モンゴルの主食は羊肉
羊が好きです。
モコモコの姿も愛らしくて好きですが、食べる方の羊……羊肉はもっと好きです。
羊肉の料理は世界各国で食べられていますが、中でもモンゴルではほぼ主食となっているのだとか。
最初から最後まで羊肉でお腹いっぱいになりたい!
そんな欲望を抱えて、東京は赤羽の地に降り立ちました。
赤羽駅から徒歩5分くらい。パルロード3(ループ館)という商業施設の地下1階、隠れたレストラン街みたいなところにそのモンゴル料理店はありました。
お店の看板には「アルラ モンゴル料理」とカタカナで書いてありますが、アルファベットではARALと書いてあります。これは、「アラル」と読むのでは?
店名にいろいろと疑問は残りますが、それはさておきお店の中に入ってみましょう!
十数人でいっぱいになる、こぢんまりした店内。
そして、壁と天井には、モンゴル遊牧民の移動式住居、モンゴル遊牧民の移動式住居、ゲルの内部を模様にしたものが!
ゲルはモンゴル遊牧民が移動しながら生活するための、しっかりしたテントのような移動式住居です。
ゲルの中でモンゴル料理を食べているような気分になれますね。
ランチョンマットなどもモンゴル風です。
こちらがオーナーでシェフのRenchin Otgonbayr(リンチン・オタゴンバヤル/通称:オタゴン )さん。
筆者はこちらにはプライベートで何度か食事に来ているのですが、オタゴンさんはとっても歌がうまいのです! 時間がある時にお願いすれば、モンゴルの歌を聴かせていただけるかも?
──今日はよろしくお願いします! まずは、疑問の店名について教えてください。読み方は「アルラ」と「アラル」、どちらが本当なんでしょう?
オタゴンさん:店名は「ARAL」で、「アラル」と読むのが本当です。看板屋さんがカタカナを間違えちゃったんですが、そのまま使っているんですよ。
「ARAL」は「アラル」と読むのが正しいんですね。
でも口コミサイトなどでは「アルラ」と書いてあるところもあるので、どちらでも良いことにしているそうです。モンゴルの草原のように心が広い!
──オタゴンさんたちはモンゴルのどの地方出身なのですか?
オタゴンさん:内モンゴルです。
※内モンゴル(内モンゴル自治区)は、中華人民共和国の中にあるモンゴル国との国境にある地域。
──日本に来たのはいつですか?
オタゴンさん:2012年です。モンゴルで出会って結婚した妻が先に日本に来ていて、私は後から来ました。最初は語学留学生で日本語学校に1年通ってました。お店を始める前にはアルバイトをいろいろやっていました。飲食店もあるし、配送業も。
──なぜモンゴル料理店を始めたのですか?
オタゴンさん:モンゴル料理店は日本にあまりないし、私はもともと料理が好きだったんです。以前から家族や友達のためによく料理をしていました。私が料理を作ると、友達がみんな喜んでくれたから。
このお店を始める前には、横浜の関内にあった内モンゴル料理店で2年くらい働いていたんです。店長もやって。そのお店は今はないですが、いろいろ勉強させてもらいました。
──お客さんはモンゴルの人が多いのですか?
オタゴンさん:そうですね。モンゴル人がいちばん多いですね。あとは日本人と、中国人も多いです。
お話の続きは、料理をいただきながら伺うことにしましょう!
羊を丸ごと食べ尽くすモンゴル料理
▲ホルシコ(550円)
ホルシコは小麦粉の生地を油で揚げたクラッカーのようなもの。ほの甘く、塩気はほとんどありません。
▲スウテイチエ(1杯220円、ポット660円)
スウテイチエはモンゴルのミルクティーです。ポットで出してくれました。食事の前にこれをいただくと身体がぽかぽか温まります。
バターが入っていて、なんと塩味です。意外な風味に最初は驚きますが、飲み慣れると食事の最初には必ず飲みたくなります。
モンゴルの家庭ではポットで常備しているそうです。
──このお店でモンゴルの人にいちばん愛されている料理は何ですか?
