麺を変えるとラーメンの味が変わる──100年以上続く製麺会社の中の人に話を聞いたら驚きの連続だった

中野ブロードウェイ地下1階にある「麺市場」。製麺所直送のラーメンやパスタの生麺、各種スープ、チャーシューや背脂などの具材を取り揃えており、また店内にはイートインコーナーがあって実際の商品も試食できるのだとか。

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飲食店向けの「麺の専門店」が面白い

皆さんこんにちは。メシ通リポーター、BLObPUS(ブロッパス)です。

友人の調理師が、ときどき自分用にここの生麺を使って賄いを作っているという話を聞いて知ったお店「麺市場」が中野ブロードウェイにあります。

 

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▲生麺やスープ、調味料でいっぱいの店内!

 

コロナ禍で自炊する機会も増えたので、手軽に本格的な自分好みのラーメンを作ってみようと思い立ち、取材をお願いすることに。いろいろと教えていただきました。

 

創業100年以上の製麺工場が直営する「麺市場」

「麺市場」の責任者で、業務用の麺について詳しい大成食品株式会社の古米(ふるまい)さんに、ワクワクしながらお話を伺いました。

 

──初めまして。まず、こちらのお店の母体であり、業務用の製麺事業を主に展開されている大成食品さんのことから教えていただけますでしょうか?

 

tokyo-ramen.co.jp

 

f:id:BLObPUS:20211127110105p:plain古米さん(以下・古米):はい。最初は大正6年に屋台のラーメン屋さんから始まって、昭和の時代に入ってから製麺事業に進出いたしました。その時点からさまざまなお店に対して麺の提供を始めています。

 

──ラーメン店へのコンサルティングなども行っているそうですが。

 

f:id:BLObPUS:20211127110105p:plain古米:はい。まずラーメン店を開業予定の方や、フランチャイズからの独立、商品開発向上を目指すラーメン店主様を対象とした「ラーメン塾」などのセミナーを行っていたら、そのままコンサルティング業務が始まったという感じですね。

 

──麺市場をオープンされたきっかけや経緯は?

 

f:id:BLObPUS:20211127110105p:plain古米:10年以上前から月1回のペースで麺の工場直売をやっているんです。それが好評で、工場の一部での催事ではさばききれなくなってきたので、需要があるのだったら地元中野の中心「中野ブロードウェイ」で飲食店向けの専門店を始めてみようというのがきっかけです。

 

──実際に開店してみての反響はいかがでしたか?

 

f:id:BLObPUS:20211127110105p:plain古米:最初はパスタをメインにしたカフェでスタートしたのですが……。同じフロア内に3店ほどすでにカフェがあるため競合してしまい、なかなか上手くいかなかったのです。
食品販売店の多い中野ブロードウェイ地下のイメージに合わせて、さまざまな麺を選べる「麺市場」にリニューアルしてから売り上げ的にも安定するようになってきました。

 

──もとはカフェみたいなお店だったんですね。

 

f:id:BLObPUS:20211127110105p:plain古米:最初はコーヒーなんかも出していたんですよ。でも、それだと近くのお店とバッティングしてしまうし、ウチの強みもお客様に伝わらないので今の形になりました。

 

──出店した場所に合わせた業態に変更されたんですね。そのうえで気になることなどはありましたか?

 

f:id:BLObPUS:20211127110105p:plain古米:中野ブロードウェイは、平日はほぼ近隣住民の方がいらっしゃる場所なのですが、土日祝日になると観光地に変わるんです。そのため、お土産用にスープだけを大量に購入する方がかなりいらっしゃいます。これは実際に営業してみてわかったことですね。

 

店内で販売している生麺とスープを選んで試食できる

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▲さまざまな種類のラーメン用のスープが並ぶ

 

──お店で販売しているスープと麺を組み合わせて食べられる、イートインもいいですよね。

 

f:id:BLObPUS:20211127110105p:plain古米:さまざまな生麺と1杯分数10円ほどのラーメン用のスープを組み合わせれば、ご家庭でもおいしいラーメンが楽しめますよという提案にもなると考えています。

