家でも辛くてコク深い豚チゲを食べたい!
どうも、ライターの半澤です。この冬も家でたくさんの鍋をいただいてきました。鍋はすぐ作れて、だいたいおいしい。30代、独身一人暮らし男性(涙)の強い味方です。
そういって豚チゲを作ってます。うまいっす。
でも、なんか辛さもコクもちょっと足りないような。ただのキムチ味だからかなあ。
もうワンランク上がある気がするんですよ。そこで、お料理教室人形町キッチンを運営する料理家、風間章子さんに作り方に教えてもらうことにしました。
風間:豚チゲはね、ちょっと一手間プラスするだけでびっくりするほどおいしくできちゃいますよ!
先日、最高の「水炊き」の作り方を教えていただいたばかり。彼女の鍋知識は相当なものなんです。
このときはいつもとちょっと考え方を変えるだけで、感動のやわらかさの水炊きが作れて〆まで鶏のおいしさを堪能できました。果たして豚チゲは「もっとおいしく」がかなうのでしょうか?
じゃ、今回も素材選びからですね! と張り切る半澤。しかし風間さんはこういいます。
風間:ぶっちゃけ食材はいつもどおりでいいですよ。
えっそうなんすか? それで本当に感動できるレベルまで持っていけるの?
【材料】(4人前)
- 豚バラ肉 200g
- 長ねぎ 2/3本
- しめじ 1/2パック
- えのき茸 1/2パック
- 豆腐(もめん) 1丁
- ニラ 1束
- 大根 1/3本
ほんと、かなりフツーですね。いつも家で作っているものと変わりません。
風間:豚肉は焼肉用の厚いバラがあるといいけど、薄切りでOK。スープが染みておいしいから、薄く半月切りにした大根も入れてみましょう。あとニラはマスト。これは5cmくらいにカットして。えのきとしめじもキムチと相性いいですね。
キムチ? あ、そうですよ。キムチ! キムチはフツーじゃダメでしょ!
風間:いえいえ、キムチも普通にスーパーで売っているものでいいです。ただ、こだわりたいならラベルをチェックしてみて。
ラベル? キムチを買うときは値段しか見てませんでした。
今回使ったキムチがこちら。パッと見は普通のキムチですが……
ラベルをよく読むと素材、調味料がシンプル! キムチによっては増粘多糖類や色素、甘味料、酸味料などいろいろ入っているものがあるので、これらが少ないキムチを選ぶのが良いみたい。なるほど確かに色が自然です。
風間:本場韓国ではキムチは家で作るものですからね。やはり自然素材のほうがおいしいに決まってます。
確かに! 細かな点ですが「気合入れて鍋を作ろう」というときには、ここまで気にかけたいですね。
風間:好みによるけど、できれば賞味期限ギリギリくらいまで家で保存しておくとベター。酸味も出てまろやかになりますよ。
なるほどキムチはやはり大事でしたね。とはいえ、これだけじゃ激ウマにはならないのでは?
風間:任せてください。ここから、水炊き同様に「レベルアップ術」を紹介していきますよ。
豚チゲレベルアップ術①「出汁をとる」
これはほかの鍋のときもそうでしたね。昆布を入れると鍋全体がまろやかになってスープの完成度が爆上がり。詳しくは、こちらも風間さんに教わった「おいしい土鍋の育て方」をご覧ください。
昆布を鍋に入れてしばらくおき、火にかける。その後沸騰直前に取り出すだけ! と簡単にできる作業なのでぜひやっておきましょう。
風間:鍋を作るとなったら、「まずは出汁を用意」と覚えておきましょう。
豚チゲレベルアップ術②「調味料にこだわる」
ここまで地味な絵が続き、撮れ高が心配な半澤。けれど、ここからがスゴかった。なるほどそりゃおいしくなるよね、というテクニック連発なのでぜひお付き合いください。まずは調味料。
風間:調味料はちょっと頑張ってこだわりたいよね。
風間さんがそういって用意した調味料がこちら。
【鍋用の調味料】(出汁1ℓに対して)
- コチュジャン 大さじ1
- ダシダ 小さじ1
- お酒 大さじ3
- 塩 適量(味を調えるだけ)
なるほどコチュジャンね。コクがでますし、韓国料理感が一気に高まる。で、えっ「ダシダ」? 二度見する半澤。ダシダって何ですか?
