湯船で乾杯?居酒屋「分福」で銭湯の名残を肴に酒を飲む

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東京都港区にある三田は、いわゆるビジネス街。多くの人々が汗水流し、働いています。

そんな三田で働く人々をいやした万才湯という銭湯が、2016年5月末に廃業しました。残念なことです。この町から風呂上がりの一杯が消え去ってしまったのですから……!

 

廃業から5カ月、銭湯らしい部分を残して居酒屋「分福」としてリニューアルオープンを果たしました。現役の銭湯の番頭である私、毎川直也が宴席で使える銭湯知識を交え、紹介いたします。

 

三田のディープな飲み屋街へ

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手桶を片手にやってきたのは、そもそも銭湯があったのか、疑いたくなるほど都会の三田駅。

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三田駅から北へ向かって歩くこと数分、サラリーマン憩いの場の空気感が出てきました。
どこもいい雰囲気だなぁ〜と眺めていると、写真奥に「ゆ」の看板を発見!

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こちらが銭湯「万才湯」をリノベーションした居酒屋「分福」です。
……瓦屋根のザ・銭湯を想像していたので、元銭湯と言われてもピンと来ないですね。

 

オシャレすぎて銭湯感がない!

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店内はこんな感じ。ありがちなオシャレな居酒屋さんじゃないか! 銭湯感、ないですね。
ここが銭湯のどの部分にあたるのか、銭湯で働いている私でもさっぱりわかりません。

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少し進んで振り返ると、毛染めお断りの文言が!
「浴室内での毛染め」と書かれているということは、私が立っているところが浴室、カウンターと厨房があるエリアは脱衣場だったと推測できます。

 

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毛染めの文言をみて振り返ると、こんな空間が広がっていました。
銭湯チックなものがチラホラと見えるじゃないですか!

 

銭湯の名残かけ流しの湯船席

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まずお目当てのこれ、お湯こそ張ってはいませんが、まんま湯船! この写真のなかにはさまざまな銭湯の名残、そして「分福」での飲み会で活用できる銭湯知識が隠れています。

 

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壁面についてる二つの穴、これは体をほぐすジェットマッサージの跡です。思わず背中の位置を調整したくなりますね。
最近はジェットマッサージも多様化し、全身を囲むようにジェットが設置されたものや、とんでもないパワーで腹筋が引きちぎられそうなものもあります。「分福」では急にジェットが出たりしませんので、安心して腰かけてください。

 

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湯船と湯船の境にあるのは「埋め水」の跡。湯船が熱い時に水を足すためのカランのことです。銭湯業界では湯船に水を足すことを「埋める」といい、逆にお湯を足すことを「差す」といいます。
湯船席で「焼酎埋めで」と水割りを注文してみるのも粋かもしれません。店員さんが知っているかどうかは責任持てません。

 

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そしてテーブルの下には木の板でふさがれた穴があります。銭湯の湯船ってパッと見仕切られているように見えますが、底の部分でつながっていることもあるんです。つなげることで一つの大きな湯船とみなすことができ、ろ過装置や配管などの設備を減らすことができます。

 

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他にも両壁面には洗い場の名残、鏡とカランの跡。

カラン? 蛇口でしょ? 意味としては同じです。銭湯ではなぜかカランと呼ばれることが多いので、「分福」でもぜひカランと呼んでください。ちなみにカランはオランダ語です。
冷水と温水の2つがあり、自分で温度調整します。この温度具合を瞬時に見極め、桶のなかで適温をつくれるようになったら常連と言っていいでしょう。

 

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床を見ると排水溝のふたがそのまんま残されています。それと線対称に奥へ伸びる白黒のタイル張り部分、これはもともと男女の浴室を区切る仕切りでした。それが取っ払われ、いまや男女隔たりなく酒を酌み交わす居酒屋さん。銭湯っぽくても銭湯ではない……強く感じる部分です。

 

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そしてその奥にある不自然に並んだ出入り口。この先はお客さんが見ることはない、機械室につながっています。

 

