自ら考案したレシピや、日々の飲み食いエピソードが度々バズり、Twitterのフォロワー数が6万5千人(※2021年11月現在)を超える魔女っこれいさん。“飲み歩きの達人”として定期的にトークイベントや飲み系のイベントなども行う料理インフルエンサーだ。
そんな魔女っこれいさんが、これまでTwitterでバズったレシピを中心に、居酒屋のおつまみなどにインスパイアされた宅飲みレシピを67品収録した初のレシピ本『自宅が10分で居酒屋に! 魔女っこれいの絶品おつまみレシピ』(扶桑社)を刊行した。
▲『自宅が10分で居酒屋に! 魔女っこれいの絶品おつまみレシピ』(扶桑社) 画像提供/扶桑社
普段は専業主婦の彼女が、どうしてレシピ本を出すことになったのか。魔女っこれいさんの担当編集者・和田まおみさんも交えて、その経緯を聞いた。
料理を始めたきっかけは失恋
──れいさんがTwitterにオリジナルレシピをツイートするようになったきっかけから教えていただけますか。
れい:今の夫と同棲を始めるまで、料理はほとんどしていませんでした。ずっと実家暮らしだったんですが、母が料理上手で、こだわりが強かったんです。なので家族をキッチンに立たせるのも好きじゃなかったんですよね。
──へ~。娘に料理を教えたがるお母さんが多いイメージですが……。
れい:手伝うことはありましたし、私自身、料理に興味があったんですけど、私が作ろうとすると気になるみたいで、なかなか触らせてくれなかったです。ただ、6年前に長くお付き合いしていた婚約者にフラれまして、交際期間の8年半が水の泡になったんです(笑)。それを機に実家から出ることになり、そのときに慰めてくれた男友達の家に転がり込むような形で同棲が始まって、そこで手料理を作るようになりました。それが今の夫です。それまで夫は一人暮らしをしていて、キッチンも荒れ放題だったんです。まずは片づけから始めて、ほとんどの料理を私が作っていました。
──お母さんのレシピも『自宅が10分で居酒屋に! 魔女っこれいの絶品おつまみレシピ』(以下『おつまみレシピ』)には掲載されていますよね。
れい:デザートの「バナナボンボン」は小さい頃から食べていて、大人になって母から聞いたレシピです。ずっと母の料理を見て、食べて育ってきたので、レシピを考える上での影響は大きいと思います。
母がよく作ってくれた謎のおやつ。ホットケーキミックスを一口サイズに切ったバナナに絡めて油で揚げるバナナボンボン。熱したバナナってマジで美味いよな。トロトロしてカスタードクリームみたいになる。そのままでも美味しいけどシナモンと砂糖かけるのが好み。 pic.twitter.com/0Cxr4FCOV8
— 魔女っこれい (@majyokkorei) 2020年4月1日
──料理を始めて、すぐにレシピをツイートするようになったんですか?
れい:そうです。夫の家が、私の実家から遠かったというのもあって、周りに友達がいなかったんです。なので「こんな料理を作った」と友達に知らせるために、Twitterに料理の写真をアップし始めました。あと自分へのメモ代わりというのもありました。そしたら次第に面識のない方々が料理のアドバイスをくださって、いつの間にかフォロワーが増えていきました。
──意識してフォロワーを増やそうと思った訳ではないんですね。
れい:どうしたら、いろんな人に見てもらえるのか考えた時期もあったんですけど、わりとマイペースにやっていたら徐々に増えていきました。
▲帯にも使われている似顔絵は、漫画家の清野とおるさんに描いてもらった
酔っ払いエピソードが好評でトークイベントのオファー
──れいさんはお酒好きで、コロナ禍の前は飲み歩きの様子も頻繁にツイートされていましたが、お酒にまつわるトークイベントも行っていますよね。
れい:阿佐ヶ谷ロフトAさんで定期的にトークイベントをやらせていただいています。それは料理とは全く違う、「泥酔系女」みたいなポジションで呼ばれていまして(笑)。お酒を飲みながら、お酒を飲んだときの失敗談、お酒にまつわる奇跡のような体験などを話しています。
──どういうきっかけでトークショーを始めたんですか?