風間:ダシダは韓国の「出汁の素」といったところかな。牛から出汁をとっていて(牛以外のものもあり)コクが倍増します。韓国料理のときはぜひ使ってみてほしいですね。スーパーでも普通に買えますよ。
なるほど、材料が普通でいいから、調味料はちょっと凝れちゃいますね。ダシダは鶏ガラスープの素でも代用できますが、チャーハンなどいろんな料理にも流用できるから一つ持っておくといいかも!
豚チゲレベルアップ術③「豚肉を下ごしらえする」
さあ、いよいよ土鍋を使うかと思いきやここで風間さん、おもむろに豚肉を手に取りました。
そしてなんとボウルにイン! えっ何が始まるんですか?
さまざまな調味料を投入。
そして、こね出したのです。
風間:こねているんじゃないですよ。調味料をなじませているんです。しっかり下味をつけると豚肉のおいしさが引き立つからね。1枚1枚に味がちゃんとなじむよう、ムラがないように!
なんと、豚肉に下味。塩こしょうくらいならわかるけど何を入れたんですか?
【豚肉用の調味料】(豚肉200gに対して)
- 塩 小さじ1
- おろしにんにく 大さじ1/2
- ごま油 大さじ1
なるほど、ごま油ににんにく。いずれも豚バラ肉と相性抜群じゃないですか。それを豚肉になじませておく。うーん、もう絶対おいしいやつやん。いやあ、もう完成が楽しみ!
豚チゲレベルアップ術④「煮込む前にひと工夫」
もう、ここまで来たら完成みたいなものでしょう。鍋にだし汁入れて煮込んで。と、思っていたら、なんと風間さんはまた驚きのアクションに打ってでました。
なんとなんと、土鍋に豚バラ肉を入れて焼き始めたのです。
な、何やってるんですか。焦る半澤。それを尻目に風間さんはジュージューと気持ちよく豚肉を焼いていきます。もう、この香りで死にそう。にんにくって本当、凶器や!
風間:こうすることで豚肉自体にも鍋にも香ばしい香りが生まれますよね。ただし肉を入れてから火をつけて。割れたりする恐れがあるから、土鍋は空だき厳禁! あと肉は取り出すのも大事です。
赤みがなくなるくらいまで焼いたらOKです。火の入りすぎを防ぐため表面が焼けたら豚肉は取り出してしまうそう。これなら必要以上にグツグツ煮ないから野菜もお肉も一番よい状態で食べられますね。
風間:さあ、ここまで来たらあとは上手に煮ていくだけです。
1.だし汁に調味料(塩以外)を入れる。
2.大根→長ねぎ→豆腐→きのこ、の順で入れる。大根は火が通るまで5分くらい煮込むのが目安。
風間:長ねぎはやわらかい方が好きなので早めに入れましたが、ここはお好みで。野菜からもよい出汁が出るので、あまり急がずじっくり気長に作ってみてください。
3.きのこに火が通ったら豚肉を入れる。
4.キムチを入れる。これもポイント、キムチは2回に分けて投入! 1回目は150gくらい。キムチは野菜のうま味が染み込んだ汁も入れる。
風間:スープ自体にうま味を出すため、キムチを入れてからもしばらく煮込みましょう。
5.ニラを入れたら最後に残りのキムチ(100g程度)を投入。後入れ分のキムチは白菜のシャキシャキ感が楽しめますね。キムチを後入れすることで彩りもアップ。
これで完成!
いやあ、もう言葉はいらない。何も言わなくていい。確実においしいはず。なぜならキッチンがにんにくとキムチの香りで満ち満ちているから。やはり最初に下味をつけた豚肉を焼いたことで、香りが数段アップしましたね。
ではいただきましょう。と、なって風間さん、今日イチの笑顔。
風間:私の豚チゲはこれじゃ終わりませんよ!