 

──近所ということもあって私も何度かお店にきたことがあるのですが、最近どんどんスープの種類が増えているように感じます。

 

f:id:BLObPUS:20211127110105p:plain古米:そうですね! それは意識しています。季節によってスープを入れかえたり、常にアンテナをはって新しいスープを増やしたりしています。スープメーカーさんから仕入れているものや、共同開発したオリジナルスープとあわせて現在は60種類くらいのスープを店頭に置いています。

 

麺の種類の違い

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▲麺に関しては中華麺が一番の売れ行き。その次は生パスタです

 

──では、中華麺のことから教えてください。御社では、うどんやパスタも製造されていらっしゃると思うのですが、中華麺の定義といいますか、原材料などの具体的な違いは……?

 

f:id:BLObPUS:20211127110105p:plain古米:麺の種類はさまざまですが、もともとは小麦粉であることは一緒です。中華麺に関していうと、「かん水」が入っているのが一番の違いですね。アルカリ塩水溶液であるかん水を小麦粉に混ぜることで、麺にコシが出て伸びにくくなるのと、ツルッとした食感も生まれます。

 

──なるほど。ちなみに麺の「縮れ」はかん水と関係はあるのでしょうか?

 

f:id:BLObPUS:20211127110105p:plain古米:いや、特に関係はないです。縮れは製麺の際に機械的に作ることもできますし、中加水以上のストレート麺を手揉みして寝かせることで縮れをもたせることもできます。

 

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──そうでしたか! あとは、お店で食べた時に小麦感の強い麺もありますよね。

 

f:id:BLObPUS:20211127110105p:plain古米:国産小麦だから香りが強いという訳でもなくて、外国産でも香りの強い小麦粉はあります。そこを上手くブレンドして香りを引き出しています。詳しくは企業秘密です! 細麺・中太麺・太麺などの「麺の太さ」と、「縮れの有無」、平打ちか正方形かなど「麺の形状」で分類されますが、それに加えて先ほどの小麦粉の配合や水の量などを変えたりしながら、そのお店のスープに適した麺を提案しています。

 

スープに合わせて、どんな麺が最適なのかを探る

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▲背脂やチャーシューなどの具材や調味料も数多く取り揃えています

 

──たとえばオーソドックスな中太麺なら、なんにでも合うという感じでしょうか?

 

f:id:BLObPUS:20211127110105p:plain古米:そうでもなくてですね。スープによってはもちろん、小麦粉の成分によっても相性は違いますから、中太麺だからなんにでも合うという訳ではありません。手順としては、お店が作ったスープに対して同じ中太麺でもこの配合の麺が合うのではないか……と数種類の麺を提案して、そこから調整していきます。

 

──なるほど。まずスープありきでそこにさまざまなタイプの麺を合わせてみて最適解を見つけていくんですね。

 

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f:id:BLObPUS:20211127110105p:plain古米:そうです。ですのでこの後の麺の試食も、同一のスープで3種類の麺を味わっていただいて、その違いを体感していただきたいと思っています。

 

──ありがとうございます。それは楽しみです!

 

3種類の麺を食べ比べてみた

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博多麺(細麺)、中華ストレート麺(中太麺)、平打ちぢれ麺(太麺)の3種類を食べ比べてみます。

スープについては、古米さんの提案であっさりしていて麺の違いを感じやすい「ラーメンスープとりがら醤油味」にしました。

さっそく、試食してみましょう!