れい:Twitterを始めた頃から、お酒にまつわるツイートもしていたんですけど、その一つに夫と結婚するきっかけになったエピソードがあって。私の誕生日前日に、夫が横浜のホテルを予約してくれたんです。特典としてホテルの飲み放題無料チケットが付いていたんですけど、夫がすっかり時間を忘れていて、そのチケットが無駄になってしまったんです。それに私が激怒したら、夫が反省の意を込めて土下座をして、「これが俺なりの謝罪だ」とアスファルトの地面に頭を叩きつけて流血したんです。
──激しいですね。けっこうお酒は入っていたんですか?
れい:飲んではいましたけど、そこまで酔っていなかったです。それで私が逃げ出したら、夫が血だらけで追いかけてきたんです。必死に逃げるうちに、横浜で土地勘もなかったので怪しい路地裏に入ってしまって、気が付いたら風俗街にいたんですよ。夫ともはなればなれになって、道に迷ってしまったんです。
──スリリングな展開ですね。
れい:かばんも持っていなかったですし、どうしようと思っていたら、知らないおじさんがすーっと近付いてきて、「君幾らなの?」って声をかけてきたんです。
──怖っ!
れい:そしたら23時55分ぐらいに血だらけの夫が登場して、何事もなかったように「ハッピーバースデー!」と(笑)。
──そのタイミングでお祝いの言葉ですか(笑)。
れい:そしたらおじさんがビックリして逃げちゃったんです。そういう酔っ払いエピソードをツイートしていたら、面白いってイベント関係者の方の目に留まったみたいで。それで「定期的にお酒を飲みながらのトークイベントをやってくれませんか」というオファーがありました。
――トークイベント後に行方不明になってしまった顛末をツイートしていたのも覚えています。
れい:あの日は道端で寝てしまい、犬に起こされました。コロナ禍の前は年に数回、「死んでたかもしれない……」って目に遭っているんですけど、大きなケガもなく、何とか無事に生きています。
──そういうときは記憶がない状態なんですよね?
れい:自分で言うのもなんですけど、完全に記憶がない状態でも、しっかりしようとしているみたいで、ちゃんと帰巣本能もあるみたいです。あんまり自分を信じ過ぎてもいけないですけど(笑)。
──旦那さんも理解してくれているんですよね。
れい:そうですね。先ほどの元婚約者にフラれたショックで毎日、朝から晩までお酒を飲むようになってしまったんです。どん底で良くない飲み方を続けていたときに、夫が熱心に励ましてくれていたので、「今はマシになった。丸くなったね」と言ってくれています(笑)。
──旦那さんと一緒に仲良くお酒や料理を楽しんでいる様子も、よくツイートしていますしね。
れい:そういう酔っ払いエピソードと、レシピを日常的にツイートしていたんですけど、コロナ禍で外で酩酊するのが難しくなって。そこで夫と広い家に引っ越して、家飲みを充実させたんです。それが『おつまみレシピ』で紹介しているレシピにも反映されています。
▲『自宅が10分で居酒屋に! 魔女っこれいの絶品おつまみレシピ』(扶桑社)より 画像提供/扶桑社
──自宅に友達を招いて、手料理を振る舞うツイートもしてますよね。
れい:それもTwitterのおかげなんです。地元の友達って食べるのは好きなんですけど、そこまで情熱はないんです。「美味しいものは好きだけど、そこまで毎日こだわっているのって異常だよね」って言われるぐらいで。でもフォロワーさんには、私と同じ気持ちの方も多くいらっしゃって。Twitterを通じて知り合った友達と料理を作り合って、一緒にお酒を飲むのが楽しいんです。
──料理を通じて友達の輪が広がっているんですね。
れい:こう見えて、実は人見知りなんです。でも料理という共通項があると、会話が広がるんですよね。
その日に飲むお酒を中心にレシピを考える
──毎日のようにお酒を楽しんでいて、よく体型をキープできていますね。
れい:ここ数年、酒の飲みすぎで体重が10キロぐらい増えたので、最近そこから8キロぐらい落としました。筋トレもしましたし、お酒はどうしてもやめられないので、『おつまみレシピ』にも掲載しているこんにゃくやしらたきのおつまみでカロリーカットする日もあります。
▲『自宅が10分で居酒屋に! 魔女っこれいの絶品おつまみレシピ』(扶桑社)より 画像提供/扶桑社
──休肝日は?
