現場よりメシ通レポーターの松永です……あっ、この写真は僕ではありません。
ここは京都の繁華街、木屋町。週末ともなれば、学生の団体さんも多く賑わう夜の街にあって、何やら学生を応援してやまない謎のお店があるというウワサを聞きつけました。何でも店名が「日本一学生を応援する居酒屋 ここでのめ!」という強烈なネーミングらしく……。
気になったので、行ってみたいと思います。
電話で事前に問い合わせたところ、「看板はないので気をつけて見つけて来店ください」とのこと。お店の住所のビルまで来てみると……
4階のはずですが、そこだけ看板が白い! 何も書いてませんね。
ビル入り口の看板、ここにも書いてない。
もしかしてココなのかな? と、恐る恐るエレベーターに乗り込み上にあがります。
あっ!
お店の名前が書いてあった! 「日本一学生を応援する居酒屋 ここでのめ!」。
さっきまで空白だったのに、何だこの情報量の多さは。一体どんな場所なのかと謎は深まるばかりです。扉を開けてみると、なんとそこには……!
ん?
以外と普通の居心地の良さそうな飲み屋さんです。
席もカウンターとテーブル、そして座敷……。
じゃなくて芝生!
奥はまるごと人工芝がひかれています。たしかにこれは珍しい部分ですが「日本一学生を応援している」かと言われると……。
どのへんが部分「日本一学生を応援している」んでしょうか。席についてメニューを見ようとすると、
「いらっしゃいませ!」
わっ! ナイスなビジュアル! もじゃヒゲ! そしてむっちゃいい笑顔!
正直ビックリしましたが、ネームタグを見て一安心。インパクトのある登場でしたが、こちらの方がお店のキャプテン(店主の方とはまた別らしい)、清水さん。
──あのう、こちらのお店は、日本一学生を応援しているんですよね?
「はい、そうですよ!」
──それってどのあたりなんでしょうか。
「ああ、うちは大勢で飲み会をするのに安いとか、そう言ったことではなくて、その逆で、美味しいお酒に美味しいご飯、魅力的な酒場を学生さんにも経験してもらうためのお店なんです」
──へ?
「学生さんのうちは、どうしても安いお酒を打ち上げで飲んだり、みんなで騒ぐ、みたいなことがお酒を飲むことというイメージになってしまいがちですが、ここでは、お酒を飲むことの楽しみや、酒場での出会いなんかをゆっくりと、そして何度も楽しんでいただけるようなお店づくりをしているんです。詳しくはメニューの紙に書いてますよ」
本当だ、いろいろ書いてある。
「まずはお酒。うちの生ビールは、5つのお約束をもとに入れていて、木屋町イチ美味しいビールということに自信があります!」
視線を上げるとここにもでかでかとアピールが。なんでもこちら、アサヒ樽生クオリティセミナーの上位ランクのライセンスをお持ちで、泡と味が他とは違うとか。
しかし、僕はビールが飲めないので、日本酒を頼むんです。キャプテンごめんなさい。
「地酒も20種類を常備してます」と、しょんぼり顔も一瞬で有難いお言葉。辛口のもので何か美味しいものありますか? といただいた、萩の露直汲み 800円と、つきだしも美味しそう。
▲本日のつきだし、萩の露直汲み 864円
この日のつきだしは氷魚、いわゆる鮎の稚魚。酒器も可愛いですねえ。
「うちの自慢は美味しい料理。学生さんにこれが本当にうまいものなんだと伝えたいんです。魚は、錦市場の高級鮮魚店「かね秀」さんから仕入れ、肉も黒毛和牛のA4ランク以上のものしか扱わないお店から仕入れています。寿司屋店出身の板長が作る和食が中心のメニューです」
▲お造り盛り合わせ 842円
せっかくなのでオススメする魚と肉をそれぞれいただきましょう。お造りはタイとヒラマサがプリプリ大ぶりに切り出されていて、食べ応えがあります。ブリブリの食感が新鮮さを物語っています。料理を出していただいたのは、調理場見習いのヒロさん。
▲黒毛和牛のタタキ 950円
肉は黒毛和牛のタタキをチョイス。ピンクの断面にうかんだサシ! 濃厚な脂がじわりと口の中で溶けていきます。
▲大根のてんぷら 108円
変り種は、大根のてんぷら。一度炊いた大根を揚げているとのことで、染み込んだ出汁とふわふわの衣とのハーモニーがたまりません。一般的でないのが不思議なぐらいに安定感のある味わい。1度に6個頼んだ人もいるという評判のメニューです。
──なるほど、シンプルに美味しいメニューとお酒で、学生を応援するお店だったんですね。
「値段はちょっとしますが、居心地よく感じてもらうために、10人以上のお客さんはお断りしていますし、席の時間もありません。だいたい、4人ぐらいまでのお客さんが多くて、長い人で滞在時間7時間という方もいらっしゃいますし、週5できていただけるお客さんもいらしゃいます」
──看板がないのはどういう理由なんですか?
