作業が多いので1枚にまとめました。

  1. きゅうりをスライスして塩で揉む。そこにシソを刻んで乗せておく。
  2. ゴマをする
  3. アジの開きを焼いて身をほぐす(缶詰の鯖を使って簡単に済ませる家庭もあるようです)
  4. 出汁をとってプレーンの味噌汁をつくる

乱暴な説明になってしまいますが、これらが混ざって冷えれば完成です(乱暴すぎる)。実際の作業は「アジを焼いている間に出汁をとりつつゴマをすって……」という感じで、けっこう忙しいものでした。

ちなみにこれでも簡略化しているそうで、本来はゴマをすったすり鉢にアジと味噌を混ぜてペーストにし、すり鉢をひっくり返して直火で焼くのだとか。

 

f:id:uralatokyo:20150810182808j:plain

あとは冷えればOKです。常温になるまで冷まして、冷めたら冷蔵庫へ。

 

うどんと麦飯でいただきました

f:id:uralatokyo:20150810182813j:plain

冷や汁が冷えきるタイミングを見計らって、うどんを茹でてくれました。

 

f:id:uralatokyo:20150810182820j:plain

冷や汁うどんのできあがりです。うひょ~美味そう~!

 

f:id:uralatokyo:20150810182826j:plain

キュウリやミョウガのさっぱりした風味と、すりゴマ+アジ+味噌の濃厚なコクが絶妙にマッチしています。美味い!

これなら食欲のないときでも、ツルツルっと勢いで食べられることでしょう。

 

f:id:uralatokyo:20150810182831j:plain

こちらは麦飯にかけて冷や汁ご飯。完全にネコマンマですが、由緒ある日本古来のネコマンマです。

 

f:id:uralatokyo:20150810182835j:plain

うどんがツルツルなら、こちらはサラサラです。うどんを完食した直後だというのに、たっぷりの大盛り麦飯を苦もなく平らげてしまいました。美味い!

 

なぜ宮崎人でもない夫婦が冷や汁を?(以下、けっこう蛇足です)

──……ゲフ、ごちそうさまでした。そうそう、先輩夫婦はなぜ冷や汁をつくるようになったんですか?

 

先輩:じつはこのマンションに越してきて、夫婦げんかをしたのがキッカケなんだよね。

 

──夫婦げんかで冷や汁? なんでまたケンカしたんですか?

 

先輩:ベランダにサンシェードがあるだろ? 妻がホームセンターに行って、いろいろ工夫して自作したんだけど、あるとき無意識に『邪魔やな』って言ってしまって……(※先輩はもともと関西人です)、そしたら妻がものすごい形相でバリバリとサンシェードを壊しはじめたんだよね、目の前で。

 

──それは先輩が悪いですね。奥さんも暑いなか苦労して取り付けたんじゃないんですか?

 

先輩:でも洗濯物を干すのに邪魔だろ? 見てみ。

f:id:uralatokyo:20150810182841j:plain

──まあ確かに、出入りするのに一手間かかりそうですね。というか洗濯は先輩がしてるんですか?

 

先輩:洗濯は分担してなくて、気づいた方がやってる。でも当時、料理はおれがぜんぶやってた! 娘の弁当もおれがつくってた!

 

──あー、そういうのが溜まってたんですね。「夫婦げんかあるある」ですな。で、なんでまたそこで冷や汁が出てくるんですか?

 

先輩:えーと、数日はお互い口を利かなかったんだけど、冷静になったらさすがにこっちが悪かったと思って。で、妻が「冷や汁を食べてみたい」って言ってたのを思い出して、お詫びにつくったの。それから夫婦げんかのたびに、冷や汁が『和解しよう、頭を冷やそう』って意味を持つようになったんだよね。ダジャレってわけじゃないんだけど、何となくそういうふうになったんだよ、ウチは。

 

──なるほど、それでふたりとも宮崎に縁もゆかりもないのに、夫婦そろって冷や汁をつくるようになったと。よくつくるってことは、そんなにしょっちゅうケンカを?

 

先輩:いや普通に食いたくてつくることの方が多いよ(笑)。恥ずかしいからウチがどこの誰なのか、わからないようにしてくれよ?

 

冷や汁に歴史あり。

正直、サンシェードの件は犬も食わないって感じでしたが、こうして美味しいものを食べるキッカケになったのなら結果オーライでしょう。しかし人のことは言えませんが、夫婦げんかってしょうもないですね。

 

書いた人:秋葉実

秋葉実

山形県出身、さいたま市在住。もつ焼き屋で呑むのが心の底から楽しい意識低い系で、好きな酒類は日本酒。昭和48年生まれなので2000年頃のケータイメアドは「akb48@キャリア」でした。撮影集団「team GAM」に所属しています。料理はできません。

過去記事も読む

トップに戻る