豚チゲレベルアップ術⑤「魔法の赤い粉を使いましょう」
何を持ってるんですか? 風間さんはめっちゃ赤い粉を取り出しました。
風間:食べながらでもいいけど、粉唐辛子を入れてみて。これがコクを高めてくれるんですよ。
粉唐辛子はとっても辛そう、だけどなめてみると意外とそんなことなく。
ピリッとする程度。 甘味も感じられて唐辛子の風味とコクが増す調味料です。
粉唐辛子を入れたらこんなヴィジュアルに!
粉唐辛子を散らしたことでより本格的に。香りも見た目も文句なしの豚チゲが作れました。さあ、食べて見ましょう。
まずはスープから。豚肉、にんにく、そして野菜にキムチのうま味がスープ全体に染みてます。ダシダ、粉唐辛子を入れたことでコクがギッシリ、そして立体的に。これ、今まで家でできなかった味です!
風間:昆布とビーフの出汁というのが相性よかったですね。カツオ出汁だとたぶん、やりすぎな感じになっちゃったと思います。本当うま味はバランスが大切ですよ。
では、豚肉もいっちゃいましょう。
と、食べた瞬間からその香ばしい香りに涙。え、豚チゲの豚ってこんなおいしいんだっけ。にんにくの風味がしっかりのって、豚の味をさらにコク深いものに。火の通りも程よくふわふわだし、ちょ、ちょっとこれ、豚チゲ新世界ですよ!
ほかの具材たちもスゴいっす。スープが濃厚でおいしいから、そのうま味を吸った野菜すべてが美味! 脇役なんていません、全員主役。これぞ鍋の醍醐味(だいごみ)ですね。
風間:ご飯にもお酒にも合う鍋になりましたね。それぞれの素材から違う「うま味」が染み出ていることがよくわかります。じゃあ、早く食べちゃって〆もおいしくいただきましょう! 雑炊もいいけど、今日はスープがうまいから麺にしましょう!
本日の〆「超まろやか! のりラーメン」
【材料】(2人前)
- 残ったスープ 適量
- たまご 1つ
- のり 適量
- 中華麺 2玉
1.ゆでた中華麺を熱したスープに入れる。
風間:麺は固めにゆでて、しっかりデンプンのぬるぬるを取っておきましょう。
2.麺がゆであがる1分ほど前を目安に、たまごを入れて2分ほど火にかける。
3.のりを全体に散りばめて完成。
あっという間にできちゃいましたが、何これ、すんごい格好良いビジュアル。のりの香りが早くも漂っております。
たまごも完ぺきな、とろとろ半熟具合!
それでは食べてみましょう。いやあ、たまご&のりに感謝。たまごが全体をまろやかにして、のりが新たな風味とうま味を創出。先ほどの鍋をよりマイルドな味わいに変えてくれました。お腹いっぱいのはずなのにこれはスルスルいける。
風間:もともとのスープがおいしいから、〆も上手にできましたね。奥ゆかしい味にまろやかさがプラスされて麺もおいしく食べられました。
いやあ、生涯で間違いなくナンバーワンの豚チゲでした。ごちそうさまでした! 今度まねして作ってみます。
どうでしょう。今回は「豚チゲ」を研究しました。まだまだ寒い日が続くのでコクたっぷりの豚チゲを作ってみて。「レベルアップ術」はどれも簡単だから、できるものだけでも試してほしい。豚チゲ新世界の幕が開けますよ。
取材協力
料理教室 人形町キッチン
書いた人:半澤則吉
1983年福島県生まれ。2003年大学入学を期に上京。以来14年に渡りながく一人暮らしを続けている。そのため自炊も好きで、会社員時代はお弁当を作り出勤していた。2013年よりフリーライターとして独立。『散歩の達人』(交通新聞社)にて「町中華探検隊がゆく!」を連載するなどグルメ取材も多い。朝ドラが好き。