オタゴンさん:チャンスンマハ(骨付き羊肉の塩茹で)とかホーショル(羊肉の揚げ餃子)ですね。それは日本人も同じです。みんな羊肉を食べに来るので。あとはボーズ(モンゴル風蒸し餃子)ですね。
──モンゴルの主食は、ほぼ肉だと聞きましたが?
オタゴンさん:そう、肉ばかり。それも、ほとんど羊肉です。今は、私くらいの時代だとモンゴルにも野菜が入ってきました。でもお父さん、おじいさんくらいの時代には野菜がなくて。
──そうそう。もともとモンゴルは遊牧で移動しながら生活していたので、野菜を畑で育てるってことをしないんですよね。
オタゴンさん:そう。農業はなかったです。私は内モンゴル出身なんですが、羊を飼っていました。モンゴルではみんな、自分の羊を育てているんです。
さて、いよいよ羊料理が出てきました!
まずはお店でいちばん注文の多いメニュー、定番のチャンスンマハ。
▲チャンスンマハ(2,640円)
骨付きの羊肉をじっくり3時間ほど塩茹でにした料理です。
スパイスは使わず、塩だけで調理した本当にシンプルな料理。
骨付きのまま出てくるお店もありますが、こちらでは食べやすく、骨から肉を削いで持ってきてくれます。
ネギとラー油の入った醤油ダレもついてきます。これもお店によっては、塩味だけで食べるところもあります。
どうですか、思わずむしゃぶりつきたくなるような、この立派な骨!
筆者はこの骨をもらって帰って、さらに煮込んでスープにしたりしてます。とっても良い出汁が出るのですよ。
醤油ダレをつけていただきます。
しっかり煮込んであるので脂は落ちていてさっぱりした味わいです。シンプルな味付けなので羊肉の味がしっかり感じられます。
まさに羊肉そのものの味。本当にシンプルで、モンゴルの草原で食べているような気分になってきます。
羊の内臓は意外とさっぱり食べやすい
オタゴンさん:モンゴルでは自分たちで羊を育てているので、ほとんどの部位を食べるんですよ。頭とか内臓とかも。
後ほど頭も出てきます。次に出てきたのは心臓でした。
▲羊ハツ(968円)
羊の心臓を茹でてそのまま輪切りにしたものです。
これも醤油ダレにつけていただきます。
脂はほとんどなく、弾力のあるコキュっとした歯応えでさっぱりいただけます。
お酒がすすむつまみとしてもぴったりですね。
ちょっと温かいものがいただきたくなったところで、次は鍋が出てきました。
▲激辛もつ鍋(1人前 1,408円)
羊の胃袋などの内臓がたっぷり入った鍋です。野菜はじゃがいもと薬味のネギだけです。
激辛、といってもそこまで辛くはありません。極端に辛さに弱い人でなければ食べられると思います。
内臓はしっかり下茹でされているので臭みはほとんどなく、脂も落ちています。
スープはサラッとしていて、さっぱり味。こちらもほとんど脂を感じません。
お次はお客さんの注文の多い、ボーズです。
▲ボーズ(4個 660円)
ボーズは中国の小籠包や、ネパールのモモにも似ています。小麦粉で作られた皮で挽肉を包む料理は世界各国にありますね。
中には羊の挽肉がぎっしり。噛んだ途端に肉汁が溢れ出します。
野菜やつなぎがほとんど入っていない、とても肉肉しい餡です。
▲シャルビン(2枚 1,078円)
今度は平べったいものが出てきました。これも小麦粉で作られた皮で羊の挽肉を挟んだものですが、油で表面がカリッと焼かれています。
これも肉肉しくてジューシーです!
カリッと焼かれているので、食べ応えがあってビールのつまみにも最高だと思います。
さて、そろそろさっぱりとサラダもいただきたくなってきました。
▲羊胃袋サラダ(880円)
千切りのきゅうりやニンジンと細切りの羊の胃袋が和えてあります。
──このサラダもモンゴル料理なのですか?
