クラフトビール量り売り専門店を営む元バックパッカーの生き様【下北沢】

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演劇とサブカルチャーの街として知られる下北沢。飲食店も数多くひしめくこの地で今年3月、日本全国のクラフトビールを量り売りするお店がオープンしました。

 

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▲今年3月にオープンしたお店の外観

 

それがこの「TAP&GROWLER(タップアンドグロウラー)」。下北沢駅・北口から徒歩3分、細い路地に入ると突如として現れるパブ風の外観が目印です。さっそくお邪魔しましょう。

 

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▲国内から仕入れたクラフトビールの銘柄がずらり!

 

店内に入ると、真正面の壁にはお店で販売されているクラフトビールの銘柄がズラリ。ラインアップは常に同じではなく、タイミングを見計いながらその都度、オーナーが厳選したビールをブルワリーから仕入れているそうです。

 

量り売りを希望する場合はまず、32オンス(約0.9リットル/1,350円、キャップ代30円)または、64オンス(約1.8リットル/1,860円、キャップ30円)のボトルを購入。

 

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▲量り売り用のボトル(左が32オンス、右が64オンス)

 

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▲店内には3台のビン詰め機が設置されている

 

注文後、専用のビン詰め機にセットされたボトルにビールが注がれます。ちなみに、ボトルは水ですすいでお店に持ち込めば、次回以降も使用可能。

 

気になったビールがあれば、その場でテイスティングもできる(小グラス1杯285ミリリットル/600円〜 ※クラフトビールの銘柄によって値段は変わります)ため、常設されている角打ちスペースでさまざまなクラフトビールを飲み比べられるところも、実に魅力的です。

 

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▲小気味良い音とともに、グラスにビールが投入されて……

 

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▲クラフトビールの登場! ※日によって銘柄と値段が異なる可能性があるので、あらかじめご注意ください。写真のビールは、ディスタント・ショアーズ「Galaxy Haze」(左)とVERTEREの「Californica」(右)

 

ブルワリーを持つ夢に挑む陽気な店主

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▲店主の金井圭司さん

 

このお店を取り仕切るのは、現在37歳の金井圭司さん。まずはクラフトビール量り売り専門店を開業した理由を聞いてみました。

 

f:id:exw_mesi:20181023182734p:plain金井さん:皆さんにクラフトビールの魅力を知っていただきたいのはもちろん、将来、自分のブルワリーを作る夢を持っていて、そのためでもあります。これまで、お酒関連の仕事をしたことがないんですがそうなると、酒税法の関係でいきなりビール造りをするのは無理。そこで、実績作りのために、まずは酒屋さんから始めようと考えたのがこのお店です。

 

聞けば、金井さんは20代中頃までバックパッカーとして世界を飛び回っていたのだそう。常日頃からビールに接していたその当時の生活が影響して、ビールに魅了されてしまったと言います。

 

昨年あたりから「自分の好みに合った、クラフトビールを作りたい」と思うようになったそうですが、いざ行動に移してみたものの、酒税法という壁にぶつかります。

 

個人でブルワリーを開業するとなると、まず製造免許を取得する必要があり、そのためには年間60キロリットル以上の製造見込みがあるかどうかが問われます。

 

製造免許を受けた後1年間の製造見込数量が一定の数量に達しているかどうか(最低製造数量基準、ビールについては60キロリットル)を審査し、これらの要件を満たしていれば製造免許が付与されることになります。

引用元:【酒類製造免許関係】|国税庁

 

こうした製造力はもちろん、ビールの入手経路もある程度定まっていなければ免許を取得できないのです。目の前に大きな壁が立ちはだかりながらも、ブルワリーを所有するという夢の第一歩として、金井さんはアメリカのポートランドでよく見られるクラフトビールの量り売りに目をつけて、このお店をオープンしました。

 

──日本では珍しい業態ですよね。かなりチャレンジングだったのでは?

 

f:id:exw_mesi:20181029130849p:plain金井さん:やるからには他にはない新しいことをしたいなと。

 

──お店をオープンする上で、一番こだわったところはありますか?

 

f:id:exw_mesi:20181029130849p:plain金井さん:やっぱり、おいしいビールを飲んで欲しいっていうところですかね。例えばこの量り売り用の瓶詰め機、アメリカのポートランドで使われている機械なんだけど、これ窒素と二酸化炭素で充填(じゅうてん)できるから、酸化を防いで泡立ちを少なくすることが可能なんです。

 

──つまり、劣化しにくい状態になっていると?

 

f:id:exw_mesi:20181029130849p:plain金井さん:そうですね。出来るだけ酸素に触れさせないようにしているので、家に持ち帰って飲むまでは新鮮な状態が保たれますよ。

 

──それにしても、機材はどれも高そうなものばかりですね。

 

f:id:exw_mesi:20181023183131p:plain金井さん:機材を含めて、開業するのにざっと1,200万円かかりました。新規事業だったから銀行から融資の許可がなかなか下りなくて……。いやあ、当時は参りましたね。セッティングや洗浄の仕方、ビア樽などわからないことだらけだったけど、そこは自分で研究しました。

 

お店のオープン前から携わっていたシェアハウス経営で得た利益で、資金を調達したという金井さん。それにしても、ビール好きが高じて、半ば見切り発車的に事業を始めてしまった行動力には驚かされます。

 

親に勘当されながらも、我が道を突き進む

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▲冷蔵庫には瓶、缶類のお酒も常備してある

 

そんな金井さんの出身地は長野県の上田市。信州最古の温泉と言われる別所温泉から程近い、のどかな環境での生活は居心地が良かった反面、どこか窮屈に感じていたそうです。

 

f:id:exw_mesi:20181023184046p:plain金井さん:周りは山に囲まれて、いいところだったんですけどね。ただ、本当に何もできない場所だったんですよ。高校を卒業すると、地元の工場か農家くらいしか就職先がなくて。ここにいても世界が狭い、つまらないなとずっと思ってました。あまりにつまんなすぎて、とうとう高校を留年しちゃったくらいですからね(笑)。

 

「もっと広い世界を見てみたい」。そんな願望を抱いていた金井さんをとりこにしたのが、バックパッカーという生き方でした。

 

──バックパッカーのどのあたりに魅力を感じたんですか?