れい:特に決めてないですね。今日はちょっと飲みたくないなって日は飲まないです。健康診断も受けていて、ちょっと基準値と比べて数値が怪しいところもありますけど……まだ健康でいられています。
──レシピはどうやって考えることが多いんですか?
れい:まず「今日は何を飲むか」というところから始まります。
──お酒ありきなんですね。
れい:そうです。ワインを飲みたい気分だったらフレンチっぽくしようとか、日本酒が飲みたかったら和食にしようとか。何を作るにしても、旬の食材は安いので、なるべく使うようにしています。あとは冷蔵庫に残っている余りものですね。「〇〇を作るぞ!」ってテンションで料理をするのは月に数回程度です。
▲『自宅が10分で居酒屋に! 魔女っこれいの絶品おつまみレシピ』(扶桑社)より 画像提供/扶桑社
──スーパーで大量に購入した食材をツイートすることも多いですが、食材は計画して買っているんですか?
れい:そういう場合もあります。たとえば「メキシコ料理を食べたい」となったら、タコスの生地や専用のソースを買いに行くんですけど、そうじゃないときはスーパーにフラッと行って、安いものを買ってレシピを組み立てます。
──実際に行った居酒屋のレシピを参考にすることも多いそうですね。
れい:居酒屋のメニューからヒントをもらうことは多いですね。気になった料理は、お店の方にレシピを教えてもらうこともあります。たとえば、最近はコロナ禍で行けなくなってしまいましたけど、南千住に行きつけの居酒屋があるんです。そこの店長さんに教えてもらったおみそ汁「かぶつきなめこ×大根おろし」は『おつまみレシピ』でも紹介しています。
▲『自宅が10分で居酒屋に! 魔女っこれいの絶品おつまみレシピ』(扶桑社)より 画像提供/扶桑社
自分のツイートを検索してレシピを再検討
──ここからは『おつまみレシピ』の担当編集者である扶桑社の和田さんも交えてお話を伺います。
▲和田まおみさん
和田:よろしくお願いいたします!
──どういう経緯でれいさんにレシピ本のオファーをしたんでしょうか?
和田:以前は週刊誌の編集をしていたんですけど、書籍の部署へ異動になりまして。初めて書籍を作るので、どんな本を作ろうかと飲み友のライターさんに相談したら、「魔女っこれいさんは面白いよね」という話になり、そのライターさんはれいさんの飲み友だったんですが、もともと私もれいさんのTwitterはフォローをしていたので、すぐにいいなと思い、レシピ本を提案しました。
──れいさんのTwitterにはどんな印象を持っていたんですか?
和田:私はあまり料理をしないんですが、いつも美味しそうなごはんをツイートしているなと思っていました。料理ってアルゴリズムが大切なイメージがあったんですけど、れいさんのレシピは、そこから逸脱しているというか。れいさんのレシピは良い意味で大まかなので、私でも作れそうだなと思わせてくれるんです。ちょっと古臭くて昭和の世界を生きているような文章も面白くて自分好みでした。
──実際にれいさんとお会いしたときの印象はいかがでしたか。
和田:ライターさんを通じて秋葉原のカフェでお会いしたんですけど、人当たりが良くて、すてきな人だなというのが伝わってきました。初めての打ち合わせでは、80年代末から90年代頭のレトロな料理本を持ってきてくださって。こういう世界観の本を作りたいんだなと理解して、スムーズに話は進みました。
──れいさん自身、レシピ本を出したい気持ちはあったんですか?