 

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博多麺(細麺)

 

スープとの絡みが良く、麺と一緒に口の中にスープをすすりあげるイメージ。博多麺独特のプチプチとした歯触りがあり、ほどよい小麦感。軽やかにスルスル入ってくるので、いくらでも食べられそう。

 

f:id:BLObPUS:20211127110105p:plain古米:この博多麺(細麺)は、九州の製粉会社から小麦粉を仕入れて作りました。九州地方で昔からよく使われている粉を使い、実際に九州の豚骨ラーメンに使われている麺を意識して製造しています。食感としては「細くても噛み応えがある麺」になっています。

 

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▲中華ストレート麺(中太麺)

 

ツルツルっとした食感の麺。モチモチとした歯ごたえとなめらかな舌ざわりは王道の味わいで、さすがの安定感。とりがら醤油味のスープとも相性が良く、バランスは完璧。

 

f:id:BLObPUS:20211127110105p:plain古米:これは王道の中華麺ですね。食感はおっしゃるとおり、モチモチ感となめらかさを主眼にしています。濃厚なスープよりは、あっさりとしたスープとの相性がいいと思います。

 

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▲平打ちぢれ麺(太麺)

 

太くて力強く、歯ごたえもコシもある麺。麺に寄り添うようにスープが口の中に入ってくる博多麺(細麺)とは違って、縮れのせいか口の中でスープと麺が暴れるような食感。これが一番自分好みだったため、気がつけばかなりの量を食べきっていました。自分用のオリジナルラーメンを作るなら、この麺に決定したい!

 

f:id:BLObPUS:20211127110105p:plain古米:この太さのストレート麺だとスープに麺が絡みにくくなりますし、茹で時間もかかってしまいます。なので少し平打ちにして、さらに薄くしてちぢれさせることで茹で時間を短縮。より麺にスープが絡むようなイメージで製造しています。濃厚系ラーメンで食べていただくと、この麺の良さがよくわかると思います。

 

スープと麺のハーモニー。自分なりの最適解を探せ

次に、先ほどの食べ比べの勝者「平打ちぢれ麺(太麺)」を使って自分好みのオリジナルラーメンを作ってみることに。キッチンの店員さんに頼めば、お店のイートインコーナーでこうして試食もさせてもらえるのです。

 

──少し肌寒い季節になってきたので、味噌ラーメンにしようかと思うのですが。

 

f:id:BLObPUS:20211127110105p:plain古米:この平打ちぢれ麺(太麺)を使うのであればしっかりしたコクのある味噌味がオススメですね。

 

──ありがとうございます。背脂なんかもありますか? ちょっとコッテリめにしたいので!

 

f:id:BLObPUS:20211127110105p:plain古米:ありますよ! 具材はどうしますか?

 

──味噌ラーメンだと具沢山が好きなので、野菜多めでコーンなんかもあれば入れたいですね。

 

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さっそく自分好みの具材をのせてもらいます。キッチンで手際良くオリジナルラーメンがあっという間に完成!

 

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背脂の甘みと味噌がピッタリ。うん、なかなか良いじゃないですか。

 

これはこれでおいしいのだけれど、食べ進めているうちにもっとパンチの効いた1杯にしたい欲求がふつふつと湧き上がってきました。

選んだ平打ちぢれ麺(太麺)は歯ごたえがあり、かなり主張が強いため、まだちょっとスープが大人しい気がする……そう思って卓上を見ると、ピッタリの調味料を発見!

 

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唐辛子とニンニクたっぷりの万能調味料「ホットガーリック」を大量に投入!

味に締まりが出て、辛味噌ラーメンとしてかなり良いバランスになった気がする。

自分好みの1杯になったことで勢いがつき、汁まで完食!

 

取材を終えて、個人的にもいろいろな種類の麺とスープを購入してしまいました。

これから自宅でいろいろ試行錯誤して、自分だけの1杯を作ってみたいと思います。

皆さんもチャレンジされてみてはいかがでしょうか?

 

お店情報

麺市場 中野ブロードウェイ店

住所:東京都中野区中野5-52-15 中野ブロードウェイ地下1階 宝屋様向かい
電話番号:非公開
営業時間:10:00~19:00 
定休日:年始と全館休業日

twitter.com

書いた人:BLObPUS

BLObPUS

オリジナルキャラクターの怪獣フィギュア「BLObPUS(ブロッパス)」をリリースしたのをきっかけに活動開始。国内外のフィギュアイベントに参加しつつ中央線沿線を飲み歩く怪獣おじさん。蓄光素体にメタリックカラーを基調とした独特の色使いで彩色にも定評がある。

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