「何度も来てくれるお客さんが多いんですが、その方たちがしっかり席を取れるよう、隠れている風を装っています。お客さんの隠れた名店になりたくて。なので、基本的には紹介でしか辿り着けないお店ですね」
うかがっていくと、どうやらこちらのお店のオーナーさんは、プロ雀士の友添敏之さんという、業界では知られた方。オーナー自身が学生時代に美味しいお店に出会って交遊関係が広がり、自分でもそういう空間を作りたかったのだとか。さらに河原町周辺に麻雀荘とカフェも経営しているというツワモノでもあります。
ちなみに、オーナーの麻雀仲間が集う場面もあったり、社会人のお客さんも多いそう。こちらのお店は2012年オープンですが、すでに学生から社会人になっても通っている方もいたり、さらには知っている人にとっては看板がなくても気さくで入りやすいので、界隈の同業者のお客さんも多いそうです。
▲枝豆揚げてみた 410円
お腹が好いていたので、もう少し食べ物をいただきます。こちらも意外なメニュー、枝豆揚げてみた。なんともラフなネーミングですが、味はピカイチ。揚げ油のコクを吸って、枝豆の甘みがふんわりと引き立ちます。
▲TKG(卵かけ御飯) 302円
〆には、大分の卵・蘭王を使ったTKG(卵かけ御飯)を。TKG……そんな略語が若者たちの間では流行しているんでしょうか。オレンジ色の黄味は濃厚! でも後味はクドくなく、さらさらとかっこんでしまいました。ごちそうさまでした。
さて、店内は時間が経っても混みすぎず、ゆっくりとした時間が流れています。隠れ家で気の合う仲間とゆっくりお酒をいただくのが至福の時間になる……そんなシンプルなことが、学生の時にはなかなかわからないものかもしれませんね。
「学生さんたちにとって、飲み屋さんが、ワイワイする場所だけじゃない、ここぞという時のお店としても使ってもらえるように応援しています」とキャプテン。もちろん新規でいきなり来店するのもOK。看板はないが、勇気を持って入ってみてほしいそうです。
スタッフのみなさんはお店のお客さんだった人も多く、気さくに話しかけてくれるのもうれしい。何度も通って行きつけとして、店員さんやお客さんとも仲良くなるような使い方も楽しい!
「日本一学生を応援する居酒屋」は、入り口と店名がちょっと変わっていますが、押し付けがましいスタイルは一切ない、知ったらとても居心地のいい自由な酒場ということです。以上、現場からのレポートでした!
店舗情報
日本一学生を応援する居酒屋 ここでのめ!
住所:京都府京都市中京区木屋町通り四条上ル2丁目下樵木町202-1 東木屋町ビル4F
電話番号:075-254-8110
営業時間:18:00~翌3:00(フードLO 翌2:00、ドリンクLO 翌2:30)
定休日:年中無休
※本記事は2016年4月の情報です。
※金額はすべて消費税込です。