純喫茶みたいな町中華。名物の「中華丼」には目玉焼きがのっているんです【下関マグロ】

下関マグロさんの町中華シリーズ、今回は店舗の形態は町中華なのに「内装は完全に純喫茶」という異色のお店「オトメ」。名物の「目玉焼きのせ中華丼」は町中華マニアの間では伝説の逸品とされているそうですよ。

エリア根津(東京)

まるで純喫茶みたいな町中華

ども、下関マグロです。

町中華の魅力のひとつに、お店そのものがとても個性的というのがありますね。店主の個性だけで作り上げたお店というのは、他にはない唯一無二の存在になっていることが多いのです。

その点でいうと、文京区根にある「中華料理 オトメ」はいろんな意味で個性的なお店ですね。まず、外観からしてとても個性的なのですよ。

 

外観を見る限り、あまり町中華っぽくないですよね。

まず店名の「オトメ」。町中華にしては珍しい店名ですよね。

おっさんは入っちゃいけないのかって感じですが、大丈夫です。おっさんでも入っていいんです。なぜこんな店名になったのかは後で説明しますね。

そんなオトメはこちらのご夫婦で切り盛りされています。

 

夫の落合秀雄さんと、妻の都さんです。

それではお店に入ってみましょうか。

 

どうですか、店内も町中華っぽくないでしょ。というか、まんま純喫茶っぽい内装じゃないですか。しかも、BGMはクラシックです。

 

テーブルには生花が飾られています。この日はカーネーション。花を飾るのは妻の都さんの仕事だそうです。

 

都さん:カーネーションだと飾ってから1週間ちょっとは日持ちしますかね。だいたいそれぐらいの頻度でお花屋さんに買いに行っています。

 

お店の外観、店名、店内がこれだけ個性的なので、料理だってかなり個性的なんですよ。まずは、こちらのお店の中華丼を見てください。

 

皆さんは中華丼っていうと、どんなものを想像しますか? 

たいていはご飯の上に五目あんかけというか、八宝菜のようなものがのっかっているのを想像しませんか。

でも、こちらのビジュアルは目玉焼きがどーんときてますね。で、チャーシューものっかっていますよ。この下はどうなっているんでしょうか。たぶん、作り方を見せていただくとわかると思います。

 

「オトメの中華丼」ができるまで

それでは、中華丼を作っているところを見せていただきましょう。

一般的な中華丼のように、こちらの中華丼にもあんかけ部分はあります。その材料がこちらです。

 

豚肉、人参、小松菜、キャベツ、タマネギ、きくらげ、たけのこといった具材です。

 

秀雄さんがこれらを一気に炒めて、スープを投入します。そして、水溶き片栗粉でとろみをつけていきます。厨房の反対側では、妻の都さんが目玉焼きを作っています。

 

あんかけをあらかじめ器によそったご飯の上にのせます。

一般的な中華丼なら、ここで完成ですね。

 

ここに都さんが作った目玉焼きがのっかります。いいコンビネーションですね。

そして最後に都さんがチャーシューをのせて、出来上がり。

メニューにはこう書かれています。

 

中華丼の説明部分を読んでみると、「野菜のうまにかけご飯」とありますね。

はい、出来上がりはこちら。

 

▲中華丼(780円)

 

町中華の目玉焼きって、中華鍋を使って強い火力で作るからおいしいんですよ。

白身の周辺がちょっと焦げて、でも黄身は半熟なんですね。なので、この目玉焼きをくずしてよく混ぜて食べるもよし、そのまま食べちゃってもいいわけです。

 

水餃子のビジュアルも個性的なんです

中華丼に合わせたいのが餃子だったりしますが、筆者のオススメは水餃子なんですよ。

 

まず、その個性的なビジュアルから見てほしいんです。

最初見たときは、なんじゃこりゃという感想でした。見慣れた餃子の形状とは違うので、これはどうなっているんだろうって思いました。

でも、よく見るとわかりました。

 

これについても、作り方を見せてもらうと、よくわかりますよ。

 

「オトメの水餃子」の作り方を見せていただきました

オトメの水餃子の餃子は、焼餃子と同じものを使っているんです。水餃子の注文が入ると、そのたびに餃子の端と端を少し水に濡らして、くっつけているのです。

 

こうしてくるんとした形にします。

 

秀雄さん:皮が薄いとうまくくっつかないので、厚めの皮にしています。

 

丸めた餃子を茹でていきます。

 

スープの中に投入すれば出来上がりです。

 

▲水餃子(600円)

 

ちゅるんとした皮と、滋味あふれる野菜たっぷりの餡。ぺろりと食べられてしまいます。

 

1本から注文できる「はるまき」こそ食べてほしい

さらにこのお店ならではのメニューがはるまきなんですよ。

なぜかというとこちらのはるまき、1本から注文できるんです。だいたいの町中華で、はるまきは3本で1人前になっています。

「ちょっとだけはるまきを食べたいな、でも3本はいらないかな」って思ったこと、ないですか。でも、オトメなら1本から注文できます。

 

1本から注文できるのはありがたいですよ。でも、私ははるまきが大好きなので3本注文しました。

 

油で一気に揚げていきます。

 

▲はるまき(1本250円 3本750円)

 

秀雄さんにお願いして、1本は2つに切ってもらいました。

外側の皮は香ばしく、パリッパリです。中身はもちろんジューシーな具材がたっぷり。たけのこ、しいたけ、長ねぎ、キャベツ、キヌサヤ、チャーシューを千切りにしたものが入っており、うま味たっぷりです。

 

店名「オトメ」の由来とは

──オトメという店名はもともと「オトメパン」というパン屋さんの名前だったとか。どうしてパン屋さんから町中華へ?

 

秀雄さん:これはけっこう複雑なんですが、ざっくりいえば、親戚が「オトメパン」というパン工場をやっていまして、戦争から帰ってきた父が頼まれてそこでそこで働くようになったわけです。

 

──なるほど、それがオトメパンなのですね。

 

秀雄さん:一時はこのあたりの小学校給食用のパンも焼いていたそうです。いまのこのお店の場所で、父もパンを売っていました。

 

──そのパン屋さんが中華料理を提供するようになったのは?

 

秀雄さん:親戚が中華料理屋をやっていて、そこでもオトメパンを売っていたのです。そこがやめるというので、うちが引き継ぎました。

 

──それがいつぐらいのことでしょう?

 

秀雄さん:昭和30年代のことじゃないでしょうか。そのうち中華料理だけを提供するようになって、いつの間にかパンは売らなくなったそうです。

 

・・・

 

なるほど、オトメという店名の由来、よくわかりました。

そんなオトメも2019年に店舗を建て替えて、2020年6月、きれいになって復活しました。ぜひ皆さんにもこの素敵なお店に足を運んでみてほしいですね。

 

撮影:平山訓生

 

お店情報

中華料理 オトメ

住所:東京都文京区根2-14-8
電話番号:03-3821-5422
営業時間:11:30~15:00、17:30~21:30(LO. 21:00)
定休日:水曜日

www.hotpepper.jp

書いた人:下関マグロ

下関マグロ

1958年生まれ。山口県出身。出版社、編集プロダクションを経てフリーライターへ。『東京アンダーグラウンドパーティー』(二見書房)、『歩考力』(ナショナル出版)、『まな板の上のマグロ』(幻冬舎)、に『ぶらナポ 究極のナポリタンを求めて』(駒草出版)など著書多数。

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