 

f:id:exw_mesi:20181023184058p:plain金井さん:世界の人たちがどう生きているのか、どんな生活しているのかとか、人それぞれの生き様を感じるあたりかな。19歳で高校を卒業してからは、ひたすらバックパッカーにのめり込みましたね。5年ほど長野と海外を行き来していたら24歳の時に親に勘当されてしまいましたけど、好きなことをしたかったからそんなことは気にしませんでした。そこからまた1年、アメリカやメキシコとかをずーっと旅して。本当に楽しかったな。その時、ユースホテルで寝泊まりしてたんですけど、「あ、こういうの自分も経営してみたいな」と思ったんです。今、シェアハウスも経営していますけど、きっかけはここにあるんですよ。

 

バックパッカー生活に別れを告げた金井さんは、帰国後、不動産を宣伝するノウハウを学ぶために、6年ほど広告代理店の営業マンとして勤務。

 

そこで経験、スキルを身につけた上で、一つの目標としていたシェアハウス経営へとこぎ着けます。ある程度生計が立つようになると、今度はビールをこよなく愛する気持ちが、金井さんの心を支配するようになるのです。

 

──このお店を始める前に、ご家族には相談されたんですか?

 

f:id:exw_mesi:20181023184154p:plain金井さん:嫁と小さい子どもが2人いるんですが、全く相談しませんでしたね。今思えば少し申し訳なかったです(笑)。

 

「下北沢」という街の懐の深さに支えられて…

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▲常設されている角打ちスペース。フード類に関しては、近隣店舗からの持ち込みも可能としている

 

──お店を開業して約8カ月たちますが、手応えはいかがでしょう?

 

f:id:exw_mesi:20181023184433p:plain金井さん:いやー、正直言うとつらい事の連続でしたね。お盆の時とかは1日200杯も注文してくれた時もあったんですが、雨が降って客足が伸びない時もあって。売上がガクッと落ちた時もあります。

 

──やっぱり、好きなことを仕事にしても、必ずしも良いことばかりではないですか?

 

f:id:exw_mesi:20181023184433p:plain金井さん:そう感じる時もたくさんありますね。好きなビールで仕事を始めたのに、こんな苦しいのかって。これから寒くなって夏に比べればビールの消費は減るわけだから、このままで冬を越せるのかなって正直、不安になる日もあったり。

 

夢に向かって突き進んではいるものの、実際は現実と向き合わざるを得ない時もあったと明かす金井さん。それでも、広告代理店の営業マン時代の知恵と経験をいかしながら、今後への収穫も掴んだようです。

 

f:id:exw_mesi:20181023184609p:plain金井さん:ブルワリーにどんどん問い合わせをして、仕入先を開拓できたのは良かったです。広告営業時代の経験がいきましたね。お歳暮用のビール販売を練ったりだとか、今後に向けていろんな施策を考えていますよ。

 

そして、お店を成り立たせる上では、近隣店舗の強力なサポートも欠かせないと、金井さんは力説します。

 

f:id:exw_mesi:20181023184619p:plain金井さん:近くのお店の方が助けてくれるんですよ。唐揚げ屋さんが唐揚げを持ってきてくれたり。うちは酒屋さんなのでフード類を作ることができない。だからすごくありがたかった。あと他のお店の人が暇な時に遊びに来てくれたり、逆に俺が遊びに行ったら歓迎してくれる。バックパッカーをやめて帰国してずっと住んできたから下北沢に開業したんですけど、本当に懐が深い街だなと改めて実感しました。開業してから苦しいことばかりあった反面、振り返ってみるとどれも楽しい時間でしたね。

 

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▲店内で同じく下北沢にお店を構える「極鶏(ごくちー)」や「EIGHT BURGER’S」のデリバリーもできる

 

ブルワリーを作る夢へと走り続ける金井さん。最後にこんなメッセージをくれました。

 

f:id:exw_mesi:20181023184721p:plain金井さん:人生は一回しかないから、好きなことをやるべきだと僕は思っています。生きている時間は無限にあるわけではないし、リスクとか考えて動かないのはもったいない。もしやりたいこと、好きなことがあるなら、ためらわないでほしいですね。ああ、でもそんなこと言いつつ、僕とこのお店もまず冬を越えなきゃいけないのですが(笑)。

 

これから肌寒くなる季節。金井さんの陽気なトークを聞きながら、クラフトビールを満喫してみてはいかがでしょう?

 

お店情報

TAP&GROWLER(タップアンドグロウラー)

住所:東京都世田谷区北沢2-33-6 飯嶋ビル1階
電話:03-6416-8767
営業時間:平日 18:00〜24:00、土曜日・日曜日・祝日 15:00〜21:00
定休日:月曜日
ウェブサイト:https://www.craftbeers.tokyo/

 

書いた人:ダイゴロ

ダイゴロ

コピーライターを営んでおります。 広告制作に携わる一方で、月刊公募ガイドにて「コピーはコーヒー牛乳飲みながら。」を連載中。人狼が、最近のマイブームです(強くはない)。

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