れい:それが、あんまり自分の料理に自信がなくて……。メモ代わりにレシピをツイートはしていたんですけど、一つにまとめたこともなかったので不安でした。ただ、このお話をいただいたとき、すぐに「子供の頃に母が買ってきた料理本を読むみたいな、ちょっと昭和テイストな本にしたい」というイメージが浮かんだんです。
──表紙の書体や写真の色合いも、どこか懐かしさを感じさせますよね。掲載するレシピは、どういう基準で決めたのでしょうか?
和田:まずTwitterでバズったベストレシピ。あとは安く作れて工数が少ないレシピです。一部、ウニのような高級食材も使っていますけど、基本的には安い食材で、私みたいに料理をしない人でも作れそうな料理を基準に、レシピを挙げてもらいました。
──Twitterで紹介していない料理も多いですが、どれぐらいの期間で掲載する料理を考えたんですか?
れい:半年ぐらいです。自分のツイートを検索してレシピを思い出しながら、取り上げる料理を決めていきました。そのときの気分で調味料の分量なども変えているので、きっちり数値化して、何度か作り直しました。
──和田さんから見て、れいさんの料理の手際はいかがでしたか?
和田:めちゃめちゃ良かったです。日々の鍛錬の賜物だなと思いました。
──『おつまみレシピ』に掲載している中で、予想以上にTwitterでバズったレシピは何でしょうか。
れい:「いちごウイスキー」ですね。海外にまで届いてニュースになって、バズり過ぎて怖くなりました。冷凍したいちごと砂糖をウイスキーに入れて漬け込んだだけなんですけど、約27万いいねが(※2021年11月現在)付きました。
洗って冷凍しておいたいちごを手のひらサイズの瓶に10粒程入れて、ウイスキーいっぱい、砂糖20gくらい。冷蔵庫で眠らすこと5日…。いちごの色が抜けてピンク色のウイスキーが出来た。これを炭酸で割ると淡い桜色に。思わず全員で悲鳴を上げてしまうくらい美味しかったから作ってみてよ! pic.twitter.com/P3gExMXNwZ
— 魔女っこれい (@majyokkorei) 2017年3月17日
──冷凍いちごをウイスキーに漬け込むって発想がすごいです。
れい:いちごってすぐに傷んじゃうから、へたを取って冷凍したら思ったよりもカチカチになっちゃって、これを食べるのは無理だなと思ってウイスキーに漬け込んだんです。
▲『自宅が10分で居酒屋に! 魔女っこれいの絶品おつまみレシピ』(扶桑社)より 画像提供/扶桑社
──これはバズりそうというレシピって分かるものですか?
れい:それが分からないんですよね。これはバズるだろうなと思ってもバズらないこともありますし、最近だと生牡蠣をツイートしただけなのに7万いいね(※2021年9月現在)を超えました。今はあまり意識せずにツイートしています。
鹿児島県長島の生牡蠣、すごすぎる。人生ナンバーワン牡蠣かもしれないや pic.twitter.com/OKUyo4dRfv
— 魔女っこれい (@majyokkorei) 2021年8月30日
──最後に『おつまみレシピ』をどんな風に活用してほしいですか?
れい:レシピ本なんですけど、チラッと流し見するだけでも分かりやすく作り方が書かれています。帯に「酩酊してても作れるよ!」と書いてありますが、火や包丁などに気を付けてくだされば、お酒を飲みながらでもそう失敗しないレシピになっていると思うので、ぜひ試してみてください。味付けにしても、味が薄いなと思ったら塩を足したり、味が濃いなと思ったら卵を入れたり。変に凝り固まらずに、気軽に料理を楽しんでほしいです。
お酒と料理をこよなく愛する魔女っこれいさんが考案したレシピの数々は、お酒のおつまみはもちろん、日々の献立にもぴったりな料理がたくさんある。
近所のスーパーで購入できる食材がメインで、料理の工数も少ないレシピばかり。普段は料理をしないという担当編集の和田さんが、幾つかのレシピを家で作ってみたら、撮影でれいさんが実際に作った味とそん色がないほど美味しかったという。
お酒を飲まない人にも、料理に苦手意識がある人にも、ぜひ挑戦していただきたい。