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本来の機械室の一例がこちら。

この写真は廃業した銭湯で特別に撮らせていただいたもので、後片付けの最中でこんな感じです。
注目してほしいのは写真右手の木のふたがされている箱。これは下風呂と言い、釜で温めたお湯を貯めるタンクです。このタンクのうえはお湯の熱で暖かく、最高に居心地がいいんです。

 

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「分福」では機械室をきれいにリノベーションし、テーブル席として生まれ変わっています。
銭湯の名残はほとんど感じられませんが、下風呂の居心地の良さはバッチリ受け継がれています。
もし湯船席、座敷席と確約がほしい場合、予約の段階で伝えておくと安心ですよ。

 

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そして湯船の向かいには銭湯といえばのコレ、富士山の背景画! 日本に3人しかいない銭湯絵師の一人、中島盛夫氏の作品です。銭湯では基本、背景画は見上げるもの。「分福」では2階に上ると、同じ目線で背景画を見ることができます。しかも天井に空まで描かれているものは世界初かもしれません。
ちなみに背景画に書かれるものは「お客さん来い来い」の鯉など、縁起物が描かれる一方で、お客さんが猿(去る)、落ちるを連想する夕日、紅葉など、店主の要望がない限り描かれないものもあるんです。

 

煮るなり焼くなり好きにできる

銭湯らしさを随所に残している「分福」。銭湯に関わる人間としてはなかなかの心意気を感じます。しかしここは銭湯風居酒屋さん、メシがうまい必要があります。 

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湯船にはいる(席に着く)と、店員さんがたくさんの魚を持ってきてくれました。「分福」に来たら食べるべき料理「もの見せ一本魚」です。選んだ魚は煮るか焼くか選ぶことができます。
煮るなり焼くなり好きにして! という言葉がありますが、実際煮るなり焼くなり選ぶのは人生初です。ここは写真右手、シャープなボディーが特徴的なカマス(1,480円)を焼きで注文。

 

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魚が調理されている間、「お造りの五種桶盛り(1人前 980円)」を注文してみました。銭湯風ということで、木の桶に盛り付けられています。写真は3人前、2人前から注文できます。

 

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銭湯といえば牛乳ということで、牛乳のカクテル(580円)を飲むことができます。味はプレーン、イチゴ、コーヒーの3種類に加え、季節のフレーバーが用意されています。
富士山の背景画を背に、腰に手をやりグビグビ飲めば、湯上り気分で自然と体があったまってきた気がしますね(酔っ払ってる)。

 

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先ほどチョイスしたカマス、こんがりと焼かれて戻ってきました。
カマスというと脂が乗っていて、サンマに近いイメージがありましたが、フワフワとした口触りにあっさりとした味わいでした。強そうな顔の割に内面は優しく繊細……あだ名をつけるなら「海のマイルドヤンキー」ですね。

 

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そして憧れの、風呂の中でビール。お湯がなくとも男心を満たす感情が湧きあがってきます。思わず湯船のへりに手をやって、体を投げ出したくなる! 「分福」が銭湯の空気感を継承しているからこそなのでしょう。これはいい時間!

 

風呂と酒が生む極楽……楽しんで守っていこう!

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「分福」では、お湯に漬かることはできません。でも体が温まって半袖になり、酒が進んで腰が落ちてくると、まるで風呂で酒盛りしてる感じになります。そして酌み交わす酒の味、幸福感は、風呂上がりの一杯そのものでした。
湯船席で、銭湯知識を肴に酒を楽しんでみてはいかがでしょうか。そして後日、銭湯に足を運んでみてくださいね!

 

お店情報

分福

住所:東京都港区芝5-23-16
電話番号:03-6453-7189
営業時間:月曜日・火曜日・木曜日・土曜日・日曜日・祝日…17:00~24:00 水曜日・金曜日・祝前日…17:00~翌4:00 

www.hotpepper.jp

※この記事は2017年9月の情報です。
※金額はすべて税込みです。
※提供している魚の種類は日によって変わります。

 

書いた人:毎川直也

毎川直也

風呂が好きで、風呂デューサーを名乗り活動中。銭湯、スーパー銭湯、温泉旅館での勤務経験を持ち、銭湯に勤めながらメディア出演をしている。酒が弱いうえに小食なため、「メシ通」には間違いなく向いていないライター。

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