熟成させずに旨いのさ!
「前に肉をナンプラーに漬け込んで、ナンチャッテ熟成肉を作る件が盛り上がってましたね」と私。
「ああ、アレね。ナンプラーじゃなくったっていいのにね」と妻。
「ん? じゃあ何か別の方法があるの?」
「要するに肉に旨味成分を染み込ませるってのなら、昆布水のほうが簡単よん」
「お! ソレで美味しくなるの? 肉」
「まかせといて。ヒョッとしたら普通の食べ方するより格段に美味しくなりそうだし」
「へ~、オネガイしますだ」といつものように妻にぬかずくのであった。
安い肉を凄いボリュームで
まずは肉の調達。スーパーの特売でアメリカ産牛肩ロースステーキ用984g。約1キロですね。これが2,700円ちょっとで、しかも2割引きで購入できました。商品ラベルのところには「食えるもんなら食ってみろ!!」と豪快に表記されています。
それからオーストラリア産牛モモ肉ブロック。こちらは268g。550円ぐらい。肩ロースはステーキにして、モモ肉はローストビーフにしようという算段です。
これを昆布水と炭酸水をブレンドした液、いわゆる「昆布水サワー」に漬け込み、旨味を染み込ませます。我々の場合は朝に漬け込んで夜には十分に漬かっていたので、漬け込む時間は9~10時間といったところ。前にもっと薄い肉で実験した時は、2~3時間でいい感じに漬かっていました。
まあ、長く漬け込んで傷んじゃうともったいないので、このぐらいの厚さの肉は冷蔵庫で一晩、薄い肉なら2~3時間が目安といったところでしょう。あくまで肉に旨味を浸透させて美味しく頂こうというもので、保存が効くようになるワケじゃないのでご注意を。
魔法の〝昆布水サワー〟のつくりかた
昆布は幅5cm、長さ30cmぐらいのものを3枚、水1リットルに20分漬けます。
中火にかけ沸騰したら火を止めて冷まします。
完全に冷めたらミキサーにかけます。
トローッとこんな感じになるように、細かくいきましょう。
昆布水はたったこれだけで完成です。
これを炭酸で割ります。だいたい昆布水2:炭酸水1の割合です。
肉を漬け込むぞ!
漬け込む前に、まずはこの工程が大事。
昆布水が浸透しやすいように、肉をフォークでブスブスと刺していきます。
側面もブスブス!
ニンニクすりおろしを小さじ1杯ほどすり込みます。
デカい肉もブスブスブスブス!
これ、ストレス解消にはもってこいの作業ですね。
こちらはデカいのでニンニクすりおろしは小さじ2杯ぐらいすり込みます。
お肉をチャック付きビニール袋に入れて……、
昆布水サワーを注ぎ込み……、
ほどよく空気を抜いて密閉して冷蔵庫で保存。
デカいほうの肉も同様にして冷蔵庫へ。
しばし休憩です。
それではここで紫陽花の涼やかな写真をどうぞ(本当に漬け込んでる間、某所で咲き乱れる紫陽花を見に行ってたんですよ)。
牛モモ肉をローストだ!
さて10時間ほど経過して……、
牛モモ肉はこのような漬け上がり。
ちょっと色が薄くなって、全体にピンク色になってます。
表面についた昆布をキッチンペーパーで軽く拭き取って……、
軽く塩コショウし、
フライパンで両面に焼き色をつけます。
アルミホイルで包み、オーブンで250度、12分ほど焼きます。
焼き上がって、完全に冷めたら出来上がり。
その間に、アルミの中に滲み出た肉汁を肉を焼いたフライパンに戻し、
こちらでローストビーフのソースを作って行きます。
肉汁に、デミグラスソース1袋、みりん大さじ1杯、醤油大さじ1杯、白ワイン大さじ2杯を混ぜ、ひと煮立ちさせて出来上がり。
お次は牛肩ロースをステーキだ!
ローストビーフを冷ましてる間に、ステーキを作ります。
牛肩ロースはこんな漬け上がり。こちらも色素が少し抜けてピンク色っぽい仕上がり。
こちらも一気に焼いてしまいます。
中火でフタをして、両面をそれぞれ8~10分ずつ焼きます。
ちなみにどちらの肉を焼いている時も、すごくいい香りが立ちこめています。
「これが旨味成分の香りか!」と期待感が高まります。
こちらがドーンと焼き上がり。
さて、こちらも焼いたフライパンに残った肉汁を使ってステーキソースを作って行きます。
肉汁に白ワイン100cc、醤油大さじ2杯、みりん大さじ1杯。
そしてバターを20~30g投入して、ひと煮立ちさせて出来上がり。
やはりどちらのソースを作っている時もすごく良い香りがしています。
サクサクと切り分けて盛りつけていきましょう!
昆布水サワー漬けローストビーフ丼とステーキの完成!
ドドーンと完成です。
ステーキはこんな仕上がり。
そしてローストビーフ丼です。
そして、食べてみるとコレが
「くうぅぅぅ~っ、旨い!!」
どちらも肉の旨味とコクが増幅され、かつ香ばしい。
つくる前の想像ではもっと昆布臭いというか、和風な感じに仕上がるかと想像していたのですが、そんなことはありません。昆布云々は言われないとわからないと思います。
ただ、どう味を形容すれば良いか……。
う~ん……。
「どっかの洋食屋さんで食べた、忘れられない美味しいヤツ」
とかですかね。
肉そのものの旨味がアップして感じられるので、普通のバターと発酵バターぐらいの違いがあります。といってもこの肉の場合は発酵させたわけじゃないんで、この言い方も語弊がありますが……。まあとにかく安い肉が見違えるほど美味しくなります。
そして、決してしつこくなくて後味スッキリ。
肉が柔らかくなることを期待して炭酸水も入れたのですが、牛モモ肉にはけっこう効果がてきめんに現れて、柔らかくてプリッとした食感になりました。牛肩ロースは昆布水サワー漬けにしてもなかなか噛みごたえがあります。
が、以前にほぼ同じ肉をステーキにした時は、かなり頑固に硬かったので、これもかなり柔らかくなっているほうだと思います。
ソース以外ではハーブソルトをつけて食べてみたところでは、我々的には牛モモ肉を使ったローストビーフはソースとハーブソルトどちらもいける感じで、牛肩ロースのステーキはバター醤油ソースのほうがより旨味が感じられました。
まあお好みでといったところです。
ちなみに実験段階では、昆布出汁の素をその辺に余っていた第三のビールで溶いた汁に牛モモ肉を2~3時間漬けただけ、という簡易バージョンでしたが、それでも安い肉が高級肉に変貌。感動したので、面倒臭い人は簡易バージョンの作り方もおススメです。
ところでこの肉の名称は
「昆布水サワー・ビーフ」
で良いですかね。
「ソレ、誰に言ってんの?」
「皆々様でございます」
※肉を柔らかくするためのテンダライズ処理(針状の金属の刃などを用いて,肉の原形を保ったまま,筋及び繊維を短く切断する処理)をする場合は、雑菌に注意し、肉の中心部までしっかり加熱するようにしましょう。
※一般的に細菌類を死滅させるには肉の中心の温度を75℃で1分以上加熱することとされています。