そばを水で食べる「水そば」を食べて甘味と香りを感じてもらいたい

「水そば」というそばの食べ方をご存知でしょうか。つゆにはつけず、水につけて食べることで、そばの味と香りそのものを楽しむという、まさに「通」の味わい方。この極限までシンプルな方法で、乾麺のそばを食べ比べてみます。

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そばが大好きです

朝起きたら、まず最初に食べたくなるのがそばなんです。

かつお節のきいたつゆの香りをかいだだけで、おなかがぐうとなります。

ごはんもいいけれど、朝ごはんは立ち食いそばがベストだと思っている私。ある時ダイエットを兼ねた朝ジョギングの最中に、おいしそうな立ち食いそば屋があることに気づいてしまったんです。

走った後にそのお店に立ち寄るのが日課となり、気がついたら体重が増加していました。

 

そば好きが高じて、実際にそばを打ったこともありました。

長野県戸隠に取材に行った時にそば打ち体験をしたおかげで、「自分でもできる」という気になってしまったんです。

でも、そば打ちというのは、高度な技術と、そば粉に対する知識が必要でして。

私が自宅で打ったものは、みみずがのたうちまわったような見た目で、さらにお湯の中でぐずぐずになってしまった「そばとは呼べないしろもの」でした。

食べることはできても、たいしてうまいとは思えませんでした。それ以来、お店で食べることに専念してきました。

熟練の職人が打つそばは、やはりおいしいものです。

 

そんなある日、会地方で食べたそばのことを思い出しました。

その名は「水そば」。

そば本来の香りと風味を味わうため、つゆを使わず、なんと水だけで食べるんです。

おいしいそばであることはもちろん、水もおいしくないとこの食べ方はできません。

私は、水そばを体験した時に感動したんです。

こんなにシンプルな食べ方があるのか、と。

というわけで、今回は水そばの楽しみ方をみなさんにご案内したいと思います。

 

3種類のそばをご用意しました

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今回は自宅で水そばを再現したいと思います。

用意したそばは3種類。すべてスーパーで購入しました。

 

左はそば粉の含有率がいちばん低いもの。値段も安いので、おそらく含有率は5割〜6割程度かしら。

真ん中はいわゆる二八そば。小麦粉が2割含まれています。

ちなみに、スーパーなどで商品の原材料名を見ると、一番含有率の多いものから明記されているので、購入するときはそれを参考にしてください。商品名で「そば」とうたっていても、最初に小麦粉が明記されているものもあります。

 

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そして写真の右のものが本日の大本命、十割そば。

そば粉のみで作られています。普通に考えたら十割そばが最高な気もしますが、小麦粉を少し配合することでツルッとしたノドごしが生まれるんですね。

有名なそば屋さんでも二八そばを使っていることが多いと聞いたこともあります。要は好みということです。

 

茹でます

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さて、そばを茹ででいきます。

条件を等しくするため、同時に茹で始めました。ありがとう我が家の3口コンロ。ここで注目すべきは、我が家の鍋のラインナップです。ほら、圧力鍋が2つあるんです。

いいでしょう。同時に使うことはほとんどありませんが、深手の鍋なのでパスタを茹でる時に重宝しています。

 

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茹で上がったそばを水でしっかりと締めてから器に盛りました。上が①安いそば、下段の左が②二八そば、下段の右が③十割そばです。

 

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見比べたところ、どれもおいしそうですが、つなぎを使わずそば粉だけで作った十割そばがやはりおいしそうです。

できあがったそばを水に入てみれます。今回使用した水は、浄水器で水道水を濾過し、冷やしたものです。

さっそく食べてましょう。

 

実食

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そばを水にひたします。

それをぱくり。うん。そばですね。

①安いそばと②二八そばを食べたものの、「うん、そばだよな……」という感じです。

でも、③十割そばを食べたところ、強いそばの香りがしたんですね。

他の乾麺ではあまり意識できないような、十割ならではのそばの強い香りを感じることができました。

これだけでも大きな成果です。そばはうまいということを再確認できたんですから。

 

次に、水の種類を変えましょう。

 

水の違いで味は変わるか

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左が浄水器で濾過した水、真ん中が国内産のミネラルウォーター(軟水)、そして右が外国産のミネラルウォーター(硬水)です。これらの水に、まずは二八そばをひたして食べ比べてみることにしました。

 

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すると、やはりというか、なんというか、左2つの違いはほとんど感じることはできません。

私の舌に都内の水道水と国内産のミネラルウォーター(軟水)を見分ける能力はありませんでした。

でも、外国産のミネラルウォーター(硬水)につけたところ、最高に違和感を感じたんです。

つるつるとした食感が強くなって、まるで泳ぎ回るうなぎのように……明らかに口の中で違和感となったんです。

試しに今度は十割そばで食べ比べてみたところ、豊かなそばの香りが不快に感じるほどでした。なるほど、そばと水の相性は本当に大事なんだって気がつくわけです。

 

水そばは塩が合う

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さて、このテストはセカンドステージに入ります。

ここで登場するのが塩です。水そばを食べた多くの人が感じるのが、「そばがうまいのはわかったけど、なんだかもの足りない」ということ。

そりゃそうです。だって、普段はおつゆと一緒に食べてるそばを、水だけで食べるって無理がありますよね。

ということで、水そばに塩をつけます。

ちなみに、これは一般的な水そばの作法ですので安心してください。今回使用したのはうま味の強い岩塩。これを十割そばにパラパラ。

 

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まずひと口。

そばの香りにそっと寄りそう塩味といったところでしょうか。

うん、うまい。

塩とそばがいい感じに高めあっているのがわかります。塩によってさらにそばの甘味が引き出され、かえしで食べるよりもそばのうまさと香りがどんどん口のなかで広がっていくのがわかります。

よくそば屋で「通は塩で食べる」なんてことをいいますが、実はですね、私、よくわかっていませんでした。

でも、最初に水で食べたあとに塩で食べてみたら、そばのうまさが本当によくわかりました。そばはうまい。そして、塩で食べるともっとうまいということに気づきました。

 

自宅でうまいそばを味わう贅沢

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水そばという食べ方が最高だと思うのは、水で食べて、塩で食べてももの足りないなら、もう仕方ないよということで、めんつゆで食べてもいいという作法があるんです。肩ひじが張ってなくていいでしょう? 

今回は某メーカーの高級めんつゆを使用したのですが、いやあうまい。本当にうまい。最初からこの食べ方をしてたら、きっとこんな感動は味わえなかったと思います。

 

最初に水で食べてそばの素朴なうまさを味わい、塩でそばの甘味を感じたら、最後はつゆと一緒に完成した料理をいただく。

もはや、これは自宅でできるそば懐石ではないかと思いました。

 

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今回はどなたでも楽しめるように乾麺で水そばの実験をしてみましたが、やはり水で食べるなら十割そばがおいしかったです。

お客さんが来たときに、水そばをふるまったら、驚くだろうなと思いました。

 

ぜひみなさんもお試しください。これをつまみに、酒が飲めます!

書いた人:キンマサタカ

キンマサタカ

編集者・ライター。パンダ舎という会社で本を作っています。 『週刊実話』で「売れっ子芸人の下積みメシ」という連載もやっています。好きな女性のタイプは人見知り。好きな酒はレモンサワー。パンダとカレーが大好き。近刊『だってぼくには嵐がいるから』(カンゼン)

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