オタゴンさん:これはサラダなんでモンゴル料理ではなくて中華料理ですね。モンゴルはサラダを食べないので。本当のモンゴル料理は肉ばかりなんです。だから昔のモンゴル人は、あまり野菜を食べたことがないです。でも内モンゴルには中国人もいるので中国の料理もあります。
さて、お次はなんだかすごいインパクトの料理が運ばれてきました!
「羊の胃袋」を食してみる
▲羊の胃袋のボーズ(価格未定・提供予定)
オタゴンさん:新しくメニューに入れようと思っている羊の胃袋のボーズなので、試食してみてください。外側も中身も羊の胃袋なんですよ。
ずっしりとしています。そして強烈な見た目。
丸ごとの写真を撮った後は、食べやすく切って持ってきてくれました。なるほど、中身も全部胃袋のようです。
フムルという植物の漬物のようなものが添えられています。そのまま食べるとおかひじきのような歯応えで、ほのかに酸味があります。
胃袋のボーズにフムルをのせて、パクッとひと口で食べてみます。
口の中に広がるジューシーなスープとフムルの爽やかな酸味。それが合わさると絶妙なうま味が生まれます。
噛み締めていると、どんどんうま味が出てきます。クチュクチュクチュクチュ……。
しかし、いつまでたっても噛み終わりません。外側の胃袋がわりとハードです。
歯が丈夫ではない人は、もう少し小さく切ってから食べた方が良いかもしれませんとオタゴンさんにも伝えておきました。
これは、ウォッカなどの酒のつまみに良さそうです。
「羊の頭」は本気でおいしい
すでに、かなりの量の羊肉がお腹に入っていますが、ここでうわさの羊の頭が運ばれてきました!
▲羊頭煮込み(3,850円)
まごうことなき羊の頭です。
メニューには煮込みと書いてありますが、実際にはローストだそうです。
──羊の頭を注文される人も多いと聞いていますが、これは予約が必要なんですよね?
オタゴンさん:頭もすごく注文が多いですね。以前は日本人は「頭は怖い怖い」ってあまり食べなかったけど、今は「頭ありますか?」ってよく聞かれます。すごい評判です。日本人の予約が多いですね。
──どのくらい前に予約すれば良いですか?
オタゴンさん:1日前でもいいけど、2〜3日前に予約してくれるのが確実です。いちばん早い時(在庫がある時)だと3時間前ですね。焼くのに2時間くらいかかるので。
どうやって食べたら良いかわからないので、オタゴンさんにさばいていただきました。
まずは北京ダックのように皮をはがしています。
中は脂分も多く、ジューシーな肉汁が溢れてきます。おいしそう!
断面図。
目のまわりにはコラーゲンぽいものがあります。鯛などの魚の頭と同じですね。
もちろん目玉も食べられます。
──目玉を食べると縁起がいいんですよね? 以前、モンゴルでは目玉は(左目と右目)両方をセットで食べなくちゃいけないって話を聞いたんですが。
オタゴンさん:昔からずっと、お父さん、おじいさんの時代からその話があるけど、本当はどうなのか私はわからないんですよ(笑)。でもみんな両方の目玉を食べますね。
目玉はプルプルのコラーゲンの塊のような感じでした。跡にはポッカリと穴が。
きれいにほぐしてもらった頭の肉。
胴体部分の肉よりもしっとりときめ細かく、脂や肉汁もたっぷり。コクのある脂のうま味で口内がいっぱいになります。
羊の頭がこんなにもおいしかったとは!
見た目のインパクトもすごいですが、それを上回る滋味。
量的には2〜3人いれば余裕で食べ切れると思うので、興味のある方はぜひご予約を。
シンプルな味付けで、羊のすべてを食べ尽くすモンゴル料理。
羊肉が好きな人はぜひ体験してみてください。目を閉じればそこに、モンゴルの草原が広がっているはずです。
お店情報
アルラ モンゴル料理店(ARAL)
住所:東京都北区赤羽西1-7-1 パルロード3 ループ館 B1F
電話番号:03-5948-5181
営業時間:17:00~24:00 (料理LO. 23:00 ドリンクLO. 23:30)
定休日:火曜日
Instagram:アルラ モンゴル料理店